2011年01月31日

【書評】東方粉飾劇

 「投資家の信頼を取り戻すことが大切」と証券取引所は声を上げるも、相変わらず上場企業の問題行動はちっともなくならない。
 特に、一発で倒産や上場廃止となりかねない粉飾決算は大きな問題で、昨年も売上の9割以上が粉飾だったエフオーアイを筆頭に粉飾決算の発覚が相次いだ。

 本書「東方粉飾劇 五月さん 著 東証projectさん発行」は特に注目度が高かった粉飾決算について、特徴や粉飾を見抜くポイントを述べ、またそれらの事例の解説を通じて個人投資家が取るべき対策を提言している一冊である。
 本書の冒頭部分が東証projectさんのサークルブログで公開されているので、興味ある方はご覧になってみて下され。

 なお、本書は同人誌であるため一般書店の入手は不可能である。興味のある方は委託先のとらのあなの店頭で購入するか、通販で購入することになるが、現時点では通販は売り切れの模様(2月中旬入荷とのこと)。
 ちなみに管理人は本書を29日(土)の午後にとらのあな秋葉原店で購入したが、そのときには店頭在庫が少なくとも数冊はあった模様。本書は4F(一般誌)フロアの中央あたりに陳列されていたが、東方コーナーに置かれているということで周りも東方本であり、ちと見つけにくいかも(注:管理人は東方には詳しくないです)。


 さて、本書では、
第1章:シニアコミュニケーション
第2章:アイ・エックス・アイ(IXI)
第3章:プロデュース
第4章:エフオーアイ
の4銘柄を取り上げ、各銘柄における粉飾の手法、およびどこに見抜くポイントがあったのかを当時の市況の雰囲気も交えつつ(←ここ重要)それぞれ解説している。

 上記4事例のうち、自分が特に興味深かったのは第2章のIXIの事例である。
 他の3事例については、営業キャッシュフローの連続マイナスから、(粉飾の確証はないが安全面から)投資を手控えるという判定ができたのに対し、IXIについては、粉飾発覚直前の営業キャッシュフローがプラスで、しかも売掛金の増え方も売上相応であった。
 そのため、粉飾危険性の判定に貸借対照表と営業キャッシュフローを用いる自分としては、粉飾発覚後においても、「事前にこの粉飾を見抜くのは不可能」と考えていた。
 しかしながら、本書では、IXIの事例においても異常に気づくポイントが何点かあったと指摘している。このうち、自分としては、従業員一人あたりの指標変化に着目した部分がすばらしいと感じた。確かに、成長企業といえども、従業員一人あたりで見ればあまり急激には成長しないからねぇ。

 また、本書の特徴の一つとして、監査法人や取引所に厳しいつっこみを入れている一方で、個人投資家側も自ら防御することが必要であると述べている。特に、会社側が発表する事業計画を鵜呑みにしないよう強調しているのが印象に残った。この点は全くその通りで、投資家側が問題銘柄を自ら避けるようになれば、自然とその手の銘柄は淘汰されるように少しはなるはずである。
 ・・・当HPでつっこみを入れているMSCBだって、2003年頃までは下限転換価額の設定なしとかひどい条件が多かったのだけれど、ずいぶん時間をかけて徐々によくはなっているからねぇ。粉飾についてもそうなると思いたい。


 本書は、個人投資家が粉飾銘柄を事前に見抜き、損失を回避するための手法について過去事例を用いて冷静に解説している大変実用的な一冊である。
 また、著者が個人投資家であることから、我々個人投資家の心理的な面についてもよく認識した上で記事を書いているように感じた。この点は一般書店で売られている書籍にはあまりない長所であると考える。
 ・・・当面は沈静化しても、どうせまた粉飾銘柄が出てくるのは明らかなのであるから、本書が役立つ局面が必ず来るはずである。
 そして、ぜひ続編を夏コミで出して欲しいところである。
 
posted by こみけ at 02:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月31日

【書評】黒の株券 ペテン師に占領されるウォール街

 皆様ご存じの通り、日本株式市場にはゆかいな銘柄が新興市場を中心に多数存在している。2006年以降、不正が明らかになったいくつかの銘柄はよくて株価急落、悪ければ倒産という結末に見舞われ、投資を行った人々のお金の大半はどこかへと消えてしまった。
 この反省からか、最近、東証、日証協などで上場企業への規制強化が検討されている。この際、参考事例として米株式市場における規制が取り上げられることが多いが、米国とて問題がないわけでもないようだ。

 本書「黒の株券 ペテン師に占領されるウォール街 デビッド・アインホーン 著 塩野未佳 訳 (パンローリング)」は、ヘッジファンドの社長を務める著者と、ニューヨーク株式市場上場の投資会社アライド・キャピタル(ALD、以下アライド)との戦いを通し、米株式市場を取り巻く様々な問題について著者の意見を述べた作品である。

 戦いのそもそもの発端は、投資講演会(時々日経で広告が出ている講演会のようなものか?)で著者がアライド(とその子会社、以下同じ)が不正会計を行っているとの主張を行ったことに始まる。
 講演は、アライドの投資先のうち、経営が行き詰まっている企業についても投資を回収できると見なし、損失隠しを行っている、という内容であった。講演内容自体も刺激的なものだが、著者が率いるヘッジファンドが講演前にアライド株を空売りしていた(講演時に明言)というのが事態をさらに混沌とさせた。
 当然というべきか、アライドから著者へのプレスリリースによる反論があり、そこから泥仕合が始まった、と言う流れである。まあ、日本でもネット・週刊誌vs糞銘柄の構図で良く見られた展開だねぇ。

 アライドが行ったという不正の中で特筆すべきは、焦げ付き時には米政府(正確には中小企業局(SBA))が大部分の補填を行うという中小企業向け融資制度を悪用し、不正融資を行っていた事例である。不正融資自体は、実際には廃墟の建物を、収益物件と言うことにして融資を引き出していた・・・という日本でも時折見かけるパターンである。
 面白いのは、この不正を見抜いた著者がSBAに告発を行った後である。まず、SBAはまともに取り合おうとせず、不正融資が積み重ねられるのを放置していたという。また、問題が大きくなり、政治問題化(公金の不正支出)した際にも、アライドから民主・共和両党のえらい人に政治献金が行われており、そのせいでアライド側に有利な判断が下されたとのことである。
 日本だとなかなか想像できない事態ではあるが、向こうはロビイストなる人が活発に動いているとも聞くので、まああってもおかしくない話ではある。
 あと、ニューヨーク・タイムズを初めとするマスコミ産業やSECが当てにならなかったとも書いているが、これは日本でも同様だから特に異論はない。おそらくは事実なのだろう。

 ・・・著者が本書を通じて語っていることは、おそらく事実だろうし、アライドだけではなく、米株式市場で似たような事例が多数起きていると思う。
 ただ、著者のヘッジファンドがアライド株の空売りをやっている以上、発言内容がある程度色眼鏡で見られるのは仕方のないことだと思うのだよねぇ。
 自分の場合は、アナリストレポートでさえ、純粋な企業分析以外の何かしらの意図が働いていると考えたりする。ましてや、売りポジションを持っているヘッジファンドの発言など、たとえ正しいものであったとしても、なかなか真剣に聞こうとはしないと思う。
 もちろん、真実を明らかにしようとする著者の行動が間違っているわけでもないのだが、人間完璧じゃあないからねぇ。働かないSBAの役人は問題外だが。


 ・・・本書を通じて米国の事情を垣間見ると、「程度の差はあれどの国も苦労しているな〜」というのが自分の印象である。
 となると、結局の所、自分の資金は自分で守らなければならない、というのは全世界共通であり、日本株式市場で規制強化とやらが行われても引き続き自己防衛が必要なのは間違いなさそうである。
 政府、証券取引所、その他の何かに期待するのはやめにしましょうと言うことで。

 ・・・しかし、この著者の人もすんごい執念だねぇ。いくら空売り中の銘柄とはいえ、ここまで話がこじれたら、自分ならさっさと手を引いて他に回るのだが。
 まあ、このくらいの執念、もしくは信念がないとヘッジファンドの社長は務まらないということなのだろう。
 自分には到底無理ですな。
 
posted by こみけ at 18:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月01日

【書評】大暴落1929

 現在の不況は世界恐慌以来の100年に一度の危機といわれている。だが、そう言われても100年の3分の1程度しかまだ生きていない自分にはピンと来ない。そもそも、日本のバブル崩壊でさえ実感がほとんどなかったからねぇ。
 個人的には、今回の不況が「100年に一度」というのは大げさではないかと根拠なく思っているのであるが、1929年の株価大暴落はどのようにして起きたのか、そして続いてやってきた世界恐慌時に何が起きたのか知っておくのは悪いことではないかと思う。
 ということで、案の定大拡張されていた書店の金融危機コーナーに出向き、最近出版されたヒステリックな煽り文句が並ぶ本どもを無視しつつ、1954年初版という「大暴落1929 ジョン・K・ガルブレイス 著  村井章子 訳 (日経BP)」を購入してみた。


 本書の前半では、1925年頃にピークを迎えたというフロリダ不動産バブルについて軽く触れた後に、1927年頃から勢いを増したという(暴落前の)上昇局面について述べている。
 上昇局面に関する記載の中で自分が特に注目したのは、現在におけるヘッジファンドのように、レバレッジを活用する投資主体が当時も存在したという点である。その名前を「投資信託」という。
 ・・・この名称には自分も戸惑ったのだが、当時の投資信託は、出資者から資金を集めるだけでなく、自分で優先株や社債を発行することでも資金を調達し、レバレッジをかけていたものが多かったらしい。現在のREITに似た存在だと思えばいいのだろうか。
 んで、そのレバレッジをかけた状態で株を買い、保有株が上昇すれば(我々の信用取引と同様)株価の上昇幅以上に資産が増えて万々歳、という仕組みだったようである。しかも、投資信託をポートフォリオに加える投資信託(ファンズ・オブ・ファンズのようなもの?)もあり、二重三重のレバレッジがかかった状態となっていた。市況上昇期には、この仕組みは驚くべき評価額の上昇をもたらした。半面、株価が下げたときの反動もすんごいものだと明らかになるのは、1929年9月以降のことである。
 ・・・そう言えば、2007年くらいから米証券取引所にヘッジファンドが上場していたが、株価は最近どうなっているのだろうねぇ。近頃話題にならないけど。まあ本書には直接関係しないからいいか。

 その後は、1929年9〜10月大暴落の説明である。世界恐慌から完全に抜け出したあと(1954年)に書かれた本だけに、この時期も客観的に述べている点に好感が持てる。
 大暴落に関する記述の中で自分が興味を持ったのは、『大暴落直後に米国で自殺が急増したのは事実無根』という記述である。
 自分の今までの想像では、株価大暴落で追い証を払えなくなった相場師の皆さんは、毎日のようにウォール街のビルから飛び降りたりピストルでこめかみを撃ち抜いたりして新聞紙上を賑わしていたのだと想像していた。
 しかし、米国全土、およびニューヨーク市の自殺者数統計によると同時期の自殺者数はそれまでと大差なかったという・・・むしろ、1930〜32年の方が上昇していた。どうやら、株価大暴落の衝撃が大きかったせいで、(大暴落直後に)それ以外の理由で自殺した人も株価暴落のせいだと思われたのではないか、と著者は推定している。
 いやあ、聞きかじりの知識なんて当てにならないねぇ・・・ここだけの話、「金融関係者の自殺がそれほど報じられていない」ということを今回の不況が100年に1度ではない根拠の一つとしていたのだが、とんだ見込み違いだった。
 ・・・となると、「日本のバブル崩壊時に兜町の証券会社の株価ボードの前で立ちすくんだまま脱糞している投資家がいた」という(自分が信じている)伝説についても再検証が必要になりそう。本当のところはどうだったんだろうねぇ。

 大暴落後の展開については現在の不況と似た状況だったようで、根拠のない楽観とあきらめとが混在しつつ事態が悪化していったことが淡々と述べられている。『最悪の事態がじつは最悪でなく、さらに悪化し続けたことである。』という今日にも通じる記述が印象的であった。
 なお、米国のGNPや失業者数が大暴落後に最悪値をつけたのは1933年、大暴落の4年後であり、生産高が1929年の水準を回復したのは1938年とのことである。


 今回の不況、実体経済への深刻な影響が出てきてからまだ1年も経っていない。これが100年に一度かどうかは別にして、ここ数年続いていた米不動産バブルのつけを払う局面なのだとすれば、まだまだ厳しい状況が続いても全くおかしくない。
 本書は、大恐慌時に書かれた本でもなく、また今回の不況時が起きてからかかれたことでもないことから、1929年前後の事態を客観的な目で書いていると自分は評価する。
 この点から、本書は、80年ほど前、先人たちが株式市場でどんな恐怖に遭遇したのかを知っておくのにふさわしい一冊であると考える次第である。
 
posted by こみけ at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月15日

【書評】「おひとりさま」のお金の本

 「自分もそろそろ長期的なマネープランを考えてみるべきだ」−ある日どこからともなくこのような電波を受信した。

 当ブログは資産運用全般について述べると掲げてはいるものの、語っていることはほとんどが株式に関することである。
 それは自分のお金に関する知識水準についても同様で、自分には、株式・投信・FX等、個別金融商品に関する知識はそこそこあるかもしれない一方で、マネープランに関する知識は極めて乏しいことを最近実感するようになった。
 特に、保険については適正な加入プランを自分では判断できず、親に相談した上でプランを決定するといった事態も発生してしまっている状況である。

 このままではいずれよろしくないことが起きそうだから、まずは参考になりそうなマネープランの本を買ってみるかということで、先日書店に行ってマネープランに関する本が置かれた棚を眺めてみたところ、9割近くが団塊の世代向けに書かれた本であった。これでは、まだ見習い社会人である自分の役には立たない。
 また、残り1割の本では対象年齢は特に限定していなかったが、多くは紙面の大半を各種金融商品の紹介・比較に費やした本であった。この辺は今更復習しなくてもそれなりにわかっている分野である。
 従って、自分が知りたいと思っていた、将来の生活に必要な資産額や同世代の貯蓄状況などを説明した書籍はほとんど見あたらなかった。

 そんな中、30分近く同コーナーをうろうろして発見・購入したのが、今回紹介する書籍「『おひとりさま』のお金の本  森永卓郎 監修 (主婦と生活社)」である。
 本書は、シングル女性向けに書かれたお金に関する本であり、お金に関する問題を初めて考える人でも一通りの問題を認識できるよう、資産運用に限らず広範な分野に言及している一冊である。


 前置きが長くなったが、ここからが本書に関する内容である。
 本書は、まずシングル女性を「純粋おひとりさま(未婚女性)」「離別おひとりさま(離婚女性)」「死別おひとりさま(夫と死に別れた女性)」の3種に分類し、それぞれについて、マネープラン策定において気をつけるべき点を述べている。
 その後、老人ホーム、海外移住など、様々な形態の老後生活を実現するのに必要な資金額について紹介し、その実現に必要な資金を作るために必要な節約術と資産運用法について述べる流れとなっている。
 
 本書の良い点は、老後に必要な月収額、受け取れる退職金の予想額、各種老人向け施設の入所料といった、マネープランを考える上で必要な情報がしっかり書かれている点である。
 このような必要経費については多くの本が掲載を省いている。これには、読者のお金に関する事情が一人一人で異なるから意味が薄い、もしくは余計な思い込みを生ませることになりかねない、という理由があるのだとは思う。しかし、この点の説明を省いていいものだとは思わない。
 もちろん、マネープランは最終的には一人一人異なるものになるのであるが、マネープランを立てる上での参考となる情報は必要である。
 自分はまだ老後プランについては何も決めていないが、それでも、医療・葬儀等に関する資料は参考になった。このへんの情報は、しかるべき本を読まないとなかなかわからないことが多いからねぇ。
 
 そして、生活費の節約に関する記述が充実しているのも本書の特徴である。この辺は女性向けだからであろうか。
 まずはじめに支出チェックリストが準備されており、住居費・生命保険・・・(中略)・・・化粧品代・美容院代など、一月当たりの支出を細かく記載することができるようになっている。その上で、各項目の支出の削減手法が簡単にではあるが述べられている。
 支出項目のうち、特に、食費・光熱費の節約については、物価高の今日では特に重要ではないかと。ただ、節約手法の内容については初歩的?なものが多いようだから、ある程度一人暮らしに慣れた人にとってはそれほど目新しいものはないかもしれない・・・自分にとっては役立ったが。

 最終章は資産運用の章となっており、金融商品等の特徴が紹介されている。
 ただ、内容はあくまで「余ったお金の投入先」という扱いとなっており、「まず3年分の生活費を貯蓄すること」という念押しがなされている。また、本章における金融商品の紹介自体は簡潔なものとなっており、おそらく当ブログをご覧の方にとっては不要なものであろう。
 本章で一点気になったのが、金(Gold)を投資資産の10%程度保有するように推奨している箇所である。
 金の保有を推奨すること自体は考え方のひとつではあり、そこに文句をつけるつもりはないのだが、そのリスクに関する説明が不十分ではないかと思うのである。その前の「金融商品のリスクを知る」という図に、金のリスク・リターンも加えておけば良かったと思うのだがねぇ。少なくとも株式並みのリスクがあるという表示になるだろうから、それだけで読者への注意喚起になるはずである。
 まあ、そうは言っても本書においては資産運用の章はおまけのようなものである。本当に資産運用に関する知識が必要だと感じた人は、しかるべき本を買うのではないかと。


 本書は女性向けに書かれた本ではあるが、男性(特に独身者)が読んでも参考になる部分は多いと思う。
 収入には気をつけているけれど、支出にはあまり注意を払っていない、といった人には特にお薦めの一冊である。
 
posted by こみけ at 19:14| Comment(10) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月10日

最近読んだ本をちょいと紹介

 9月に旅に出た際に、東京で色々株に役立ちそうな本を買ってきた。読むのに結構時間がかかってしまったが、最近ようやく読み終わったので何冊か簡単に紹介してみる。
 ここしばらく、株本より経済全般に関する書籍を読むことが多くなっているので、株本の紹介はわずか1冊になってしまったがその辺はご容赦くだされ。


日本の富裕層 お金持ちをお得意さまにする方法  臼井宥文 著 (宝島社)

 本書は国内で富裕層向けマーケティングを行っている著者による、国内の富裕層の現状、分類、志向等を分析し、多種多様な嗜好を持つ富裕層に対してどのようなアプローチが効果的なのかを提唱している本である。

 本書では、代々続く富豪ではない、最近お金持ちになった人々(ニューリッチ)を5種類に分類しており、それぞれに異なった考え方や消費行動をとると主張している。
 このうち、自分が一番面白いと思ったのが、「ラグジュアリーリッチ」に分類される人々についてである。この分野に該当するのは、収入や保有資産はさほど多くはないのにも関わらず、車・時計・衣料・旅行等特定の分野にのみ富裕層並の大金をつぎ込むという消費行動をとる人々である。書中では「一点豪華主義」と言う表現がキーワードとなっている。
 自分としては、こういう収入、あるいは保有資産にそぐわない消費行動をとる人には「浪費癖」とか「見栄っ張り」とかあんまりよろしくない印象を持ってしまっている。一方で、マーケティング、あるいは(商品、サービス等の)売り込みをやろうというのなら、その特定の分野でおつきあいさせていただき、お客様に満足していただけば大いに結構なわけで、「ラグジュアリーリッチ」な人々が結構な人数になることを考慮すれば、そこに目を向けたマーケティングを行う価値は十分あると言うことになる。この辺は、傍観者、あるいはワイドショーで眺めて呆然としたりする程度の関わりしかない自分では気づき得ない視点であり、大変勉強になった。

 それと、巻末の対談では上流と下流を分ける一つの真理(と管理人には思えた事柄)が示されていた。自分が以前、ライブドアの堀江社長(当時)が世界バリバリバリューに出演したのを見た際に、いまいちうらやましく思えなかったのもその辺にあるんじゃないかと感じた次第である。


ソニー病 城島明彦 他 著 (洋泉社)

 ソニーがどこかおかしい−昨今の電池騒動やPS3に関する混乱を見て、そう感じる人は自分を含め少なくないと思う。
 では、どこがおかしいのかというと、なかなかはっきりしたことはわからない、それ故に改善策がなかなか定まらない・・・ソニーは、そのような状況で必死にもがいているようにも見える。一方で、上層部へのインタビューとかを見ると、それでも事態の厳しさを感じずに余裕ぶちかましているようにも見えてしまうわけだが。
 本書では、そのようなソニーが陥っている事態を「ソニー病」とある意味開き直りとしか言いようがない、一方で、何となく受け入れてしまう表現で語り、どうしてこういうことになってしまったのか、過去からの症状悪化の日々、現在の状況、そして解決への方策を示している。

 本書はあくまでソニーの事例を述べているが、「ソニー病」は他の企業、ひいては組織でも起こりうる事態のように感じる。「ソニー病」の典型例(笑)への理解を深めるために、本書は大いに役に立つはずである。


スゴ腕証券マンが明かす 株式市場「客ゴロシ」の新手口! 伊藤歩 他 著 (洋泉社)

 本書は、大手証券マンから相場師まで、市場の最前線でやり合っているプロが明かした話を載せている、としている。
 この本、自分の中では、本書著者の一人である星野陽平氏が編者となった「実録!株式市場のカラクリ」および「実録!株式市場の錬金術師たち」の続刊であると認識しているのだが、そうとらえてしまうと、この2冊と内容がかなり似通ってしまっていているのだよねぇ。いや、もちろん違う事例を扱っているのだが、こう、仕手株とか、怪しげな情報とかに近寄らない人にとっては、どの本に書かれていることも大して変わらないように感じたのである。ん〜・・・なんでだろうねぇ。

 さて、本書の中ではMSCBと株式分割または株式併合を利用した荒稼ぎについて1章が割かれている。これがくせ者で、自分としては、記事の一部が全く的はずれなものになっていると認識している。
 特に問題視しているのは、記事のうち株式併合の事例である。書中では、貸し株の空売りを併合後に行うように図で説明しているが、これは明らかに間違いで、併合前に空売りを行ってしまう方が利幅が大きくなるのは明らかである。併合後は株価が下落するものだというのなら、それを見越して併合前に売っておいた方がいいに決まっているからねぇ。
 また、その前(77ページ)にある貸し株に関する部分も問題である。文脈を見る限り、この著者、「借り株によるカラ売り自粛」が実効性のあるもののように受け止めているように思えるのだよねぇ。実際はMSCBの転換株式数の範囲内で貸し株の空売りが可能、すなわち事実上は全く意味のない条項だというのに、そこが見抜けていないように見える次第である。

 ・・・今回は金出して買ったけど、こういう内容が続くようなら次回作は立ち読みで終わりそうだねぇ。


 最近は、株式投資そのものに関する本と言うよりはマネープラン全般、もしくは投資家の伝記・市場の歴史など、周辺領域?に関心が移っているようであり、しばらくはそっち関連の本を読むことが多くなりそうである。
 今回書評も書いたような、富裕層関連の情報はできる限り知っておきたいのだが、なかなか本だけではわからないねぇ。「メイドさんの雇い方」とか、紹介されている本はないものか。
  
posted by こみけ at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月29日

【書評】投資の行動心理学

 「市場は効率的」とは言われるものの、倒産株が大幅上昇したりする現在の株式市場を見る限り、そんなの全く信じられないという人も多いと思う。また、「どうしてこんな糞株を」と大多数の投資家が思うような銘柄に突撃し、あっさりやられてしまうような人も後を絶たない。投資家も含めた人間心理というのは、本人以外には(おそらくは本人自身にも)なかなか理解しがたいものである。
 今回紹介する書籍「投資の行動心理学  ジェイク・バーンスタイン 著  青木俊郎訳(東洋経済新報社)」は、合理的とは言えない行動をとってしまう投資家がどのような問題を抱えているかを分析し、その解決法についても模索している一冊である。


 本書の冒頭では初歩的な心理学が簡単に説明され、次にそれを実際のトレード環境に当てはめていく。その上で、投資家が取り巻かれている環境や、トレードの成否などがどのように投資家に影響していくかを心理学の観点から解説している。
 たとえば、家族やブローカー、同僚などの発言、自分の作ったシステムの成否、あるいはそれを無視してしまった場合の売買など、我々投資家が直面する様々な状況について述べられている。この辺は、著者自身も米商品先物のトレーダーということで、実際に体験したものでなければ直面しなければならないような点についてもしっかり述べられている。「システムを無視して売買した場合」というのは実際にやった人間でないと思いつかない局面だからねぇ(笑)。

 本書で特に面白いと思ったのは、実は、内心では売買で損をしたいと無意識に思ってしまっている人が存在している、という仮説を心理学の観点から解説しているところである。
 心理学的な詳しい解説はさておき概要を述べると、「勝ったときは周りからの嫉妬に晒される一方、負けたときは周りの人が慰めてくれる」と言ったように、金銭的な損益とは別に、トレーダーに与えられる報酬(金銭的なものに限らない)が存在し、場合によっては損をした場合の方がよりよい報酬を与えられるケースも存在するというのである。こうなると、口ではそんなことは言わなくとも、報酬が欲しいがために無意識に負けようとするというのである。
 そして、このような無意識を克服するためには、環境を変えなければならないと言うことである。まあ、端的に言えば「つきあう人を変えろ」と言うことだそうだ。もちろん、自分自身でも勝ったときには自分にご褒美を与えるとか、積極的な動機付けを行うのも有効であると説いている。
 自分としては、この仮説が正しいかどうかはどちらとも言えない。ただ、個人的にはアルコール依存症や借金癖等の問題において取り上げられる「共依存」という現象に近いものであるように感じた・・・実在してもおかしくないと思う。
 
 それと、仕手株を扱うのなら是非理解しておきたいのが、第9章で述べられている「ランダムな強化スケジュール」である。有名な「パブロフの犬」理論をもとに語られており、どのような手法を用いれば実験動物に効率的な学習を施すことができるかを述べている。株式市場に置き換えた場合、実験動物が何で、学習とは何であるかも考えると、実に興味深い解説である。


 行動ファイナンス論に関する書籍の多くが、株価や売買の理不尽な動きを心理学の面から?解説するものならば、本書は、投資家自身の理不尽な行動をどのように修正するべきかという手法を語る自己啓発の意味合いが強い本であると感じる。
 本書で書かれている多くの課題は、1年程度の投資経験がある投資家ならば既に一度は経験している可能性が高い。それらの課題が明文化され、しかもある程度の解決手法が提示されているという点で、本書は高い価値があると感じた次第である。
 
posted by こみけ at 19:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

【書評】ヒルズ黙示録 検証・ライブドア

 日本中を騒がせたライブドア事件も、ライブドア株の上場廃止という一つの区切りを迎えてはや5ヶ月あまりが経過した。この間、ライブドアに関する書籍が何冊も出版され、主に社会問題としての見地から様々な考察が行われている。
 今回は、これらライブドア関連の書籍のうち、「ヒルズ黙示録 検証・ライブドア 大鹿靖明 著(朝日新聞社)」を読んでみたのでちょいとコメントしてみる。


 本書は主に堀江氏、村上ファンドの村上氏、それに楽天の三木谷社長のヒルズ族三者を軸にしつつ、ニッポン放送騒動と、(楽天が主役だった)TBS問題の裏でうごめいた皆様の動きを主にレポートしている。
 フジテレビの日枝会長やニッポン放送の亀渕社長のような当時からキーマンとして注目されていた人の他、リーマン・ブラザーズ在日代表の桂木氏や、MSCB発行に関する仲介を行ったワイエスビジテック社の山崎氏といった、当時知ることができなかった人々の動向についても述べられている点は参考になる。一方で、株式市場の動向に関する記載は極めて少なく、この点は、株式市場参加者の立場からすれば、やや不満が残るところになると思われる。
 なお、MSCBについては発行時の熊谷氏の考えやリーマン等との折衝について述べられているだけで、貸し株の動向や株式市場への影響についてはほとんど述べられていない。本書中で、MSCBとは別件の事項について、大量保有報告書を引用して語っているところがあるので、大量保有報告書の存在は(当たり前だが)知っていたはずである。ここはつっこんでほしかったねぇ。

 また、堀江氏らの逮捕容疑となった自社株関連についても記載がある(第7章)が、こちらについては新聞で連日報じられた内容とさほど変わらないように思える。せいぜい、金額や関わった人間の名前がはっきりしたことくらいか。

 あと、自社株関連の章の後半で、検察が偏った情報を流した的記述を行い、「国策捜査」との見出しも掲げているが、この認識には自分は同意できない。
 どういう形であれ、自社株の売却収入を売上として計上することは、絶対にやってはならないことであると自分は思うからねぇ。刑事訴訟で本件に関する有罪・無罪のいずれの判決が下るかも問題ではあるが、そういう手法を用いたことそのものが(少なくとも投資家の視点から見た場合は)企業として大問題なのである。となると、その証拠をつかんだというのなら、捜査を行うことが当然であると主張する次第である・・・検察がライブドアに不快感をもっていたかどうかなど問題ではない。


 本書は、ライブドアとその周辺のみなさんが表と裏でどんなことをやっていたか、ということをまとめた本としては悪くないと思う。しかしながら、「検証」という部分においては、踏み込みが足りないと言うか、客観性が少し落ちるというか、なんというか、まあ、普段の朝日新聞のような印象を受ける次第である。

 ライブドア事件に関する「検証」ではなく「読み物」が欲しい人には、ちょうど良い一冊なのではないかと考えるところである。
 
posted by こみけ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月21日

【書評】仕手の現場の仕掛け人 真実の告白

 株式市場に関わるすべての人が何らかの形で影響を受けたことがあるであろう「仕手筋」。しかしながら、その実体は表に出ることはあまりない。むしろ、表に出ないことでその存在感を増し、例え自らが動かなくとも様々な思惑を振りまいているものである。
 本書「仕手の現場の仕掛け人 真実の告白  松本弘樹 著 (ダイヤモンド社)」は、仕手筋そのものではないものの、仕手筋のかなり近くに身を置き、十数年にわたり証券・金融業界を生き延びてきた著者による、仕手筋のあれこれを描いた本である。


 本書が面白いのは、著者が「仕手筋」の範囲をかなり広くとらえて、それぞれに論評を加えている点である。たとえば、一部のアナリストやファンドマネージャー、機関投資家といった人々も、仕手筋としての面を持つと著者は主張している。
 一般的(?)な仕手筋は自分のところから徐々に情報を流し、最終的には個人投資家に高値掴みさせて売り抜けるが、上記職業の人々が加わった場合、最終的なはめ込み先は機関投資家やファンドマネージャーが運用している投資信託であるという。あり得る話だ。それに対する見返りなんかも、「おそらくは事実だろうな〜」とうなずけるだけの解説がなされており、興味深く見ることができる。

 また、ライブドアの堀江前社長がやったことを、堀江前社長を投資家、あるいは仕手筋と見なして解説していたのは実に面白い。確かに、経営者として株価の上げ材料を自ら出していたわけだから、最強だあねぇ。
 対比事例として、自分が駆け出しの頃に遭遇したイタリヤード破産の事例を挙げてくれているので、両者を見比べると実に理解しやすくなっている。

 さらに、最近の仕手筋の悩みとして、個人投資家が掲示板にあること無いこと書き込んで、相場をかく乱するようになったことを挙げているのは興味深い。特にそのような書き込みが多いのは、ヤフー掲示板や2ちゃんねるだと思われるが、まあ確かにいろんなことが書かれているものである(笑)。自分としては、こういった書き込みで株価が上下することはほとんどないと思っていたのだが、無視はできないようだねぇ。まあ、自分は無視するけど。
 なお、余談ではあるが、時折これらの掲示板への書き込みに当HPのMSCB関連の記事が引用され、売り煽りや、時には買い煽りのネタとされていることを確認している。結構見ていて面白いこともあるし、自分とは違った視点で見ている場合もあり、参考になることも多い。もちろん、役に立たなかったり見当違いのことを語っている書き込みも少なくないわけだが。

 話を戻す。本書で挙げられている多くの事例は「多分そうなんだろうな〜」と思える記述がかなりの割合を占めるのであるが、ITバブルに関する記述はちょいと大げさすぎるのではないかと思ったりした。
 当時、仕手戦的な動きがあったのは確かだと思うが、それ自体がITバブルの膨張の原因ではないと思うのだが・・・。ただ、自分は当時まだ株式市場に参入していなかったから、本当のところどうなのかは何とも言えないところではある。
 この他にも、ちょいと仕手筋の影響を過大視しているかな〜という箇所は何ヶ所かに見られる。もっとも、本のテーマが仕手筋なわけだから、許容範囲のような気もするが。

 そうそう、本書の第5章で私募CB、あるいはMSCBを用いた仕手戦に関する記述がある。MSCBの生い立ちや90年代の事例、それに当時の東証の反応については自分はわからないので何とも言えない。
 MSCB等を用いて、仕手筋が儲ける手法については本書中の記述の通りだと思う・・・MSCBについては、本書通りの手法でさばかれることは多くはないと思うが、第三者割当増資についてはかなりの事例が該当すると思われる。ただ、貸し株の空売りに関する記載が無いのはちょいと意外である。仕手筋もやっていると思うのだが。
 あと、MSCBだと確実に儲かったので、仕手筋のみなさんも怠けたというのには笑った。たぶん、証券会社で引き受けた場合もそうなんだろうねぇ。


 本書は、読んだとしても株取引の利益を増やせる情報が書かれた本ではない。
 しかしながら、それ以上に重要な、大損しないために抑えておくべき注意事項が多数示されている、大変有用な一冊であると考える次第である。
 
posted by こみけ at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月20日

【書評】ロト6で3億2千万円当てた男の悲劇

 今回紹介する書籍「ロト6で3億2千万円当てた男の悲劇」は、自分としては資産運用を考える上で役に立つかな〜という想いで買うことにしたので、いつものように書店の(資産運用関連の本が置かれている)ビジネス書コーナーを探したのだが全く見つからなかった。その後あちこち探し回った末、ギャンブル関連本のコーナーで見つけ、ようやく購入した。
 もちろん、書店の分別の方が正しく、自分の方が見当違いだったのである。記事も、本書の内容とはかけ離れている部分があるので、そこら辺はあらかじめご了承いただきたい。

 本書は、三十代後半の零細企業サラリーマン(年収320万、独身)がロト6(宝くじ)で3億2千万円当ててしまってからのあれこれを日記形式で描いた本である。というか、こちらのブログ「ロト6成金のセレブな私生活」さんとほぼ同じ内容だから、ブログを直接見た方がよいかもしれない。本では4月までしか記載されていないけど、ブログは連日更新されているし。
 なお、本当に著者はロト6で3億円当てたのか、という点についても疑われていたりしているようなのだが(参考リンク)、とりあえず本記事には関係ないので無視する。

 んで、本の内容というか、当選後のセレブな私生活(=当選金の使い道)なのだが、読んでいただければわかるとおり、無駄金を使っているとしか思えない。
 金目当てとしか思えない女に貢いでしまったりとか、株の信用取引を行い、ライブドア・ショックでたたき落とされ1億円以上の損を出したりとか、著者が大金に振り回されているとしか言いようがない。この辺、著者は題名にもつけているように「悲劇」としているようであるが、何のことはない、「自滅」といって差し支えないと思う・・・ただ、分不相応な大金を持って、それを浪費してしまったという意味では悲劇といえなくもない。あと、心理的にもだいぶ荒んでいるようにも思えた。
 まあ、いずれにしろ、参考にしてはいけない例といえそうである。というか、こんなのセレブじゃない(笑)。

 さて、ここからが重要で、ひとしきり著者の金遣いを嘲笑した後、「じゃあ自分ならどう使うか」ということを考えると、著者の使い方をそう笑ってもいられないと感じたのである。
 ほとんどの人にとっては、3億円という金額は、現在保有している金融資産よりも1〜3桁大きい数値であろう(自分は2桁)。しかし、4〜50台でのヤングリタイヤを本当に実現するためには、このくらいの資産は必要であると思われる・・・むしろ、全く足りないかもしれない。従って、将来的に、この程度の資産を保有・運用することは考えておいて損はないと考える次第である。それに、しっかり運用を続ければ、到達不可能な額ではないと信じている。
 んで、いざ自分が3億円を得たとして、著者がやってしまったように女に貢ぐのはもちろんだめ、著者が銀行関係者のお医者さん?から指摘されたように、(分不相応な)車を買うのも自宅を買うのも危険の兆候、仕事を辞めたら破滅の第一歩、となると、果たして何につぎ込むべきか。
 株をもっと買う、という考えにたどり着く人は多いと思うが、投入金額が多くなると通用しなくなる手法も多い。特に、デイトレードの場合などは流動性が問題になるはずである。板一枚分お買いあげなんて取引を毎回やっていたら、デイトレードで継続して利益を出すのは困難だろうからねぇ。
 現在自分が行っている売買手法についても、投入金額の限界というのはある程度想定している。現物買いの方は数週間〜数ヶ月保有持続する手法を採用していることもあり、1億円程度までは問題なく運用できると見ているが、信用売りは、新興銘柄を主に狙っていることもあり、複数銘柄に分散させたとしても1〜2千万円が限界と見ている。
 今後この水準に達したとき、どのような戦術を採るかというのは結構な悩み事である。今のところ、売りについては、日経平均先物のヘッジ売りや、信用売り対象に新興市場の流動性の高い銘柄や、東証一部の銘柄を加えたりすることを想定しているが、実際のところはやってみないと何ともいえない。
 また、他の投資手法では債券、FX、商品先物がとりあえず考えられるが、これは株式とはまた違った技術が必要になる。不動産に至っては、そもそも全く経験がないから、一から勉強と言うことになる。あるいは、現段階での自分では想像できないようなセレブな?運用方法があるのかもしれない・・・まだ揉めているらしき平成電電匿名組合的なものを除いて。
 実際には、試行錯誤を繰り返しつつ経験を積んでいくとしかないと思われるところであるがねぇ・・・資産だって、そう急激に増えることもないだろうから。

 将来、自分も大金を運用する状況になったときに、もう少しうまいやりかたができるようになっておかなければならないな〜という問題意識をもてるとしたら、本書は十分値段分の価値を果たすと思われる。

 もっとも、著者はそんなこと意図してないように思えるがねぇ(笑)。
 
posted by こみけ at 00:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月06日

【書評】メイド式@株支援 moemoe萌株

 先日、Amazonより自分の元へ以下のようなメールが届いた↓。

こういう営業が行われているとは知らなかった

 ・・・どうやら、以前書評を行った「株でいこう! お兄ちゃん ネット・トレーディングしよっ」がらみで送られてきたようだが、これは明らかに自分への挑戦状である。ここで退いたら負けのような気がする・・・何に負けるのかはよく分からないが。
 ・・・と、言うわけで、Amazonに乗せられる形で本書「メイド式@株支援 moemoe萌株」を購入し読んでみたので、以下に書評を述べてみる。

 なお、本書の購入費用には当HPのアフィリエイト収入を充てさせていただきました。書籍等をお買い上げ下さいました皆様に御礼申し上げます。


 さて、本書は、会社社長の父親から株式投資を学ぶよう命じられた社長令嬢(主人公)に、口座開設・投資理論・銘柄分析など、それぞれの分野を担当するお付きのメイドさんたちが順次レクチャーしていくという流れで進んでいく。
 メイドさんの講義は、書名にもあるとおり、「萌え株」を例として行われる・・・例えばガンダムとか。と言うか主人公の選択肢は萌え株しかないという設定になっているらしく、メイドさんたちのお話もすべてそれを前提としたお話になっている。
 したがって、そこら辺についていけない人には全くついていけないと思われる・・・と言うか自分もあんまりついていけなかった。
 あと、枠外に豆知識らしきものもあるが、これは2ちゃんねるのノリに対応できる人でないと醒めた目で見てしまうと思う。・・・この辺は、商業誌でなくむしろ同人誌のノリに近いと思われる・・・まあ、この辺は好き好きだと思う。

 一方、気になった点として、本書にはちぐはぐなところが多いことが挙げられる。例えば、IPOに関する解説が載っているのに、東証と新興三市場の違いについて述べていなかったり、指値注文と成行注文の違いについてちょっとだけ述べたあとにいきなり自動売買の話に飛ぶなど、段階を踏んだ説明がなされておらず、本書を読んだだけでは株式取引に関する何かを学べるようにはできていないように思えるのである。
 まあ、本書が株式取引に関する入門書や参考書ではないというなら自分の主張が見当違いなのだが、それでは何の本なんだろう?

 また、本書には株式投資書籍(特に初心者向け)としてはいくつかの問題点が挙げられる。以下にいくつか挙げてみると・・・

・株主優待が本書の主題の一つであるのは間違いないと思う。だが、低単位株価で株主優待を得られる銘柄の例として21LADY(3346)を挙げるのはいかがなものか。名証セントレックス銘柄は明らかに初心者向けではないはずである。
・一株指標がヤフーファイナンスで見られることを紹介しているが、ヤフーファイナンスは一株指標算出のベースとなる株式数・BPSなどの更新が遅く、指標が不正確なことが多いため、あてにするのは極めて危険である。したがって、初心者には推奨するべきではないと考える。QUICKではだめなのかねぇ。
・ゴールデンクロス時の移動平均線はあんな交わり方はしない・・・簡略化するにも限度があると思うのだが。

 などなど、初心者が鵜呑みにすると問題が起きかねない個所がいくつも見られる。
 と言うか、本書ではカブドットコムで口座開設した場合を例に取り話を進めているのだから、チャート・指標についてもカブドットコムで見る場合について書けばよかったと思うのだがねぇ。


 ・・・と、言うこともあり、本書については、やや厳しい書評になるが、「初心者向けの株式参考書としては明らかに不適切な代物であり、株の初心者(登場人物のみなさん)が株のうんちくを語っている漫画と見なすのが妥当ではないか」と総括するところである。
 ゲーム関連書籍の分類で言えば、ガイドブックではなくファンブックに分類される代物だと思われる。

posted by こみけ at 01:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月29日

昨年末に買った株本をちょっと紹介

 昨年末、ライブドアの株主総会に行ったついでに紀伊國屋書店の新宿本店で株本を何冊か買ってきた。結構読むのに時間がかかったが、どうにか一通り読んだので簡単に本の紹介などをやってみようと思う。今回は全部で4冊である。

・当ブログのおすすめ書籍に追加

投資の王道 実践編 日経平均オプション取引  新井邦宏 著 (日経BP)

 本書は、日経平均(225)オプション取引の方法や価格決定の仕組み、基本戦術、合成ポジションなど、オプション取引を始めるに当たって学んでおくべき初歩的な知識・戦術が一通り網羅された本である。特に、コールとプットを両方買う「ロング・ストラングル」という戦術は大変役に立ちそうである。
 ・・・ていうか、自分は昨年はこれくらいの知識も身につけずに取引を行っていたと言うことであるから、負けて当然だったねぇ_| ̄|●。
 日経平均オプション取引を行いたいと思っている人には、取引開始前、あるいは一度取引を行った後、本書をお読みになることをおすすめしたいところである。


・自分の部屋の本棚に領土確保

オルタナティブ投資入門 ヘッジファンドのすべて  山内英貴 著 (東洋経済新報社)

 本書は主に米国のヘッジファンド事情について、その発祥、資金の出し手、運用手法、さらには評価方法など一通りを網羅した本である。おそらくは広く知られていることなのだろうけれども、資金の出し手に大学があったりすることや、運用評価においては(損失だけでなく)想定外に大きいリターンも問題視されうることなど、ヘッジファンドにあまり馴染みのない自分にとっては興味深い点がいくつもあった。
 また、ヘッジファンドがらみで発生した、LTCM破綻やプリンストン債問題などの事件についても詳しく紹介されており、ヘッジファンドの戦略や悩みについて垣間見ることができる。特に自分にとって参考になったのは、流動性の問題があちこちで述べられていることである。この点については、(自分のような)あまり大きくない額での株式運用の場合はさして気にならないが、ヘッジファンドのような大きい金額での運用の場合は大変な問題であるということで、投資手法ごとに流動性の影響が述べられている。思えば、先日の「ライブドア・ショック」の際の日経平均一時700円安も、東証閉鎖の危機が迫り、保有株式が換金不能に陥る危険性が出てきたことによるものであったから、これも流動性の問題であったと言えるだろう。この辺の視点が持てたことは大変有意義だった。
 ただ、本書は「入門」と題しつつも、ある程度の金融知識を持っている読者を想定しているのか、書中の用語で自分が分からないものがいくつかあった。文脈からおおよそは意味が分かるのだが、全部理解しようとしたらかなり骨が折れそうなところである。

 なお、本書の「CBアービトラージ」の項で、米国におけるMSCB事情について触れられており、MSCBが「デス・スパイラル」とも呼ばれていること、発行者が資金調達に苦しむバイオ産業等であることが紹介されている。ただ、MSCBに関する記述はわずか5行にとどまっているのが残念。


ラリー・ウィリアムズの株式必勝法  ラリー・ウィリアムズ 著 長尾慎太郎 監修(パンローリング)

 本書は、「株を買うのに適した年」から「ダウ構成銘柄のうちどんな銘柄を買えばリターンが大きくなる傾向があるか」と言ったところまで、多様な投資手法について述べられた書籍である。
 本書の内容はPERをはじめとする指標の解説や株価と金利の関係など、基本的なものである。ただ、それだけに、じっくり腰を据えて(さして高度でもない)分析を行えば、それ相応のリターンを上げられそうな手法について述べられており、役に立ちそうな一冊である。だが、それ以上に重要であると思えるのは、随所にちりばめられている警句 −「急騰株を追いかけるな」「リスクを取りすぎるな」「現実を見ろ」等− である。ライブドアが墜ちたといえども新興市場には極めて割高と考えられる銘柄が多数存在しており、こういった銘柄については現実をふまえた対応をしたいところである。
 バリュー株投資を考えられている方には特にお薦めの一冊である。


・ブックオフ行き

機関投資家に学ぶ デイトレーダーをカモにする株式投資戦略  中丸 友一郎 著 (ダイヤモンド社)

 ざっと読み流した結果、「この著者は自分でリスクを取って運用した経験がないんだろうな〜」と感じた。真相は不明だけど。まあ、紙かシミュレーターの上では正しい戦略ですな。
 是非ご自分で運用して、自称「スマートマネー」とやらのパフォーマンスの高さを立証して頂きたいものである。
 ブックオフに売却、引き取り値150円也。


 ・・・あと、株本ではないけど、「文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの」も面白かったのでおすすめしてみるところである。特に、グリーンランドのバイキング入植地崩壊の話は大変面白かった。
posted by こみけ at 23:06| Comment(0) | TrackBack(1) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月07日

【書評】株でいこう! お兄ちゃん ネット・トレーディングしよっ

 ここ数年、株式投資を新規に始めようとする人がずいぶん増え、かつ、ネット証券をはじめとする証券会社は新規参入者の取り込みに全力を尽くしている。そんな状況で、かつては無味乾燥としたものがほとんどであった、株式に関する書籍も様変わりし、紙面がカラーなのは当然として、図表や写真、イラストをふんだんに使うだけにとどまらず、タレントが解説を行う本や、果ては漫画の解説本まで出版されている。多分、それはとても良いことなのだと思う。株式投資は敷居が高いという思い込みを和らげるのにそれらの書籍が役に立てば、株式投資を行う人も増えるし、市場も活性化するのは確かだからである(ただし、株は簡単に儲かるなどと煽る本は問題あり)。
 かくいう当HPも、プレスリリースをはじめとする文章だけではわかりづらい、MSCB(や新株予約権)と言うものに関する考察を、図面を用いて行うことにより、なるべくわかりやすく説明しようと試みている記事が主力記事の一角となっており、読んで下さる方も多いようで、大変ありがたいことである。

 前置きが長くなったが、今回紹介する書籍「株でいこう! お兄ちゃん ネット・トレーディングしよっ」も、これらの書籍等のように、株式というものをなるべくわかりやすく解説するべく、「株」を「妹」に置き換えて解説を進めていく書籍である(公式サイト)。
 ・・・当ブログをお読みの方のうちどれだけがこの発想の転換についていけるのだろうか・・・自分もこの突っ走り具合についていくのに苦労したんですよ、ええ。

 本書は、光太郎という青年が株式投資をスタートするところから始まる物語形式となっている。証券会社に口座を開設するところから、チャートの見方、株主優待の話など、一通りの流れが書かれているので株式投資が全く初めて、と言う人でも大丈夫な構成となっているとなっている。本書の傾向としては、株主優待等についてもかなりの紙面をさいているが、どちらかと言えば、短期投資に重点を置いた内容であるように感じる。無論、それらを説明する部分についても、「株」が「妹」に置き換わっており、イラストのみならず文章においても株ではなく妹であることを前提とした表現になっているのである。
 ・・・本書は本の流れを話してもつまらないので、以下に自分が突っ込みたい場所を列記してみた。なお、本書中の表現等を引用した個所を赤字で示す。こんなの自分には発想できないって。


議決権の説明をジャージ派とブルマ派の争いということで済ませるっていいのかそれで。ライブドア株主総会での我々配当賛成派はジャージ派ですか。どうせだったらスパッツ派にしてくれた方がいいのに。
非上場企業(の株)が箱入り娘かつ美少女であるように描かれているが、上場基準をクリアした企業のみが株式を上場できるという点を考慮すれば、この表現は間違っている。
大証の妹がたこ焼きなのはいいから福証の妹がふんどしな理由を説明してくれ。
・IPOが初心者の関心事であるのは間違いない、だが段ボールの中に全裸の妹が眠っている描写というのはどうなのか。実際に行動を観察できる既上場株と比べてどんな中身かわかりづらいと言うことを表現しているとすれば、概ね正しい表現のような気がするのだが、本当にその表現でいいのだろうか。
・決算発表については極めて重要な説明事項であるのは間違いなく、それを通信簿、と表現するのは妥当である。が、妹が通信簿を差し出しつつ「お兄ちゃん、私、がんばったんだよ・・・。」と言うのは余計だ。しかも微妙に顔が赤いし。
・「日経四姉妹」って、本書の設定的にはどこまでが姉でどこからが妹ですか。あと長女が御年130歳になりますがいいんですか。
・すいません、自分も何十冊も株の本を読んできましたがローソク足(陽線)を「白い生足」と形容した書籍は初めてです。
・フジテレビvsライブドアのところの「株式の取得と議決権の関係」は描写がえぐすぎると思う。事実だけど。法人に人権はないってことだねぇ。
「クラウン・ジュエル」の解説として「あんなお兄ちゃんの妹になるなら〜!!」と言って妹が自らの服を破る描写を示すのは極めて正しいものであると思うが、本当にいいのかそれで。ていうか、その流れで行くと堀江社長は親子丼を欲したことになりませんか。大丈夫なんですかそれで。
・巻末の用語集の「妹」の項。「いたずらっ子で言うことを聞いてくれないところがかえって愛おしかったりする」って言うのは一つの真理だと思う。ところで、そのいたずらっ子の代表格はドリームテクノロジーズ(4840)ですか、それともサンライズ・テクノロジー(4830)ですか。
・巻末の用語集の「ストックオプション」の項。そのイラストは何をどう考えても該当人物が一人しかいませんが。


 ・・・と、色々突っ込ませていただいたが、参考資料としてみれば、イラスト等でわかりやすく、かつ一通り株式のことを説明している書籍であると見なすことができると思う。資料集としては並の初心者向けの本よりもはるかに充実しているので、他に1、2冊初心者向きの本を買い、その本で分かりにくい点があったら本書を参照する、と言う使い方が効果的であると思う。ていうか、最初から最後までいっぺんに本書を読み切れる人はあまりいないと思う。

 もっとも、そもそも本書を生理的に受け付けない人もかなりいそうである・・・その辺は、人それぞれと言うことで。色物本としてではなく、純粋に株式入門の書籍として見てもかなり充実している点については認めるが、万人向けではないのもまた確かなところである。少なくとも電車で読める本ではありませぬ(笑)。
posted by こみけ at 23:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月23日

【書評】なぜ利益を上げている企業への投資が失敗するのか

 市況が自分にとっては_| ̄|●なのもあるが、たまには読んでいる本の紹介もと言うことで、投資関連や経済全般、マネープランに関する本も紹介してみようと思う。
 本日は、「なぜ利益を上げている企業への投資が失敗するのか ヒューエット・ハイゼルマンジュニア 著、長尾慎太郎 監修(パンローリング)」を取り上げてみる。

 本書では、企業が開示する決算書類はその企業の実態を必ずしも正確には現していないとして、それを鵜呑みにして投資することに疑問を投げかけている。書中で問題例として挙げているのは、ITバブルの最中急上昇し、その後、粉飾決算発覚の末破綻した米ワールドコム、エンロン等である。筆者に言わせれば、これらの銘柄においては、粉飾発覚前の財務諸表からであっても、危険を探知することは十分可能であったそうである。
 日本でも、決算発表の際は事業が順調に伸展しているという話だったのに、ある日突然特別損失が出たり増資が行われて株価が急落することが良くあるのは皆様ご承知の通りであるから、これを事前に探知し回避するのは重要である。

 このような問題に対し、本書では、企業が開示する決算書類(本書では発生主義的損益計算書)に加え、「防衛的損益計算書」「積極的損益計算書」の二つの損益計算書を作成し、これら三つの損益が良好な企業こそを選ぶべきであると主張している。
 「防衛的損益計算書」においては、主に企業が無駄遣いをしていないかを調べることとなる。将来利益をもたらすかどうかわからない資産が増えた場合には、それをあらかじめ費用計上して評価を行うべきとしている。
 また、「積極的損益計算書」においては、将来に向けた投資については費用ではなく資産計上する一方で、過剰資本を抱えている企業については一定のマイナス評価を行うべきであるとしている。

 自分としては、これらのうち、「防衛的損益計算書」をバリュー株投資の際の判断基準として高く評価する。いくらPERやPBRで割安感が出ていたとしても、バランスシートを見れば危険なにおいがする銘柄も結構あるわけで、そういう銘柄をつかまないための足切り基準として大変有効であると考えるところである。
posted by こみけ at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする