2006年01月31日

東洋経済2月4日号のMSCB関連の記事を読んだ感想と言うかつっこみ

 既にご覧になられた方もいらっしゃると思うが、昨日発売の東洋経済2月4日号でライブドア・ショックへの取材記事が掲載されている。それだけなら当ブログ的には無関心なところではあるが、何かMSCBの事も色々書いてあったので買ってしまった。んで、読んで色々思うところがあったので主にMSCBの部分について感想というかつっこみを書いてみる。
 なお、以下の文中で記事より引用したところは『』でくくってあるのでご了承を。

 さて、まず今回の記事を読むに当たっては、記事が伝えようとするところが、「ライブドアはどうやってお金を稼いでいたのか」という点であることを留意する必要があると思う。すなわち、MSCBが株価に与える影響とか希薄化などは二の次というか軽視されていて、引き受け手(主にライブドア)がどのようなやり方で荒稼ぎしているか、と言う点に重点が置かれている。
 そういう観点で書かれているので、35ページのように、『MSCBは株価が上がった方が実はおいしい』という見解が出てきたりする。それが嘘ではないのも確かだが、既存株主、あるいは投資を考えている一般投資家の観点からすると、転換価額の下方修正により一株価値が希薄化されることや、株価下落を狙い大量に行われ、返済は転換価額下方修正後に現渡しにより行われる空売りがMSCBのもっとも恐ろしい点であって、株価が上昇するというのであれば、少なくとも既存株主的にはさして問題とも思えないところである。まあ、株式市場的には問題があるのは確かだが。というか、株価が上がったらおいしいという観点でやるんだったら(転換価額修正条項の無い)普通のCBでいいだろうに。

 一番のつっこみ所は44ページの『主なMSCB発行企業一覧』である。この表の作成基準がえらく曖昧であって、本来入るはずである企業が抜けていたり、金額(調達額)が違っているように思えるのである。
 まず、アーティストハウスホールディングス(3716)やジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)がランクイン?しており、この2社の調達額を見ると、両者が発行した行使価額修正条項付きの新株予約権でもってランクイン?させていることが分かる。おそらくは、『新手のMSCB』とはこの新株予約権のことを指しているのであろう。が、新株予約権もMSCB発行企業、または調達額に含めるとなると、あちこちでおかしい点が出てくるのである。例えば、表の場合、ダイナシティの調達額は200億円となっているが、これはMSCB分のみであって、新株予約権で調達するはずの200億円が抜けているのである。ここは本来400億円とするべきではないだろうか。また、インプレス・ホールディングス(9479)は昨年11月に総額100億円の行使価額修正条項付きの新株予約権を発行している(プレスリリース)のだが、これに関する記載がない。インプレスは『主な会社』には含まれないのだろうか。
 さらに、YOZAN(6830)のMSCB発行額は120億円(第2回、第3回MSCBのことと考えられる)となっているが、YOZANはこれの前に、70億円のMSCBを発行している(プレスリリース)のため、総額は少なくとも190億円となるはずである。いすゞ自動車(7202)のMSCBによる調達額1300億円が2回(300億、1000億)に分けたものであると考えると、最近の1回分、と言うわけでもなさそうなところである。
 ・・・と、言うわけで、本表についてはあんまりあてにしない方がいいんじゃないか的主張をさせていただくところである。と言うか、ダイナシティの件、何で気づかなかったんだろうねぇ。


あと、以下は細々としたつっこみ。

・転換価額が下方修正しかされない場合を『ラチェット条項』と書いているが、はじめて聞いた。最近出てきたんだろうか。
・33ページ、『企業再生を促すための新たな資金調達手法=MSCB』という表現は少しポジティブに過ぎないだろうか。「他の手段では資金調達が困難な企業が選択する資金調達手段」とかそのくらいが妥当だと思っているのだが・・・44ページに挙げられているような第三者割当増資とかは、株価下落とかそれ以前に、引き受け手がいやがって選択肢に浮かばないと思うのだよねぇ。
・44ページ、『ダイリューションが起きにくいMSCB』って、プライムシステム(現サンライズ・テクノロジー(4830))で何が起きたかを知っての上で書いているんだろうか。まあ、極端な事例ではあるが。
・49ページの『新株予約権は行使の時期や・・・(中略)・・・引き受け手には有利と言える』という指摘は大変良いと思う。新株予約権をMSCBよりも良い資金調達手法だと主張する発行企業もあるからねぇ。


 ・・・と、いろいろつっこませていただいたが、まあ、「ライブドアをはじめとする『株式市場の歪み』」と言う構図での記事だから、株式市場で日々行われる熱き戦いと言うストーリーの中に、MSCBのお話も入っている、と言う感じで読めばさほど違和感無く読めるのではないかと思えるところである。でも、44ページの表はしっかり調べて欲しかったねぇ。返す返すも、ここは残念である。
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2006年01月21日

YOZAN(6830)、ライブドアにMSCBの第三者への譲渡を要請

 20日、YOZAN(6830)がライブドアに対し、ライブドアファイナンスが保有する60億円のMSCBを、自社(YOZAN)が指定する第三者に譲渡するよう交渉していることを発表した。プレスリリースはこちら。また、これを報じる日経の記事はこちら

 「60億円のMSCB」とは、昨年8月に発行され、ライブドアグループが引き受けた第2回・第3回MSCB(本MSCBに対する当HPの考察記事)のうち、第3回MSCB全額を指していると考えられ(第2回MSCBは全額転換済)、YOZANはライブドアグループが保有する全MSCBの譲渡を要請したことになる。

 MSCBの第三者への転売というのは時々あるらしく、EDINETで確認できる比較的最近の事例では、インターネット総合研究所(4741)が昨年8月にUBS証券に対して発行したMSCB110億円のうち、半分以上に当たる60億円分が発行翌日にスタンフィールド・フィナンシャル・インクに転売された事例がある(本事例に関する当ブログの記事)。
 ただ、インターネット総合研究所の事例では、引き受け手が自らの判断で第三者への転売を行っており、発行者(今回の場合はYOZAN)が引き受け手に対して、第三者への譲渡を申し入れるという事例は聞いたことがない。この辺に、YOZANがものすごい勢いでライブドアグループから離れようとしている様がありありと見えるのである。悲惨。
 一方で、YOZANに繰上償還を行うだけの資金がないことも容易に推測でき、こちらに関しても悲惨と言えそうである。

 さて、自分が本件で関心があるのは、YOZANがライブドアにMSCBを手放すことを申し入れたことではない。交渉の結果、ライブドアがMSCBを手放すことに同意した場合、それを引き取ってくれる第三者というのは誰なのか、という点なのである。
 まあ、皆様も、こういう場面に出てきても全く違和感が無い人を約1名ご存じかと思うが、果たしてその人が存亡の危機に直面しているYOZANに手出しするつもりかと考えると、やや疑問な所なのである。まあそういう場面で過去何度も出てきているわけだが。ただ、ライブドアグループにこれだけ注目が集まっていることを考えると、動きづらいと思うねぇ。

 ていうか、本当にMSCBを引き取ってくれる第三者がいるのだろうか、ということ自体もちょいと疑ってみたいところであったりする。
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2006年01月14日

アドテックス(6739)のMSCB

 10日、CBの繰上償還請求に応じることができず監理ポスト入りしているアドテックス(6739)が、償還資金調達を主な目的とした総額約75億円のMSCB及び28万株分相当の新株予約権を発行した。プレスリリースはこちら(第2回MSCB第3回MSCB及び新株予約権)。
 本MSCBにおいては、アドテックスの厳しい経営状況を背景に、ここしばらくなかった極めて厳しい転換価額修正条項が定められている。まずはそれについて説明した上で、本MSCBに関する個人的な考えを何点か主張させていただくこととする。

〜プラシスの再来 概要〜


 本MSCBにおいては、第2回及び第3回で発行額や発行日が異なっているが、転換価額修正条項については行使請求期間(発行日翌日から)が異なるだけであるので、ここでは第2回を例に取り説明する。

 本MSCBの当初転換価額は6,730円と定められている。上限転換価額については、本MSCBにおいては、転換価額の修正は後に説明するとおり下方修正のみであり、上方修正は行われないため定められていない。あえて言うならば、当初転換価額の6,730円が上限転換価額であると言うことができる。一方で、下限転換価額も定められていないが、こちらについては、株価が下落すれば転換価額はどこまでも下方修正されることを意味している。あえて言うならば1円が下限となるが、将来、株式の併合を行った後さらに株価が下落すれば、1円未満となることもあり得るのである。
 転換価額の修正は、前日終値の90%に相当する金額(決定日価額)がその時点の転換価額を下回っていた場合、転換価額は決定日価額へと修正されることに定められている。一方、決定日価額が転換価額を上回っていたとしても、上方修正は行われない。
 すなわち、本MSCBにおいては転換価額は毎日修正(ただし下方修正のみ)であり、株価を10%ディスカウントした値が転換価額に定められる。
 これらをまとめると、図1の通りとなる。

プラシスといっしょ
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要

 なお、本MSCBのように下限転換価額が定められていなかったMSCBとしては、プライムシステム(現サンライズ・テクノロジー(4830))が発行したMSCBが前例として挙げられ、それからしばらくして、1000株→1株の株式併合を行った同社の株価が現在どんな感じであるかは皆様ご承知の通りである。
 プライムシステムのMSCBについて興味がある方は、EDINETにて、サンライズ・テクノロジーの03年頃の有価証券届出書を探すと、今回アドテックスが発行したMSCBによく似た条件のMSCBの届出書も出てくるのでご参照下され。

〜本ファイナンスがなければ 主張〜


 本MSCBは上で見たとおり、大変厳しい条件が定められている。だが、自分としては、この条件、大変厳しいものではあるが異常とは言えないと主張するところである。
 そもそも、アドテックスは昨年10月に予定していた第三者割当増資の払込を受けられず、繰上償還請求が行われた転換社債の償還が不可能となっていた。すなわち、債務不履行?と言うことで監理ポスト行きとなっていた(当然)。したがって、このまま資金調達ができなければ、アドテックスは倒産必至な状況だったのである。

 そのような状況下で、エスポワール投資事業組合というか、バーテックスリンクは、MSCBとはいえ資金を出してくれると申し出たのであるから、株主としては喜ぶべきことであると自分としては主張するところである。現に、株価も上昇に転じているわけであるから・・・。ここら辺の構図を調子に乗ってAA(アスキーアート)で表してみるとこんなことになると思う。


 また、下限転換価額が定められていないと言うのは確かに厳しい条件ではあるが、バーテックスリンクの言い分としては↓こんな風になるのではないかと思う。


 いかがだろうか。なお、これらはあくまでも管理人の個人的な考えであることを改めて明示するところである。


 さて、自分が興味を持っているのは、アドテックスが3月に臨時株主総会を開催する際に、授権株式数をどの程度まで拡大するかという点である。原理的には、本MSCBの転換株式数は数十億株にもなりうる可能性もある。そんなことはないと思うけど。
 仮に授権枠をあまり拡大しないでいると、転換価額が大きく下方修正された場合は発行済株式数が授権株式数を上回ってしまう可能性が出てくるのである。そういうとき、どうするのかねぇ。転換を待ってもらって、その間に臨時株主総会を開くというのは時間的に無理だろうし・・・。その辺に注目。

 それ以上に気になるのは、本MSCBの転換により株式数が膨れ上がった場合、かつてのプライムシステム株がそうであったように、ヘラクレスのシステムに負荷を与えてしまうのではないかという点なのである。こうなってしまうと、影響はアドテックスだけにとどまらず、ヘラクレス上場の他銘柄に及ぶおそれもある。大証としても、プライムシステムのような銘柄が再び現れるのはものすごく嫌なはずである。

 本ファイナンス、アドテックスにとってはよいことなのだろうが、株式市場全体から見た場合においては、いろんな意味で異なる見解が出そうなところである。


*本記事で使用したAAは「福本AAWiki」のものを使用させていただきました。文章は双方とも一部修正しております。
*本記事で使用したAAの元ネタは「賭博黙示録カイジ」であります。
*上のAAのHTML版が欲しい方(いないと思うけど)はコメント欄にその旨コメントして下さい。当HP内にUPします。
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2006年01月09日

ドリームテクノロジーズ(4840)の第2回MSCB・第7回新株予約権

 5日、ドリームテクノロジーズ(4840)がかねてより発行を発表していた40億円のMSCBおよび20万株分の新株予約権を発行した。本MSCB・新株予約権発行に関するプレスリリースはこちら
 本MSCBおよび新株予約権は、ダイナシティ(8901)が発行したMSCB及び新株予約権とよく似た転換・行使価額修正条項を有するものの、引き受け手側のライブドアグループにとってさらに有利な方向に発展を遂げた形であると評して良いと考えられるものである。
 今回は、主に本MSCBの転換価額修正条項についてその概要について紹介し、その上で、ライブドアグループが本ファイナンスに関していかなる戦略を練っているか、考察を試みる。

〜下限転換価額は事実上4桁 概要〜


 本MSCB及び新株予約権は、転換・行使価額修正条項については全く同じものとなっているので、以下ではMSCBの場合を例に取り説明していく。
 本MSCBの発行発表時においては、上限・下限転換価額はそれぞれ、「30,400円または基準VWAP(12月30日・1月4日・5日のVWAPの平均値)の低い方」の150%および50%になると定められていた。発行発表後、株価は下落し2万円台後半での推移となったため、上限・下限転換価額は後者の基準VWAPを用いて算出された模様である。5日に発表されたプレスリリースによると、基準VWAPは26,448円だった模様で、上限転換価額は39,672円、下限転換価額は13,224円と定められている(プレスリリース)。
 転換価額の修正が行われる決定日は毎週金曜日と定められており、決定日までの3営業日(通常水・木・金曜日)のVWAP平均の90%を「決定日価額」と定めることにしている。この決定日価額がその時点での(修正前の)転換価額を下回る場合は、転換価額は決定日価額へと下方修正される。従って、転換価額はVWAP平均から10%ディスカウントされることになる。これらを図1に示す。

ディスカウント率10%は標準的
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要

 一方で、転換価額の上方修正については、決定日価額がその時点での転換価額を上回るだけでなく、決定日価額が30,400円を上回らなければ行われないこととされている。決定日価額がこの水準を上回るVWAP平均値は33,778円であるから、株価水準がそれ以上にならない限りは転換価額の上方修正は行われないのである。これについて図2に示す。

33,778円は一大攻防線
図2 本MSCBの転換価額上方修正条項概要

 そして、ダイナシティのMSCBと大きく違うのが、下限転換価額の修正条項が盛り込まれている点である。一般的には、MSCBの上限・下限転換価額は一旦定められると、分割・併合などの場合を除き固定されるものである。しかしながら、本MSCBでは、1回限りではあるが下限転換価額の下方修正が行われる可能性があることが示されている。
以下、図3のような株価推移した場合を例(あくまでも例です)に取り、説明する。

事実上、基準VWAPの35%
図3 本MSCBの下限転換価額修正条項概要

 下限転換価額の下方修正が行われるのは、初めて決定日価額が下限転換価額の13,224円を下回った場合と定められている。言い換えると、(決定日価額の算出に用いられる)VWAP3日平均が14,693円を初めて下回った場合に下限転換価額の下方修正が行われることになる。図3で言うと、6月9日がそれに当たる。下方修正が行われたあとの下限転換価額である修正後下限転換価額は、下限転換価額を30%ディスカウントした9,256円に定められることになる。
 なお、修正後下限転換価額が有効となるのは、決定日価額が下限転換価額を下回った翌決定日以降であると定められているから、修正後下限転換価額が有効となるのは図3においては6月16日からとなる。従って、6月9日の決定日においては、転換価額は下限転換価額である13,224円に定められることとなり、転換価額がそれを下回るのは6月16日以降ということになる。
 なお、ひとたび下限転換価額の修正が行われた場合は、その後株価が回復しても修正後下限転換価額が有効であり続ける模様である。 従って、本MSCBの下限転換価額は、修正後下限転換価額である9,256円であると見なすのが妥当と考えるところである。

〜ドリテクはダイナシティと同じ道を辿るか 考察〜


 さて、本MSCB、新株予約権について考えるにあたり最も興味深いのが、ライブドアはドリームテクノロジーズやその子会社となる予定である平成電電を傘下に収めるべく引き受けを行ったのか、それとも単に利ざやを稼ぐ目的で引き受けたのかという点である。

 これを考える上で参考になるのが、一足先に良く似たMSCBおよび新株予約権の発行を発行を行ったダイナシティ(8901)に関する動向である。ダイナシティの事例においては、ライブドアグループは総額400億円相当のMSCBおよび新株予約権を引き受けただけにとどまらず、創業者一族の保有株式を引き取り筆頭株主になったりもしている。さらに、ダイナシティ次期社長にライブドア取締役の宮内氏が就任予定であり、堀江社長も取締役に就任予定である(プレスリリース)など、ダイナシティについては、MSCBや新株予約権行使で得られる全株を保有し続けるかどうかは別として、ライブドアグループ傘下におさめる意向である可能性はきわめて高いといえる。
 これと比較すると、ドリームテクノロジーズの場合においては、ライブドアはMSCBおよび新株予約権の引き受けを行ったのみであり、現時点では筆頭株主になったわけではない。
 しかしながら、事業のシナジー効果の観点から考慮すると、ライブドアとしては通信事業は是非手に入れたい事業であり、以前ライブドア自身が平成電電のスポンサーとして名乗りを上げたことも報じられている(記事)。また、正直どうなるのかはまったく見当がつかないが、第三者割当増資やCB(MSCBに非ず)を引き受けた村上ファンドから株式を買い取る可能性も考えられる。いずれにしろ、ライブドアが、平成電電を自らの傘下におさめる選択肢を完全に排除しているのは考えにくいところである。

 一つ確かにいえることは、ライブドアグループが引き受けたMSCB・新株予約権は、株価が33,000円台に上昇しなければ転換価額の上方修正はされないということである。つまり、ライブドアとしては、株価水準がこれ以上にならなければ、株価が上昇したとしても得られる株式数は減少しない。
 この特徴を生かし、いつでも大量の株式を得られる権利を手にした状態で、平成電電の再建をじっくり見極めてから動くという可能性もあるのではないかと考えるところである。
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2005年12月17日

ダイナシティ(8901)のMSCB・新株予約権

 8日、ダイナシティ(8901)が200億円のMSCB並びに200億円分相当の新株予約権の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 本ファイナンスの引き受け手はライブドアグループであり、ライブドアグループは本ファイナンスに加え、社長一族の株式の譲渡も受け、ダイナシティと資本・業務提携を行うと言う。今回は、本ファイナンスでライブドアグループが何を企んでいるか、いくつかの可能性について推測を行ってみる。

〜下方修正なら毎週、上方修正は・・・? 概要〜


 本MSCB及び本新株予約権は極めて似た修正条項を持つが、微妙に違うところがあるので両者の違いについてまず説明する。

 本MSCBの転換価額修正条項では、当初転換価額は33,300円、上限転換価額はその110%の36,630円であり、下限転換価額は30%の9,990円と定められている。
 転換価額の修正は、決定日価額を元に行われる。決定日価格は、毎週金曜日(祝日でない場合)に算出され、その金額は、当日までの3取引日のVWAP平均値の90%と定められる。
 例を挙げると、第1回修正日である12月30日には、決定日価額が、

決定日価額=(12月28日のVWAP+29日のVWAP+30日のVWAP)÷3×90%

で与えられる。
 この決定日価額を元にして、転換価額の修正が行われる。

 決定日価額がその時点で有効な(修正前の)転換価額を下回る場合は、転換価額は決定日価額へと下方修正される。これを図示すると図1の通りである。

VWAP3日平均から10%ディスカウント
図1 本MSCBの転換価額(下方)修正条項概要

 一方、転換価額の上方修正についてはこれとは異なる。決定日価額が当初転換価額を上回る場合は、転換価額は決定日価額に上方修正されるが、決定日価額が当初転換価額を下回る場合は、たとえ決定日価額が(修正前の)転換価額を上回ったとしても転換価額の上方修正は行われない。これを図示すると図2の通りである。なお、転換価額が上方修正されるのは、VWAP平均値が33,300÷90%=37,000円以上となる場合である。

37,000円に届かなければ水の泡
図2 本MSCBの転換価額上方修正条項の概要

 以上をまとめると、
・VWAP平均が37,000円以下の場合は転換価額の上方修正は行われない。
・VWAP平均が37,000円以上なら転換価額の上方修正が行われる。
となる。

 新株予約権の行使価額修正条項については、当初行使価額のみがMSCBの当初転換価額と異なる値に定められており、その他の条件は全く同じと言っても良い。本新株予約権の当初行使価額は、MSCBの当初転換価額よりも10%高い36,630円であり、上限行使価額・下限行使価額はMSCBと同じ36,630円及び9,990円である。また、決定日価額の算出方法についてはMSCBと同様である。ここらへんを図示すると、図3の通りとなる。行使価額の下方修正に限って言えば、MSCBの場合と全く同じであると言える。

上限行使価額は当初行使価額の100%
図3 本新株予約権の行使価額修正条項概要


 一方、本新株予約権の当初行使価額はMSCBの当初転換価額よりも高いため、行使価額の上方修正が行われるVWAP平均値も、40,700円以上とMSCBの場合よりも高くなっている。また、上方修正が行われる場合の修正後行使価額は、上限行使価額(=当初行使価額)である36,630円と定められる。
 従って、
・VWAP平均が40,700円以下の場合は行使価額の上方修正は行われない。
・VWAP平均が40,700円以上なら行使価額の上方修正が行われ、行使価額は36,630円に定められる。
と言うことになり、MSCBの場合に比べて上方修正が行われにくい条件であると言える。この辺を狙って当初行使価額を高くしたのかも知れない。

 以上より、今回のMSCBと新株予約権は、ダイナシティの株価が現状の水準に居続ける限り、大きな違いはないと見なすことが出来るのではないかと考えるところである。株価が37,000円を上回る水準にならない限りは、両者の転換・行使価額は常に等しいのである。この水準を上回ってくれば、両者の違いが意味を持ってくるが・・・。

〜ライブドアはどの程度株を欲しいのか 考察〜

 本ファイナンスについて考察するに当たって考慮しなければならないのが、ライブドアグループがMSCB及び新株予約権の他に、経営者一族からダイナシティ株を211,320株(発行済株式総数の21.52%)を買い受けている点である(プレスリリース)。さらに、ライブドアグループから役員派遣を行う予定もあり、プレスリリース記載の通り、資本・業務提携と言って良い内容になっている。
 この上、総額400億円分のMSCB・新株予約権を行使して得られる株式もライブドアグループは手にすることになる。
 以下では、これだけの株式を手に入れて果たしてライブドアグループは何をやりたいのか、と言う点についていくつかの可能性を挙げてみる。

 本ファイナンスにおいて、ライブドアグループが取りうる戦術は大きく分けて以下の3通りが挙げられる。
@経営者一族からの譲渡・MSCB・新株予約権で得た株式を全て売却する。
Aダイナシティを連結子会社または持分法適用会社に組み込める程度の株式を手元に残し、残りは売却する。
B経営者一族からの譲渡・MSCB・新株予約権で得た株式を全て保有続行し、ダイナシティへの支配力を強める。

 このうち、@については単純であり、一般的に良く行われる(そして、かつてリーマン・ブラザーズがライブドアのMSCBで行ったような)利ざや稼ぎを目的としたものと言うことになる。一方で、Bの場合は、ダイナシティをライブドアグループに組み込み、不動産事業への拡大をはかると言うことになる。また、Aの場合はライブドアグループ内に組み込みつつ、投資資金の回収もある程度行う作戦と言うことになる。

 ここら辺を考えるに当たって知っておく必要があるのが、MSCB・新株予約権の権利行使後にライブドアグループはどの程度の株式を得て、その保有比率はどの程度になるかという点である。図4に、MSCB・新株予約権の平均行使価額と、ライブドアグループの保有株式数及び、それがダイナシティ株の発行済株式数に占める比率を示す。なお、ライブドアグループの保有株式数は経営者一族から譲渡された株式とMSCB・新株予約権行使で得られる株式数の合計であり、保有比率算出に用いる発行済株式数は、現在の発行済株式数及び今回のMSCB・新株予約権による増加数、さらに、本年3月に発行された第1回MSCBの未転換分を加えた株式数である。これを数式で表すと以下の通りである。

式が美しくない_| ̄|●

 なお、第1回MSCBの転換で得られる株式数は、残存する15億円分のMSCBが下限転換価額(33,000円)で転換された場合の株式数(45,455株)としている。

上限行使価額でも余裕で過半数
図4 MSCB・新株予約権の平均行使価額とライブドアグループの保有株式数・保有比率の関係

 図4よりわかるように、たとえ全MSCB・新株予約権が上限行使価額で行使されたとしても、ライブドアグループは発行済株式数の60%以上を抑え、平均行使価額が28,146円以下であれば発行済株式数の66.7%を得ることになる。なお、平均行使価額17,879円以下になると、ライブドアグループの保有比率が75%を上回るが、ダイナシティはジャスダック上場であるため(西武鉄道等が上場していた東証とは違い)上場廃止基準に該当することはない。
 また、時価総額を上回るファイナンスを行うから当然と言えば当然なのだが、株式の希薄化は激しいものであり、全MSCB・新株予約権が上限行使価額で行使されたとしても、行使で得られる株式数は109万株と現在の発行済株式数を上回ることになる。

 さて、自分はライブドアグループが@ABいずれの作戦を行うかという点については、Aの可能性が高いと考えている。ライブドア自身の資金的な問題に加え、ライブドアにとってはダイナシティよりもより大きなシナジー効果が得られる可能性が高い提携相手であると言えるYOZAN(6830)のMSCBを引き受け、転換で得た株式を売却つつあることを考えると、少なくとも、全株保有続行というのは考えにくいところである。一方で、創業者一族の株式を譲渡されておきながら全株売り抜けというのも考えにくいところである。一体提携って何だったんだ、と言うことにもなりかねないし。そこを何とも思わないのがライブドアのような気がしないでもないが。
 さらに、ライブドアグループの業績拡大にとっては、ダイナシティの売上規模は魅力的であり、これを連結対象に組み込めるとすれば、連結業績の大幅拡大は確実である。したがって、個人的にはダイナシティを連結子会社に組み込める程度の株式数は残しつつ、残りは売却してある程度の資金回収を図るのではないかと推測する次第である。

 だが、常識にとらわれないのがライブドアの恐ろしいところなので、正直、よくわからないところなのである。それこそがライブドアの魅力であるのだろうがねぇ。



 ・・・本ファイナンスとは直接の関係はないが、日経は本新株予約権に対し、「MSSO」というMSCBと対になる略語を用いている(記事)。おそらくは「Moving Strike Stock Option」の略語であると推測され、日経かどこかの造語であると思われる。今後もこの用語が使われるかどうか興味深く見守りたいところである。

(12月18日 なっきぃさんからのご指摘を頂き、転換・行使価額の上方修正は決定日価額が当初転換価額を上回る場合のみであることを記事に追記し、それに合わせる形で記事全体を修正いたしました)
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2005年11月27日

ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)の新株予約権

 25日、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)(以下JDC)が総額40億円分相当の新株予約権発行を発表した。プレスリリースはこちら。本新株予約権は、最近発行例が増えているMSCBと新株予約権の双方の特徴を持つものであると認識しており、また、本新株予約権は引き受け手の日興シティに取って大変制約の大きい条件が定められていると考えられ、その条件下で日興シティはどのような手法で利益を出そうとしているかについて考察を試みる。

〜終値5日平均から10%ディスカウント・毎週修正型 概要〜

 本新株予約権の行使価額条項では、当初行使価額が121,800円、下限行使価額はその50%の60,900円と定められている。一方、上限行使価額は定められていないため、株価が上昇すれば行使価額はそれに対応して上昇を続けることとなる。また、行使価額は、毎週金曜日(金曜日が祝日の場合は直前の取引日)を決定日とし、決定日までの5連続取引日における終値の平均値の90%と定められている。このことから、本新株予約権の行使価額は毎週修正され、ディスカウント率は10%である。
 例を挙げると、第1回修正日である12月16日には、行使価額は、

行使価額=(12月12日終値+13日終値+14日終値+15日終値+16日終値)÷5×90%

で得られた価額に修正されることになる。これらの概要を図1に示す。

ディスカウント率は10%
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要


 なお、本新株予約権は引き受け手の日興シティが自由に行使できるわけではなく、JDC側が新株予約権の行使を指示し、それから20取引日(≒1ヶ月)以内に日興シティ側が指定された個数の新株予約権行使を行うという仕組みになっている。
 その行使指示であるが、いくつかの状況下ではJDCは行えないことと定められている。そのうちの一つとして、JDCの株価終値が73,080円を下回る場合と定められており、これを図示すると図2のようになる。

行使指示は不可能、予約権行使そのものは可能
図2 株価低迷時の予約権行使指示に関する概要

 なお、株価終値が73,080円を下回った場合に行えないのは、JDCから日興シティへの新株予約権行使指示であり、行使指示が行われた後に株価が下回っても、新株予約権の行使そのものが停止されるわけではない点には注意が必要である。

〜日興シティは如何にして稼ぐか 考察〜

 さて、本新株予約権は、上で考察したように、JDC側の行使指示を受けると20取引日以内に行使する義務を負うなど、日興シティにとってはかなり厳しい制約がつけられていると考えている。本新株予約権とよく似た新株予約権の発行例としては、インプレスホールディングス(9479)の新株予約権が挙げられる(当ブログの考察記事)が、この新株予約権においては、引き受け手のゴールドマン・サックスはインプレスより行使許可を得なければ行使できないが、行使する義務は負っていなかった。それに対して、本新株予約権においては日興シティは行使する義務を負っていると読めるところである。この点を考慮すると、日興シティとしては、一般的なMSCBや新株予約権と比べ、著しく新株予約権の行使の自由度が制限されていると思えるのである。
 しかしながら、日興シティとしても本新株予約権を用いて利益を出さなければいけないわけで、本新株予約権で利益を出すために何かしらの作戦は立てているはずである。以下、この点について考察を行う。

 まず検討したいのは、プレスリリース中に示されている「コミットメントフィー」についてである。
 本新株予約権を用いた資金調達を行うに当たり、JDCと日興シティは新株予約権の行使条件など、かなり細かい(そして日興シティにとっては面倒な)条件を定め、この条件を日興シティ側が守る代償として、JDCが日興シティに手数料を支払うという契約が定められた。この契約が「コミットメントライン」であり、手数料が「コミットメントフィー」であると自分は解釈している(あくまで個人的解釈です)。
 本新株予約権の発行価額が総額2000万円、新株予約権行使時に得られる金額が総額40億円で計40億2000万円となっており、手取概算額がその合計額に等しい40億2000万円となっていることから、この手取概算額はコミットメントフィーが差し引かれた後の額ではなく、手取金の中からコミットメントフィーが日興シティに支払われる(還流される)こととなる。要するに、JDCが実際に手にする資金は、40億2000万円からコミットメントフィーを差し引いた額となるわけである。
 MSCBにおいては、発行手数料は概ね発行額の1%以下であることが多いが、本新株予約権では、日興シティの自由度が低い代償として、これよりやや大きい額の手数料(コミットメントフィー)が支払われる可能性が考えられる所である。

 次に、実際に新株予約権を行使して稼ぐ手法について考察を行う。
 本新株予約権の行使条件として明示されているのは、以下の2点である。
@新株予約権の行使可能額は、一回の行使指示につき最大5億円相当。
A行使指示が出た後、日興シティは20営業日以内に指定された額の新株予約権を行使する義務がある。
 また、プレスリリースには明示されていないが、
B日興シティは、JDC株の空売りをいつでも行える。
C新株予約権行使で得た株式は、必ずしも行使指示期間内に売却する必要はない。
の2点が推測される。
 さらに、個人的な推測として、
D新株予約権の行使指示が出た直後は、需給悪化懸念から株価下落の可能性が高い。
E行使終了が発表された直後は、需給悪化懸念の緩和から株価は上昇に転じることがある。
の2点を挙げたい。

 以上の点について考察を順次行う。
 まず、@Aからは、日興シティがさばくことになる最大株式数がおおよそ推測できる。5億円分の新株予約権を行使した場合、得られる株式数は、当初行使価額で行使した場合は約4100株、25日終値の112,000円から10%ディスカウントした値である100,800円では約4960株となる。これを20取引日で売却するとなると、1取引日平均で200〜250株程度となる。これが多いか少ないかは、その時期のJDC株の売買高次第となりそうである。
 また、これを緩和するために、行使指示が出る前に一定数の株式を空売りすることや、新株予約権行使で得た株式のうち一部は売却を先送りすることもできる。ただし、日興シティは長期保有の意志がないことをプレスリリースにて表明しているため、いずれ売却されるのは確実である。
 空売りを事前に行っていたとしても、行使指示のプレスリリースが出た時点で、株価は需給悪化懸念から下落する可能性が高いため、含み損を抱える可能性は小さいと考える所である。一方で、行使完了のプレスリリースが出た直後は需給に関する懸念が緩和され、株価下落が抑制される可能性が高いので、ある程度株式が残っていたとしても、すぐに含み損となる可能性も小さいのである。
 これをまとめて図示すると、図3のような感じとなる。ある意味、行使指示のプレスリリースは(最大)5億円のMSCB発行のプレスリリースと考えると理解しやすいかも知れない。行使請求期間20取引日の超短期決戦のMSCBである。それが約8回繰り返されるということで・・・。

これを8回以上繰り返し
図3 日興シティが採用する可能性がある戦術のまとめ

 以上より、日興シティとしては本新株予約権からしっかり稼ぐ作戦は立てているとは思われるが、新株予約権の行使や株式売却を行う担当の人は結構大変そうだな〜と思ったりする次第である。自由度が小さいって、結構ストレスがたまりそうなのである。
 そのストレスの代償として、コミットメントフィーが(おそらくは担当の人ではなく)日興シティに入る、と言う構図ではないかと思えるのである。
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2005年11月13日

アーティストハウスホールディングス(3716)の新株予約権(その2)

 先月20日に、アーティストハウスホールディングス(3716)(以下アーティストハウス)が総額120億円の新株予約権の発行を発表し、今月7日に発行された(本新株予約権のプレスリリースはこちら)。
 前回記事では、第7・8・9回新株予約権のうち、第7回新株予約権について考察を行った。今回は、主に第8回新株予約権について検討を行い、意外とも感じられる当初行使価額の設定がいかなる目的で行われたかについて考察する。

〜VWAP3日平均から10%ディスカウント・毎週修正型 概要〜

 第8回新株予約権の行使価額条項には、当初行使価額が1,155,600円、上限行使価額も同額の1,115,600円と定められており、下限行使価額は、発行後3ヶ月以内は308,160円、3ヶ月経過後は250,380円となる(第9回は6ヶ月)。
 また、行使価額は毎週最終取引日を修正日とし、修正日までの3連続取引日におけるVWAPの平均値の90%に修正されるとされていることから、毎週金曜日(祝日でない場合)に行使価額が修正され、ディスカウント率は10%である。
 なお、第1回修正日については、第7回新株予約権の90%が行使された日と、新株予約権発行日から1歴月(1ヶ月?)経過した後のいずれか早い日の翌週の最終営業日に定められる(第9回は、第8回新株予約権の90%行使または新株予約権発行後6週間経過後の翌週)。つまり、第1回修正日はもっとも遅い場合でも12月16日に定められると考えられる。これらの概要を図で示すと、図1の通りとなる。本図においては、第1回修正日をもっとも遅い場合の12月16日と仮定した。

下限行使価額に修正されるVWAP平均はそれぞれ342,400円、278,200円
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要

 なお、第8回・第9回新株予約権には行使停止条項が定められており、アーティストハウスが本条項を適用すると新株予約権の行使はそれから1ヶ月間不可能になる。これを図示すると図2の通りとなる。この行使停止は何度でも行えるが、7回目以降はアーティスト側が補償金?を支払うと定められている。また、行使停止期間終了直後の行使価額は、行使停止直前に有効だった行使価額がそのまま用いられることとなる。

行使停止は1ヶ月間
図2 本新株予約権の行使停止条項概要


〜希薄化懸念の一時的緩和 考察〜


 さて、第8回・第9回新株予約権の発行条件で意外に感じられるのが、当初行使価額が1,155,600円と現在の株価水準に比べて著しく高い水準に定められている点である。
 この点を考察するに当たり注目したいのが、EDINETで閲覧することができるリーマン・ブラザーズ証券提出の大量保有報告書である。リーマン・ブラザーズはアーティストハウス株式に関する大量保有報告書を11月9日付で提出しており、その保有数は、

株券:198株
新株予約権証券:13,844株
合計:14,042株

と示されている(共同保有分含む)。このうち、新株予約権については11月7日に取得したことが明記されており、第7回・第8回・第9回の新株予約権(の潜在株式)であることが確認できる。
 んで、この13,844株の内訳について計算すると、

第7回:20億円÷385,200(当初行使価額)≒5,192株
第8回:50億円÷1,155,600(当初行使価額)≒4,326株
第9回:50億円÷1,155,600(当初行使価額)≒4,326株

であると求められ、より金額が大きい第8回・第9回の潜在株式数が第7回の潜在株式数よりも少なくなっているのである。
 仮に、第8回・第9回新株予約権の潜在株式数を第7回の当初行使価額385,200円で算出すると、それぞれ12,980株となり、第7回・第8回・第9回合計の潜在株式数は、31,152株と、現在提出されている潜在株式数の2倍以上となるのである。
 自分としては、この極めて高水準の当初行使価額は、発行発表時に開示される潜在株式数を少なく見せかけ、MSCBや新株予約権発行の際に警戒される、希薄化懸念による株価下落を回避あるいは緩やかにするために設定されたのではないかと考えるところである。無論、いずれは行使価額は修正され、潜在株式数は本来の水準に増加するのであるから、希薄化懸念が緩和されると言っても一時的なものではある。しかし、希薄化に関する懸念がもっとも高まるのは発行発表直後であるから、株価対策という点では有効かも知れないところである。
 この「一時的緩和」が終了するのはいつかと言う点であるが、これは明確で、もっとも遅い場合でも、第8回新株予約権についてはご紹介したとおり12月16日、第9回新株予約権については12月30日が第1回修正日になると考えられるので、株価が大きく上向いていない限り、この時点で行使価額は大きく下方修正される。従って、リーマン・ブラザーズの潜在株式数は、約半月の時間差をおいて2度、突如膨れ上がったように見える可能性が高い。
 だが、それはリーマンブラザーズが何か行うのではなく、新株予約権の行使価額修正が行われ、株価の実勢に即した行使価額となった結果として発生する可能性が高いのである。
posted by こみけ at 21:38| Comment(2) | TrackBack(1) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月05日

アーティストハウスホールディングス(3716)のMSCB発行制限決議

 4日、アーティストハウスホールディングス(3716)がMSCBの発行を行わないことを取締役会にて決議した。プレスリリースはこちら
 なお、「株主の皆様の意志を問わず」行うつもりはないとの記載があることから、株主総会の決議があったとしても発行しないことを意味するものと考えられる。カカクコム(2371)が以前決議したMSCBの発行制限は、株主総会の決議がない限り発行しないと言うものであるから、アーティストハウスの決議はこれよりも厳しいものとなる。

 だが、本決議で規制されるのはあくまでMSCBのみであり、先日ご紹介した新株予約権についてはCBではないので、規制の枠外である。よって、この決議は株主の保護には何の意味もないものと考える次第である。行使価額修正条項のついたこの新株予約権、行使されるとMSCBと全く同じことになるのである。
 「エクイティーコミットメントライン」と称する本手法、企業側にとっては一括前払いで現金収入が得らるMSCBとは違い、新株予約権が行使されるまで現金収入がないため、仕方なく借金(コミットメントライン)を利用してしのぐと言う不利な仕組みとなっている。
 これを簡潔に述べると、
「新株予約権の行使による払込金をあてにした借金」
と言えるのではないかと思う。
 借金が主で、新株予約権は従だと考えると、わかりやすくなると思うのだが、いかがだろうか。

11月13日訂正:
 本日、アーティストハウスのプレスリリースを再確認いたしましたところ、本ファイナンスにおいてアーティストハウスが資金借入を行うとは明示されておりませんでした。従って、新株予約権の行使まで借金を行ってしのぐと言う記述は正確なものではありませんでした。
 また、本プレスリリースにおける「コミットメントライン」は借入金を指すものと誤認しておりましたが、本ファイナンスにおいては借入金を指す用語ではないと考えられます。

 以上の点につきましてお詫びの上、訂正いたします。詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
posted by こみけ at 23:42| Comment(3) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

インターネット総合研究所(4741)のMSCB転換完了

 4日、インターネット総合研究所(4741)が発行していたMSCBが全額転換されたことが発表された。プレスリリースはこちら
 本MSCBについては、繰上償還を行うことが事前に発表されていたが、引き受け手は償還前に全額転換することを選択したことになる。まあ、損得を考えれば自然なことだろう。この全額転換により、三井住友銀行と設定したコミットメントライン30億円はMSCB償還には使われず、使うとすればそれ以外の目的に使われることとなる。

 本件で興味深いのが、繰上償還が発表されていたMSCBが全額転換された場合、株価は上下どちらに行くかという点である。すなわち、今回の転換完了は、
@繰上償還用資金の手当が不要になるため資金繰り好転期待で上昇
A回避されると見られていた一株価値の希薄化が起きてしまったので下落
と言う上昇、下落双方の要因となる材料であり、このうちどちらが勝るかという点が興味深い。
 もっとも、今回は、
B子会社のIXI(4313)の業績大幅上昇修正
と言う材料も出ているため、@Aのみで株価動向が決まるわけでもなさそうなところである。さらに、全額転換が宣言されたことで、今後の需給への不安が後退することもプラス材料となるか。
posted by こみけ at 07:48| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月30日

UBS証券によるインターネット総合研究所(4741)発行のMSCB転売

 28日、インターネット総合研究所(4741)が今年8月に発行したMSCBの繰上償還を発表した。プレスリリースはこちら。繰上償還額は総発行額110億円のうち、未転換分の10億円とのことである。9月末に繰上償還を行うと発表した際は未転換分は約50億円であるという話であったから(記事)、この1ヶ月の間で約40億円ほど転換が進んだことになる。株数にして約3万〜3万5000株と言うところか。今月ここまでの出来高が19万株程度のようだから、需給には厳しそうだねぇ。
 なお、本MSCBの繰上償還日は来月第3金曜日の11月18日であるから、この日までにMSCBがすべて転換されてしまった場合、繰上償還は行われないと言うか、やる必要がないことになる・・・全MSCBが株に換わってしまっているわけだから。
 
 さて、ここからが本日の本題である。110億円発行された本MSCBの引き受け手はUBS証券であった。だが、MSCB発行翌日の8月9日、UBSがスタンフィールド・フィナンシャル・インクへその過半の約60億円分を譲渡したことがEDINETで確認できる。
 スタンフィールドと言えば、昨年12月発行のCB(MSCBに非ず)を引き受けた相手である。その際藤原所長はカストディアン口座というところを介して貸し株を行うことになっていた。んで、このカストディアンがどこに貸し株をしているか調べてみると、8月11日現在で、19,375株をスタンフィールドに貸し出しているのがEDINETで確認できる(8月15日藤原所長提出の変更報告書)。
 ここら辺を図で簡単に示すと下図のような感じになる。
UBSに残った50億も怪しいと思う
図 MSCB・貸し株の流れ

 すなわち、スタンフィールドは藤原所長から貸し株を得る一方で、UBSからMSCBの譲渡を受け、貸し株とMSCBの双方を入手することに成功したことになる。
 この作戦、MSCBを発行翌日に転売したわけだから、事前に少なくとも(←ここ重要)UBSとスタンフィールドの間で話ができあがっていたのは確実である。この代償として、スタンフィールドからUBSに何が支払われたのかは興味深いところであるが、残念ながら現在のところ不明である。
 で、藤原氏から2万株近い貸し株を借りていたスタンフィールドは、それからせっせとMSCBの転換と株式の売却を行っていたのが確認でき、最も多い日で1日904株(10月3日)が売却されている。当日の売買高が17,077株であるから、その日の取引の約5%がスタンフィールドの売りだったことになる。これを多いと見るか、少ないと見るかは何とも言えないところである。
 そして涙を誘うのは、スタンフィールドが一生懸命保有株を処分しているのに、転換価額の下方修正が相次いだため、かえってスタンフィールドの保有株式数(潜在含む)は増加している点である。これぞMSCBの真骨頂。かくして、平成電電の破綻に伴う焦げ付き発生をブースターとしつつ株価は下落していったのである。

 だが、本MSCBの仕組みを見るに、自分は藤原所長に敬意を払わざるを得ない。
 前回のCB発行時の契約を生かして貸し株を融通しつつ「今回のMSCBは、貸し株のないことから実際は、『売り圧力』は発生しない訳ですが」とコラムで語るという離れ業は、まるで前回のCB発行が今回のMSCB発行の前座であるとの妄想さえ抱きかねない偉業である。確かに嘘は言っていない。裏切ったかも知れないが。
 さらに、コミットメントラインの設定を「三井住友銀行の歴史的な判断」と称するあたりには「この人はまた何かするに違いない」との好奇心を自分に抱かせてしまうのである。MSCB償還のためと称して30億円の枠を設定しておきながら、償還すべきMSCBが10億円まで減少し、償還日までに完全になくなってしまうかも知れないあたりも最高である。最初からMSCB償還なんか考えていなかったのでないかとさえ思えるところである。本当に繰上償還をしたいのだったら、10月の第1金曜日(7日)までに宣言すれば今月21日に償還できたので、転換がここまで進行することはなかったはずである。
posted by こみけ at 23:13| Comment(13) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月25日

東理ホールディングス(5856)の新株予約権行使完了

 本日25日、東理ホールディングスが発行した新株予約権が行使請求期間初日に全額行使されたと発表された(プレスリリース)。

 本日行使されたと言うことは、本新株予約権は当初行使価額の60円で行使された、ことを示しているから、予約権そのものの発行価額(1株1円)を考慮に入れても、新株予約権を引き受けた皆様は1株61円で9000万株ほど手に入れたことになる。明日26日以降なら、行使価額は100円前後となったはずであるから、当然の選択であると言える。

 んで、本日終値が103円であるから、引き受け手の皆様は単純計算で、
 
9000万株×(103−61)=37億8000万円

ほどの含み益がでていることになる。
 この9000万株、売りさばくのか、それとも保有継続するのか、興味深いところである。
posted by こみけ at 23:53| Comment(7) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アーティストハウスホールディングス(3716)の新株予約権(その1)

 20日、マザーズ上場のアーティストハウスホールディングス(以下アーティストハウス)が総額120億円分の新株予約権(第7回、第8回、第9回合計)の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 何か「MSCBではない」と言うことを一生懸命主張しているのでせっかくだから考察させていただくこととする。今回は第7回新株予約権である。第8回、第9回についてはご要望があればと言うことで今回はご容赦を。

〜VWAP3日平均から10%ディスカウント・毎週修正型 概要〜

 まず、本新株予約権の行使価額条項について考察を行う。本新株予約権の当初行使価額は385,200円であり、下限行使価額はその50%に当たる192,600円、上限行使価額は300%の1,155,600円である。また、行使価額は、毎週最終取引日を修正日とし、修正日までの3連続取引日におけるVWAPの平均値の90%に修正されるとされていることから、毎週金曜日(祝日でない場合)に行使価額が修正され、ディスカウント率は10%である。
 例を挙げると、第1回修正日である11月18日には、行使価額は、

行使価額=(11月16日のVWAP+17日のVWAP+18日のVWAP)÷3×90%

で得られた価額に修正されることとなる。これらの概要を図1に示す。

上限行使価額ははるか彼方
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要


〜MSCB以上に不利な新株予約権の発行 考察〜

 さて、本新株予約権の発行のプレスリリースにおいて、アーティストハウス側は、
「当該予約権の発行は『MSCB』ではなく・・・(中略)・・・『エクイティーコミットメントライン』と呼ばれる新しい手法によるものです。」
と主張している。
 「エクイティーコミットメントライン」がどんなに新しくてすばらしい手法であるかは当ブログ的にはどうでもいいことなので関知しないが、本新株予約権がMSCBでないのは確かである。MSCBのBはbond、すなわち社債のことなのであるから、新株予約権単体はMSCBとは呼ばないはずである。

 その一方で、本新株予約権は、払込金額はあらかじめ定められており(1個500万円)、行使価額に応じて交付株式数が変動するという特徴がある。
 すなわち、交付株式数は、

交付株式数=500万円×行使する新株予約権の個数÷行使価額

で定められる。なお、本新株予約権は全部で400個であり、総額で、500万円×400個=20億円と言うことになる。
 従って、MSCB同様、株価の下落が発生すると新株予約権行使により得られる株式数は増大し、希薄化が激しくなるのである。
 つまり、本新株予約権は、「払込金後払いのMSCB」と考えるのが妥当であると言える。んで、何で一般的なMSCBのように前払いではいけないのかというと、先日の平成電電破綻に伴うドリームテクノロジーズ(4840)のMSCB繰上償還騒ぎを教訓としたリスク回避策であると見るところである。繰上償還では間に合わない場合を想定した対策なのであると見るところである。なお、インプレスホールディングス(9479)も先日これとほぼ同じ仕組みの新株予約権を発行したので興味のある方はご参照いただきたい(当ブログの該当記事)。

 んで、払込金が後払いであると言うことは、新株予約権が行使されるまでは現金が入らないわけで、その間については、アーティストハウスとしては借金(コミットメントライン)で補わざるを得ないと言う美しい図式が成立するのである。これが「エクイティーコミットメントライン」というものなのだろうか。
 見方を変えると、「M&Aに使う(使った)借入金を返済するための新株予約権」と言えるかもしれない。新株予約権が行使されなかったらどうなるのか、今から楽しみである。


 新株予約権行使までの借入金利息やコミットメントラインの手数料、さらに新株予約権の行使による現金収入の不確実性(金額・期日双方)を考慮すると、本新株予約権はMSCBではないものの、MSCBよりもはるかに不利な条件で行われる資金調達であるとの結論が成立すると考える次第である。

 なお、第8回・第9回の新株予約権で定められている行使停止条項については、本条項を発動した際に困るのはどちらかを考えれば、さして重視する必要はないと考えるところである。


11月13日訂正:
 本日、アーティストハウスのプレスリリースを再確認いたしましたところ、本ファイナンスにおいてアーティストハウスが資金借入を行うとは明示されておりませんでした。従って、新株予約権の行使まで借金を行ってしのぐと言う記述は正確なものではありませんでした。
 また、本プレスリリースにおける「コミットメントライン」は借入金を指すものと誤認しておりましたが、本ファイナンスにおいては借入金を指す用語ではないと考えられます。

 以上の点につきましてお詫びの上、訂正いたします。詳しくはこちらの記事をご覧下さい
posted by こみけ at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月22日

インプレスホールディングス(9479)の新株予約権

 19日、インプレスホールディングス(9479)がゴールドマン・サックス割当で100億円分の新株予約権の発行を行うことを発表した。本新株予約権は、MSCBと新株予約権の双方の特徴を持つものであり、また株価の乱高下を引き起こす要因をはらむ代物であると判断したので、考察してみることとする。

〜VWAP3日平均から10%ディスカウント・毎日修正型 概要〜

 まず、本新株予約権の行使価額条項について考察を行ってみる。本新株予約権の当初行使価額は63,735円、下限行使価額はその50%に当たる31,868円である。また、行使価額は、「行使請求の効力発生日の前日までの3連続取引日」におけるVWAPの平均値の90%であるとされていることから、本新株予約権は、毎日行使価額が修正され、ディスカウント率は10%である。
 例を挙げると、11月21日に行使請求が行われた場合、行使価額は、

行使価額=(11月16日のVWAP+17日のVWAP+18日のVWAP)÷3×90%


で与えられることとなる。これらの概要を図1に示す。

終値・VWAPの違いを除けばドリテクとほぼ一緒
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要

〜後払いのMSCB 考察〜

 さて、本新株予約権で注目したいなのが、通常、新株予約権では交付株式数があらかじめ定められており、行使価額が修正されると変動するのは払込金額なのであるのに、本新株予約権は逆で、払込金額はあらかじめ定められており(1個1000万円)、変動するのは交付株式数という点である。
 すなわち、交付株式数は、

交付株式数=1000万円×行使する新株予約権の個数÷行使価額


で定められる。なお、本新株予約権は全部で1000個であり、総額で、1000万円×1000個=100億円と言うことになる。
 従って、MSCB同様、株価の下落が発生すると新株予約権行使により得られる株式数は増大し、希薄化が激しくなるのである。
 つまり、本新株予約権は、「払込金後払いのMSCB」と考えるのが妥当であると言える。んで、何で一般的なMSCBのように前払いではいけないのかというと、先日の平成電電破綻に伴うドリームテクノロジーズ(4840)のMSCB繰上償還騒ぎを教訓としたリスク回避策であると見るところである。繰上償還では間に合わない場合を想定した対策なのであろう。
 なお、今回の手法はあくまで緊急避難を目的としたものであり、別にインプレスがドリームテクノロジーズのような事態に陥るとゴールドマンが予見しているというわけではないと考える。予見していたら、最初から新株予約権など引き受けないはずである。

〜行使許可で株価乱高下の可能性 主張〜

 さて、本新株予約権は100億円すべてをいつでも行使請求できるわけではなく、インプレス側がゴールドマンに行使請求可能な期間及び個数を通知し、ゴールドマンはその範囲内で行使請求を行うという形を取っている。そして、インプレスはこの行使許可の通知を行ったことについてプレスリリースで発表するとしている。
 この手法によって、インプレスは権利行使に一定の制御を行えるとしているが、自分は本手法が株価の乱高下、並びにゴールドマンのぼろ儲けを引き起こしかねないと主張するところである。
 本手法で権利行使許可のプレスリリースが出ると言うことは、ゴールドマンがその時から、発表された額の新株予約権の行使を行えるようになることを意味する。すなわち、その時点で希薄化がいつでも発生しうる事態として認知されることになる。従って、自分としては、このプレスリリースがMSCBの発行発表のように、ネガティブな材料として受け止められる可能性が極めて高いと考えるところである。
 これは何を意味するかというと、例えば行使許可を20億円ずつ5回に分けて行った場合、ひょっとしたら発表の度に、希薄化リスクを嫌気した株価の急落が起きるのではないかと思えるのである。ちょうどMSCB発行発表時のように。しかも5回である。また、偶然か必然かはさておき、図2のように、行使許可のプレスリリースが出る前にゴールドマンが空売りを行い、プレスリリースが発表され株価下落や行使価額の下方修正が起きた状態で新株予約権の行使を行い、ぼろ儲けするという可能性も考えられると主張するところである。

発行発表時のツケ?
図2 プレスリリース発表前後に起こりうる動き

 いずれにしろ、本新株予約権について検討を行う場合は、「100億円の新株予約権」と考えるのではなく、「何回かに分けて発行される総額100億円のMSCB」と考えた方がよいのではないかと主張させていただく次第である。
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2005年10月17日

フューチャーベンチャーキャピタル(8462)のMSCB

 12日に、フューチャーベンチャーキャピタル(8462)が総額10億円のMSCBを発表した。今回は、このMSCBにおいて興味深い条項を発見したので考察してみることとする。本MSCBのプレスリリースはこちら

 まず、本MSCBの引受先は、リーマン・ブラザーズである。また、発行総額10億円というのは、金額ベースではそれほど多額には見えないが、発行発表時の株式時価総額が40億円を下回ることを考えると、需給への影響は大きそうである。
 転換価額の修正日は毎月の最終営業日であり、第1回の修正日は11月30日となる。転換価額の修正は修正日当日を含む直前3営業日のVWAPを用いて行われ、3日間のVWAP平均値の92%、すなわち8%引きに転換価額は修正される。
 これを、11月30日を例に取り示すと、

修正後転換価額=(11月28日のVWAP+29日のVWAP+30日のVWAP)÷3×92%

となる。図示すると、下図のようになる。

2%をどう見るか
図 本MSCBの転換価額修正条項概要


 VWAP平均からのディスカウント率は8%と、一般的なディスカウント率である10%よりは小さくなっている。ディスカウント率を8%に定めた前例としては、フォーサイド(2330)が代表的であると思われるので、興味のある方はご参照願いたい。
 また、転換価額の算出にVWAPを用いる点、毎月修正である点は、転換価額下方修正を狙った売り崩しが発生しにくい条件であると言えそうである。
 まとめると、「発行額が時価総額から見て大きいのは株価に影響大、転換価額修正条項の内容は株価への影響やや小」というところか。


 さて、本MSCBで興味深いのは、社債権者(リーマン)側の選択による繰上償還条項がやたらと充実している点である。

 まず一つ目は、「1ヶ月前に通知することにより、繰上償還を受けることができる」と言う条項である(プレスリリースの8.(5)B (i))。
 これは、最近発行されているMSCBのほぼすべてに定められている条項である。もっとも、実際に行使されたのは先日ご紹介したドリームテクノロジーズ(4840)くらいであるが。

 次の(ii)はくせ者である。要約すると、
「月間VWAPが76,000円を下回った月にはMSCBの一部を繰上償還請求する権利を得る」
と言うことになるだろうか。こちらの条項は請求してから10営業日後に繰上償還と言うことになる。(i)よりも償還が行われるまでの期間が短いことに注目。資金効率の向上と、債務不履行のリスクを減少させる意図が込められていると見る。ただし、本条項で得られるのはあくまで一部の繰上償還請求権のみであり、引き受け手のリーマンとしては、本条項が発動されるような時は一括での繰上償還を望む可能性が高い。個人的には、本条項は用いられる可能性は極めて低いと見る。

 さて、自分がもっとも重要視しているのは(iii)である。本条項に該当した場合は、請求の翌営業日に繰上償還することが義務づけられている。これは相当に厳しいスケジュールであると言っていいのではないだろうか。
 以下で、本条項で繰上償還の権利を得る具体的な事例を見ていく。なお、以下の事例についてはあくまで管理人の推測であると言うことをあらかじめお断りする。

 (a)では、監理ポスト・整理ポストに入った場合が挙げられている。
 (b)では、MSCBの転換請求時に株券引き渡しが遅延した場合が挙げられている。
 (c)(d)では、フューチャーベンチャーキャピタル自身の合併、あるいは子会社の異動時等が挙げられている。
 (e)では、前置きの文章はよくわからないのだが転換価額が下落した場合と考えて良さそうである。
 (f)は、粉飾とかそういうのを警戒した文言と推測される。

 ・・・はっきりしたことが言えず申し訳ない_| ̄|○。

 んで、これらのうち注目すべきは(a)(e)(f)であると見る。
 (a)と(f)は実際上は極めて近いものとなりそうである。CB発行相手に対して虚偽になるようなことが公になれば、株式市場においても監理ポスト行きになる可能性は極めて高いと考えるところである。
 (e)については自分は転換価額が下限転換価額に張り付くようになった場合に発動されるのではないかと見ている。なお、よく似た繰上償還条項が昨年発行された関東つくば銀行(8338)のMSCBに記載されている(関東つくば銀第1回MSCBのプレスリリース)。

 さて、そもそもリーマンは何でこんな物々しい条項を作ったかであるが・・・自分はこの企業自身の信用ではなく、ドリームテクノロジーズの一連の騒ぎが原因だと思うのだよねぇ。資金回収を確実化に行うために、早期回収が図れる条項を作ったのだと思う。

 今、ドリームテクノロジーズが明日をも知れない身であるのは誰の目にも明らかであり、リーマンとしては、そういう万一の事態に備えただけなのではないかと見るところである。それとも何か潜んでいるのだろうか・・・?
posted by こみけ at 00:05| Comment(15) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月12日

ドリームテクノロジーズ(4840)のMSCB繰上償還

 本日、ドリームテクノロジーズ(4840)が発行した20億円のMSCBが繰上償還されることが発表された。
 まず、今回の繰上償還は、発行側のドリームテクノロジーズではなく引き受け手のメリルリンチが要求した点に注目。先日MSCBの繰上償還を発表したインターネット総合研究所(4741)はこの逆であり、ある程度資金的余裕があったと見えるが、ドリームテクノロジーズにはそんな余裕は全くなさそうである。今回の発表と同時に、7億円の金銭消費貸借契約すなわち借金を行うことを発表したが、焼け石に水と言えそうだ。本来は50億円の調達を予定していたのである、
 今回行われたMSCB繰上償還に加え、新株予約権についても行使されない可能性は高く、当初50億円の調達を見込んだ一連のファイナンスは、その0.1%にも満たない300万円(新株予約権の発行額)の調達にとどまる可能性が大という美しい結果に終わったのである。

 そして、お金に困った親会社(ドリームテクノロジーズ)は子会社を売りに出して急場をしのぐしか手がなくなってしまったのである。業績を見る限り、孝行息子なのに・・・
 でも、せめて売却額くらいは公表しないと、不安はさらに高まるだけだと思うのだがねぇ。それともそんなことを想う余裕もないのか。
posted by こみけ at 23:58| Comment(14) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月10日

MSCBに関する一考察 YOZAN(2) ライブドアグループの戦術とMSCB分割発行の理由

 長いこと準備中となっておりました、

 MSCBに関する一考察 YOZAN(2) ライブドアグループの戦術とMSCB分割発行の理由

をようやく書き終えました。上記題名をクリックすると記事(html)に飛びます。

 遅くなってすみませんでした。なんか最近愉快な銘柄が多くてそっちに気を取られてしまいまして・・・
 なお、今後、個別銘柄のMSCBに関する考察は原則としてブログで行うことといたします。先日書いたドリームテクノロジーズ(4840)のMSCBに関する記事みたいな感じとなります。
 一方、一般論(新種MSCBの考察など)は原則としてこれまで通り株式コラムに記事を載せ、当ブログで更新を告知する予定であります。


 さて、記事に書きましたライブドアによるYOZAN乗っ取りですが・・・自分はありえると思うのですよねぇ。少なくとも外資がライブドアを乗っ取る可能性よりははるかに高いと思います。
 なにせ、こんな記事こんな報道こんな反論が出たりしておりますので、何か裏があっても不思議ではないと思うわけですよ。ライブドアらしいといえばそこまでなのですが。
 もっとも、WiMAXがうまくいかないYOZANを買収するだけの価値があるかどうかとなるとやや疑問なところではありますが、その辺はホリエモンパワーで何とかするのではないでしょうか。失敗ならいざしらず、遅延なら取り戻すこともできるでしょうし・・・

 ところで、YOZANのIRが言う、「敵対的TOB」は違いますよねぇ。MSCBとはいえ、第三者割当で増資を引き受けてもらったわけですので・・・「友好的」かどうかは微妙なところでありますが。
posted by こみけ at 20:12| Comment(10) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月08日

東理ホールディングス(5856)の新株予約権

 昨日、株式掲示板にて東理ホールディングス(5856)の新株予約権についてご質問を頂いたのでちょっと主張させていただく。プレスリリースはこちら。なお、本新株予約権はMSCBではないことをまずはじめに主張させていただく。あくまで新株予約権単体の発行である。

当初行使価額以下では行使不可 〜概要〜


 本新株予約権は当初行使価額(10月25日の行使価額)60円、新株予約権の行使期間2日目以降(10月26日以降)の行使価額は「行使の実行される日の前日を含む1週間の最終価格の平均」となる。「最終価格」というのは終値を指すと考えられる。これを、10月26日に新株予約権を行使する場合の行使価額を例に取り説明すると、

行使価額=(10月19日の終値+20日の終値+21日の終値+24日の終値+25日の終値)÷5


となると推測される(1円未満の端数は切り上げ)。
 なお、この新株予約権には、この計算で算出される行使価額が60円を下回った場合は本新株予約権の行使はできないとする条項があるため、行使価額は60円(新株予約権の発行価額を加えれば61円)以上となる。

 これを図に示すと、以下のようになると推測される。ただ、後ほど説明するように、本新株予約権の行使価額決定については不明確な点があるので、あくまで管理人の推測であると言うことをご了解いただきたい。

行使請求できない期間という条件は珍しい
図 本新株予約権の概要


 当初行使価額が60円であることが妥当か否かを除けば、当初行使価額以下には行使価額が修正されることはないので、希薄化や払込資金の減少など、MSCBや行使価額が修正される新株予約権で問題視される問題は無いと言える。

〜不適当な記載 主張〜


 さて、本新株予約権については、自分が見る限りでは3点ほど不明確・不適切な点があると主張させていただく。

@「行使価額の修正」ではなく、「行使価額の調整」と記載している。
→通常、株価の変動に伴う行使価額の変更については「修正」と記すことがほとんど。「調整」は株式分割等の場合におけるの行使価額の変更について記載する条項である。

A行使価額を算出する「1週間」の中に祝日が入った場合はどうするのか。
→5営業日と言っているわけではないので、祝日が入る場合は5営業日で算出するのか、それとも4(もしくはそれ以下)営業日で算出するのか不明。例えば11月7日に行使請求を行う場合、10月28日の最終価格は行使価額の算出に用いるのか否かが不明。

B分割・併合時の行使価額の調整に関する記載が一切無い。
→10株を1株に併合したとしても行使価額は60円(もしくは併合前の株価)のまま、と言う可能性が否定できない。

 @Aは細かいところであるとは思うけど、株式の新規発行条件という重要な事項なのだから、正確を期するべきだと思うのだよねぇ。また、Bについては期間中に分割や併合を行わなければ問題にならないのだけれども、もし10株→1株の株式併合後も、行使価額の調整がないとすると、予約権行使で得た株を直ちに10倍で売ることができると言うことになる。記載しないことで不安を抱かれる可能性があるのだから、やはり記載するべきだと主張するところである。
 なお、最初から併合を見込んだ上の確信犯だった場合はもはや爆笑するしかないところである。そんなことはないと思うが・・・
posted by こみけ at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月04日

EDINETで観る平成電電のドリームテクノロジーズ株投げ売り

 昨日、ドリームテクノロジーズ(4840)の大株主である平成電電が民事再生法の適用を申請、事実上倒産した。原因は資金繰りのめどが立たなくなったからだという。
 この会社、個人に高い利回りを約束し、設備投資向け資金を関連会社?を通じて集めるという手段をとっていた。
 この点が今後騒ぎになりそうである。また、同業のところにはかなりの動揺が走りそうである。

 さて、この騒ぎに関連して、自分はEDINETで面白い情報を発見した。EDINETは、今月より機能が大幅拡張され、従来閲覧することができなかった紙媒体での提出書類もオンライン閲覧が可能になった。これまでも、紙媒体の情報にこそ重要な情報があったのだろう。

 んで、このEDINETによると、平成電電は、9月29日にドリームテクノロジーズ株に関する大量保有報告書を提出している。それを観ると、9月20日から報告義務発生日の22日までの3日間連続してそれぞれ7,500株、4,000株、9,500株を市場外取引にて市場価格よりも安く売却している。
 おそらくは、23日以降についても市場外もしくは市場内(ヘラクレス)にて売却を行っていたものと推測され、大量保有報告書が順次提出されるはずである。
 この間、株価は連日急落している。それにも関わらず平成電電が市場外とはいえ、株式売却を行ったと言うことは、すでに同社の資金繰りが窮地に陥っており、背に腹は代えられず、ドリームテクノロジーズ株の換金売りを行っていたと考えられるのである。

 そして、この平成電電のなりふり構わぬ行動そして結末は、MSCBでしっかり稼ごうとしていたメリルリンチの思惑をひっくり返すという実に美しい結果をもたらしたのである。


(10月4日 6:57 23日以降の売却方法の推測を 「市場」から「市場外もしくは市場内(ヘラクレス)」に修正しました。22日まで市場外取引で売却していたのですから、仮に23日以降も売却していたとすれば、市場外取引の可能性の方が高いですね。)
posted by こみけ at 01:18| Comment(5) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月02日

ドリームテクノロジーズ(4840)のMSCBと新株予約権(新株予約権編)

 前回は、ドリームテクノロジーズが発行したMSCBに関する考察を行った。今回は、そのMSCBの発行額を減額する代わる資金調達手段として用いることにした新株予約権について考察を行うことにする。

〜終値3日平均から10%ディスカウント 概要〜


 新株予約権は、CBとは異なり、あらかじめ決められた株式数(今回は85,000株)を買うことができる権利、すなわち、コールオプションである。んで、発行総額300万円というのは、その85,000株を買う権利を総額300万円でドリームテクノロジーズが売り、メリルリンチが買ったと言うことである。1株あたりでは35.3円である。
 困ったことに、本新株予約権では、いったいいくらで株を買うことができるのか(行使価額)と言う肝心なところが決まっていない、と言うか、株式市場の動向によってその時々で決めるというお話になっているのである。その行使価額の決め方が記されているのが、行使価額修正条項(プレスリリースのU.10.)である。
 本新株予約権の行使価額修正条項の概要を図示すると図2−1の通りとなる。
 すなわち、行使請求期間初日である10月18日以降の全期間を通じて、終値3日平均の1割引の金額が、新株予約権の行使価額となる。先日発行されたMSCBのような、「希薄化抑制」の仕組みはなく、終値平均が26,222円を下回り、下限行使価額にならない限りは、行使価額は常に終値平均の1割引となる。また、終値平均が62,933円以上の場合、行使価額は上限行使価額に定められ、それ以上は上がらない。
 なお、行使価額は毎日修正されるため、一時的な株価の変動でも行使価額が下方修正され、株券と引き替えにドリームテクノロジーズが得る現金(増資資金)が小さくなる可能性がある。

基本的に1割引
図2−1 本新株予約権の行使価額修正条項概要

 要するに、

「ドリームテクノロジーズはメリルリンチに対して株式市場の株価よりも一割引のお値段でドリームテクノロジーズ株を買うことができる権利(コールオプション)を1株あたり35.3円で売った」

と言うことである(下限行使価額の場合を除く)。なお、株価よりも1割引ということは、単純計算で1株あたり2,622円以上の利ざやが乗ることになる。私に売ってくれれば良かったのに。

〜「希薄化抑制」はどこへ行った 考察〜


 MSCBの発行額削減及び本新株予約権の発行理由について、ドリームテクノロジーズは、

@MSCBを50億発行しても株価が下落しているので繰上償還することになりそう
A当面は20億円あればいい

の2点をプレスリリースにて挙げている。
 当ブログ的にはAはどうでもいい。問題は@である。

 ドリームテクノロジーズの株価はMSCB発行発表後に下落を続け、9月28日には一時40,000円を下回る水準まで下落していた。おそらくは、そういう状況下でメリルリンチがMSCBの全額(50億)引き受けに難色を示したのではあるまいか。あるいは、引き受けそのものから逃げようとしたかもしれない。下限転換価額(37,400円)割れすら伺う状況だったからねぇ。
 だが、ドリームテクノロジーズとしてはなんとしても資金が必要だったに違いない。そこで交渉の結果、「より行使価額が低い(←ここ重要)新株予約権」という形でなら資金調達に応じると言う結果になったと考えられる。なお、より転換価額が低いMSCBを発行するという案については最初から検討されなかったに違いあるまい。既存株主の皆様がものすごい勢いで怒り狂うのは明らかである。そこで、新株予約権の発行という形にすることで目先を変え、株価の動揺を抑えようとしているのだと考えられる。
 興味深いのは、なぜメリルリンチが20億とは言えMSCBの引き受けを行ったかである。そこであまり稼げない分を新株予約権で稼ぐ自信があるのか、それともすでに貸し株の空売りは相当数行っており、あとはMSCBを転換し現渡しをするだけなのか・・・いずれにしろ、メリルリンチはしっかり稼ぐ方策を立てた上でMSCBと新株予約権の引き受けを行っているはずである。
 なお、本プレスリリースに希薄化への配慮を示す文面がほとんどないことも注目に値する。新株予約権の消却条項はあるものの、MSCB発行のプレスリリースではあれほど強調していた希薄化抑制に関する文言が全く存在しないのである。ドリームテクノロジーズが相当厳しい交渉を行った傍証であると考えるが、いかがだろうか。
posted by こみけ at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドリームテクノロジーズ(4840)のMSCBと新株予約権(MSCB編)

 自分は気づいていなかったが、ドリームテクノロジーズ(4840)が9月9日に50億円のMSCB発行を発表した。が、発行日の9月30日になり突如発行額を20億円に減額の上、85000株の新株予約権を発行することを発表した。
 今回は、このMSCBと新株予約権について、2回に分けて考察してみようと思う。今回はMSCBについてである。

〜上方・下方修正条項付 終値を元に転換価額算出 概要〜


 まず、このMSCBの概要を図1−1に示す。当初転換価額は74,800円、上限転換価額は149,600円、下限転換価額は37,400円である。また、転換価額の修正は、「新株予約権の行使請求(MSCBの転換請求)の効力発生日の前日までの3連続取引日」の終値の平均値であるとされていることから、本MSCBは、毎日修正されるタイプのMSCBである。
 例を挙げると、10月7日(金)に転換請求が行われた場合、転換価額は4(火)、5(水)、6(木)の3日間の終値平均値を元に算出されると言うことになる。なお、本MSCBは毎日修正型であることから、毎週修正や毎月修正のMSCBよりも転換価額下方修正のリスクは高いと言えると考える。

90%・100%の別れ目は47200円
図1−1 本MSCBの概要


〜「希薄化抑制型」の意味 考察〜


 さて、このMSCB、当のドリームテクノロジーズは「希薄化抑制型」であると銘打っている。で、どの辺が希薄化抑制型であるかというと、株価が発行日の終値(基準値)を下回っている場合は転換価額は直近3日間の終値平均の90%ではなく100%で修正されることになっている点であるという。発行日である9月30日の終値は47,200円であったから、47,200円以上であれば、転換価額は終値平均の90%、37,400円以上47,200円未満であれば終値平均の100%と言うことになる。

 一例として、10月3日(月)にMSCBの転換請求を行った場合の転換価額は、

(9月28日の終値+29日の終値+30日の終値)÷3
=(41,650+43,200+47,200)÷3=44,017

であるから、終値平均の100%で与えられることになり、

44,017×100%=44,017円

となる。

 本MSCBにおける、株価終値、終値平均と転換価額の関係を図1−2に示す。
 株価が基準値である47,200円付近で動いた場合、転換価額は終値平均の90%で算出される日と100%で算出される日が入れ替わり現れることになる。たとえば、終値平均が47,100円の日には、転換価額は47,100×100%=47,100円であるが、株価が上昇し、47,200円になると、転換価額は47,200×90%=42,480円と、なんと株価が上昇しているのに転換価額は10%近く下がるという不思議な現象が発生するのである。

転換価額が窓開けます
図1−2 終値平均と転換価額の関係

 この場合、1日違うだけで転換価額は4,500円以上上下するという不安定な事態が起こりうる。これが株価変動に直接影響する可能性は小さいと見るが、一株利益・一株純資産などの指標を計算するのは極めて難しくなりそうである。

〜本MSCBの問題点 主張〜


 そもそも、MSCBが問題視される最大の理由は、株価の下落が起きるとMSCB転換により得られる株式数が増大し、既存株主の持ち分が希薄化され、それがさらなる株価の下落を引き起こすという点である。
 それを考えると、わずかな株価変動で転換株式数が大きく変動する本MSCBは重大な欠陥を抱えていると主張する。さらに、一般的なMSCBの場合、株価が上昇すると転換価額の上方修正により希薄化の影響が小さくなると期待されるものであるが、本MSCBでは株価上昇が転換価額の下方修正・希薄化の拡大を引き起こしうることから、株価上昇がかえって株価の下落要因になるという、救いようのない欠点を持っているのである。


 ・・・世の中というのは面白いもので、本MSCBの発行発表後、新興市場の軟調もあり、ドリームテクノロジーズの株価は大きく下落した。その影響もあり、会社側はMSCBの発行額を50億円から20億円に減額し、代わりに新株予約権を発行して資金調達を行うとの発表をなんとMSCBの発行日当日に行った。

 次回は、この新株予約権に関する考察を行う予定である。
posted by こみけ at 20:17| Comment(4) | TrackBack(1) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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