2006年11月26日

ゼクス(8913)のMSSO

 14日、ゼクス(8913)はかねてより発行を発表していた総額60億円相当の行使価額修正条項付新株予約権(MSSO)を発行した。発行発表のプレスリリースはこちら。引き受け手は、同時に発行されたMSCBと同じく野村である。
 本MSSOの修正条項は、行使価額の修正が取締役会の決定により開始されると言う点で、これまでに例を見ないものとなっている。
 本記事では、本MSSOの行使価額修正条項について簡単に説明した後に、行使価額修正について、取締役会がどのような行動を採る可能性が考え得るか、考察を試みる。

〜修正開始は取締役会で決議 概要〜

 図1に本MSSOの行使価額修正条項の概要を示す。
 本MSSOの当初行使価額は334,500円と定められている。また、上限行使価額は446,000円、下限行使価額は111,500円である。
 行使価額の修正については、いつから開始されると言うのは現時点では定められていない。07年2月14日以降、『取締役会が資金調達のために必要と認め、かつ、同時発行されたMSCBに付された新株予約権の全てが、その権利を行使できなくなった場合』に(会社側が)行使価額の修正開始を決定することができるとされているようである。要するに、本MSSOの行使価額修正は、07年2月14日以降に、取締役会が修正をやろうと決めた直後から始まるようである。
 仮に、あくまでも仮に、07年2月14日に取締役会が修正開始の決定を行った場合には、第1回の修正日は6営業日後の2月22日であり、行使価額は、行使価額の修正開始の決定を行った2月14日(行使価額修正決議日)に先立つ3営業日、すなわち2月9・12・13日の終値平均値から10%ディスカウントされた値に修正されることになる模様である。また、翌月以降については、行使価額の修正は毎月第三金曜日に行われるものと定められている。

2回目以降は決定日前の3日間
図1 本MSSOの行使価額修正条項概要

〜障壁の高さと意味合いの変化 考察〜

 さて、今回、会社側が本MSSOの行使価額修正開始をわざわざ取締役会でコントロールしようとしたのはなぜなのであろうか。
 これを考える上で参考になるのが、本MSSOの当初行使価額は、発行発表時の株価よりも50%以上高い水準に定められている点である。この点を考慮すると、現在の株価水準が続く限りは本MSSOの行使が行われる可能性はほとんどないといえるところである。すなわち、修正開始決議は、これまでのMSSOで言うところの行使許可決議(引き受け手が一定期間内に、一定数のMSSO行使を行えるようになる決議)と似た意味合いを持つと考えることができる。
 今回、会社側が何でこの行使許可決議ではなく、修正開始決議をMSSO行使をコントロールする手段として用いようとしているかは不明である。むしろ、今回の手法は引き受け手の野村が望んだことなのかもしれない。一定期間しか行使が行えないと言うのは、結構不便そうだからねぇ・・・それに、一度修正が開始されてしまえば、普通のMSSOと何ら変わらない代物であるから、売買はずいぶんやりやすそうである。


 本MSSOに関連して自分がもっとも警戒するのは、今後、当初行使価額が直近株価と同等、もしくはそれ以下に定められた上に、今回のような、行使価額の修正について恣意的な判断が入るような事例が出てくる可能性である。
 すなわち、株価が下がって予約権行使が進行しない(=引き受け手が稼げない)ような場合には行使価額の修正開始を決議する一方で、株価が上昇するような場合は、行使を促進するためにあえて修正開始は決議せず、引き受け手が多額の利益を上げてしまうような状況が出てくる可能性がある。さらに、今回は行使開始のみ取締役会決議で判断されるが、今後、(2回目とか3回目とかの)行使価額の修正を行うか否かさえも自動的ではなく、いちいち取締役会決議で行うような状況が出てくる可能性はないとは言えない。
 もっとも、これを裏返してみれば、大量保有報告書でMSSOの引き受け手の動向と、会社側の決議のタイミングをよ〜く見つめることで、会社側が既存株主をどの程度重視しているかを察知できる可能性がある。既存株主思いの企業なら、なるべく行使価額の高いところでMSSOの行使をさせようとするはずだからねぇ。

 ここら辺を考慮すると、本MSSOは、行使価額修正開始の決定権を握っているゼクス側がどのような振る舞いをするかで、会社側がプレスリリース中で語っている『既存株主への影響に配慮する』という文言がどの程度本気なのかがわかってしまう、なかなか興味深い代物と言えそうと考える次第である。
 
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2006年11月12日

ゼンテック・テクノロジー・ジャパン(4296)のMSCB

 10日、ゼンテック・テクノロジー・ジャパン(4296、以下ゼンテック)は50億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はUBSである。

 本MSCBは、転換価額の修正が行われると言う点ではMSCBであるといえるものの、転換価額の下方修正は行われず、上方修正のみが行われると言う点で一般的なMSCBとは大きく異なるものである。
 本記事では、本MSCBの転換価額修正条項の概要について簡単に紹介した後に、本MSCBの位置づけや引き受けたUBSの思惑について考察を試みる。

〜転換価額修正は上方のみ 概要〜

 本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。

 まず、当初転換価額は発行発表日(10日)終値の501,000円に設定されている。
 転換価額の修正であるが、本MSCBでは転換価額の下方修正は一切行われず、行われるのは上方修正のみである。んで、その上方修正はどのような場合に行われるかであるが、これについては『決定日前の10連続取引日の終値の平均値(修正価額)』が『直近に適用された転換価額の120%を上回る場合』に行われると定められており、その場合、転換価額は修正価額へと上方修正されることになる。
 まあ、簡単に言えば、「過去10営業日の株価終値の平均が現在の転換価額よりも20%超高ければ、転換価額は終値平均へと上方修正される」と考えればよいのではないかと思う次第である。

 なお、1回目の転換価額修正については、『直近に適用された転換価額』は当初転換価額を指すことになると思われるから、転換価額の修正が行われるのは、修正価額が601,200円を上回った場合となり、修正後の転換価額については、その時期に株価が余程激しく動いていない限りは60〜61万円程度になると思われる。
 また、2回目の修正は(60万円の1.2倍の)72〜73万円近辺で行われるものと推測される。

いつもと上下逆
図1 本MSCBの転換価額修正条項の概要


〜CBか、MSCBか 考察〜

 さて、今回の新株予約権付社債が(MSCBではない)CBか、それともMSCBかという点については、自分としては「MSCBである」と言う認識を持っている。MSCBの「MS」は、「Moving Strike」の略であり、すなわち転換価額の修正が行われるCBがMSCBである、と言う解釈が妥当であると考えている。と言うことで、本CBはMSCBであると考える次第である。
 会社側は、一般的なMSCBは転換価額が上方・下方に修正されるものだとFAQに記載している(リンク)が、下方修正のみ行われるCBもMSCBと一般的に言われているのであるから、自分としては、上方修正のみが行われる本CBもMSCBであると主張するところである。
 なお、念のために付け加えておくと、このFAQで会社側が記載しているように、本MSCBが、(一般的な)MSCBとは異なり、株価が下がっても転換価額の下方修正や一株価値の希薄化を起こさないものであるという点には全く同感である。見解が異なるのは本新株予約権付社債がMSCBと呼ばれるものか否かという点のみということで。

 本MSCBは、昨今問題視されている(一般的な)MSCBとは、転換価額の下方修正は行われないと言う点で明らかに異なる。したがって、今回のMSCBを引き受けるUBSは、少なくとも一般的なMSCBで行われていると見られているような、貸し株の空売りで株価を大幅下落させ、転換価額の下方修正が行われた後に株式転換を行って返却する、と言う手法は使えない。なにせ、転換価額の下方修正は行われないのだから。
 となると、UBSは、今後の株価上昇を期待して引き受けを行った可能性が考えられる。当初転換価額の501,000円を上回る水準で貸し株の空売りを既に行っていない限り(←ここ重要)、株価が上昇しなければ本MSCBで利益を上げることは不可能であるからねぇ。
 ここで注目したいのが、本MSCBの償還期限がちょうど1年後の08年11月であるという点である。1年という償還期限はCBとしてはかなり短い期間であり、また、償還期限が2年程度のことが多いMSCBと比べても短い。また、本MSCBの当初転換価額は先週末終値と同額に定められており、一般的なCBで行われているような、当初転換価額を直近株価よりも高い値に設定することは行っていないのである(参考:シャープ(6753)のCB)。
 この辺を考慮すると、UBSは、一般的なCBを引き受けるのに比べれば、株価上昇時に利益を上げやすいと言えるし、また、仮に株価が低迷した場合、1年という比較的短期間で資金を損失なしで回収できることが指摘できる。


 以上より、本MSCBは、(一般的な)MSCBほどではないものの、(普通の)CBに比べれば希薄化の問題は大きいとも言えそうである。
 一方で、個人投資家の立場から見た場合は、引き受け手に株価を売り崩す理由が存在しないという点において、MSCBに比べればはるかに良い資金調達手法であると言えそうである。

 ただ、個人的には、UBSが本MSCBの条件に満足しているとはちょいと考えられないのだよねぇ。かつてUBSが引き受けたフォーサイド(2330)やアイディーユー(8922)発行のMSCBの条件あたりから見れば、今回の条件はずいぶん優しい?ように思える次第なのである。
 この辺、UBSが何かしらの秘策を持っているのか、あるいは持っていないのか、実に興味深いところである。
 
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2006年11月04日

ゼクス(8913)のMSCB

 10月27日、ゼクス(8913)は40億円のMSCB及び60億円相当の新株予約権の発行を発表した。プレスリリースはこちら。・・・ここだけの話、ファイル名の先頭が「MPO」だったのには爆笑した。

 本ファイナンスは、MSCB及び新株予約権のそれぞれに注目すべき点があり、特に、新株予約権については行使価額の修正条項がこれまでに例のないものとなっている。
 本記事では、このうちMSCBについて考察を行い、本MSCBの転換価額修正条項について簡単に説明した上で、本MSCBの転換額制限契約に関する疑問点について考察を試みる。

〜毎月修正・ディスカウント率10% 概要〜

 本MSCBの転換価額修正の概要を図1に示す。本MSCBの当初転換価額は、245,300円と定められている。また、転換価額の修正が行われる日(決定日)は毎月第三金曜日と定められており、例外として第1回決定日のみは11月24日(第4金曜日)と定められている。
 各決定日における修正後転換価額は、決定日までの3取引日の終値平均値の90%になると定められている。第1回決定日を例に取ると、11月21・22・24日の3営業日の終値の平均値から10%ディスカウントした値に転換価額が修正されることになる。また、本MSCBの上限転換価額は334,500円、下限転換価額は111,500円である。

3日はちょっと短いかな?
図1 本MSCBの転換価額修正条項の概要

 なお、貸株の空売りについては、プレスリリースの最後のページに「MSCBや新株予約権の行使で得られる株式数の範囲内でなら借株を行う」かもしれないらしいので、当然、行われる可能性があるものと警戒しておくべきと考える次第である。

〜『原則』と例外 考察〜

 さて、自分が本MSCBでもっとも注目しているのは、プレスリリース1ページ『第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の転換については、原則として月間転換額を上限10億円とする契約を野村證券株式会社と締結する予定です。』と言う一文である。
 一見するとこの一文、会社側が過度の株価変動を抑制する事を目的として行おうとしている契約のように思える。しかしながら、この一文にも、つっこみどころはしっかり存在していて、『原則として』の『原則』とは何なのか、はたまた、「例外」もあって、その場合は10億円以上の転換も認めるつもりなのかどうなのか、といった点が不明なのである。

 この点について考察する際に参考になるのが、本年5月に双日(2768)が発行した3000億円分のMSCB(プレスリリース)に関する事例である。
 双日は、MSCB発行時に、MSCBの転換は原則として毎月300億円以内にする旨の契約を引き受け手の野村証券と結んだとしていた(プレスリリース2ページ)のだが、その後の転換状況を調べると、8月は1ヶ月間で460億円分のMSCBが転換されていることが確認できる(大量行使に関するプレスリリース)。しかも、この転換限度の拡大は、事前に投資家には周知されず、野村のMSCB大量転換に関するプレスリリースの中で事後報告されると言う形で発表されることとなったのである。
 この際の双日側の言い分は、『投資家の需要や株式市場への影響等を総合的に勘案し』と言うことであったから、何のことはない、会社(双日)側が好き勝手に決められると言うことだったようである。

 話を戻して、んではゼクスの場合はどうなのかというと、転換額制限に関する契約の文言は双日のMSCB発行発表時のプレスリリースに書かれたそれと全く同じである。つまり、双日と同様、月間転換額を10億円と定めた契約を会社側が自ら?放棄し、投資家があずかり知らないところで10億円を超えるMSCBが集中的に転換される可能性は否定できないところなのである。
 仮に、あくまでも仮に、月10億円を超える大量転換が行われるとすれば、新株予約権の行使価額修正が可能となる来年2月14日以前である可能性が高いように思えるので、まずはそれまでの間、生暖かい目で会社側の動向を見つめたいものである。


 本MSCBは、MSCBの転換額制限契約が、それなりに守られる契約であるのか、それとも、株価維持を目的とした単なるお題目であり、ごく当たり前に破られるものであるのかという点を見極めるための一つの参考例として注目したいところである。
 もし、本MSCBで月10億円を超える転換があったとしたら、転換額制限契約は、貸し株の制限に関する一文と同様、実質的には何ら意味がないものと認識し鼻で笑っても良さそうである。と同時に、今後、そこらへんを逆手に取った短期集中転換及び大規模な売り抜けが行われる可能性を警戒する必要が出てくると考える次第である。
 
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2006年10月08日

「証研レポート」掲載のMSCB関連記事の紹介及び読んだ感想

 人間せっぱ詰まってくるとむしろどうでもよいことをやりたくなってしまうもので、この前本業で忙しいときに、なぜかMSCB関連の記事をいろいろ探したりしていた。
 その際、財団法人日本証券経済研究所刊行の「証研レポート」という出版物に掲載されている「MSCBとディスクロージャー制度」と題した記事(記事へのリンク)を発見したので紹介してみる。いやあ、こういう雑誌が出ていることも、そもそもこういう財団法人があることも初めて知ったよ。

 詳しい内容は記事をお読みいただくとして、個人的には、
・「MSCB」と「私募CB」を別のものとして扱い、MSCBをやたらと擁護する姿勢が強い。
・有利発行の問題を論じることを避けている
といった点から、MSCBを擁護する姿勢が強いと感じた。まあ、自分とはちょいと考え方が違うが、その辺は個々人の考えと言うことで。

 一方で、自分が気になったのは、行使価額修正条項付新株予約権に関する言及が記事中に全くない点である。
 しばらく前に出た東証の上場規制見直し案でも、MSCBの発行制限は議題に上がっているのに対して、新株予約権については全く話が出ていなかった。本記事でもそういう流れになっていたので、専門家?の間ではそういう流れになっているのかな〜とちょいと気になった。

 仮にそういう流れが続き、最終的にMSCBだけの発行制限が行われた場合、MSCBのかわりに行使価額修正条項付新株予約権の発行が行われるようになることは容易に想像できる。
 従って、MSCBだけの発行是非を議論しても、投資家保護という観点では何の意味もないわけだが、その辺はどう思っているのかな〜という想いが一層強まった次第である。 
 
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2006年09月26日

クインランド(2732)、CB及び新株予約権の発行やり直しを発表する

 25日、クインランド(2732)はかねてより発表していた新株予約権及びCB(MSCBに非ず)の発行を取りやめると同時に、一部条件を変更したうえで、当初の割当先に発行すると発表した。発行中止のプレスリリースはこちら、そして発行やり直しのプレスリリースはこちらである。

 今回の発行やり直しの理由として、会社側は、@発行スケジュールの変更およびA誤記の訂正を挙げている。このうち、@については当ブログ的には重要でないので割愛するとして、面白いのはAである。

 Aで示されたうち一つ目の誤記は、新株予約権の行使価額修正条項に関するものなのであるが、誤記として挙げられ、訂正時に削除されたのは、行使価額の修正は下方修正のみ行われ、上方修正は行われないことを意味していたととれる一文なのである。
 つまり、発行中止となった新株予約権は、行使価額が下方修正のみ行われる新株予約権だったのに対し、発行やり直しのプレスリリースからは、やりなおしで発行する新株予約権は、上方・下方双方に行使価額の修正が行われる新株予約権であると読みとれるのである。
 これは、新株予約権の行使条件が大きく変わるものであり、単なる誤記が原因とはにわかには信じがたい。ただ、会社側は、本新株予約権の特徴として、『3.本新株予約権の行使価格は、上方には無制限に修正される一方、・・・』と当初(発行中止になった新株予約権)の段階から主張しているので、誤記が原因とも思える。だって、行使価額が下方修正しかされないのだったら、(当然のことではあるが)上方に無制限に修正されるどころか全く上方修正されないのだからねぇ・・・会社側は極めて問題のある発表を行ったと言うことになっていたはずである。

 もし、本新株予約権が実際に下方修正のみ行われる新株予約権として行使価額の修正が行われ始めた(=本来は上方修正すべき局面でも上方修正されなかった)場合、会社側の言い分が問題視されてかなり揉めた可能性もあるだけに、そもそもどういう理由で誤ったかはさておき、発行される前に訂正がなされたのは実によいことだったと言えそうである。


 そうそう、これは本筋とは関係ない重箱の隅をつつくような話であるが、自分は、発行やり直しのプレスリリースにも(少なくとも)1カ所誤記があるのではないかと考えている。
 プレスリリース6ページ、14.(1)の『・・・ただし、かかる算出の結果、修正後行使価額が当初行使価額の50%に相当する金額(円位未満小数第2 位まで算出し、その小数第2 位を切り上げる。ただし、第15 項第(1)号ないし第(4)号による調整を受ける。以下「下限行使価額」という。)を下回る場合には修正後転換価額は下限行使価額とする。』という文章のうち、『修正後転換価額』という部分は「修正後行使価額」の間違いではないかと考えている。だって、新株予約権なのだから、転換なんてしないからねぇ。

 まあ、新株予約権の行使に何らかの影響を与える誤記ではないと思われるから、ニヤニヤしつつそのまま放置と言うことで。


◎本記事作成に当たり、有益な討論をさせていただきましたZeppelinさんに感謝いたします。◎

 
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2006年09月25日

デザインエクスチェンジ(4794)、行使価額修正条項付新株予約権の発行を発表する

 20日、デザインエクスチェンジ(4794)は全部で36,000株、行使時の払込金額にして約20億円相当の新株予約権の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 引き受け手はISGR1号投資事業組合である。この投資事業組合の業務執行組合員は株式会社産業構造総合研究所の代表取締役であるから、プレスリリース冒頭にも書かれているとおり、産業構造総合研究所との資本業務提携の一環と見るのが妥当であろう。

 プレスリリースを見ればわかるとおり、本新株予約権には行使価額の修正条項が定められている。修正条項そのものにはこれといった特徴(というかゆかいなところ)はないのだが、つっこみどころは別にある。

 デザインエクスチェンジは、MSCBの発行には株主総会において特別決議を要すると定款に定めている。この点についてはプレスリリースの『5.その他』にも明記されている。
 んで、その定款に今回の(行使価額修正条項付)新株予約権発行が違反しないか、という点に関する会社側の見解も『5.その他』に示されている。
 このうち、@の『本新株予約権は単なる下方修正付ではなく、上方修正付でもあり・・・』というところは鼻で笑っても良さそうに思えるが、Aの『本新株予約権は修正条項付とはいえ、あくまで「新株予約権」であり、定款上にある「新株予約権付社債」とは経済的にも法律的にも全く別なものである。』という点については、同意せざるを得ないところである。確かに、(MS)CBと(行使価額修正条項付)新株予約権は別なものだからねぇ。

 これまでも、行使価額修正条項付新株予約権の発行に際して「MSCBではない」とプレスリリースにて明示した例は結構あるが、定款でMSCBの発行を制限した企業が行使価額修正条項付新株予約権の発行を発表したのは、自分が知っている限りは初めてである。
 ちなみに、取締役会でMSCBの発行をしないと決議した後に行使価額修正条項付新株予約権を発行した例はあり、アーティストハウス(3716)の事例を一例として挙げる(参考:MSCB発行制限決議のプレスリリース、その後発表された行使価額修正条項付新株予約権発行のプレスリリース)。

 ただ、今回のデザインエクスチェンジの一件で、例え定款でMSCBの発行制限が定められていたとしても、行使価額修正条項付新株予約権の発行は、(多少の見解表明は必要としても)何の問題もなく行えることが明らかになったと言える。
 したがって、定款、取締役会決議、あるいはその他何らかの手段によりMSCBの発行制限が定められていたとしても、ある意味MSCB以上に悪質とも言える、行使価額修正条項付新株予約権の発行が行われる危険性は常に考慮しなければならなくなったと言えそうである。

 ・・・と、言うわけで、MSCBの発行制限を取締役会で決議しようが、定款に定めようが、大して意味はないと認識すべきと考えるところである。
 ・・・最終的には、その企業の常日頃の振る舞いを見て判断すると言うことになるのかねぇ。
 
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2006年08月10日

ソフトブレーン(4779)の新株予約権

 3日、ソフトブレーン(4779)はCB(MSCBに非ず)および新株予約権の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 本新株予約権は、行使価額修正条項が前例のない仕組みになっている上、今後発行されるMSCB及び行使価額修正条項付新株予約権の先駆けになる要素をも含んでいると考えることも可能な、きわめて斬新な事例であると感じている。
 本記事では、本新株予約権の概要について説明した後に、本新株予約権の特色や注目する点について考察を行う。

〜上限行使価額は当初行使価額以下 概要〜

 まず、本新株予約権の行使価額修正条項の概要を図1に示す。当初行使価額は52,260円である。行使価額の修正は、『2006年9月21日(木)以降の毎週月曜日、水曜日及び金曜日』に行われると定められているから、本新株予約権の第1回修正日は9月22日(金)であり、それ以降は、毎週月・水・金曜日に修正が行われることとなる。
 一方、行使価額の修正については、(当日を含む)直前5連続取引日におけるVWAPの平均値の90%に相当する額に修正されると定められているから、行使価額はVWAPの5日平均から10%ディスカウントされた値に修正されることになる。たとえば、第1回修正日の9月22日については、行使価額は9月15・19・20・21・22日の5日間のVWAPを元に算出されることになる。なお、自分は、本件のように行使価額の修正を週3回行う事例は初見である。
 また、上限行使価額は44,220円に定められているから、VWAPの平均値が49,134円を上回った場合、行使価額は44,220円に定められ、それ以上にはならないことになる。ここで注意しておきたいのが、当初行使価額は上で述べたとおり52,260円であるから、第1回の修正日においては必ず行使価額の下方修正が行われ、44,220円以下に定められる点である。つまり、引き受け手は、当初行使価額での予約権行使はまず行わないことが確実である。

1回目は必ず下方修正
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要

 一方、下限行使価額については定められていないため、株価の下落が続けば行使価額は際限なく下落し続けることとなる。しかしながら、プレスリリース4ページ目には、引き受け手は、行使請求日のVWAPが当初行使価額の50%を下回る場合においては、自由に新株予約権の行使を行うことはできず、ソフトブレーン側が行使を要求した場合以外には行えない(そして、引き受け手側は必ず行使しなければならない)ことと定められている。ここら辺を図2に示す。

分水嶺は26,130円
図2 本新株予約権の行使指示に関する概要

 ただ、行使要求を行う際に、行使を行う株数を指定するのか否か、また一定期間内の行使を義務づけるようにするのか、それとも期間を定めないで行使を要求するのか、といった取り決めについては記されていないので、この条項についてはまだ細部を詰めていないのかもしれない。この点については、具体的な話が決まったら、ソフトブレーン側が開示を行うことが望ましいと考える次第である。

 本新株予約権は、MSCBのように行使価額修正に伴い交付株式数が変動するわけではなく、新株予約権行使により交付される株式数はあらかじめ140,000株と決められており、行使価額修正は、新株予約権行使の際の払込金額が多いか少ないか、ということに影響する仕組みになっている。仮に、あくまでも仮に、本新株予約権の平均行使価額が4万円だった場合、手取金は全部で56億円になるし、平均行使価額が2万円だった場合は28億円となる。
 なお、このようなあらかじめ交付株式数が定められた新株予約権発行の前例としては、ドリームテクノロジーズ(4840)が複数回の発行を行った事例が挙げられる(当ブログの考察記事 その1 その2)。

 そうそう、貸株については、プレスリリース16ページにも書いてあるとおり、CB及び新株予約権により得られる株式数(約16万株)までは行えるようなので、当然あると考えるべきである。

〜会社資産の希薄化 考察〜

 さて、本新株予約権は上で述べたように、上限行使価額が当初行使価額を大きく下回るという極めて特異な行使価額修正条項が付与されている。言い換えると、一度行使価額の修正が行われれば、行使価額は絶対に下方修正され、予約権行使の際に得られる資金は少なくなるのである。
 ソフトブレーン側は、本ファイナンス発表の翌日に、再度、本ファイナンスの概要について開示を行った(リンク)。そのうち、新株予約権の解説については、『・・・調達金額に変動はありますが、140,000株を超えて発行済み株式数が増加することはありませんので、希薄化につきましては限定的となります。』と記載されている。確かに、発行済み株式数の増加が一定(14万株)という点については嘘を言っているわけではないのだが、調達金額の変動、すなわち行使価額の修正が大したことではないかのように書いてあるのはちょいと納得しがたいところである。
 上でふれたとおり、行使価額の修正は、本新株予約権による資金調達額がいくらになるかという点、ひいては株主資本の増加額に直接影響する。四季報夏号によると、ソフトブレーンの株主資本は本ファイナンスを行う前の4月末の時点で2,610百万円であるが、本新株予約権の行使により得られる資金額は、数十億円に達し、株価(=行使価額)の動向によっては数億〜十億程度の変動は起こりうるから、当然、一株純資産にも大きく影響してくる。これを「限定的」と表現するのは果たして妥当なのかな〜とか感じる次第である。
 まあ、下限転換価額のないMSCBと比較すれば、「限定的」という表現が当てはまらないこともないのだがねぇ・・・おまいら、それと比較してほしいつもりなのかと。

 そうそう、CBの転換価額は40,602円と現在の株価水準から見れば割高であるが、社債権者(CBの引き受け手)は本年8月24日以降に額面の100%で繰り上げ償還を請求する権利を有している。すなわち、引き受け手は、CBを転換せずに保有し続けることがいやになった場合は、繰り上げ償還請求を行うことで、損すること無しにソフトブレーンから資金を回収することができる仕組みになっている。まあ、引き受け手が本当にやるかどうかは知らないが。
 ここら辺を考慮すると、株価が現在の水準(3万円台)をうろうろする限り、CBの転換よりも先に、行使価額修正条項により行使価額がCBの転換価額以下に下方修正されるであろう、新株予約権の行使が行われるものと推測する。

〜東証規制を越えて 主張〜

 現在、東京証券取引所はMSCBや第三者割り当て増資等の規制を検討している。
 この規制案の骨子については、「新規発行株式数が発行済株式総数の20%以上になる場合は株主総会の承認を求める」方針であると日経にて報じられたことがある(リンク)。ただし、東証側はこれ(20%という数値設定等)を否定するプレスリリースを発表している(リンク)。
 最終的にどのような規制が定められるか、あるいは定められないかは現時点では全く不明であるが、本新株予約権は、日経で報じられた規制案をすり抜ける要素をいくつも備えた極めて斬新な設計となっている。以下、順に挙げてみる。

 まず、本新株予約権の行使で得られる株式数を一定とした点である。仮に、この新株予約権行使で得られる株式数を発行済み株式総数の19.99%にすれば、20%以上のみを対象とする規制案をすり抜けることが何の問題もなく可能なのである。
 次に、上限行使価額を直近株価よりも高く設定している点である。この点は、今回のように新株予約権行使で得られる株式数を一定にした場合は大した意味を持たないが、MSCBのように、転換価額の下方修正が交付株式数の増加につながる場合は、当初転換価額を高く設定して、当初転換価額で転換を行った場合に得られる株式数を小さく見せかけ、発行済み株式総数の20%以内に抑えることで規制案をすり抜けることができそうである。ただ、「発行済み株式総数の20%」を超えているか否かの判定を当初転換価額で行うのか、それとも下限転換価額など、他の基準を用いて行うつもりなのかについては具体的情報が得られていないので、今回のような手法が実際に規制案のすり抜けに有効かどうかは、具体的な規制内容がはっきりしてからでないと判定できないところではある。
 このほか、実は東証が規制を検討しているのはMSCBだけで、行使価額修正条項付の新株予約権は実は対象外になりそうなのでそれを狙ったのではないかという可能性も考えられるが、そこら辺は東証がよほどの間抜けでない限り心配しなくてよいはずであるから、ここでは考えないこととする。


 今回のファイナンス、CB、もしくは新株予約権単体について考えるだけではもったいないほどおもしろい代物である。
 CB・新株予約権の同時発行、(当ブログの考察対象外であるが)調達資金の使い道、そして現在進行中のMSCB発行規制案とのからみなど、いろいろな視点から考えることができる実に興味深い事例であり、今後の推移を生暖かい目で見守りたいところである。
 
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2006年07月14日

ロイターのMSCB特集記事を読んだ感想

 11日のことなのであるが、ロイターのWEB版でMSCBに関する特集記事が組まれていた。今日調べなおしたところ、ロイター上では記事がどこに行ったかわからなくなっていたのだが、ヤフーの方で見つけることができた。
 ヤフーでの記事は全部で4件に分かれており、全体をまとめる記事および、MSCBに関わる立場を代表して、引受証券会社の代表格である野村証券(記事)、発行企業の代表?として日本経団連(記事)、そして(機関)投資家の立場である企業年金連合会(記事)にそれぞれインタビューした記事が1件ずつ掲載されている。

 今回は、これらの記事のうち、インタビュー記事を読んだ感想を書いてみることとする・・・全体記事はこれらインタビューのまとめに近い印象なので、別段書かなくてもいいかなと思ったので。
 以下の文中において、インタビュー記事より引用した部分については『』で示す。


 まず、野村証券である。ここは双日(2768)の3000億円のMSCBをはじめとして、巨額MSCBの引き受けを何件も行っていることは有名である。
 インタビュー記事の内容については、まあ全体的にはこんなもんかな〜という感じである。公募増資の際に必要となる発行費用等を考慮した場合には、『公募増資と比べて遜色ない』というのを強調しているのはお約束。

 で、自分としてはこの記事でつっこみたい点が一点ある。
 記事中、『──MSCBの商品性が悪いとの批判が株主の間で根強い。株主からみてよいMSCBの見分け方は。』との質問に対し、『引受証券会社とエクイティ・ストーリーで見分けるしかない。』とある。引受証券会社の方は理解できるとして、『エクイティ・ストーリーは、発行時のリリース資料から何のためのエクイティ・ファイナンスなのか資金使途や発行規模が整合性が取れているかどうかで判断するしかない』という点につっこみたい。
 言ってることは正論だと思うのだが、自分の経験では、発行発表時に「エクイティ・ストーリー」らしきものを熱く語る企業は、その後株価が下落しやすいように感じるのである。双日もその一例といえるかも。また、フォーサイド(2330)はその最たるものであろう。
 自分としては、MSCB発行発表時の解説を一生懸命やるのは、そのMSCB発行が株価に悪材料になることを感じていて、それを覆い隠す意図があるんではないかな〜とか勘ぐっていたりもしており、このような場合、問題点を隠し、やたらとメリットのみを強調する傾向が強まると思われる。つまり、企業側が提示するエクイティ・ストーリーが信頼できない事例が少なからず存在するのである・・・ただ、これはMSCBに限った話ではないことも付け加えておく。
 その辺までひっくるめて警戒してしまうと、「MSCBを発行する企業は信頼できないからとりあえず逃げる」という考えに投資家側がたどり着きかねないと思うのだが、その辺はどう思っているのやら。「投資家各々の自由」と言う見解になるかねぇ。


 次に、日本経団連であるが、まあ、こういわざるを得ないだろうな〜という印象である。注意すべきは、日本経団連はライブドアをはじめとするMSCB発行企業だけでなく、MSCBの引き受け手である証券会社(野村証券も加盟しているよね?)も数多く加盟している点である。ある意味、発行企業と引き受け手の両方を代表する立場なのだから、MSCBを悪く言うはずがない。
 と言うことで、自分としては鼻で笑いつつ軽やかにスルー。

 そうそう、ぜひ、文中で述べられている『”詐欺まがい”の調達手法』とはどのようなものを想定しているのかご教示いただきたいものである。これまでの資金調達の中では、自分が知っている限りでは、三菱自動車(7211)の優先株が最凶だと思うのだが・・・考えようによっては、アドテックスのMSCBか。


 最後に、企業年金連合会である。ここは投資家の立場と言うことで、概ね同意できる内容となっている。
 特に、『資金使途によってMSCBを区別すべきでない』と述べた点については高く評価したい。時折、「調達資金がM&Aや事業拡大に使われるからこのMSCBはいいMSCBだ」という論法を(発行発表時のプレスリリースですら)見かけることがあるが、仮に事業拡大に成功したとしても、希薄化の影響がそれを上回り、株価にとってはマイナスとなる可能性も否定できないのである。従って、自分としては、MSCBについてはあくまで発行条件により良し悪し?を評価すべきであると主張する次第である。
 ただ一つ気になるのは、株主総会でMSCBの発行承認を必要とする基準に、『20%希薄化の発行』を提案している点である。これ、潜在株式数が日々増減するMSCBにおいて、どうやって判断するつもりなんだろうねぇ。


 ・・・この三者三様の見解を見るに、やっぱりMSCBに関する意識のずれというものは当分埋まらないんだろうな〜という想いを強くした次第である。
 
posted by こみけ at 00:23| Comment(10) | TrackBack(1) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月01日

サンテレホン(8083)、新株予約権の発行を中止

 先日当ブログでも取り上げた(該当記事)、サンテレホン(8083)の新株予約権発行に対し株主が発行差し止めの仮処分を申し立てた件であるが、6月30日、東京地方裁判所が発行差し止めの決定を行った模様である。
 これを受け、サンテレホンは新株予約権の発行を中止した。プレスリリースはこちら

 このプレスリリースを読む限りでは、本新株予約権のどこらへんが問題視され差し止めが認められたかについてはうかがい知ることはできない。また、1日の日経朝刊に本件に関する記事が出ていたが、こちらでも差し止め理由に関しては触れられていなかった。従って、現在のところ差し止めの理由については自分は知らない状況である・・・情報をお持ちの方がいらっしゃったら教えて下さい。

 個人的には、サンテレホン側が異議申し立てを行わず、あっさり新株予約権の発行を取りやめたことから、本新株予約権が大株主(申立人のジェイエムビーオー・ファンド・リミテッド等)の影響力削減を狙ったものと認定されたのではないかと推測している(あくまで個人的推測です)。
 この場合、ニッポン放送の新株予約権を巡る一件が判例?として存在するので、逆転は難しそうだからねぇ。

 ・・・この件については、できれば、もう少し内情を知りたいところである。
 すぐでなくてもいいから、どこかの経済誌あたりで取り上げてくれないものかねぇ。
 
posted by こみけ at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月24日

サンテレホン(8083)、株主より新株予約権発行差止めの仮処分を申し立てられる

 22日、サンテレホン(8083)は、16日に発行を発表した行使価額修正条項付新株予約権の発行差止めに関する仮処分の申し立てが同社大株主により行われたことを発表した。プレスリリースはこちら。また、本新株予約権発行発表のプレスリリースはこちら

 今回、仮処分の申し立てを行ったのはジェイエムビーオー・ファンド・リミテッド(JMBO)なる会社と、その他1社であり、いずれもファンドであると考えられる。これら2社を合計した同社株の持ち株比率は14%程度になるようであるから、決して無視できない存在であるのは間違いない。
 仮処分の申し立て理由は、会社側発表のプレスリリースによれば、『本新株予約権は法令違反、および著しく不公正な方法による発行に該当する』と言うことらしい。
 詳しい話は裁判所で、と言うことなのかも知れないが、ちょいと漠然としすぎていてJMBOの真意をとらえがたいところである。


 さて、本件を考える上で興味深いのは、サンテレホン側は、新株予約権が行使された折には新株の発行は行わず、自己株式を交付する可能性があることを表明している点である。と言うか、全新株予約権が行使された場合に発行される株式数と四季報夏号に載っている自己株式数が同数なのだから、自己株式の交付で対応するつもりなのであろう。
 んで、もしサンテレホン側が約束通り自己株式の交付で新株予約権の行使に応えるとするのならば、普段MSCBや行使価額修正条項付新株予約権においてもっとも問題視される一株価値の希薄化は起きないとも言えるのである。
 仮に、JMBO側が、サンテレホンは新株予約権が行使された場合に新株発行を行わず、自己株式の引き渡しを行うと見ているのならば、今回の仮処分の申し立ては、一株価値の希薄化による既存株主の権利侵害という意味合いではなく、自己株式が三菱UFJ証券の手に渡り、あるいはそこからさらにどこかに転売されることで、自分達を脅かすような大株主が現れることを警戒したと見ることもできるのである。

 ただし、貸し株の空売り等により株価が下落することで、行使価額が下方修正されれば、会社に入る現金が減少し会社資産へ悪影響を与えるわけだから、新株予約権が行使された場合の株券引き渡しを自己株式で行ったとしても、既存株主への損害が起きる可能性があるのも事実である。
 自己株式を売却して現金を入手したいのなら、立会外分売等でさばけばいいだけの話だからねぇ。わざわざ後払いかつ価格変動リスク(行使価額の修正)のある新株予約権で処分する必要性は、流動性の問題と、会社側が好ましくないと思っている特定の大株主(←ここ重要)に買い占められること以外にはないわけであるから、この辺にJMBOが不満を持った可能性も大いに考えられる。


 なお、新株予約権ではないが、MSCBが行使された際に、新株ではなく自己株式を引き渡して決済した事例として、昨年12月に若築建設(1888)が発行した第2回MSCBが挙げられる(プレスリリース)。
 この事例では、何事もなくMSCBは全額行使され、その全てが自己株式の引き渡しにより決済されたようである。


 今回の仮処分申し立て、JMBOが『本新株予約権は法令違反、および著しく不公正な方法による発行に該当する』と主張するにあたって、会社への大株主としての影響力低下と、既存株主への悪影響のどちらを念頭に置いているかが重要と考えるところである。
 仮に、JMBOが法廷で後者を主張し、かつ仮処分が認められた場合には、これまで発行されてきたMSCBや行使価額修正条項付新株予約権に違法性(有利発行との判断)が生じ、今後の発行が抑制される可能性がある。
 一方、JMBO側の主張が前者である場合は、ニッポン放送騒動の際と同様、個別事例に対する判断にとどまり、他のMSCBや新株予約権への影響は与えない可能性が大きいと見るところである。

 JMBOの主張、サンテレホンの反論、そして裁判所の判断、いずれも注視しておきたいところである。
 
posted by こみけ at 23:51| Comment(6) | TrackBack(1) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月23日

東証、「上場制度総合整備プログラム」の策定を行う

 22日、東証は「上場制度総合整備プログラム」なる上場規制の見直し方針案?の発表を行った。プレスリリースはこちら

 本プログラムの中で当ブログ的に最も重要なのは、2ページにある、

『株式、新株予約権又は新株予約権付社債の発行における通常の開示内容に加え、発行価額が時価よりも低い価額で設定されている場合やMSCBの発行の場合における開示内容の充実(例えば「当該発行の適法性についての法律専門家の意見」、「割当先の選定理由」、「割当先の保有方針」等の開示(割当先がファンドである場合の開示の充実を含む)を行う』

と言う記載である。
 これについては、「有利発行か否か微妙なケースについてはしっかり開示するように」と言う意味合いであるととらえるところであり、具体的な規制の前に、まずは情報面の充実を優先する方針であると見られる。

 ただ、開示の充実を行うと言ってもどれだけ意味のあるものになるかと言う点については疑問が残る。
 例えば、上の記載のうち、「当該発行の適法性についての法律専門家の意見」については、一例として、こちらのなが多(現クロニクル、9822)が新株予約権を発行した際のプレスリリース(リンク)にあるような文言を掲載することが考えられる(2ページ目(13)の最終段落)。要するに、「問題ない」の一言で終わらせてしまうのではないかと。
 ちなみに、この新株予約権の払込金額が1株あたり37円だったのに対し、発行発表日の10月24日終値は82円であった。すなわち、引き受け手は直近株価の半値以下で新株を手にする権利を得たのであった。
 ・・・と言う前例もあることを考えると、東証がやろうとしていることは、少なくともMSCBの発行抑制につながることはないと考えるところである。

 それ以上に気になるのが、MSCBについての(あんまり意味のなさそうなことではあるが)記述はあるものの、MSCB以上に悪質な行使価額修正条項付新株予約権についての記述が一切無い点である。ここは問題視していないのかねぇ。
 また、普通MSCBが何の略語かくらい示さないのかねぇ・・・こういう発表資料には、当然記載するものだと思うのだが。西室社長の記者会見内容(リンク)なんかとあわせて考えると、そもそも東証の中の人々は、MSCBがどういうもので、東証全体でどれくらい発行されており、過去にどんな祭りが起きたのか把握しているのだろうか、と言う点に疑念を抱かざるを得ない。この辺の知識不足があったりすると、当然、規制案?の策定はうまくいこうはずもないところである。


 ここら辺に想いを巡らせて想像するに、MSCBや行使価額修正条項付新株予約権については、少なくとも今年度は、発行や転換価額修正に関する実効性のある規制は行われないものと推測するところである。
 要するに、野放し状態が継続する事が予想され、引き続き警戒が必要と思われるところである。

 ・・・まあ、東証などあてにせず、自衛をしっかりやりましょうと言うことで。

(6/24 文章のつながりが悪いように思えたのであちこち修正しました)
 
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2006年05月21日

双日(2768)のMSCB

 4月28日、双日(2768)は第3回・第4回合わせて総額3000億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は野村である。
 本MSCBは、発行規模がMSCBとしては過去最高であることに加え、調達資金が優先株の消却に充てられるなど、資本政策上興味深い点がいくつか見られる。
 本記事では、本MSCBの転換価額修正条項の概要について簡単に紹介した後に、本MSCB転換に当たっての野村の動向や、本MSCBの発行目的である優先株の消却について考察を試みる。


〜VWAP平均から10%ディスカウント 毎月修正型 概要〜


 今回、双日は、第3回・第4回MSCBをそれぞれ1500億円ずつ発行した。第3回と第4回MSCBについては、新株予約権の行使(転換)請求期間が異なっており、第3回が5月26日以降、第4回が7月1日以降となっている。第4回が7月からとなっているのは、第4回分の転換を行うためには株主総会にて普通株の授権枠拡大を決議する必要があるかららしい。もし授権枠拡大が否決されたらどうするつもりなのだろうか・・・繰上償還かねぇ。まあ、大丈夫だろうけど。
 以下、本記事においては、第3回MSCBを例に取り説明を進める。

 本MSCBの当初転換価額は694.1円と定められている。また、上限・下限転換価額はそれぞれ2,047.5円及び341.3円と決定されている。
 そして、転換価額の修正は第1回目が6月2日であり、それ以降は毎月第3金曜日に行われるものとされている。この際の転換価額の修正は、「決定日までの5連続取引日のVWAPの平均値の90%に修正される」と記されているから、転換価額はVWAP平均より10%ディスカウントされることになる。
 ここら辺をまとめたものを図1に示す。

野村引き受けではよくあるパターン
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要


〜毎月の転換規模と野村の戦術 考察〜

 さて、本MSCBは発行総額3000億円と、MSCBとしては過去最高の発行額である上、発行発表時の双日の時価総額に匹敵すると言う点から考えても、極めて大規模なファイナンスと言うことができる。
 これだけの規模のMSCBを転換・売却するとなると、いくら野村といえども簡単な仕事ではないと思われ、一般的なMSCBで行われるような、転換・市場売却を繰り返すだけでは、とてもさばききれないものと考えられる。

 そもそも、野村はどの程度の期間をかけてこのMSCBをさばく気でいるかであるが、これについては、MSCB発行発表のプレスリリースから絞り込むことが可能である。
 プレスリリース2ページには、第3回・第4回MSCBの転換は、両者の合計で毎月300億円いないとする契約を結んだことが明記されている。すなわち、野村が全てのMSCBを転換終了するのは、早くとも10ヶ月、来年4月頃までかかることになる。
 一方で、第3回・第4回MSCBの償還期日はいずれも08年5月23日、すなわちおよそ2年後と定められており、行使請求期間最終日はその前日の22日となっている。もちろん、償還期日が到来すれば、残存しているMSCBは償還されることになるから、野村が全てのMSCBを転換する意志を持っているのならば、この日までに全てのMSCBが転換できるようなペースで転換を行う必要がある。
 つまり、本MSCBは、10〜24ヶ月かけて転換されると言えそうである。

 んで、これを基にして、野村は毎月どの程度のペースでMSCBを転換するかと考えると、一ヶ月当たりで125億(24ヶ月)〜300億(10ヶ月)の範囲になる。さらに、一ヶ月を20営業日として、1日あたり平均どの程度のペースで転換されるか考えると、6億2500万〜15億の範囲と言うことになる。これを直近株価から算出した株数ベースで言い換えると、毎日120〜280万株程度と言うことになる(転換価額は520円と仮定)。
 仮に、野村がこの転換株を全て市場売却によって処分しようとした場合、双日の出来高が1000万株以下の日が多いことを考えれば、株価が大きく下落することは明らかである。従って、野村が転換で得た株式を全て市場売却することはまずないと思われ、相当数を機関投資家等に市場外で売却するものと考えるところである。


〜優先株消却は誰に利益をもたらすか 主張〜


 さて、さらに話を進める前に、二つほど資料をご覧いただきたい。
 まずはこちらのpdfファイルである(リンク)。これは、双日が本MSCB発行発表と同時に発表した中期経営計画の資料である。本資料のうち、23〜29ページが資本戦略に関する説明となっており、本MSCBで現在発行している優先株を消却することが希薄化の抑制につながると主張している。
 次に、こちらの動画をご覧いただきたい(リンク)。これは、2ちゃんねるの双日スレの方がMSCB発行発表後に作成された動画である。内容はご覧頂けばわかるとおり、MSCB発行を問題視する内容である。

 さて、本MSCBに対する捉え方が何でここまで違うかと言うことなのであるが、最大の要因として、動画にもある通り、優先株の消却は期間利益によって行う当初の方針を、MSCBでの資金調達を行い消却する方針に転換したことが挙げられる。
 双日は、昨年5月にも600億円のMSCB(第2回)を発行し、その調達資金でもって優先株の買入消却を行ったのだが、その際、以後は期間利益による優先株の消却を行うことを示唆?していたのである(資料)。
 それが、ここにきて希薄化を伴うMSCBでの消却になったと言うことで、例え、長〜〜い目で見れば、会社側の言うとおり希薄化の抑制につながるとしても、当初の方針からすれば明らかな後退なのであるから、株主としては、今回の消却手法を問題視するのは当然である。一方で、会社側は、今回の方針転換について言及せず、優先株消却による希薄化抑制のみを強調しているため、株主と会社側で温度差?が生じているのである。

 そもそも、今回消却する優先株の大半は、普通株への転換請求の開始日が5年以上先に定められているものである。つまり、これら転換請求開始日がまだまだ先の優先株については、今回MSCBでの資金調達を行ってまで消却せずに、期間利益で順次消却するという選択肢もあったはずなのである。
 したがって、消却しないまま優先株の転換請求開始日が到来し、普通株への転換が行われるのに比べれば、今回のMSCB発行による優先株の消却は希薄化の抑制につながるとは言えるが、希薄化が全く発生しない期間利益での消却も可能なように見えるのに、その選択肢を放棄したのであるから、自分としては、今回の方針が批判されるのは当然と考える次第である。

 では、何故双日は今回優先株の消却を行うことにしたのかと言う点であるが・・・自分としては、消却を望んでいたのは、双日ではなく、むしろ優先株を保有している銀行側だったのではないかと主張してみる次第である。
 転換期日が到来すれば(現在の株価よりは)安値で普通株を入手できるとは言え、このまま何年も資金拘束が行われるよりは、ある程度のプレミアム(額面価額からの上乗せ)付で買入消却してくれる方が、銀行側にとっては望ましい展開なのかも知れないと思うところである。
 それに加え、銀行側は本優先株に対してある程度は減損処理?を行っているだろうから、発表されたプレミアムよりはもう少し利益率がいいはずと思われる。その結果、銀行的にとっては、今回の買入消却は満足できる結果になったのではないかと推測するところである。
 一方で、双日側には、全ての優先株式を急いで消却することにより得られるこれと言った実利はないように思われる。まあ、優先株を消却して負の遺産を一掃しました、と胸を張って言えるようになるという象徴的意味はあるのかも知れないが、その代償が時価総額に匹敵するMSCBと言うのはあまりに割の合わない選択である。


 というわけで、今回のファイナンス、双日が自らの意志で行ったのではなく、銀行側の要求でしかたなく行ったのではないかな〜とか、こっそりと主張してみたりする次第である。
 
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2006年04月23日

アライドテレシスホールディングス(6835)の新株予約権

 2月6日、アライドテレシスホールディングス(6835、以下アライドHD)はMSCB及び新株予約権の発行を行った。プレスリリースはこちら

 本記事では、このうち新株予約権に注目し、行使価額の決定方法について簡単に説明した後に、本新株予約権を引き受けた代表取締役会長兼CEOの大嶋章禎氏や周囲のみなさんの動向について、大量保有報告書で得られる情報等を紹介しつつ本ファイナンスの意図について推測を試みる。

〜当初行使価額は下限無し? 概要〜

 本新株予約権の行使請求期間は本年5月9日から平成20年2月6日までと定められており、現時点では行使は行えない。プレスリリース9.(2)で定められている(当初)行使価額、すなわち5月9日の行使価額は、5月8日終値に定められる。また、5月10日以降の行使価額については、前日の株価終値に修正されることと定められている。すなわち、本新株予約権は毎日行使価額が修正され、前日終値からのディスカウント率は0%である。
 なお、行使価額が修正される際に398円を下回ることになってしまう場合(前日終値が398円未満の場合)は、行使価額は398円に定められることとされている(プレスリリースで言うところの下限行使価額)。
 ここで注意が必要なのは、下限行使価額が適用されるのは、あくまで行使価額修正の際であって、当初行使価額の下限は定められていないとプレスリリースからは読める点である。この解釈が正しいとすると、例えば、仮に、あくまでも仮に、5月8日の株価終値が300円だった場合、当初行使価額、すなわち5月9日の行使価額は300円と定められ、翌日以降に398円(かそれ以上)に上方修正されることになる。

 ここら辺をまとめたものを図1として示す。

当初行使価額は5月8日終値
図1 本新株予約権の行使価額決定方法の概要


〜CEO引き受けの意図は? 主張〜

 さて、本新株予約権でもっとも興味深いのは、新株予約権を引き受けたのが代表取締役会長兼CEOの大嶋章禎氏と言う点である。一般的に、経営者が企業への資金供給目的で新株を引き受ける場合は、第三者割当増資が一般的であると考えられ、今回のような新株予約権、それも行使価額修正条項付でと言うのは極めて異例である。
 対比すべき事例としては、昨年6月に発行されたライブドアマーケティング(旧4759)のMSCBを関連会社?のライブドア証券が引き受けた事例(当HPの考察記事)が挙げられるが、それと対比しても、経営者が引き受けるのは極めて異例であると言える。

 このようなファイナンスを行った理由がどのようなものであるかは推測するしかないところであるが、以下に二つの可能性を挙げてみる。

(1)メリルリンチが引き受けたMSCBの行使により、大嶋氏のアライドHDへの支配力が低下することを(大嶋氏が)警戒した
 ・・・アライドHDは、本新株予約権と同時に50億円のMSCBの発行を行った。大嶋氏としてはこのMSCB転換、すなわち新株発行により自らの持分が低下することを警戒し、敵対者が現れた際に自らの(アライドHDへの)支配力が維持できるよう、新株予約権を引き受けた、と言うのが一つの可能性として挙げられる。
 この場合、本新株予約権は防衛策としての意味合いがあるとも取れるが、防衛対象が果たして何なのかはよく考察すべきである。

(2)自己保有株を売り抜け、行使価額を下落させて上で新株予約権行使を行い株式を入手する鞘取り?作戦
 ・・・EDINETでアライドHDに関する大量保有報告書を見ると、3月20日に大嶋氏が100万株を処分する一方で、同日にモルガンが顧客勘定で100万株を取得している。同日のアライドHD株の出来高が約33万株であることを考慮すると、市場外で大嶋氏とモルガンの間で売買が成立したと考えるのが妥当であると思われる。
 この売買について、ちょいと穏やかでないことを言わせていただくと、「モルガンは大嶋氏から買い受けた株式を市場売却し、株価を下げて新株予約権の行使価額を下げる作戦を大嶋氏と示し合わせた上で行っているのではないか?」との推測も可能であると主張する次第である。なお、この主張はあくまで個人的な推測であることを改めて強調するところである。
 ただ、こちらの推測についても問題点がある。このモルガンの顧客勘定では、先に指摘した100万株以外にもかなりの株式買付が行われており、4月3日時点で約1300万株にも及んでいる。これだけの株式を抱えつつ株価を下げようとするのは極めて非合理的な行動である。株価が下がるのが分かるのなら、下がってから買えばいいのだから。
 ・・・と言うわけで、こちらの推測については、可能性は否定できないところではあるものの、合理的ではない推測と言えそうである。

 これ以外に、相続や税金対策など、直接企業経営とは関係ない大嶋氏の個人的な事柄で色々やる一環で新株予約権の引き受けを行ったのかもしれないとも思ったが、そこら辺はよく分からない分野なのでつっこみは控えることとする。


 本新株予約権に関する大嶋氏の目論見は、今後新株予約権の行使が行われた際に判明する可能性があると思われるので、大量保有報告書等の開示情報に注目したい。
 しかしながら、今回のファイナンスが本当に「企業が必要とする資金を経営者が出資する」と言う意味合いを持つのならば、出資形態は第三者割当増資、もしくは(MS)CBとなるはずであり、予約権行使の際に初めて資金が振り込まれる(=資金獲得の時期が不明な)新株予約権の形態はとらないはずである。

 この一点において、本新株予約権には、純粋な資金調達以外のなんらかの意図があるものと推測する余地があると主張する次第である。



◎本記事作成にあたり、株式掲示板で大変有益な討論をさせて頂きましたGMさんに感謝いたします。◎

 
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2006年04月21日

東証、新株発行の規制強化

 本日の日経朝刊で、東証が新株発行の規制を強化する意向との記事が掲載されていた。記事の概要はこちら。また、日経テレコンだと全文を見ることができるはずなので、興味のある方はご参照あれ。

 当ブログ的に本記事で一番重要なのは、『新株が発行済み総数の20%を超すような場合は株主総会の承認を求め』と言うところである。
 すなわち、これまでは取締役会決議のみで行われたMSCBの発行が、希薄化度合いの大きい事例のみではあるが、株主総会の承認を得た上で発行すべきである、というルールが作られることになる(ただし強制ではない)。

 本件は、既存株主に不利益を与える可能性が高いMSCBの発行を、株主総会の決議によってのみ認めるよう求めるということであるから、方向性は極めて正しい。しかしながら、実効性は極めて乏しい・・・と言うかザルである。
 問題なのは、「発行済株式総数の20%」という線引きをどのように行うかという点である。MSCBの場合は、おそらく当初転換価額もしくは下限転換価額で転換が行われた場合の発行株式数が「発行済株式数の20%を超える新株発行になるか否か」の判定基準になると思われる。

 ここで、当初転換価額が判定基準になる場合、すり抜けは至って簡単である。当初転換価額を高く設定し、転換株式数を少なく見せかけることで、発行株式数(新株)を20%以下に抑制する。んで、転換価額の修正時に転換価額を大幅下方修正させ、株式数を(20%以上に)増大させる、と言う手順を踏めば、東証の規制を簡単にすり抜けられる。

 一方、下限転換価額を基準とする場合は、判定が困難である。下限転換価額を定めているMSCBの場合は問題ないが、最近は発行発表時に下限転換価額を定めない事例が増えている(例:アイディーユー(8922))。こういう事例については、発行発表時の下限転換価額の算定は事実上不可能であるから、下限転換価額をすべてのMSCBに対する統一判定基準として用いるのは不適切であると主張するところである。
 まあ、そういうMSCBこそ株主総会で決議するべき事案なのだが・・・そこまで考えて株主総会決議を求める方針というのなら大したものだけど、そうではないだろうねぇ。だって東証だから。

 ・・・と言うわけで、自分としては、東証がやろうとしている?ような「発行済株式数の何%以上」という規制内容では効力はほとんどないと見ており、転換価額修正条項そのものに網をかけるべきであると主張するところである。
 まあ、西室社長には無理だろうがねぇ。
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2006年04月11日

金融庁懇談会、MSCB等引き受け時の審査基準の強化を求める

 先日開催された金融庁の懇談会で、(上場企業の)新株発行等を証券会社が引き受ける際の審査基準を強化するよう日本証券業協会に求めることが決まったらしい。本件について報じている日経の記事はこちら
 どうやら、MSCBがらみで空売りが行われる事例が特に問題視されているらしく、そこら辺の審査を厳格にするように、とのことらしい。

 本件は、実効性はさておき是非推進して欲しいことであるし、またやってもらわねば困ることであるが、ここで対象がMSCB限定になってしまうと、単にMSCBから(行使価額修正条項付きの)新株予約権に発行形態が変化するだけで終わってしまう。
 従って、ここは転換(行使)価額修正条項そのものに網をかけて欲しいところである。これなら、MSCB・新株予約権・優先株のいずれにも包括的に適用することができるので、効力が大きいと思われる。

 ・・・まあ、仮にこれら全てに網をかけたとしても、また新型のファイナンスがでてくるような気がするがねぇ。


 そうそう、新株予約権で思い出した。

 以前、ダイナシティ(8901)発行の(行使価額修正条項付きの)新株予約権が「MSSO」と呼ばれていたことがあった(記事)けど、あれ、その後どうなったんだろうねぇ。ダイナシティの後も、あちこちで行使価額修正条項付きの新株予約権がでているが、MSSOと呼ばれているのは見たことがない。
 MSSOという略称が一般化すれば、MSCBと対で話しやすくなると思うのだが、このまま使われることなく廃れてしまうのかねぇ。

 「本ファイナンスはMSCBとは違います」と言う言い分を鼻で笑うためにも、MSCBとの同質性をにじませる略称があった方が良いと思うのだが・・・。
posted by こみけ at 18:15| Comment(6) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月28日

アイディーユー(8922)、UBSからのMSCB転換申し入れを承諾する

 27日、アイディーユー(8922、以下IDU)は、先月発行したMSCBの引き受け手であるUBSからの転換申し入れを受諾し、50億円分の転換を新たに認めることにしたと発表した。プレスリリースはこちら
 なお、本MSCBについては、IDUは3月10日に100億円分の行使指示を行い(プレスリリース)、3月24日時点では、このうち75億円分までUBSが転換している模様であるから、現在、UBSが転換可能なMSCBは全部で75億円分である(この他、100億円分が行使指示が出ていない状態で残存)。

 先月、本MSCBの発行が発表された直後に本MSCBについて考察した記事においては、IDU側から行使指示を行った場合のみについて考察を行い、今回のようなUBS側からの転換申し入れを受諾する場合については押さえていなかった・・・自分もまだまだ力不足だねぇ_| ̄|●。


 さて、今回の転換申し入れ・受諾に関するIDU及びUBSの思惑はいかなるものであるか、ちょいと考えてみた。

 IDUが受諾した理由については、プレスリリースにおいて述べられているとおり、大阪市内の開発用地(約46億円)を買い付けるための資金に充てるとしている。まあ、もっと平たく言えば「早く自由に使えるお金が欲しい」と言うことなのだろう。
 本MSCBにおいては、MSCBの発行でIDUが得た資金は、一旦UBSに開設した(IDU名義の)口座に定期預金として預けられ、MSCBの行使指示、または今回のような転換申し入れの受諾を行った分だけ定期預金を解約し、自由に使える仕組みとなっている。
 だったら転換指示まで定期預金に拘束されるなんてめんどくさいこと、最初からしなければ良かったではないかという話になるだろうが、そこら辺はUBSが譲らなかったと推測される。


 一方、UBS側はどのような思惑でMSCBの転換申し入れを行ったかと考えてみると、自分としては、以下の3通りを考えついた。

@IDU株を譲渡して欲しいと言う大口の機関投資家?が現れた
AUBSが、MSCBの転換・株式の売却を急ぐことにした
B実は一刻も早く自由になるお金が欲しいIDU側がUBSに申し入れを行うよう頼み込んだ

 @は説明不要かと。ただ、これだけ大量の株を引き取るとなると、1社でと言うのは考えにくいところである。少なくとも2社以上は現れていなければ、行使指示を受けた分も残っているのに、UBSはわざわざ申し入れを行ったりしないのではないかと考えるところである。

 Aは、最近の新興市場の活気が低下傾向にあることを問題視したUBS側が、なるべく早く(=新興市場の活気がまだある今のうちに)MSCBを転換し、株式を売却して今回の取引を終わりにしようとしている可能性が考えられるところである。
 公示地価も発表され、今後しばらくは材料に欠ける展開になる可能性もあるから、IDU株の出来高がそれなりに多い今のうちに売り抜けておきたいという発想は出てきてもおかしくないと考えるところである。

 Bについては、まあ、何とも情けない話だが、あり得ない話ではないと主張するところである。と言うか、IDU、もう買う物件決めているし。まあ、次回の行使指示で得た資金で買うつもりだった物件を前倒ししたとも考えられるが。この辺は、自分にとっても謎である。


 ・・・まあ、@ABいずれであっても、MSCBが転換され、株式の希薄化を招くのは一緒であるからそんなにこだわることでもないかも知れないねぇ。
 もっとも、需給の観点からすれば、@か、それともABなのかは重要となる可能性大である。この辺は、株価動向や大量保有報告書からある程度推測できるかも知れないところである。

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2006年03月26日

富士写真フイルム(4901)のMSCB

 7日、富士写真フイルム(4901)が総額2000億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら
 本MSCBは、MSCBとしては発行額が過去最高である一方で、これまでのMSCBとは異なり、転換価額の下方修正により既存株主に犠牲を与えることはないと想定される転換価額修正条項が定められている。
 今回は、本MSCBの転換価額修正条項の概要を述べた後に、ほぼ同時に発行される交換社債の概要を考慮の上、野村は一連の手法でどのような利益を得られそうか検討を試みる。

 なお、本記事においては、「野村」とは、野村証券だけでなく、交換社債の発行会社であるキーストーン社などを含めた本ファイナンスの引き受けに関わる人々全体を指すものとする。

〜年1回修正・下限転換価額は発行発表時株価 概要〜


 本MSCBは、2011年満期債及び2013年満期債で当初転換価額が異なる(2011年満期債:5,278円、2013年満期債:4,901円)が、転換価額修正条項については両社とも同じである。今回は、2011年満期債を例に取り説明する。

 本MSCBの当初転換価額は5,278円であり、転換価額の修正は2009年3月31日及び2010年3月31日の2回のみ行われる(2013年満期債は5回)。この際、転換価額は、直近10営業日の終値平均の90%を修正日価額とすることと定められているから、転換価額は、終値平均から10%ディスカウントされることになる。なお、本MSCBでは「2006年3月7日の終値」を下限転換価額と定めることにしているから、本MSCBの下限転換価額は3月7日終値の3,770円である。
 これらをまとめたものを図1として示す。

発行発行日の終値以下には転換価額は下方修正されない
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要


 本MSCBで最も注目すべきは、下限転換価額が発行発表時の株価に定められていることである。これまで発行されたMSCBでは、株価が下落した場合、転換価額が発行発表時の株価を下回り、一株価値の希薄化が激しくなる危険性が存在していたが、本MSCBでは、発行発表時の株主の立場から見れば、このようなリスクは全く存在しないことになる。
 この一点において、本MSCBは一般的なMSCBとは全く異なるものであると言え、引き受け手の野村は、従来のMSCBとは異なる手法で利益を出すことになると推測される。


〜交換価額に関する野村の立場 考察〜


 ここまで見てきたように、本MSCBの転換価額修正条項は、一般的なMSCBとは異なり短期で利益を出せる仕組みにはなっておらず、一見、本MSCBの引受で野村が大きな利益を得るのは困難なように思える。ただ、本MSCBに関連して、野村は本MSCBの発行発表直後、富士写真株を対象とした総額2000億円の交換社債発行を発表した。本交換社債の概要を記した案内?はこちら

 本交換社債は、交換価額の修正については定められておらず、3月29日〜4月4日の富士写真の株価水準より算出した交換価額が満期まで適用される模様である。また、購入最低額は100万円と定められている上、目論見書の配布を野村証券の本支店で行うと明示してあるから、機関投資家のみならず、個人投資家への販売も行う模様である。

 ここで興味深いのは、交換価額の決定方法である。本交換社債の交換価額は、本年3月29日〜4月4日の富士写真の株価終値平均に、一定のアップ率を掛けた値に定められることとなっており、アップ率は、仮条件として、5年債(2011年満期)が128〜138%、7年債(2013年満期)が111〜122%と定められている。なお、アップ率及び交換価額の正式決定は、4月4〜5日頃に行われると考えられる。
 となると、野村としては、この期間の株価が上がってくれた方が有利となる。引き受けたMSCBの当初転換価額は、2011年満期債が5,278円、2013年満期債が4,901円であるから、交換価額がこれ以上に決定されれば、準備しているに違いない様々な作戦を使うまでもなく、交換価額とMSCBの当初転換価額との間で利ざやを稼ぐことが可能である。仮に、5年債の交換価額が5,500円に定められた場合、野村は交換請求が行われた時点でMSCBを当初転換価額5,278円で転換し、株式を引き渡すだけで利ざや222円相当が抜ける。
 まあ、どちらにしろ、利益を増大させたり、リスクを抑制するために色々な作戦を使うのだろうけど。
 んで、交換社債のアップ率が上限に定められると仮定した場合、交換価額がMSCBの当初転換価額を上回る株価水準は、

5年債:5,278÷1.38≒3,825円 ・・・@
7年債:4,901÷1.22≒4,018円 ・・・A

と算出される。24日終値は3,850円であり、わずかに@を上回っているが、Aは下回っている状況である。果たして野村はこのくらいの株価水準で問題ないのか、それともAを上回る水準になって欲しいと願っているのか、興味深いところである。まあ、下がるよりは上がって欲しいのは確かではないかと思えるところである。

 なお、上記の考察は転換価額の上方修正が行われた場合は通用しなくなるが、まあ、そこら辺については野村の中の人がなんとでもすると思うところである。と言うか、上方修正前に転換しておけば済む話であると思われる。

 今回、野村は「貸し株の空売り→MSCB転換→貸し株を返却」と言うMSCBで利益を出す定番の手法を使用しない代わりに、上記の転換・交換に関わる利ざやの他、少なくとも個人投資家に販売する際の手数料及び、MSCBと交換社債の利子差額などを利益として得るのは確実である。
 ただ、これらの利益は、金額ベースではともかく、率ベースでは(一般的なMSCBの引受で得られる利益率と比較した場合)十分とは言えなさそうであり、MSCBの発行金額が2000億円と巨額であること、及び、引き受け手が強大な営業網を持つ野村だったからこそ採用できた手法であると考えるところである。

 従って、今回のような手法は、今後、MSCBの発行手法として一般化されるとは考えにくく、あくまで特殊事例とみなすべきと考えるところである。

posted by こみけ at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月10日

アドテックス(6739)、第3回MSCB・第1回有償新株予約権の発行を中止

 9日、アドテックス(6739)が1月に発行を発表していた第3回MSCB及び第1回有償新株予約権の発行中止を発表した。プレスリリースはこちら。株主総会に発行承認を求める議案を提出する予定だったが、これを取り下げるとのことである。

 プレスリリース中に述べられている発行中止の理由を要約すると、「本MSCB・新株予約権を転換しようとすると、株主総会で授権枠を拡大しても発行済株式数が授権枠を上回ってしまう可能性があるから」という感じになるだろうか。真相は不明だが。
 なお、授権枠の拡大は予定通り株主総会の議案として提案されるようなので、今後何らかのファイナンスを改めて行う可能性はある。と言うか、やらない限り資金繰りが極めて厳しい状況が続くのだから、必死になってやろうとしている最中だろう。

 ところで、このMSCBと授権枠の問題、以前からどう折り合いをつけているのか不思議だったのである。下限転換価額のないMSCBの場合、最悪の場合授権枠を大きく上回る転換株式数になることもあるからねぇ。この問題は、下限転換価額を定めれば、たいていの場合は無視できる問題なのだが。
 かつて、プライムシステム(4830、現在のサンライズ・テクノロジー)でMSCBの発行・転換が行われた際、株式数が異様な勢いで膨らんだことがあったのだが、その際は授権枠をオーバーしていないのかものすごく気になったものである。あのときはどうだったんだろう。

 なお、もし授権枠がいっぱいになった状態で、さらなるMSCBの転換請求が行われた場合、会社側としては転換には応じられないはずだから、その時点で、残ったMSCBを繰上償還する事になると個人的には推測している(管理人はこの辺の法律に詳しくないのであてにしないで下さい)。あるいは、再度の株主総会まで転換を待ってもらうという手もある。引き受け手としたら付き合ってられない話だろうが。
 いずれの場合にしろ、株価(≒転換価額)が大きく下落した場合に繰上償還で返金する可能性が出るとは言え、アドテックスとしては第3回MSCBの発行で(資金繰りの)時間稼ぎができたわけだから、MSCBはこのまま発行しても良かったと思うのだがねぇ。それとも、引き受け手がいやがったのだろうか。まあ、法的な問題(授権枠オーバー)が出かねないから取りやめたと言われれば、それ以上の詮索はしにくいところではあるが。

 いずれにせよ、まだまだ波乱が続きそうである。
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2006年02月12日

アイディーユー(8922)のMSCB

 10日、アイディーユー(8922)(以下IDU)が250億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はUBSである。
 本MSCBは、行使指示をIDU側が複数回に行うことや、転換株式数に上限が設けられていること等の特徴がある上、MSCB発行により得られた資金の行き先についても注目すべき点があると考える。
 本記事では、MSCBの概要について説明した後に、IDUがいかなる意図を持って本MSCBに様々な条項を付けたのか、考察を試みる。

〜終値3日平均から8%ディスカウント・毎日修正型 概要〜


 まず、本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。転換価額の修正は、「新株予約権の行使請求(MSCBの転換請求)の効力発生日の前日までの3連続取引日」を基準として行われるとされているから、本MSCBの転換価額修正は行使請求の都度行われることになり、事実上毎日修正が行われると見なすべきであると考えられる。また、転換価額は、「3連続取引日の終値の平均値の92%に相当する金額」に定められるとされているので、転換価額は終値の3日平均から8%ディスカウントされた値に修正されることとなることとなる。
 例えば、3月3日(金)に転換請求された場合は、2月28日(火)、3月1日(水)、2日(木)の終値を元に算出されると言うことになる。なお、本MSCBは毎日修正型であることから、毎週修正や毎月修正のMSCBよりも転換価額下方修正のリスクは高いと言えると考えるところである。

ディスカウント率は8%
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要


 また、本MSCBでは、下限転換価額は2月27日終値の50%に定められることになっている。仮に、あくまでも仮に、27日終値が550,000円となった場合を例として、下限転換価額の算出方法を図2に示す。と言っても、単純なもので、単に終値に50%を掛けるだけである。この場合は、550,000×50%=275,000円が下限転換価額となる。一方で、上限転換価額についてはプレスリリース中に記載されていないので、上限転換価額は定められない模様である。

今回はあまり重要じゃないかも
図2 本MSCBの下限転換価額決定の仕組み


 さて、本MSCBにはあまり前例がない条項がいくつか付けられている。
 まず目に付くのは、MSCBの転換を、UBSが自由に行えるわけではなく、IDU側の転換指示が行われない限りUBSはMSCBの転換は行えないと言う点である。
 また、転換指示が行える金額も、初回のみ100億円、2回目以降は50億円が上限とされており、一時に集中的な転換が行われないような設計になっている。また、転換指示が行われた場合、UBSは指定額のMSCB転換を20取引日以内に必ず行うこととされている。
 さらに、転換指示は、少なくとも20取引日の間隔を設けて行うこととされているため、転換指示による転換の終了と、次回の転換指示の間にはある程度間隔が開き、MSCBの転換が行われない期間が生じる可能性が高いと言うことになる。ここら辺を図で示すと図3のようになる。

心理的な振れが大きくなりそう
図3 本MSCBの転換指示条項の概要


 ただし、UBS側が転換を20取引日いっぱいかけて行い、かつIDUが転換指示を前回の転換指示から20取引日経過後直ちに行った場合は、このような空白期間は発生しない。
 なお、新株予約権においては、本MSCBのように会社側が行使許可を出す条項が定められたものは何件か発行されており、特に、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)の新株予約権においては、一回の予約権行使上限額が定められていること、行使許可を出したあと引き受け手は20取引日以内に行使を行うことなど、本MSCBと共通する点が複数あるので、興味のある方はご参照下され(当ブログの考察記事)。こちらの新株予約権は、既に第1回の行使指示が終了し、第2回の行使指示が行われた段階であるので、今後の株価動向を推測する上で参考になるかも知れない。

 さらに、本MSCBにおいては、(下限)転換価額の制限のみならず、転換株式数に上限を設けることで、希薄化を回避しようとする条項も定められている。本MSCBの転換に発行される株式数は最大で5万株とされており、それ以上の転換は行われないものと考えられる。
 仮に、平均転換価額が50万円を下回った状態でMSCBの転換が進行した場合、MSCBの一部は例え転換指示が出ていたとしても転換は行えないと言うことになる。ここら辺を図で示すと図4の通りとなる。

おそらく下限転換価額よりこっちの方が重要
図4 転換株式数5万株到達によるMSCB転換の中止


 ただし、図4のように転換指示の途中で転換が不可能になってしまう可能性も考えられる一方で、IDU側がそこら辺を考慮し、UBSへの転換指示額を絞ってくることも考えられる。このへんは、IDU次第と言うことになるだろうか。まあ、どちらの選択肢が取られようと、5万株で打ち止めという事実には変わりはないところである。

 なお、プレスリリース2ページ、3)に空売りに関する解説があるが、後にMSCBの転換により株式を入手することを前提とした空売りは禁止されないと読めるので、貸し株の空売りは行われることを前提とするべきであると主張するところである。


〜上限転換株式数5万株の意図 主張〜


 さて、本MSCBにおいて自分がもっとも気になるのが、上限転換株式数が5万株と定められている点である。会社側説明では、希薄化に上限を付すため、と言うことになっているが、この上限株式数であると、平均転換価額が50万円以下、すなわち株価が54万円以下を推移した場合にはMSCBの全転換が行えないこととなり、せっかく調達した資金を1年後にUBSへ返還(償還)しなければならないことになる。
 現在の株価が60万円とわずか1割程度の余裕しかないことや、新興市場の地合が良くないことを考えると、株価がこの水準を下回る可能性は小さいものではなく、IDUが250億円全額を資本として獲得できない可能性は否定できない。これは経営上問題がないのだろうか。いや、希薄化を警戒する姿勢は評価するのだが、資金調達計画の狂いはそれ以上の問題ではないのかねぇ。
 なお、UBS側からも本MSCBの繰上償還は可能であるが、株価が下限転換価額を下回って推移したのみ権利行使可能と定められているので、上限転換株式数到達が直ちにMSCBの繰上償還を招くものではないといえる。

 一方で、株式の授権枠という観点から見ても、05年8月の時点で54万株と定められており(第6期有価証券報告書の18ページ)、まだ30万株以上の発行が可能であるから、会社側が言うとおりの希薄化防止という観点を除き、わざわざ5万株に制限する特段の理由はないところである。

 これに加えて、えらく奇異に映るのが、MSCBの発行により調達した資金250億円を、なぜかUBSに定期預金として預け入れてしまうという点である。んで、資金需要が生じ、転換指示を行った際に、転換指示額だけ定期預金を解約し引き出すというのである(プレスリリース2ページ)。例えば、第1回の転換指示で100億円分の転換指示を行った場合、IDUは100億円の定期預金を引き出し自由に使えるようになり、残り150億円は引き続きUBSに預け続けると言うことになるようである。
 要するに、IDUが転換指示を行うまでは、MSCBの発行により調達した資金は、預金通帳の数字として存在するだけで、IDUが自由に使うことはできないのである。もちろん、途中で転換株式数が5万株に到達してしまえばそれ以上転換指示は行えないはずだから、定期預金の解約はできないことになり、MSCBが償還されるその日まで、定期預金として眠り続けたあと、UBSのふところへと直行することになると思われる。

 仮に、IDUが資金の明確な用途を決めておらず、必要に応じて資金調達を行いたいという意図であるのならば、自分としてはMSCBよりも、行使価額修正条項付きの新株予約権の発行の方が妥当ではないと考えるところである。先にも述べたように、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)が今回のMSCB同様、会社側が行使指示を行い新株予約権の行使を行わせる新株予約権を発行しており、行使指示を受けた引き受け手(日興シティ)が新株予約権の行使を行った段階で(会社側が自由に使える)資金を得られる仕組みになっている。
 個人的には、今回のような複雑な仕組みのMSCBよりも、5万株分の(行使価額修正条項付きの)新株予約権を発行した方がよほどすっきりすると思うのだが・・・そこら辺は皆さんの事情があるのだろうから、何とも言えないねぇ。そもそも、明確な資金用途が決まっていないのにこれだけ大規模な増資をするのってどうよ、という論点もあるような気がするが、そこら辺は考えないということで。

 さらに、償還期限が1年後(07年2月)というのは、MSCBに限らず、CBとして見ても、SB(普通社債)として見ても相当に短いものであると考えられ、このことも併せて考えると、今回のMSCB発行は、何かの事業に充てるための資金(資本)調達よりは、一時的なつなぎ資金調達としての要素が強いのではないかと主張するところである。

 自分としては、IDU側は、資金調達とかそういうことよりも、250億円という預金が今後1年間自社口座に存在している、という(帳簿上の?)事実が重要と認識しているのではないかと思えてくるところである。もちろん、できることならば自由に使える資金の調達も行いたいのだろうが。
 何でIDU側がそれを望むのかは不明であるが、何らかの理由で事業上必要なのかも知れない。が、詳細は不明である。このへん、ご存じの方がいらっしゃったら、教えて下さい。


 ・・・以上より、自分としては、「確かに希薄化には相応に配慮されたMSCBであるが、そもそも、IDUはこのMSCBで250億円全額を資本として調達しようとは必ずしも思っていないのではないか?」との主張を述べさせていただくところである。あくまで、個人的主張ということで。
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2006年02月04日

YOZAN(6830)、第3回MSCBの繰上償還を発表

 3日、YOZAN(6830)がライブドアファイナンスが引き受けていた60億円の第3回MSCBの繰上償還を発表した。プレスリリースはこちら

 YOZANはライブドアへの強制捜査が行われた後の1月20日に、ライブドアファイナンスに対し、他者へのMSCB譲渡を要請していた(当ブログの記事)。これをライブドア側が拒んだのか、それともライブドア混乱の中で返答がなかったのかは不明であるが、YOZAN側としてはMSCBの要項に記載された(YOZAN側の権利としての)繰上償還を行うことになった。

 今後の焦点は、YOZAN側が行うという「リファイナンス」に移ることとなる。普通社債なのかそれともCB・MSCBなのか、仮にMSCBだとしたら転換価額はどうなるのか・・・と言った点も興味深いが、それ以上に注目したいのが、どこが引き受けるか、と言う点である。
 既に水面下で話が進んでいる可能性もあるが、憶測というか思惑を呼ばないためにも、なるべく早期の発表が望まれるところである。
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