2013年08月19日

メドレックス(4586)のMSワラント

 16日、マザーズ上場のメドレックス(4586)は約30億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引受先はメリルリンチである。
 本件は、MSワラントの条件自体はありふれたものであるが、発行前の社長貸株、および本MSワラントの当初行使価額での行使による貸株決済が述べられている点に注目している。
 本記事では、行使価額修正条項の概要について述べた後に、今回の貸株を用いた取引に関する考察を試みる。

〜毎日修正、下限行使価額は60% 概要〜

 図1に本MSワラントの行使価額修正条項の概要を示す。当初行使価額は2,720円と定められており、上限行使価額はないが、下限行使価額は1,632円と定められている。
 また、行使価額は9月5日以降、行使請求の都度直前取引日終値の90%に修正されるから、事実上毎日行使価額の修正が行われ、直近終値を10%ディスカウントした値に修正されると見なせる。
 なお、本MSワラントの行使期間は本年9月4日からであるため、行使期間初日の9月4日だけは当初行使価額が適用されることになる。

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図1 本MSワラントの行使価額修正条項の概要


〜発行までの借株分は当初行使価額で行使 考察〜

 さて、本MSワラントの注目点として、引き受け手のメリルリンチが最大で松村社長の保有全株である333,300株を借りるという契約を行ったことが挙げられる。貸株期間に権利日が含まれてはいないものの、一時的には社長の保有株がゼロになる可能性もあるわけで、松村社長はなかなか豪胆であるともいえる。
 そして、株価が当初行使価額を上回っている場合、その貸株を用いてメリルリンチは発行決議日の翌取引日、8月19日から権利行使期間の初日、すなわち9月4日までの間に空売りを行うと言う。その後、空売りした分のMSワラントについて、行使期間初日に行使を行い、決済を行うとしている。この場合、行使期間初日の行使価額は当初行使価額の2,720円であるから、単純計算で空売りを行った株価と2,720円の差額がメリルリンチの利益となる。
 一方で、9月5日以降に行使を行った場合であるが、少なくとも直近株価と行使価額の差(ディスカウント分)である10%については計算しうる利益であると考える。
 上記についてまとめてみた図を図2として掲載する。単純計算でいえば、9月4日までにおいては株価が3,022円を超えてこないうちは利ざやが10%を下回るわけで、9月5日以降のことも考えるのならメリルリンチはむやみに空売りをしない方がよいということになる。まあ、早めに利益確定しておきたいという意図も働くかもしれないがねぇ・・・この辺をどう立ち回るかは個人的に大変興味深い。

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図2 メリルリンチが得られる利ざやの概略図

 なお、行使期間初日に行使した分以外の残りのMSワラントについては、基本的には9月5日以降に順次行使を行っていくことになるが、この期間中に何らかの貸株を行うかどうかについては書かれてはいない。ただ、貸株の動向が株価に影響を与える可能性がある以上、個人投資家の立場ではあると思っていた方が良いと考える次第である。

 本MSワラントは、引き受け手が大株主の社長から株を借りることを発表した上に、行使予定計画の一部まで公表すると言う珍しい事例である。MSワラント発行規模が発行済み株式数の20%弱と比較的大きいことから、実際の行動も大量保有報告で確認できる可能性が大きく、引き受け手のメリルリンチがどのような行動を取るか興味深いところである。

 
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2013年02月17日

カイオム・バイオサイエンス(4583)のMSワラント

 15日、マザーズ上場のカイオム・バイオサイエンス(4583、以下カイオム)は約50億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はマイルストーンである。
 本件の行使価額修正条項等については特に厳しい面は無いものの、昨年からのバイオ株相場の主役と言っても過言ではないカイオムがMSワラントを発行すること自体が注目に値すると考える。
 本記事では、行使価額修正条項等の概要について述べた後に、本MSワラントの位置づけや株価への影響について管理人が思うところを主張してみる。

〜毎週修正、下限行使価額は50% 概要〜
 
 図1に本MSワラントの行使価額修正条項の概要を示す。当初行使価額は11,730円と定められており、上限行使価額は17,595円、下限行使価額は5,865円と定められている。
 また、行使価額の修正は3月11日以降毎週月曜日に行われ、前週のVWAPの92%、すなわち8%ディスカウントした値に定められる。従って、当初行使価額が適用される期間は割当日の3月4日から初回修正前日の3月10日までとなる。

月曜修正は珍しい
図1 本MSワラントの行使価額修正条項概要

 そして、本MSワラントは行使価額の修正が行われても株数は一定のままであるため、行使価額の修正が行われると、予約権行使でカイオムが得られる金額が変化することになる。
 具体的な金額としては、

上限行使価額で全予約権の行使が行われた場合: 17,595×42.6万=74.9億
当初行使価額で全予約権の行使が行われた場合:11,730×42.6万=49.9億
下限行使価額で全予約権の行使が行われた場合:5,865×42.6万=24.9億

となり、全予約権の行使が行われた場合は約25〜75億円をカイオムは得られることになる。
 一方で、株価が下限行使価額を下回る場合はマイルストーンにとっては予約権を行使する意味がないため、調達額がさらに下回る可能性もある。
 また、カイオムはマイルストーンに対し株価が下限行使価額を上回っている日には予約権を毎日1個(1000株分)行使するように指示することができる一方、マイルストーンは自己の判断で好きな時に行使を行うことができる。つまり、カイオムが予約権行使を指示した日にマイルストーンはMSワラントを最低1個行使しなければならないが、2個以上行使しても何ら問題ないということになる。

 なお、マイルストーンはカイオムの藤原社長は保有株8万株を借りる契約を結んでいる。そして、借株の期間が本年の2月12日からと言うことだから、マイルストーンは既にその8万株を入手していることになる。いずれはその株を売り、藤原社長への返却は予約権行使で得た株で行うことになると思われる。

〜結局、地合い次第か 主張〜

 皆様ご承知のとおり、カイオムは昨年10月頃からのバイオ株相場で大相場を作り、昨年9月には1,000円前後で推移していた株価が本年1月には一時2万円を超える展開となった。
 バイオ株相場が始まってからカイオムは決算発表を2回行っており、発表後の株価は対照的な動きをしている。
 1回目はバイオ株の初動期である昨年11月5日で、この際は売上高が前期比で減少するなどよろしくない決算で、発表後一旦は下げたものの、開発進展に関するIRの発表や好調な地合いに支えられて2週間後には直近高値を抜いている。
 2回目はバイオ株が軒並み直近高値を付けた直後の2月6日で、この時は通期業績予想の下方修正の発表も併せて行われたため、直後に特許出願のIR発表があったにもかかわらず、バイオ株全般の軟調地合いも影響し、株価は現在まで下落基調が続いている。
 2回目の発表時には通期予想の修正も伴ったという面はあるが、両者の最大の違いは当時のバイオ株の地合いであったと考えている。
 昨年11月と言えば、山中氏のノーベル賞受賞をきっかけにバイオ株全般が動き出していた時期であり、悪材料をこなしてしまうだけの勢いがあった。一方、本年2月、というか目下の地合いはややひいき目に見ても強弱感が対立している状況と言え、悪材料に敏感に反応した結果と言える。

 今回の増資については、予約権行使で発行された株式が市場に出てくる見込みであり、需給の悪化を招きかねないこと、また調達手段がMSワラントであることを悪材料としてとらえることができる。さらに、社長が発行発表前の2月12日から貸株を行っていることも個人的には気になる点である。マイルストーンはどのタイミングで売り始めるのだろうか・・・もう売っていたら鬼だが。
 一方で、予約権の行使が無事終了すれば、10%少々の希薄化で今後数年間の支出を賄えるだけの現金を手に入れることもできるため、(出費が急拡大しなければ)しばらくの間は増資の心配をしなくてもよいという前向きな見方もできる。
 そして、どちらの面を市場が重視するかは地合いによるところが大きいと考える。

 自分としては、今回のような10%程度の増資では重大な希薄化とまでは言えず、今後のカイオムの株価は、MSワラント発行という材料よりは、新興市場もしくはバイオ株全般の地合いに左右される部分が大きいと考えている。そのため、新興市場の今後を考える材料として、MSワラント発行を受けた週明けの株価動向が気になるところである。
 さらに、今回の株価上昇で(MSワラントかはさておき)増資を考えている新興企業は他にもいる可能性が高く、先行事例としての価値もありそうだから、今後の株価動向には注目していきたいところである。
 


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2012年12月31日

2012年おもしろIR・ファイナンスを選んでみた

 本日は12月31日、今年はカレンダーの並びがよく、28日までに仕事も終わり、28日の大納会も年初来高値更新で締めと、例年になくゆとりある年末になっている。
 ということで、今年も本年出されたIRをはじめとするプレスリリースの中から、管理人の独断と偏見で選んだものをご紹介させていただきたい。取りこぼしが多数あると思われるが、その辺はご容赦を。

○おもしろIR
 本年は、東日本大震災で大混乱が起きた昨年とは異なり、国内の企業や市場はおおむね平穏を保った。欧州危機は昨年と変わらず発生したがいつの間にか織り込まれていき、また円高についても製造業を中心に業績悪化の主要因となったが、円高を理由として上場企業が倒産に至るケースは多くはなかった。
 その結果、本年は2011年の反動というわけではないのだろうが、おもしろIRについては不作の年だったと考えている。そんな中でも、以下の4本はそれぞれに見どころがあると推奨する代物である。あと、おまけも。

第1位 ECI(旧4567) 当社第13 期定時株主総会延会のお知らせ
 ある意味2005年3月の上場当日からお騒がせな銘柄だったECIも、今年ついに上場廃止となった。本件は、そんなECIがどうにか開催した株主総会が紛糾し、議事進行ができず延会(総会やり直し)となったことを告知するプレスリリースである。
 近年でもこの手の銘柄の総会が大荒れとなることは時折あったようで、かつてイチヤ(旧9968)の総会が荒れたという話を聞いたことがあるが、それでも総会自体は終了したようである。また、ライブドアも強制捜査を受けた後の株主総会が荒れたが、どうにか議事を乗り切って総会を成立させていた。さらに、どうにもならなそうなことが明らかな場合は総会を延期することもある。
 だが、今回は総会を開いたうえで議決が行えなかったという非常に珍しい事例であり、役員間の内紛があったのが延会に至った要因らしいと言うのが実に美しい。まあ、騒ぐ株主が何人かいるくらいでは強引に進行させてしまうだろうから、その手の波乱要因が無ければ起こり得ない事態だったに違いない。
 なお、延会後の株主総会においては、議案の一部は撤回されたものの、無事決議は行われた模様である(プレスリリース)。

第2位 山水電気(旧6793) 第75回定時株主総会の延期のお知らせ
 管理人が株を始めた2001年頃には、すでにおもしろ銘柄化していたような気がする山水電気が今年ついに倒産、そして上場廃止となった。
 ここ数年はいつ倒産してもおかしくないと見られていただけに、倒産自体にはこれといった衝撃はなかったが、その一月ほど前に出された本プレスリリースで社内の窮乏ぶりがうかがえる。第一に目が行くのが、倒産の一月前にあたる2月末時点で従業員給与を含めて支払い遅延を起こしている点である。そして、本プレスリリースの目的である株主総会延期の理由については、『定時株主総会の招集及び開催に要する費用が工面できない状況であり』という救いようのない理由が付された。たぶん真実なのだろう。
 まあ、総会を開くとなればそれなりのお金も必要になるのは確かだが、その費用を工面できないようではもはや先が見えている状態であると言わざるを得ない。また、今後の見通しに関する、『何卒諸事情ご賢察のうえ、ご容赦いただきますようお願い申し上げます。』と言う一文の『ご賢察』のところにその後の結末が示唆されているようで味わいを感じた。

第3位 クラウドゲート(旧2140) 札幌証券取引所による当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄の指定に関するお知らせ
 本銘柄は札幌アンビシャス市場に上場していたIT関連株で、上場前からの粉飾決算が発覚し、上場廃止と相成った。本プレスリリースはその上場廃止を周知するためのものである。粉飾内容及びその重大性は置いておくとして、『当社は本件発覚まで上場後一度も正しい財務諸表を開示しておらず』と言う噴飯ものの事実まで淡々と記載するあたりで脱力した。
 一昨年のエフオーアイ(旧6253)の例を参考にしたのかもしれないが、実質的な意味はないのは承知なうえで「遺憾なことに」と頭に付け加えてみるとか、もう少し書きようがあると思うのだがねぇ。

第4位 アコーディア・ゴルフ(2131) 株式会社オリンピアを含む当社一部株主からの株主提案権行使に関する書面の受領及び受領に至る経緯について
 アコーディアはゴルフ場を経営する企業であるが、目下PGMホールディングス(2466)にTOBを仕掛けられてもめている状況である。本プレスリリースはその前段となる?アコーディア内の騒動について会社側が説明した資料である。
 ・・・社長の竹生氏の問題については『コンプライアンスに関する問題』などとだけ述べているのに対し、敵対側取締役(秋本氏)のスキャンダルについては結構詳しく紛れ込ませているあたり、さすがである。

(番外) 野村ホールディングス(8604) 第108回定時株主総会招集ご通知
 野村ホールディングスの株主総会に株主提案が100件あり、そのうち18件が実際に議案となってしまい話題となった一品である。なお、却下された82件の中には「野菜ホールディングス」への商号変更が含まれていた模様。さらに、英文招集通知にも(当然英語で)18件分の議案が記載されてしまっており、その英訳の秀逸さは一見の価値があると自信を持ってお薦めできるものとなっている。
 さて、肝心の議案の内容であるが、公募増資に株主総会での承認を必要とする定款変更を要求する第9号議案をはじめ、これまでの野村の行いからすれば検討すべきと思える議案もある。
 だが、本記事の立ち位置としては、注目すべきは第10号、12号、13号議案あたりであろう。第10号議案で株主総会シナリオの開示を気軽に要求しているのも美しいが、やはりオフィス内の便器をすべて和式にして社員の足腰鍛錬をするよう提案している第12号議案が最高だと思う。そう、ふんばりどきにふんばれないようでは今後厳しいのは指摘通りである。一方で、大きい声を出す精神論も全面否定する必要はないと自分は考えており、大声でふんばらせる鍛錬を行えば一石二鳥だと思う次第。最後に口直しが第13号議案のトマト栽培のやり取りとなる。あと、第15号議案で個人名が削除されている『最強の格闘家』と言うのは誰のことだろうねぇ。世界人口推移をみると、1998年頃の格闘家のようなのだが。
 一方で、取締役会の意見としては、第10号、12号、13号議案とも『本議案に反対いたします。』とだけ書かれたそっけないものであり、ここから会社側のいら立ちが感じられる。
 なお、実際の議決がどうなったかはこちらの資料に掲載されており、議案ごとに少しずつ賛成比率が異なっている。第2〜19号議案の中で最も高かったのは第9号議案の8.9%となっており、取締役の責任軽減を認めないことを要求した第6号議案が次点(8.0%)につけていることも併せて考えると、議案をしっかり検討した株主が相応にいたことを示していると言えそうである。
 ところで、個人的にはこの株主総会議案を野村ホールディングスの入社試験に使ったら面白いのではないかと思う。仮に第10〜12号議案あたりの和文英訳ができる人がいるのならばすごく優秀だと思っていいのではないかと思う次第である。と言うか、議案の英訳は誰がやったのだろう・・・。

○注目優先株
東京電力(9501)
 東京電力は原発関連の賠償費用等を賄うため、総額1兆円に上る優先株の発行を行った。普通株転換時の下限取得価額が30円になっているということで将来大規模な希薄化が起きるリスクがあるが、そもそも現状で東電にまとまった資金を出したいか、という観点も考慮すると、この条件でも厳し過ぎるわけではないと考える。
 ただ、引き受けた原子力損害賠償支援機構、というか国がどういうシナリオで優先株を扱おうとしているのかまだ見えないのが困りどころである。まあ、3年やそこらで終わる話でもないだろうから、気長に行くのかもしれないが。

○凶悪銘柄特別賞
・エルピーダメモリ(旧6665)
 本年2月に会社更生法を申請、倒産したエルピーダメモリ。その時点から、「ほぼ間違いなくこれが今年の凶悪銘柄になるだろうな〜」と思い続け、無事(?)その通りになった。
 元々エルピーダの経営状態については、価格変動の激しいDRAMの専業メーカーであることから、他の半導体メーカーと比べても悪いことは知られており、しかも円高で厳しい経営状況が続いていた。
 そんな中で倒産したこと自体は仕方ない部分もあるとは思うが、倒産直前に借入金のない他行に保有現金を移し、倒産後の記者会見で坂本社長が『シェア30%を頭に描いている』と拡大路線での再建を目論んでいると取れる発言を行うなど、散り際があまりにも醜かったのが今回の選定理由である。
 今後のエルピーダの動向も気にはなるが、より警戒すべきは坂本氏が今後他の半導体メーカーに関わったりしないかという点であると考える。坂本氏が今回の倒産原因をどう考えているかはさておき、投資家の立場では同じことがもう一度起こるリスクも想定しなくてはいけないところである。

○注目MSCB・MSワラント
レオパレス21(8848)のMSワラント
 本年2月にドイツ銀行引き受けで発行した一品。下限行使価額が高く設定されるなど、条件が悪いわけではないのだが堅調な地合いが続くと発行案件を増やしやすい(営業しやすい)と想定しており、不動産銘柄での先行例として注目したい。

○注目MSCBプレイヤー
・ドイツ銀行
 上で挙げたレオパレス21をはじめ、複数銘柄でMSワラントを引き受けている。最近の株式市場の活況を好機ととらえる可能性も高く、今後発行事例を増やすか注目。
 ちなみに、過去のプレスリリースを見ると、MSCB、MSワラントをはじめとする第三者割当増資は引き受け手・発行企業の最初の顔合わせから3カ月くらいで発表に至るケースが多いようである。そして、ここから類推すると、昨今の上昇局面に呼応して企図されるファイナンスがあるとすれば、来年の3月頭くらいから発表が出てくることを用心してみようかと。

○2012年最凶MSCB
-該当なし
 2011年に引き続き、本年もMSCBやMSワラントの発行は低調だった。また、条件面についても、凶悪と言えるような代物はないと考える。
 本年発行された案件のうち、東京電力の優先株は将来大変な希薄化を既存株主にもたらす可能性があるが、東京電力の現状、先行きを考えると、やむを得ない条件であると考える。
 また、発行後に株価が下落した案件としては、野村引き受けでMSCBを発行したエヌ・ピー・シー(6255)が特に目を引いている。具体的には、537円をつけていた1月30日(発行発表日)から下落し、半年後にはほぼ半値となり、10月には3分の1以下(安値:10/4 156円)まで下がっている。ただ、こちらも業績不振や製造業全体の下落トレンドの影響を受けている部分もあるから、発行数や転換価額修正条項がそれほど厳しくないことを考えると、明確にMSCBの影響とまでは言えないところである。
 まあ、凶悪ファイナンスが無いことは、当ブログ的にはネタがなくて困るが、市場全体としてはいいことなのは間違いないと思いたい。


 以上、本年は日本経済に盛り上がりがなく、かつ国内での金融的混乱もなかったことからおもしろIR・ファイナンスとも不作の年となった。
 一方、年末からは相場が盛り上がっていることは皆様よ〜くご承知のとおりであり、これが来年のおもしろIRにつながってほしいと願う次第である。

 それでは、皆様もよいお年を!
 
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2012年11月25日

KLab(3656)のMSワラント

 21日、KLab(3656)は約25億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は久しぶりの登場となるメリルリンチである。
 本件のプレスリリースをのぞいてみたところ、
(1) 現在の株価水準が続く限り、調達額は概要に記載されている24億円には届かない
(2) 行使指示・行使制限に関する記載が紛らわしいように思える
という認識を抱いた。
 本記事では、本MSワラントの行使価額修正条項概要について説明した後に、上記(1)(2)について思うところを述べてみる。

〜当初行使価額は飾り 概要〜

 図1に本MSワラントの行使価額修正条項の概要を示す。
 本MSワラントの当初行使価額は671円と定められており、上限行使価額は定められていない一方、下限行使価額は448円と定められている。また、行使価額は行使請求の都度、修正日終値から10%ディスカウントした値に修正される。つまり、事実上、毎日行使価額の修正が行われると見なせる。
msso_3656_1.jpg図1 本MSワラントの行使価額修正条項概要

 ここで気になったのが、今回のMSワラントは株数固定型となっている点である。それ自体は別に珍しくもないのだが、株数固定型のMSワラントは行使価額が下方修正されると予約権行使に伴う資金調達額は減少する。
 今回は、当初行使価額が直近株価よりも高く設定されていることから、『資金調達の額』とされている24.7億円を達成するためには直近よりも高い株価、具体的には行使価額が671円以上になること、すなわち株価745円を上回る展開が必要である。KLabが値動きの激しい銘柄であることを考慮しても、(プレスリリース中にもデメリットとして記載はあるが)予定額通りの調達ができない可能性は小さくない。

〜何もない時は行使自由 考察〜

 本MSワラントの特徴として、KLabは、
(1) 引き受け手のメリルリンチに行使指定を行い行使を強制させることができる
(2) 予約権行使を行えない期間を指定することができる(停止指定)
ことを挙げている。
 これだけ見ると、一見KLabがMSワラントの行使を行うか否かを自由に決められるように見えるが、ここで、
(3) (1)行使指定(2)停止指定、のどちらの指定も行われていない場合
について考えてみると、この間は停止指定が行われていない以上、メリルリンチが自由に行使を行うことができると考えるのが妥当と考える。
 つまり、KLab側が予約権行使をある程度コントロール契約にはなっているものの、完全に管理できるわけではないのである。停止指定を延々と続ければ予約権行使はできなくなるが、そんなことをするとせっかくの資金調達ができなくなるわけだから、行えたとしてもせいぜい短期的なものとなり、大半の機関はメリルリンチの裁量で行使が行われると考えるべきである。
 また、行使指定は株価が下限行使価額の120%を下回る場合には行えないとプレスリリースに明記されているが、一方、予約権の行使そのものについては記載がないことから、予約権の行使そのものは(停止指定がない限りは)株価水準にかかわらず行えるものと考えるのが妥当と思われる。


 以上、本MSワラントは条件的には目新しいものはなく、それほど厳しいものでもないが、プレスリリース中の記載内容や言い回しに不十分、もしくは不親切なところがあると感じた。
 また、メリルリンチが久々にMSワラントの引き受けを行ったということで、ネット関連企業等で後に続く企業が出てこないか気になるところである。

 なお、本MSワラントの発行条件合理性評価については、マッコーリー引き受けの案件をはじめ、MSワラントがらみで度々登場しているプルータス・コンサルティングがモンテカルロ・シミュレーションを基礎として評価している。
 評価の妥当性はさておき、特定の算定機関に算定依頼が集中する傾向が出ているかもしれないのが気になる点ではある。


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2012年05月28日

東京電力(9501)、総額1兆円の優先株発行を発表する

 21日、東京電力(9501)は総額1兆円になる優先株の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は原子力損害賠償支援機構(以下、機構)である。
 本優先株は、発行額が大きいことから希薄化の度合いが非常に大きくなっていることが最大の特徴といえる。
 本記事では、本優先株の普通株取得価額修正条項の概要について説明した後で、東京電力が今回の優先株発行に合わせて行おうとしている定款変更に関する主張を行ってみる。

〜下限取得価額は30円 概要〜

 今回発行される優先株はA種とB種があるが、普通株の取得に関しては同じ仕組みになっている。
優先株の払込が払込期間最終日の7月25日に行われたと仮定した場合の、本優先株の普通株取得価額取得条項の概要を図1に示す。
 本優先株の当初取得価額は200円と定められており、上限取得価額は300円、下限取得価額は30円と定められている。通常、MSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の下限転換価額は当初転換価額の50%程度に定められることが多いことを考えると、本優先株の下限取得価額は当初取得価額の20%以下と大変厳しいものとなっている。
 また、取得価額の修正は毎日行われ、直前5取引日の終値平均から10%ディスカウントした値に定められる。

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図1 本優先株の取得価額修正条項概要

 本優先株に関して特筆すべきなのが、一般のMSCBやMSワラントで行われている転換規制(毎月の転換上限を発行済株式数の10%以内にする規制)が適用されない点である。具体的な記載はプレスリリースの5.(1)Bの最後の方(14ページ目4行目から)にあり、貸株の空売りのような?ヘッジ目的の取引を行わないので制限措置はとらないという。
 個人的には、適用除外規定(具体的な内容は有価証券上場規程施行規則第436条6項になる?)のうち、保有期間の明記が少なくとも本プレスリリースではなされていないので適用できないのでは?とも思うのだが、まあその辺は後から発表するか、東証判断で乗り切るつもりなのだと考える。そもそも、転換規制(約1.6億株/月が上限になる)を適用したらいつまでたっても転換しきれない展開になりかねないという見方もある。
 いずれにしろ、機構の意向次第では一月の間に数億〜数十億株もの普通株が取得され、市場に売りに出てくる可能性もなくはないことになる。まあ、株式市場の動揺を考えればそんなことはしないと思うが。

〜発行可能株式数の急増に警戒 主張〜

 さて、東京電力は本優先株発行のプレスリリースと同時に定款変更のプレスリリースも出している。
 その中で言及されているとおり、発行可能株式数は株主総会時に2段階の変更を決議する予定であり、この定款変更が通ると、発行可能株式数は普通株、A/B種優先株の合計で141億株と定められることになる。
 従って、たとえ東京電力の株価が低迷した状態で普通株の取得が行われたとしても、発行済株式総数がいきなり300億株とかになったりすることはない・・・が、現行の発行可能株式総数が18億株であることを考慮すると、優先株の存在を考慮しても普通株の発行可能株式数は定款変更を行うと一気に5倍以上に膨れ上がることになる。

 このようなことを行った直近の事例を探してみると、昨年JASDAC上場のアーク(7873)が企業再生支援機構等に優先株を割り当てた事例が挙げられる。この際は、発行可能株式数は定款変更前が普通株のみ1億株であったのに対して、定款変更を2段階で行った後では発行可能株式数はちょうど10億株、うち普通株は9億株という状況であった。
 この際は、株主総会を無事通過し、大証から文句を言われることもなく無事に定款変更並びに優先株の発行を行ったようである。


 ・・・今回の東京電力の事例においては、大規模増資が不可避であることを大多数の株主はだいぶ前から認識していたに違いない。また、株式の大幅な希薄化が起きるにしろ、東京電力の存続に必要な増資であることは否定し難い。
 自分が気になるのは、今回と同様の増資が悪用(特に業績悪化した小型株で)される可能性である。特に、発行可能株式数の2段階変更なんかは、大規模希薄化を行う際の抜け道にもなりかねないように思え、乱用されると日本市場への信用をさらに損ないかねないと考えている。株主総会で承認されたのだから、という論法でなし崩しに発行可能株式数が一度の総会で急増するのは(今回東京電力が堂々とやろうとしているのだから)違法ではないのだろうが、少なくとも自分はその手の銘柄で売買はやりたくないねぇ。
 自分としては、今回のような大規模な希薄化を伴う増資や発行可能株式数の2段階変更などを行う銘柄には近づかないよう自己防衛を図るが、願わくば日証協などが早めに規制して芽を摘んで欲しいところである。
 

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2012年02月12日

レオパレス21(8848)のMSワラント

 10日、東証一部上場のレオパレス21(8848、以下レオパレス)は合計4200万株分のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はドイツ銀行である。
 本件においては、行使価額の修正条項自体は過去にも例があるものだったが、下限修正価額がかなり高めに設定されている点が目についた。
 本記事では、本MSワラントの行使価額修正条項について簡単に説明した後、下限修正価額がずいぶん高いところに設定されている点について思うところを述べてみる。


〜会社側決議で修正開始、ディスカウント率8% 概要〜

 今回発行されるMSワラントは、第1〜3回として各1400万株分ずつが発行されるが、当初行使価額と発行価額以外は同じであると言える。以下では、第1回分を例に説明する。
 本MSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。本MSワラントの当初行使価額は250円と定められており、上限行使価額は定められていないが、下限行使価額は150円と定められている。発行発表日である10日の終値が171円であるから、下限行使価額までは15%弱しかないという珍しいケースである。
 また、行使価額の修正は、レオパレス側の決議によって開始され、各行使請求の効力発生日ごとに定められるから、決議後は事実上毎日修正であると言える。修正後の行使価額は前取引日の終値の92%に修正されるとあるから、ディスカウント率は8%である。
 図1中では、行使価額修正の取締役会決議が仮に、あくまでも仮に、3月12日に行われた場合を例にとり示している。

当初行使価額は直近株価のはるか上
図1 本MSワラントの行使価額修正条項概要

〜行使価額修正条項は保険? 主張〜

 本MSワラントの引き受け手であるドイツ銀行は、昨年リソー教育(4714)発行のMSワラントを引き受けた実績がある。このMSワラントの場合、下限行使価額が5,070円と、発行発表当時の株価を上回っているのが最大の特徴であった。また、第6回〜第8回の3回分を一度に発行しており、当初行使価額がそれぞれ異なっているという特徴もある。いずれの特徴についても、今回レオパレスが発行するMSワラントとよく似た特徴であると言える。
 リソー教育、レオパレスの案件とも、株価が下がっても利ざやを出しにくい仕組みであるのは間違いない。今回のレオパレスの場合は、株価が下がった場合でも利益を出そうとすれば、おそらくは下限行使価額は150円よりもう少し下にしないとかなり苦労すると思われる。
 となると、引き受け手としては、株価下落で稼ぐのではなく、上昇するのを待って予約権を行使することを狙っている可能性もある。本件においては、合わせて4200万株分の予約権を900万円で入手できるのだから、仮にレオパレス株が当初行使価額以上に上昇すれば、引き受け手の利益は膨大なものとなる。
 んでは、なぜ行使価額修正条項が付いているかを想像してみると・・・プレスリリースに記載のとおり会社側が緊急に資金調達したい場合に発動することは考えられる。もうひとつは、引き受け手が株価上昇を待てずに手を引きたいと思った場合に、会社側に行使価額の修正開始を要請するようなケースも考えられなくもない。もちろん、実際に修正開始を決議するか否かは会社側次第ではある。
 いずれにしろ、本MSワラントで引き受け手が稼ごうとした場合、株価下落を前提とした戦術ではなかなか対応できない条件になっていると感じる。

 本件においては、下限行使価額が他事例と比較し中途半端な水準であることから、引き受け手がどのような稼ぎ方を想定しているか、自分にはなかなか予想できない。
 もちろん、株価上昇を当て込んでの予約権引き受けというのなら筋は通るのではあるが、リソー教育のMSワラントにおいても、発行後、株価は当初行使価額を下回った水準で推移している。
 最終的に、引き受け手のドイツ銀行がどんな手で利益を出してくるかはしっかりと見届けていきたいところである。
 
 
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2012年02月06日

エヌ・ピー・シー(6255)のMSCB

 1月30日、東証マザーズ上場のエヌ・ピー・シー(6255、以下NPC)は15億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は野村である。
 本件においては、転換価額の修正条項は特に目新しい点はないものの、昨年野村が引き受けたMSCBとの共通点がいくつかあることが管理人の目にとまった。
 本記事では、本MSCBの転換価額修正条項について簡潔に説明した後、ここ最近野村が引き受けた事例から野村が取ろうとしている引き受け戦略について考察してみる。

〜毎月一度修正・ディスカウント率10% 概要〜

 本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。本MSCBの当初転換価額は537円と定められており、上限転換価額は805円、下限転換価額は268円と定められている。
 また、転換価額の修正は、毎月第4金曜日に行われると定められており、直前5取引日の終値平均値の90%に修正されると定められている。

リセット条項は見当たらない
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要

 なお、株価の低迷により転換価額が低いまま推移した場合は、転換株式数が370万株(発行済み株式総数の19.9%)に達した時点でそれ以上の転換は行わず、繰り上げ償還を行うと定められている。言い換えると、転換価額が平均で405.4円を上回らない場合は、残存するMSCBの繰り上げ償還が行われ、資金調達は15億満額は行えなくなるということである。
 なお、貸株の空売りについては、野村はNPC社長の伊藤氏から借株を行うことが発表されており、この株式の売りを行ってくることが予想される。

〜野村は少額多案件を志向か? 考察〜

 近年、MSCBは小規模化の傾向を強めている。
 過去最大のMSCBは2006年に発行された双日のMSCBであるが、このときの発行規模は当時の双日の時価総額を上回る3000億円、今回NPCが発行するMSCBの実に200倍に上るものであった。当然、株式市場はこんな感じの混乱に陥った一方、引き受け手の野村の利益額は相当なものになったに違いない。
 だが、あまりにMSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の悪名が広がったためか、日証協が規制を行い、近年のMSCBにおいては、一部を除き転換に伴い新規発行される株式数は発行済み株式総数の25%以内に収まるようになった。本件においても、この枠内に収まっている。
 そんな中で、野村はどうも経費削減というか、案件の規模が小さくても高い利益率を上げることで、MSCBで確実に相応額の利益を上げる仕組みを作っているように思える。
 今回、特に目を引いたのは野村が伊藤社長の保有株式を借りることにしている点である。通常、MSCBに関する貸株の空売りを行う場合は、どこか別の場所から借りてくる必要があり、当然ながら貸株料を払うはずである。
 だが、社長から直接借りるとなれば、この貸株料を安く抑えられるかもしれない。あるいは、社長から株を借りること自体をMSCB引き受けの条件に入れている可能性もある。大株主から株を借りるのなら、確実な株式の確保ができるからねぇ。
 興味深いのは、昨年後半に野村が引き受けたアンジェスMG(4563)およびセルシード(7776)のMSワラントにおいても、大株主の社長や社外取締役が野村に対し貸株を行うことになっていた点である。
 すなわち、社長(のような大株主)から貸株を借りて確実に儲ける環境を作ることは、本MSCBだけでなく、野村が今後引き受けるMSCBやMSワラントでも継続される可能性が否定できないところである。また、別の見方をすると、大株主から貸株を受けられそうなところを野村は狙っているのかもしれない。
 かつてのように、MSCBの発行規模が大規模なら多少の利益率の差があったとしても問題なかったのだろうが、最近のように引受額が小さい場合は、このようなリスク管理、もしくはコスト管理をより厳しく行って行かなければMSCBの引受といえどもビジネスとして立ち行かないのかもしれない。

 まあ、そうはいっても、引き受け手が最終的に転換した株式を売却するのは何ら変わりないところなのであるから、個人投資家の立場としては従来のMSCBとさほど姿勢を変えずに臨めば済む話なのではないかと考えるところである。
 幸い、上で挙げた2銘柄のような前例もあるのだから、同じかどうか注視してみましょうということで。
 
 

 
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2011年12月31日

2011年おもしろIR・ファイナンスを選んでみた

 本日は12月31日、無事大納会も終わり、また自分の仕事も29日で終了ということでようやく一息ついている。色々とあった本年もどうにか生きて乗り切れたと言える。
 ということで、今年も本年出されたIRをはじめとするプレスリリースの中から、管理人が面白いと感じたり、ぜひ紹介させていただきたいと思ったりしたものを記事でご紹介させていただくことにした。
 なお、これからご紹介させていただくIRは、あくまで管理人の感性で選んだものであるので、皆様の心の中で輝き続けているおもしろIRとは異なるかもしれない。また多数の取りこぼしがあるのはご容赦を。

○おもしろIR
 本年は、東日本大震災や欧州危機など、企業や市場の混乱を引き起こす事態が多発した年であった。自分は、おもしろIRは企業の統治力が落ちている場合に発生する可能性が高まると考えており、この点では本年はおもしろIRが誕生しやすい年であったと言える。
 結果、本年は2008年をも上回る空前のおもしろIRの当たり年だったといって間違いないと考えている。そして、今年誕生したおもしろIRでも群を抜く逸品を第1位としてご紹介したい。

第1位 メディア工房(3815) 伝説の超能力者ユリ・ゲラー氏とのコンテンツ事業における業務提携のお知らせ
 題名からして『伝説』『超能力者』というプレスリリースではまずお目にかかれない単語が二つも並んでいるという圧倒的存在感を誇る逸品。本文も2位以下を圧倒する仕上がりとなっている。
 業務提携の内容はユリ・ゲラー氏の監修するコンテンツをメディア工房が配信するというものである。大槻教授と韮澤編集長の戦いを見て育った自分の場合、あまりユリ・ゲラー氏にはなじみはなかったのだが、なるほどプレスリリース中の写真を見ると何らかのパワーを感じるように思えてくる。
 そして、ユリ・ゲラー氏のマインドパワー提供で日本全体のポジティブパワー発揮に貢献したいというメディア工房の想いがまた素晴らしい・・・少なくとも、自分は笑いというポジティブなパワーをもらった。いや本気で。当時、東電に怒ったり嘲笑したりするよりはよほど健全だと感じた記憶がある。
 本件については、メディア工房のサイトに特設ページがあるので、興味のある方は是非訪問されてみることをお勧めいたします。

第2位 ジアース(8922)  Googleの不動産検索サービスに関するお知らせ
 ジアースは2008年のリーマンショックの際に不動産流動化事業で痛手を負い、その後低迷を続けていた。そんなジアースに一大転機をもたらしたのがグーグルの不動産検索サービスとの連携であった。だが、その連携がサービス開始後わずか5カ月で終了することになってしまったのを発表したのが本プレスリリースである。
 ・・・グーグルとジアースの規模・技術・業績等で大きな格差があるのは間違いないが、本プレスリリースではやたらとグーグルを持ちあげている点が目につく。中でも、『当社の社員に夢や希望そして存在する意味を与えていただいた』という一文には衝撃を受けた。検索サービス終了で、社員の夢や希望はまだしも存在する意味までなくなるのか・・・と恐怖したものである。
 連携中止を知らされた上でのグーグルに対するあまりの低姿勢に、「法人もヤンデレ化するのか・・・」とか当時は思ったものだが、今落ち着いて考えてみるとこのジアースの姿勢はヤンデレの定義には当てはまらなそうではある(いわゆる「依存」か)。
 なお、この検索サービス終了については、後に『Googleショック』という独特の名称でジアースの業績修正に関するプレスリリースに出てくることとなる。必死こいて検索してこんなのを見つけてしまったのも今ではいい思い出。
 このプレスリリースが出たころは、ジアースは果たして理念(もしくは士気)という点で企業としてやっていけるのか心配だったのだが、また新たな道を見つけつつあるようでなにより。

第3位 東海旅客鉄道(9022)  中央新幹線の中間駅の建設費負担について
 本年ようやく東京‐名古屋間の経路が大筋決定したリニア新幹線。ところが並行して駅の建設費負担をだれが行うかでもめていたらしい。本件は、東海旅客鉄道(JR東海)側が東京と名古屋の間に設置する中間駅の費用負担をすることを発表したものである。
 ・・・JR東海が自己負担を発表したのは一つの決断なので、自分としては特につっこむ気はない。が、なんか文面のあちこちから怒気を感じる。特に、2ページ目の『1県1駅ということで「せめて中間駅の建設費は地元で負担いただきたい」という方針で進めて参りました。』の『せめて』というところに怒りが凝縮されているような気がする。
 また、中間駅建設費用の自己負担と引き換えに、駅施設の経費節減も行うことを表明している。地上・地下駅それぞれのイメージ図も末尾に添付しているのだが、どうも現在の新幹線駅よりもずいぶん簡素なように思える。
 個人的には、地下駅は上野駅の新幹線地下ホームと、その一つ上のフロア(長いエレベーターで降りた先のフロア)のようになるのかな?と思っている。行ったことがある人は分かると思うが、一つ上のフロアは少々の売店と数台の自販機、トイレしかない非常に殺風景な空間になっている。リニア新幹線完成の暁には利用するかもしれない身としては、そんな質素な駅ではなく、もう少し情緒あふれる駅であることを期待するのだが、まあ地元も歓迎しているというのだから致し方ない。

第4位 ディー・エヌ・エー(2432)  訴訟が提起されたという問い合わせについて
 本年最も盛り上がったテーマ株は携帯電話向けゲーム銘柄であったと言えるだろう。その雄たるディー・エヌ・エー(DeNA)が、同業大手のグリー(3632)およびKDDI(9433)から訴えられるという衝撃的ニュースが流れた直後にDeNAが発表した一品である。
 本文の内容は特につっこみを入れるべき点はないが、『訴訟が提起されたという問い合わせについて』というまるで他人事のような題名が実に美しい。まあ、きっと問い合わせが多数寄せられたためこのような発表となったのだろうが、「当社への訴訟について」とか当たり障りのない表現にすることは検討しなかったのだろうかねぇ。
 だが、本訴訟の真の見どころは、DeNAとグリーが出したプレスリリースではなく、グリーと並ぶ訴訟提起者であるはずのKDDIからはいまだに本件に関するプレスリリースは一切出ていないという点である。本件に関するグリーとKDDIの温度差、並びに重要度の差が出ていて実に味わい深いと感じる次第である。

第5位 ウェッジホールディングス(2388)  タイ洪水被害の当社グループへの影響について(第1報〜第10報)
 本年秋以降の企業活動に影響をもたらしたタイの洪水。多くの企業が被災状況や自社への影響を開示する中、異彩を放ったのがウェッジHDのプレスリリースである。これまでに第12報まで開示されているが、当ブログ的に注目するのは第1報から第10報までである。
 まず、第1報では被害状況と今後の見通しについて述べられている。また、被災者への哀悼の意を述べている点については好感が持てる。
 次に、第2報では状況報告に加え、此下会長の現地報告や此下会長が撮影した写真の掲載も併せて行われており、詳細な報告がなされている。
 などなど、随時充実した情報が掲載されていたのだが、第4報あたりから話が市民生活の方に重点が置かれ始める。もちろん、バンコク周辺の浸水状況や市民生活への影響は業績にも影響するだろうが、それは本当にウェッジHDのプレスリリースとして必要なのだろうか?というものも出てくる点が悩ましい。
 全体としては絶対に必要ではないが、意義は相応にあるというのが管理人の認識なのだが・・・例えば、第5報にある、浸水した道路で網を投じて魚を捕る人の写真とかはいらないと思うのだがねぇ・・・とは思う。が、バイクの退避状況や浸水下での利用についての記述もあり、意義があると思える部分も少なくない。
 そんな、意義がありそうなものと、それほどなさそうに思えるものが混在しつつ報告回数が重ねられていくのを味わい深く楽しめる一品である。

第6位 バンク・オブ・アメリカ・コーポレーション(8648)  ニューBACについての声明を発表
 東証外国部の銘柄で初の入選。バンク・オブ・アメリカは近年の金融危機で痛手を負ったことから組織再編・経費削減を行うことで再建を進めようとしており、本件はその一部の実行について発表したものらしい。
 だが、少なくともこのプレスリリースからは、『ニューBAC』というのは一体何なのかが全く分からず、『当社の目的は、一定数の人員削減ではなく、むしろニューBAC の決定の実行です。』という、うさんくささあふれる一文が生み出されることとなる。
 当初は英文和訳時の問題かと思ったが、添付されている英文も同様の記述となっており、バンク・オブ・アメリカがこの時期文章の言い回しや資料の充実等に気を回す余裕を失っていた可能性を暗示する一品である。

第7位 イオン(8267)  (再送)株式会社パルコに対する資本・業務提携に関する書面提示についてのお知らせ
 本件は、イオンがパルコ(8251)に業務・資本提携を求めたことへのパルコからの回答書に対し、反論した資料を提示したことを開示したものである。イオンが強い調子でパルコに対して自社提案を受け入れるよう求めており、生々しい交渉の雰囲気がうかがわれる。
 が、おもしろIRとしての見どころはそこではなく、プレスリリース最終ページの『弊社担当者』の後が黒塗りされている点である。まず第一にそんな黒塗りするような資料出すなよと思う次第。だが、当初開示時の資料では、この黒塗りの下に書かれた文字がなんとコピーアンドペースとすれば読める状態になっていたのが入選理由である。
 たぶん、本プレスリリースの元ファイルであろうワードファイルの当該箇所の背景色を黒色にして、そのままPDF化してしまったのが原因だと思われる。本プレスリリースが(再送)となっているのは、この黒塗り部分を読めないようにする修正(たぶん黒塗り部分の文字を消し、スペースを入れた)をイオンが行ったためである。
 せっかく教訓をいただいたのであるから、自らがこのようなやらかしをしないよう気をつけていきたいところである。

第8位 タカタ(7312)  米国連邦捜査局による捜査について
 一般に、プレスリリースは迅速に、かつ事実を記載することが求められる。だが、本件では迅速に事実を周知した結果、かえって恐怖感を市場に振りまいた一品である。米国連邦捜査局(FBI)の現実の役回りはさておき、主にゴルゴ13でFBIについて学んだ管理人としては、てっきりタカタはテロ関係の類で捜査を受けたのではないかと思いこんでしまった(本気)。
 実際には、反トラスト法違反(日本でいうところの談合)容疑での捜査という重大だが劇的とは言えない事態だったようだが、タカタは事後にこの点(反トラスト法違反容疑での捜索)を発表してはいない模様である。これを第二報として知らせず市場に不安を与えたままだったのはタカタの落ち度ではないかと考える次第である。

第9位 ブロッコリー(2706)  リテール部門の事業譲渡に関するお知らせ
 ブロッコリーが抱える小売部門、ゲーマーズは最近苦戦が続いていた。そんな中、ゲーマーズを切り離すことにより、利益が出ているという商品制作に集中することを発表したプレスリリースである。
 この判断そのものは悪いとは思わないし、譲渡先についても言うべきことはないのだが、最後の『8.参考資料としての、フレームワークによるリテール事業分析』がつっこみどころとなった。
 ここには事業分析や社内戦略の決定に関する参考資料が掲載されているのだが、自分としてはあまりにシンプル過ぎて不安を抱いてしまった。一般公表するものだから分かりやすいものを、という意図があったのかもしれないが、もうちょっと練りこんだ分析の上で決断を行ったのだと思いたい人(管理人含む)にとっては、若干不安を抱いてしまう代物のように思えた次第である。いっそ8.の部分はなかった方が良かったかもしれない。

第10位 オリンパス(7733)  記者会見の発表内容について
 社長解任騒動が公となった後も、なかなか飛ばしの事実を認めなかったオリンパス経営陣。本プレスリリースは、飛ばしに使われた3社の買収時売上目標及び現状の見通しを、まだ飛ばしを認める前の段階において開示した資料である。
 ・・・事業が目論見通りに行かないのは世の常とはいえ、3社すべての売上高で10倍以上の乖離が出ており、なにかがうさんくさいのは明らかである。数字だけを述べ、余計な言い訳をしなかったのは最善手であると思われるが、数字自体が圧倒的なため焼け石に水としか言えそうもない。このプレスリリースや元となった記者会見を知った時、オリンパスの中の人がどう感じたかと想うと同情を禁じ得ないところである。


 以上、おもしろIRの発表は10位までで締めさせていただく。どれも素晴らしい個性を持った事例ばかりであり、自信を持ってお薦めできる面々となったと自負している。
 本年は上記以外にもきらりと光る一面を持つおもしろIRが15本以上もあった。全てを紹介できないのが実に残念である。

○注目優先株
 一般に注目度が低いが、今年やらかした銘柄が来年以降手を出す可能性が否定できない優先株。本年は、今後優先株を発行しそうな銘柄を考察する際に参考になりそうな事例が発生した。

・アーク(7873) A種/B種/C種優先株式
 試作品メーカーのアークは、2008年頃までの拡大路線が裏目に出て業績が急降下し、再建のため大規模な増資が不可欠となっていた。
 そして、増資のために優先株を発行することにしたのだが、この優先株の一部が債務の株式化(DES)で行われることになった。そのため、普通株への転換規模が大きくなり、全ての優先株が普通株に転換されると、発行発表時点での発行済株式総数の10倍以上にまで膨れることになった。
 東証およびジャスダック(≒大証)においては、希薄化率が300%を超える(=発行済株式総数の3倍以上の新株を発行する)第三者割当増資においては、『株式および投資者の利益を侵害するおそれが少ないと(取引所が)認める時を除き』上場廃止にするという規則がそれぞれ定められている。そして、希薄化率だけを見れば、今回のアークの優先株発行は明らかにこの規則に抵触する。
 この点について、アークは「国が関わる企業再生支援機構が出資する分は希薄化率から除外し、銀行に割り当てる分の希薄化率のみ考えれば300%を超えない」という論法(管理人の解釈です)を展開した。その後、東証、大証共に特に口出しをしていないようであるから、アークの言い分を追認したと見なせる。
 自分としては、この点、東証、大証がアークの上場維持を認めるという結論は問題ないとしても、ちゃんと審査を行ったうえで「(企業再生支援機構が出資するので)投資者の利益を侵害する恐れが少ないと認める」と発表すべきだったのではないかと考えている。何も言わないと、この規則が本当に適用されることがあるのか疑わしくなってくるからねぇ。
 そして、本件が興味深いのは、今後国有化の道をたどる可能性がいよいよ現実味を帯びてきた東京電力(9501)において、大規模な資本注入を行いつつも同様の論法で上場維持がなされるのではないかと思えてくるのである。政府主導で行う形なら、兆単位の資金注入を行っても(少なくとも増資規制の観点からは)上場維持が行えるということになるわけである。


○凶悪銘柄特別賞
・オリンパス(7733)
 皆様ご承知のとおり、飛ばしを行っていただけでなく、調査を行おうとした社長を突如解任するという非常に悪質性の高いことをやらかしたオリンパス。本賞に相応しいと自信を持って推薦できる銘柄である。
 自分は、オリンパス自体が今後どうなっていくかはあまり関心がなく、東証や銀行、買収を狙っているとも噂される他企業がどんな動きを取るかのほうがよほど興味深い。特に、東証の上場維持か廃止かの判断は、外国人投資家(と、もしかすると国内投資家)の日本株投資に影響を与える可能性もあるだけに、要注意と考えている。

○注目MSCB・MSワラント
ジーエヌアイグループ(2160)のMSワラント
 マッコーリー・バンク・リミテッドが最近引き受けたMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)である。時価総額・引受額・引受前の株価推移がマッコーリーがMSワラントを引き受けた別銘柄に似ているように感じており、動向を注視中。

○注目MSCBプレイヤー
・マッコーリー・バンク・リミテッド
 本年に入ってからMSワラントの引き受けを活発に行っている引き受け手である。上でも述べたとおり、どうも引き受けを行う銘柄の規模や株価動向に類似性があるように感じており、注目中。この引き受けペースなら、来年前半あたりまでには何かつかみたい。

○2011年最凶MSCB
−該当なし
 当ブログにとってはやや残念なことに、悪質といえるMSCBやMSワラントは今年も発見できず、該当なしとさせていただいた。調達環境良好な銘柄はあまりMSCBやMSワラントを利用しなくなり、資金調達に苦しんでいる銘柄がMSワラントを発行する場合でも、それほど厳しい条件ではないことが多くなっている。
 最近は引き受け手の戦術が変わってきているようにも思えてきているが、それでもMSワラントの発行条件が良くなることは悪い話ではないはず。


 以上、本年は東日本大震災・欧州金融危機をはじめとして、政治・市場・企業が大きく混乱する年となった。そのため、おもしろIRに関しては過去に類を見ない当たり年となる一方、金融への風当たりがきついからか、MSCB等の発行は引き続き活発とはいえない状況であった。
 来年は、自然災害がないことを祈る一方で、政治・金融については波乱が懸念される1年である。願わくば、波乱があったとしてもおもしろIRが少々増える程度の小波乱であってほしいものである。

 それでは、皆様もよいお年を!

 
 
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2011年11月28日

ジーエヌアイグループ(2160)のMSワラント

 21日、東証マザーズ上場のジーエヌアイグループ(2160)は総額約12億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はマッコーリー・バンク・リミテッドである。
 本件については、行使価額修正条項で特に厳しい面はないものの、どうもマッコーリー引き受けのMSワラント全般に共通点があるように感じてしまった。
 本記事では、行使価額修正条項の概要について述べた後に、ここ数件の事例との共通しているように思える点と、対策について主張してみる。

〜株価下落による予約権行使禁止はなし 概要〜

 図1に本MSワラントの行使価額修正条項の概要を示す。当初行使価額は133円と定められており、上限行使価額は199円、下限行使価額は79円となっている。
 また、行使価額の修正は毎日行われ、株価終値から10%ディスカウントした値に定められる。
 なお、本件においては、最近のマッコーリー引き受けのMSワラントに定められていた行使価額が一定値を下回った場合の予約権行使禁止は定められていない模様である。つまり、本件においては株価×90%の値が下限価額以下の場合であっても予約権行使が可能と言うことを示しており、他事例に比べて使い勝手が良くなっている。
 この点については、今後一般化するのか、それとも(本件独自の理由による)一度限りのものなのかは気になる所である。

毎日修正
図1 本MSワラントの行使価額修正条項概要


〜発行発表タイミングが似通っている? 主張〜

 マッコーリー引き受けのMSワラントは、自分が認識しているだけで今年4件目になる(他事例:3823/2405/9234)。
 本件も含め全事例で、発行企業の株価が急上昇し天井をつけた後(だいたい2ヶ月後くらい)にMSワラントの発行発表が行われており、どうもマッコーリーは予約権引き受け(もしかするとそれ以前の営業)から処分までの稼ぎ方を一つの戦術として確立しているのではないか、と思えてもくる。
 もしかすると、大量保有報告書の分析などをすれば戦術の一端がつかめる可能性があるのかもしれない。が、そんな手間をかけるよりは、本件等と似たような銘柄・株価動向に遭遇した場合、他銘柄の事例を参考の上、回避すべきと思ったなら一旦手じまいするという方が簡便かつ有効ではないかと主張する次第である。

 
 
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2011年10月17日

アンジェスMG(4563)のMSワラント

 13日、マザーズ上場のアンジェスMG(4563)は総額12億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は野村である。
 本MSワラントについては、条件面では昨年秋頃から野村が引き受けているMSワラントによく似ており特に新味がない一方、本件に関しては、実は会社側・引き受け手側共に日証協規制への対応のため不満足な部分があるのではないかという妄想を抱いた。
 本記事では、本MSワラントにおける行使価額修正条項の概要について説明した後に、日証協規制がMSCB等の発行規模にどのような影響を与えているか主張を行ってみる。

〜毎月修正・リセット価額条項あり 概要〜


 本MSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。本MSワラントの当初行使価額は83,980円と定められており、上限行使価額は129,200円、下限行使価額は45,220円(13日終値の70%)と定められている。
 また、行使価額の修正は、会社側が修正開始の決議を行ってから6営業日後(修正開始日)に1回目が行われ、その後は翌月以降の毎月第2金曜日(決定日)に行われるものと定められている。修正開始日、及び決定日において、行使価額は直前5取引日の終値平均値の90%、または後述するリセット価額のうち高い価額になると定められている。
 図1では、仮に、あくまでも仮に、本年11月11日に修正開始の決議を行い、6営業日後の11月21日に行使価額修正の決定が行われた場合の修正開始日及び決定日を記載している。

トーア紡MSワラントの図を使い回し
図1 本MSワラントの行使価額修正条項の概要


 まず、本MSワラントには『リセット価額』なるものが定められている。リセット価額の概要を図2に示す。
 リセット価額は、
1.修正開始日直前の5取引日の終値平均値の80%
2.下限行使価額
のいずれか高い方と定められる。

2.はあまり意味がなさそう
図2 リセット価額の概要


 仮に、5日連続で株価終値がリセット価額を下回った場合、行使価額は当初行使価額へと修正(リセット)され、行使価額の修正は再度修正開始の決議が行われるまで停止される。
 ただし、今回は複数の回号のMSワラントが発行されており、例え一部の回号で株価がリセット価額を下回り当初行使価額へと修正されたとしても、よりリセット価額が低い別の回号はリセットされずにそのまま修正が続くケースもありうる点には注意が必要である。

 なお、本MSワラントの発行に伴い、山田英社長が自らの保有株(何株持っているのだろう)を野村に対し貸株を行う予定である事がプレスリリース13ページに記載されている点には注意が必要である。
 むろん、何も記載せずに貸株をやってしまうのに比べればずっといいことだがねぇ。

〜第三者割当増資案件の小粒化は続くか 主張〜

 最近(前から?)、アンジェスMGは売上高に対する研究開発費の金額が極めて大きく、利益・営業CFとも赤字が続いている。今回の増資も新薬の開発に必要な研究開発費の調達を目的としており、増資の成否は会社の先行きに少なからず影響があるものと思われる。

 自分が気になったのは、今回調達を行う予定の12億円という金額、アンジェスMG的には果たして十分な額なのだろうか、という点である。
 市場環境は全く違うとは言え、アンジェスMGは2007年に行った公募増資で約70億円を得ている。一方、今回の獲得資金は仮に全ての予約権が行使されたとしてもその6分の1程度であり、本当にアンジェスMGの希望額を満たしているのか、自分は疑問に思ってしまうのである。

 また、視点を変えると、引き受け手の野村としても、利益率ベースではともかく絶対的な金額が小さいことを理由として、本件はあまり美味しい案件とは言えない可能性が高いと自分は考えている。
 野村が本MSワラントを使って色々稼ぐとして、元本から見た利益率10%で1.2億、15%なら1.8億の実入りであるから、自分としてはガリバーたる野村證券にとっては満足行く額とは思えない次第である。

 今回に限らず、最近の第三者割当増資が小規模になっている原因として、日証協の規制を挙げることができる。本規制では、発行済株式総数の25%以上を発行する第三者割当増資については(1)株主総会決議か(2)独立第三者の意見聴取のいずれかを行うものとされている。
 それを嫌がってかどうかは知らないが、本件を含め、最近の第三者割当増資は(1)(2)どちらもやらずに済む25%未満にとどめるケースが増えている。自分としては、希薄化抑止という名分があるとは言え、より多くの企業が(2)独立第三者の意見聴取を行っての大規模増資をやるのだと思っていたのだがねぇ。

 25%以上の第三者割当増資が少ない理由が、本当に規制の理念を尊重しているのか、それとも単に市場環境(株価水準・流動性)の問題なのかはわからないが、ひとたびどこかが大規模増資をやってしまえば追随する企業が続出する可能性もないとは言えない。
 特に、野村の動向は他の引き受け手にも大きな影響を与えるといえるから、今後も引き続き注意をしていきたいところである。



 
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2011年09月19日

最近発行が発表されたMSワラントに対するちょっとした印象

 ここ半月ほどの間に、自分が把握しているだけで3件のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行が発表された。
 以下では、各MSワラントについて自分が受けた印象を簡潔に述べてみる。

オリエンタルランド(4661)のMSワラント
 組織再編等の場合を除き、舞浜周辺で大地震が起きることを行使制限の解除並びに行使価額修正の条件とした日本初ではないかと思われる一品。
超長期のMSワラントの発行事例としては住友不動産(8830)が行使期間50年のMSワラントを発行した事例があるが、今回はそれを上回る60年となっている。
 基本的に、大地震発生以外で行使が行われる可能性は小さいと思うので、希薄化に関してはそれほど気をつけなくとも良さそうと考えている。

リソー教育(4714)のMSワラント
 ドイツ銀行が引き受け手。
 MSワラントの行使の際に渡す株式は新株ではなく自社株を用いるとされている。本件のように、MSCBやMSワラント行使に際して自社株を引き渡す仕組みだったケースとしては、若築建設(1888)が2005年に発行したMSCBの事例が挙げられる。ちなみに、この時は無事に全額行使されたようである。
 なお、プレスリリース表題のところに『行使価額修正選択権付』とあるが、行使価額の修正指示(選択)条項は特に目新しいものではない。
 本件で自分が特に興味深く感じたのは、MSワラント発行発表のプレスリリースと同時に、特に必要とも思えない『自己株式を活用した第三者割当<ドイツ銀行>による新株予約権(行使価額修正選択権付)の発行に関するお知らせ』という、引き受け手がドイツ銀行であることを強調するプレスリリースを開示した点である。ドイツ銀行自体が世界有数の銀行であることは否定しないし、海外パートナーという点で有益であるのも確かだと思う。ただ、自分としては似たような文言がかつてBNPパリバ証券引き受けのファイナンス(例:2008年発行のアーバンコーポレイション(旧8868)のCB)で記載されていたのが引っかかるところである。
 今後の需給動向、また同様の事例が続くか注視していきたい代物である。

セルシード(7776)のMSワラント
 引き受け手は野村。本年4月に発行されたユニチカ(3103)のMSCBとほぼ同種であり、特に目新しい点はなし。野村もこの種のMSワラントにそろそろ本腰を入れてきたと言うことか。

 自分としては、リソー教育のMSワラントが一番の注目ネタである。株価的な影響はさておき、ドイツ銀行のすばらしさを熱く語っているところが自分の中で(将来のネタ候補として)高得点である。
 
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2011年08月31日

国際航業ホールディングス(9234)のMSワラント

 25日、国際航業ホールディングスは総額約30億円分のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 本MSワラントでは、引き受け手としてマッコーリー・バンク・リミテッドおよび日本アジアグループ(3751)の2社が現れており、しかも各社が引き受けるMSワラントの条件が異なることが特徴として挙げられる。
 本記事では、本MSワラントの行使価額修正条項の概要について述べた後に、MSワラントの条件が異なる点に着目し考察を行う。

〜ディスカウント率は10%と0% 概要〜

 本MSワラントは、マッコーリーが引き受けた第1回と日本アジアグループが引き受けた第2回で条件が異なっている。

 まず、第1回のMSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。当初行使価額は359円となっており、上限および下限行使価額は定められていない。
 また、行使価額の修正は行使請求の都度行われるとされており、修正日の直前取引日、または当日(立会終了後の場合)の終値から10%ディスカウントした値に定められる。つまり、事実上、毎日行使価額の修正が行われると見なせる。
 そして、株価終値が245円を下回る場合は予約権行使が行えないと定められていることから、事実上、下限行使価額は株価終値が245円の場合の行使価額(245円×90%)である220円となる。

終値245円未満は行使禁止
図1 第1回MSワラント(マッコーリー引き受け分)の行使価額修正条項概要


 次に、第2回のMSワラントの行使価額修正条項の概要を図2に示す。当初行使価額は第1回同様359円となっており、上限および下限行使価額は定められていない。
 また、行使価額の修正は行使請求の都度行われるのは第1回と同様ではあるが、修正日の直前取引日、または当日(立会終了後の場合)の終値に定められる。
 そして、株価終値が245円を下回る場合は予約権行使が行えないと定められていることから、事実上、下限行使価額は245円となる。

こちらも終値245円未満は行使禁止
図2 第2回MSワラント(日本アジアグループ引き受け分)の行使価額修正条項概要


〜ディスカウント率差の代償は 考察〜

 本MSワラントに関して、自分は、マッコーリーおよび日本アジアグループのMSワラント引き受け条件がだいぶ異なっている点に注目している。
 特に、行使価額のディスカウント率は、マッコーリー引き受け分(第1回)が10%であるのに対して日本アジアグループ引き受け分は0%となっており、一見日本アジアグループにとって著しく不公平なように見える。

 では、マッコーリー引き受け分と日本アジアグループ引き受け分では他にどのような点が違うのだろうかと考えていくと、最も大きい点として、 MSワラントの発行価額(最初に払い込む金額)がマッコーリー引き受け分は1株あたり5.45円なのに対し、日本アジアグループ引き受け分は1株あたり0.198円であることが挙げられる。
 この差は、直近株価(≒行使価額)に対して1.6%程度となることから、ディスカウント率差の一部は発行価額の差で吸収していると言える。
 また、金額で表せない面として、
(1) 今回の案件がマッコーリー主導で行われたのを考慮した
(2) 予約権行使→新株処分までの株価変動リスク
(3) 親会社としての日本アジアグループの責任のようなもの
といったことが考えられる。
 このうち、(1)については、プレスリリース中にも記載がある通り、本件はマッコーリーからの提案で行われていることから、その分の働きを考慮しマッコーリーにやや有利な条件になったことが考えられる。プレスリリースの文面等を見ても、過去にマッコーリーが引き受けたMSワラントのプレスリリースとよく似ており、この点からも本件はマッコーリー主導で行われたと自分は考えている。
 次に、(2)については、マッコーリーが予約権行使で株式を得てから処分するまでの間に株価が下落してしまうリスクを考慮している可能性を挙げてみる。反面、日本アジアグループの場合は、原則長期保有とのことなので株価変動リスクはそれほど気にしなくても良いという見方ができる。
 最後に、(3)は道義的な面である。こう、親会社たる日本アジアグループがMSワラントを引き受けるのだから、ディスカウントなどやるべきではない、もしくはやる意味がない、という認識が国際航業か日本アジアグループ、もしくはその双方にあったのかもしれない。
 なお、子会社が発行するMSCBやMSワラントを親会社が引き受ける事例は極めて珍しく、自分が知っているのは2005年のニッポン放送騒動時にフジテレビがニッポン放送のMSワラントを引き受けようとした事例ただ1件のみである(この時もディスカウント率は0%)。そして、この時はMSワラントの発行がライブドアにより差し止めされたため、実際の発行は行われなかった。よって、本件が史上初の親会社による子会社のMSワラント引き受けになるのかもしれない。


 本件は、マッコーリー主導で行われているものの、国際航業の親会社たる日本アジアグループも発行されるMSワラントの一部を引き受けているという極めて珍しい事例である。
 自分としては、MSワラントの条件そのものよりも、どのようなタイミングで予約権行使が行われ、国際航業が得た資金がどのように流れていくのかが大変興味深い次第である。


 
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2011年07月18日

フジコー(2405)のMSワラント

 13日、マザーズ上場のフジコー(2405)は5億円余相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はマッコーリー・バンク・リミテッドである。
 本MSワラントには、行使価額の修正条項がある時点を境に異なるという特徴が挙げられる。
 本記事では、本MSワラントの概要について述べたあと、本MSワラントの行使価額修正条項にどのような意味がありそうか考察を試みることとする。

〜8月末に修正条項変化 概要〜

 本MSワラントの行使価額修正条項は、発行から20取引目までと20取引日目から後とで修正方法が異なる仕組みになっている。
 まず、発行から20取引日目までの行使価額修正条項の概要を図1に示す。この場合、当初行使価額は898円と定められており、行使価額の上限は1,224円と定められている。また、行使価額が551円を下回った場合は予約権の行使が禁止されることから、事実上、行使価額の下限は551円に定められている。
 また、行使価額の修正は行使請求の都度行われるとされており、修正日の直前取引日、または当日(立会終了後の場合)の終値から10%ディスカウントした値に定められる。つまり、事実上、毎日行使価額の修正が行われると見なせる。

当初行使価額は無意味
図1 発行から20取引日目までの行使価額修正条項概要


 次に、発行から20取引日目から後に適用される行使価額修正条項の概要を図2で示す。この場合、行使価額の上限は1,224円と変わらないが、予約権の行使は行使価額が588円を下回った場合に禁止されるようになる。
 また、行使価額の修正は行使請求を行った直前の金曜日の株価終値から10%ディスカウントした値に定められる。すなわち、事実上、行使価額の修正は毎週行われるものと見なすことができる。

行使価額の下限が上方修正
図2 発行から20取引日目から後に適用される行使価額修正条項概要


 本件のように、行使価額の修正頻度が変わったり、下限行使価額が変更される条項が導入されたりするのは非常に珍しい。
 下限行使価額の変更については、数年前に発行されたMSCBで株価が下限転換価額を下回った場合に下限転換価額がより低い値に設定される条項が定められた事例はあるが(当ブログの考察記事)、特定の日付前後で下限行使価額を変更するという事例は見たことがない。
 また、行使価額の修正頻度が変わる事例は、自分は本件が初見である。

〜発行直後は激しいと予想? 考察〜

 ここからは、本MSワラントの行使価額修正条項の意味合いについて考察してみる。
 ここまで説明してきた通り、本MSワラントでは、発行から20取引日目までは行使価額の下限が20取引日目より後のケースよりも低く設定されており、より株価が低い水準であっても予約権の行使が可能な仕組みになっている。また、20取引日目から後では毎週修正なのに比べ、20取引日目以前では毎日修正と見なせるから、より値動きが激しい状況に対応したものであると言える。
 別にこのような仕組みを作ること自体は悪いわけではないのだが、どういう理由でこのようなめんどくさい修正条項を定めたのかは気になる所である。

 修正条項の仕組みから素直に考えれば、本MSワラントの発行直後に大きな株価変動があることを引き受け手が警戒している可能性が浮かんでくるが、そんなことは基本的には今から予測できはしない。
 また、仮に、あくまでも仮に引き受け手が発行直後に株価に関する何かを企んでいるとしても、わざわざ警戒心を抱かれるような修正条項を定めるとは自分は考えない次第である。何も2段階に分けなくとも、より厳しい20取引日目以前の条件で統一してしまえばいいのだからねぇ。
 ひょっとするとフジコー・マッコーリーのどちらか、あるいは双方の(毎日修正から毎週修正への変更による)事務簡略化か?とも思ったのだが、そんな理由で修正条項をいじるとは自分は思えない。
 今回の変則的な行使価額修正条項、結局自分の考察では妥当と思われる理由を発見することはできなかった(無念)。果たして、どんな意味があるのか、もしくはないのかが気になるところである。


 最近、MSCBやMSワラントの引き受け手が減少する中、引き受け手としてのマッコーリーの存在感は増していると自分は考えている。本件についても、個性的な行使価額修正条項の下でどのように稼ぐか眺めていきたいところである。

 
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2011年06月14日

シーシーエス(6669)、普通株取得価額修正条項のついた優先株式の発行を発表する

 9日、ジャスダック上場のシーシーエス(6669)は約10億円分の優先株式の発行を発表した。プレスリリースはこちら。割当先は複数のファンドである。
 本優先株は普通株の取得条項がついており、一度のみ普通株取得価額の下方修正が行われる可能性があるが、取得価額の修正から普通株の取得開始までの間隔が大きく空いているという特徴がある。
 本記事では、本優先株の取得価額修正条項について説明したあと、本優先株の普通株取得に関する特徴について考察してみる。

〜取得価額修正は1回のみ 概要〜

 本優先株の取得価額修正条項の概要を図1に示す。本優先株の当初取得価額は196,000円に定められており、下限取得価額は156,300円となっている。
 取得価額の修正は1回のみ、本年10月31日に行われ、直前30取引日の終値平均(修正基準時価)が196,000円を下回る場合のみ、取得価額は修正時基準時価へと修正されることになる。従って、仮に、この期間の終値平均が196,000円を上回って推移した場合、取得価額はその後も当初行使価額の196,000円のままとなる。

ディスカウント率は0%
図1 取得価額修正条項の概要


 なお、取得価額の修正が30日間の株価終値を元に行われている。MSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)ではこのような長期の株価推移を用いた修正はあまり見かけないが、昨年発行されたOKI(6703)の優先株では30日間の株価終値から取得価額の修正が行われると定められているなど、優先株ではよくある事例と言える。

〜短期勝負は難しい 考察〜

 本優先株の条件で自分が最も注目したのは、優先株の取得価額修正が本年10月に1回だけ行われる一方、普通株取得開始は2012年の7月からと言うことで、取得価額の修正から実際の普通株の取得開始まで9ヶ月もあいているという点である。

 仮に、取得価額の修正後に普通株の取得請求を行い、普通株を売却(または空売り分の現渡し)し逃げるという、MSCBやMSワラントで一般的なように思える手法を用いようとしても、取得価額の修正と取得請求の時期が9ヶ月も空くとその間に株価が変動することも考えられ、損をするおそれも高まる。
 となると、引き受け手のみなさんとしては、株価が上がってくれない限り利益を出すのはなかなか難しいのではないかと考えてみる次第である。
 従って、引き受け手となるファンドのみなさんは、プレスリリースに書いてある通り(3年以上かどうかはさておき)長期の保有を前提とした戦略を立てているのではないかと自分としては思えるところである。
 別にそれが悪いというわけでもなく、2002〜2003年頃に多く見られた、短期売買で利益を上げようとするケースに比べれば大いに建設的なことだと主張したい。
 ただ、引き受け手のみなさんが最後まで優先株保有を続けるのか、どこかで普通株転換を選ぶのかは興味深い。ファンドのみなさんがどの程度の利益をこの優先株から得ようとしていたのかがなんとなくわかるからねぇ。


 本優先株は、取得価額の修正条項は厳しいものではなく、また短期売買よりは長期保有を前提とした仕組みになっていると自分は考える。
 あとは、引き受け手のファンドのみなさんがどんな出口戦略でどれだけの利益を上げるのかのんびり眺めてみたい次第である。
 
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2011年04月04日

アクロディア(3823)のMSワラント

 3月30日、マザーズ上場のアクロディア(3823)は約10億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はマッコーリー・バンク・リミテッドである。
 本MSワラントについては、条件面については特に目新しい点はないものの、MSワラント発行発表までの経緯がつづられている点が目を引く。
 本記事では、本MSワラントの行使価額修正条項の概要について軽く触れた後に、プレスリリースに記載されているMSワラント発行発表までの経緯に関して考えを述べてみる事にする。


〜ディスカウント率10%、毎日修正 概要〜

 本MSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。本MSワラントの当初行使価額は41,800円と定められている。また、上限行使価額はなく、下限行使価額も定められていないが、株価終値が22,800円(下限価額)を下回った場合、予約権行使は制限されることから、22,800×90%=20,520円が事実上の下限行使価額となる。
 また、行使価額の修正は行使請求の都度行われるとされているから、事実上毎日修正が行われるものと見なすことができる。そして、各修正日における修正後行使価額は、『直前取引日』、すなわち、(当日が営業日の場合)立会終了前は前営業日の、終了後は当営業日の終値から10%ディスカウントした値に定められる。

トランスジェニックの図をほぼ流用
図1 本MSワラントの行使価額修正条項の概要

 なお、株価終値が22,800円を下回った場合については、予約権の行使はできないと定められている。この点は、一般的なMSCB・MSワラントとは異なっている。

 ちなみに、本MSワラントによく似た事例として、本件と同じくマッコーリーが引き受けたトランスジェニック(2342)のMSワラントを挙げる(プレスリリース/当ブログの考察記事)。MSワラントの行使価額修正条項が本件とほぼ同様となっているだけでなく、プレスリリースの形式も非常によく似ている点が興味深い。
 ただし、トランスジェニックの事例でわかりづらかった点(引き受け手側の意志での予約権行使など)が本件では明記されているなど、改善されている点もある。


〜きっかけから発表までの時間 考察〜

 本MSワラントにおいては、発行発表に関するプレスリリースが非常に充実している。特に、発行理由や割当先の選定理由については大変詳細な記載が行われている。
 自分が特に注目したのは、プレスリリース12ページ、7.(2) 割当先を選定した理由 の項である。
 ここには、アクロディアがマッコーリーと面識を持ち、MSワラントに関する提案を受け、そして実際に引き受けが決まるまでの経緯が記されている。
 本MSワラント発行に関連するプレスリリースの記載内容を時系列に並べ替えてみると、
(1)2010年8月頃?:弁護士法人曾我・瓜生・糸賀法律事務所より紹介を受けマッコーリーとの面識を持つ
(2)同時期?:マッコーリーから今回(のMSワラント)と同様の手法の提案を受ける
(3)2011年1月:マッコーリーから面談の依頼、面談時にその場で本件の提案→アクロディア社内で検討
(4)2011年3月30日:MSワラント発行を発表
となる。

 ・・・個人的には、昨年8月の決算訂正でごたごたしている時期に(2)マッコーリーがMSワラントの発行を提案したというのも気にはなるが、もっとも注目したいのは(3)(4)の間隔である。
 (3)のMSワラント提案が本年1月、(4)のMSワラント発行発表が本年3月と言うことは、本MSワラントの話がマッコーリー・アクロディア間で出てから条件を詰め、そして発表に至るまでに2ヶ月余りかかったことを意味する。
 ということは、他の第三者割当増資についても、多くの事例では決定までにはそう違わない程度の期間が費やされているのではないかと考えてみる次第である。まあ、引き受け手や発行企業の能力、市場環境によってもだいぶ異なるとは思うが。また、今回のアクロディアは継続疑義が出ているだけに、検討が慎重に行われた可能性も否定できない。


 ・・・自分としては、本MSワラントで示唆された増資提案から発表までの時間差を頭の片隅に置いておくと、ある銘柄でなんか大変なことが起きた後、増資が発表される時期の推定に役立つかもしれないと考えてみる次第である。
 まあ、なんか起きてから増資に動くまでの時間もあるから、確度の高い推定は難しいだろうがねぇ・・・増資発表に遭遇するのが嫌なら、危なそうな銘柄には近づかないのが一番なのは間違いないところである。
 
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2011年03月27日

ユニチカ(3103)のMSCB

 22日、ユニチカ(3103)は50億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は野村である。
 本MSCBでは、転換価額修正条項には特に目新しいものは見あたらないが、今後の野村のMSCBに関する動向がうかがえる傾向がつかめた。
 本記事では、本MSCBの概要や野村の動向について述べた後、今後増えるであろう増資に対する向き合い方についてちょいと述べてみる。

〜毎月修正、ディスカウント率10% 概要〜

 本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。本MSCBの当初転換価額は66円と定められており、上限転換価額は99円、下限転換価額は33円となっている。また、転換価額の修正は毎月第3金曜日に行われ、転換価額は直前5取引日の終値平均の90%になると定められている。

修正条項はごく普通
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要

 なお、株価の低迷により転換価額が下がった場合は、転換株式数が1億1826万株になった時点でMSCBをそれ以上転換することはできなくなり、残存するMSCBについては繰上償還が行われると定められている。
 この繰上償還は、平均転換価額が42.2円以下になった場合に発生するようである。つまり、平均転換価額が42.2円以下となった場合は、会社側は発行で手にした50億円のうち一部を野村に戻すことになる。


〜まだまだ序の口? 考察〜

 野村は昨年秋頃より、下限転換価額における転換株式数が25%以内に抑制される条項を備えたMSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の引き受けを行ってきた。自分の知る限り、同種のMSCB等の発行は本件で3例目となる。
 興味深いのは、これら3例を発行順に見ていくと、
(1)10億円分のMSワラント(トーア紡コーポレーション(3204)/2010年9月30日発行)
(2)30億円分のMSワラント(日本金属工業(5479)/2010年12月16日発行)
(3)50億円のMSCB(本件)
と、だんだん発行規模が大きくなっている点である。
 MSCB等においては、引き受け手の利益額は発行規模に大きく影響される。従って、発行規模が大きければ大きいほど引き受け手としてはうまみが大きい案件であると言え、野村としては今後より大規模な案件の引き受けに邁進する可能性が高いと自分は考えている。こう、肩慣らし的な期間はそろそろ終わり、本気を出してくるのではないかな〜と。
 ただ、仮に、あくまでも仮に、野村が今後も転換株式数が25%以内に収まるような形でのMSCB等の引き受けを行うのならば、時価総額が小さい銘柄では大きな金額の案件は引き受けられないわけであるから、時価総額が大きい銘柄での引き受けを目指すと思われる。
 ・・・これはあくまでも個人的な推測ではあるが、野村的には、100億規模の案件(≒十数億の稼ぎ?)でもメインディッシュとしては物足りないのではないだろうかねぇ。もっとも、金額が小さいからと言って、小型株での引き受けをやらないわけではないだろうが。


〜25%の枠はできたけど 主張〜

 本件を含めて、最近、MSCBの発行規模を発行済株式数の25%以内に抑制する動きが強くなっている。この理由が、発行済株式数の25%超のMSCB等発行時に株主の意思確認、または独立第三者の意見入手を義務づけた日証協規制であるのは間違いない。
 23日には日本システム技術(4323)が日興引き受けでMSワラントを発行することを発表した(プレスリリース)。この事例では、株数限定型のMSワラント発行の形式をとることにより、MSワラント行使で増加する株式数を発行済株式数の25%以内に抑制している。
 株数固定方式により発行株式数を限定する日興のやり方は、株主の立場からは希薄化の程度が読みやすいという長所がある。半面、所望の金額を得られる可能性がより高いという点において、少なくとも発行企業的には野村の手法の方が評価は高いと予想できる。両者一長一短はあるが、発行企業から見た使い勝手という点で、野村の手法に人気が集まると可能性が高いと自分は考える次第である。
 ・・・結局の所、発行済株式総数の25%以内という制限ができたとは言え、既存株主の立場から見た希薄化懸念については、あまり重視されていない状況が続いていると自分は主張したい。もちろん、MSCBの転換により株数が2倍になったりしない分だけ以前よりはましになっているのだがねぇ。
 株主視点で最善なのは、希薄化度合いにかかわらず、全てのMSCB等で株主の意思確認(株主総会での議決)を要するよう日証協規制を変更することだと考えるのだが、しばらくは現状維持だろうねぇ。


 ・・・東日本大震災の影響もあり、今後は被災企業を中心に増資案件が増えることが予想される。
 自分としては、被災したり業績が悪化した企業が増資を行うこと自体はやむを得ないと考えるが、増資をどんな手法・姿勢で行うかには注視しておきたい。
 すなわち、株主総会での説明有無、増資時期(かつての日本航空のような株主総会終了直後とかは問題)、なるべく株価に影響を与えない手法をとっているか・・・など、企業の株主に対する姿勢をよく見てその後の投資行動の参考としたいところである。
 

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2010年12月31日

2010年おもしろIR・ファイナンスを選んでみた

 本日は12月31日、株式市場も大納会が終わり、また自分の仕事の方も28日で終了と言うことで現在はのんびりしている(これからベイスターズの地から楽天イーグルスのおひざ元へ帰省予定)。
 ということで、本年出されたIRをはじめとするプレスリリースのうち、管理人が面白いと感じたり感動を覚えたりしたものを紹介してみることにした。
 なお、以下にご紹介させて頂くIRはあくまで管理人の独断と偏見、ツボで選んだものである。多数の取りこぼしがある上、株式投資をお休みしていた本年前半のIRは目を通していないため紹介できていないものが多そうだが、その辺はご容赦を。


○おもしろIR
 リーマン・ショックの直後から始まった昨年とは異なり、本年は国内に限って言えば金融面での波乱はそれほどではなかった。年後半の円高は企業業績に重大な影響を与えてはいるが、円高がおもしろIRを生み出すことはあまりない。
 だが、視点を変えれば、比較的おもしろIRが生まれない環境である本年に出現したおもしろIRこそ真のおもしろIRといえるのではないだろうか。いや、まあ、IRを発表した企業が面白いだけなんだろうけどねぇ。


第1位 エル・シー・エーホールディングス(4798)  「第三者割当による新株式及び新株予約権の発行に関するお知らせ」の一部訂正について
 本プレスリリースは、09年に実施された第三者割当増資時に現物出資された不動産の内容について誤りがあったことを訂正する文章である。
 最初は評価額算出方法の訂正や抵当権の設定に関する誤りの報告がある。ここはあんまりよくないけどまだいいとして、その後、2ページ目の半ばから6ページ目後半まで延々と地番と下線が引かれた地目(宅地)、面積の表が並び、リストを一番下までスクロールしていくと、最後の最後に『<訂正後>上記下線を付した「宅地」と記載の地目は、全て「山林」へ訂正されます。』との一文があり真実が判明するという趣向になっている。
 ・・・地目を間違えると言うこと自体も素人の自分からすればとんでもない間違いのように思えるが、何より秀逸なのは、4ページ半にも渡って土地リストを並べて読者(投資家)を引っ張ったあげく、最後を『全て「山林」へ訂正されます』のわずか一文で締めくくっている点である。実に簡潔にして内容を明確に告げている・・・すんごい内容だが。また、その下にある末尾ページのしるしである『- 6 -』に趣という一語では表せない確かな存在感を感じた。
 こう、じらされてじらされて一気にすっと落とされたような読後感があり、一介のプレスリリースとして世に埋もれさせるにはもったいない逸品である。

第2位 インスパイヤー(2724) 第三者割当による第38 回新株予約権の割当予定先からの当該新株予約権の引受けに関する見解の書面の受領に関するお知らせ
 新株予約権の引き受け手から『うちが引き受けるために必要な手続を行っていないよ』との文章を宅急便で受け取ったが、本当に引き受け手が出した正式の文書がどうかわからない・・・と言う問題を確認前にもかかわらずわざわざプレスリリースとして出してしまった一品。社内の混乱がプレスリリースの文面からもうかがえる。
 ・・・今回はだいたいどんな展開になるか予想がついたからよかったけれども、もっと微妙な場面で出したら株式市場の混乱の元になりかねないと感じた次第。ただ、会社側は正直ではあると思う・・・その点は認める。「確認が取れてから発表する」という名目で発表しないという選択肢も相応の正当性があったわけだからねぇ。

第3位 コネクトテクノロジーズ(3736) 第三者割当により発行される転換社債型新株予約権付社債の募集に関するお知らせ(MSCBの発行)
 MSCBの発行を発表するのはいいとして、発行理由の中に『このまま、資金調達を実施しなければ、平成22年9月25日(管理人注:プレスリリース発表日の約半月後・MSCB発行日の翌日)には手元資金が尽き、給与も支給できないこととなり』という、株主よりもむしろ社員のみなさんがびっくりしそうな一文が入っていた一品。
 MSCBの条件は厳しいものだったが、まあ仕方ないかな〜と自分は納得した。でも、社員のみなさんにはどう説明したのだろう、いや、説明しなかったのかな・・・。


(番外)吉野家 昨今の一部報道機関の報道について
 今年の春くらいから牛丼業界での吉野家の苦戦が報じられる中、吉野家広報部が反論のため出した一品。吉野家の優位性を熱く語るあまり『2010 年2 月期の赤字決算は、主に株式会社吉野家以外の関連子会社の業績によるところが大きかったにも拘らず』とか微妙に問題発言をしてしまったりもしている点も美しい。
 ・・・んでも、こういう熱い社員がいるというのはいいことだねぇ。いわゆる「テラ豚丼」事件の時はお客様相談室のみなさんががんばっていたようだし。


○凶悪銘柄特別賞
・エフオーアイ(旧6253)
 昨年末の段階では、実は今年この賞に輝くのは日本航空(旧9205)になるものと想像していた。慢性的な赤字体質から抜け出せない上に、そのことに全く危機感を抱いていない人々がたくさんいたように見えたので、かなり醜い争いを経て倒産の可能性が高いかな〜と考えていたのである。結局、日本航空は倒産して、むしろ倒産後に醜態をさらす格好になっている。

 だが、日本航空がかわいく見えるような凶悪な銘柄が今年新興市場で断末魔の輝きを放った。マザーズ上場の半導体製造装置メーカー、エフオーアイ(旧6253、以下FOI)である。
 FOIは売上高100億円強のうち9割以上を粉飾していたことが明るみに出てしまっている。監査法人でも見抜けなかったそうで。
 粉飾の原因は、結局の所、半導体製造装置の試作機は納入できても量産機としての採用を勝ち取ることができなかったのだろうねぇ。原因がFOIの技術の限界なのか、(東京エレクトロンなどと比較しての)ブランドの差なのか、会社規模の限界なのかはわからないが、量産採用が目論見通り進まない状況で「量産機の納入はできていません」と言えないままずるずる行ってしまいついに発覚してしまったと言うことなのだろう。
 しかし、売上の95%以上が粉飾だったというのは実にひどい。この開き直り全開というかまるで人ごとのような文面のプレスリリースも驚きである。誰が文面を練ったのか知らないが、もうちょっと書きようがあるだろうに。『東京証券取引所への新規上場申請書類においても、虚偽の決算情報を記載し、上場申請時に提出し、上場承認を得ました。』とか事実でも普通は書いちゃあいかんでしょう。いや、投資家視点では悪いことではないのだけれども、そこは何らかの手で粘るのが様式美というものではないのだろうか。
 ・・・結局、みんな感づいていたのやもしれないねぇ。真相が公開されてあきらめモードに入ったのかも。
 ・・・こういう会社はいずれまた出てくるだろうから、回避運動ができるようにしておかないとねぇ。


○注目MSCB・MSワラント
トーア紡コーポレーション(3204)のMSワラント
日本金属工業(5479)のMSワラント
 いずれも本年後半に野村が引き受けたMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)である。野村は本年後半よりMSワラントの仕組み?を一新し、日証協のMSCB規制を回避する条項が盛り込まれている。個人的には上記2銘柄が本MSワラントがらみで波乱が起きる可能性は小さいと考えているが、事例が積み重なるにつれて危険になっていくと警戒している。

○注目MSCBプレイヤー(引き受け手)
・野村證券
 外資勢の元気がない中、MSCB等の引き受け手としても老舗の貫禄を見せる野村。本年後半には上述の新型のMSワラントを複数企業から引き受けるなど、精力的な活動をしている。
個人的な読みでは、野村の新型MSワラントが本格的に存在感を発揮し出すのは来年の年央〜年末くらいからになると考えている。
 くれぐれもこんな目に遭わないよう気をつけましょうと言うことで。

○2010年最凶MSCB
−該当なし
 本年はMSCB等の発行自体が少なく、また国内の金融市場は波乱もなく、盛り上がりもない状況だったため、強烈なMSCBは年を通してほとんどなかった。
 本年発行されたMSCB等の中からもっとも条件が悪い代物を選ぶのなら、先に紹介したコネクトテクノロジーズのMSCBが該当するとは思うのだが、直近の資金繰りさえ危うい中での増資という事情があるだけに、凶悪事例とは言いがたいのである。
 よって、本年の最凶MSCBは「該当事例なし」とすることに決定した。当ブログ的には残念ではあるが、まあ市場的にはよいことだと言うことで。


 以上、本年は比較的安定した国内金融市場の下、MSCB等の発行は不活発であり、当ブログ的にはいまいちな1年となった。東京電力をはじめとする大型株の公募増資は活発ではあったが、当ブログ的にはいまいち食指が動かなかった。
 一方、今年後半は新興市場や小型株が盛り上がっており、来年もこの勢いが続けば新興企業の資金調達が活発になる可能性は高い。自分としては、そこで新たなドラマが生まれることを期待したいところである。

 それでは、以下に各部門のまとめを述べ、本記事を締めさせて頂く。

○おもしろIR
第1位 エル・シー・エーホールディングス(4798)  「第三者割当による新株式及び新株予約権の発行に関するお知らせ」の一部訂正について
第2位 インスパイヤー(2724) 第三者割当による第38 回新株予約権の割当予定先からの当該新株予約権の引受けに関する見解の書面の受領に関するお知らせ
第3位 コネクトテクノロジーズ(3736) 第三者割当により発行される転換社債型新株予約権付社債の募集に関するお知らせ(MSCBの発行)
(番外)吉野家 昨今の一部報道機関の報道について
○凶悪銘柄特別賞 エフオーアイ(旧6253)
○注目MSCB・MSワラント
・トーア紡コーポレーション(3204)のMSワラント
・日本金属工業(5479)のMSワラント
○注目MSCBプレイヤー(引き受け手) 野村證券
○2010年最凶MSCB 該当なし


 それでは、皆様もよいお年を!
 
(12/31 注目プレイヤーの項で動画リンクが抜けていたので追加しました)
posted by こみけ at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月13日

日経、新規発行のMSワラントについて行使価額修正条項付であることを財務短信欄に記載する

 6日、ハザマ(1719)は安藤建設(1816)を割当先とするMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 本MSワラントは、提携先の建設会社が割当先という点は珍しいが、条件面では株数固定型のわりとよく見かけるMSワラントである。

 自分が本件に関して注目したのは、翌7日の日経朝刊の財務欄、財務短信の項目で本MSワラントの発行が報じられた際、『第2回新株予約権(行使価額修正条項付)』と言う見出しがつけられ、MSワラントであることが見出しだけでわかるようになっていた点である。
 これまで、日経の財務短信欄においては行使価額修正条項の有無については記載がなかったため、当該ファイナンスがMSCB等に該当するかどうかは、紙面に個別記事が掲載されている場合を除けばプレスリリースを確認する必要があった。
 確認自体は別にどうという手間ではないのだが、期待して見に行った銘柄のファイナンスが普通のCBや新株予約権だったりすると若干落ち込んだりもしたものである。
 今後も日経が行使価額修正条項の有無を財務短信欄に記載するかどうかはもう少し様子を見ないとわからないが、今後も継続することを期待したい。

 また、発行後のMSCB等の転換価額修正も今後は財務短信欄だけでわかるようになるかもしれない。
 8日に発表された富士通コンポーネント(6719)の優先株で行われた転換価額の修正(修正日:12月9日)について、翌9日の日経短信欄では、新転換価額を掲載した後に、『12月9日修正』と転換価額の修正が行われたことを明記しており、分割や併合に伴う調整ではなく転換価額修正条項の適用であることがわかるようになっている。
 こちらについても、今後注意して見守っていきたいところである。できれば、修正前の転換価額も載せてくれると比較しやすいのだがねぇ。

 ・・・今回の財務短信欄の変更、自分にとってはありがたい。
 新規発行案件はともかく、転換価額修正までいちいち追い切れないからねぇ。
 
posted by こみけ at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月11日

沖電気工業(6703)、普通株取得価額修正条項のついた優先株の発行を発表する

 8日、沖電気工業(6703、以下OKI)は300億円の優先株発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はみずほコーポレート銀行をはじめとする金融機関や取引先などである。
 本優先株については、実際に取得が行われるかどうかはさておき、普通株の取得(優先株→普通株への転換)条項が定められている上、取得価額の修正条項も定められていることから、MSCBの要素を持つ一品である。一方、当初取得価額の算定方法に工夫を加えるなど、過度の希薄化を抑制する仕組みも備えているものと考えている。
 本記事では、本優先株の普通株取得条項に着目し、取得価額の決め方について概要を述べたあと、本優先株で定められている当初取得価額の算出方法の意義について主張を行う。

〜普通株の取得は2014年から 概要〜


 本優先株では、普通株を取得する際の当初取得価額は、
(1)2014年4月1日の45取引日前から30取引日の終値平均の90%
(2)75円(10月7日終値)
のいずれか高い方に定められることになっている。
 これらを図に示すと図1の通りとなる。終値平均が83.33円を超える場合は(1)が、それ以下の場合は(2)が適用されることになる。

かつては(1)のみで決定されていた
図1 本優先株の当初取得価額決定の概要


 ここで、当初取得価額が(2)の75円になったと仮定すると、取得価額修正条項は図2の通りとなる。
 上限取得価額は当初取得価額と同じ75円と定められ、下限取得価額は当初取得価額の50%、37.5円と定められる。また、取得価額の修正は年2回、3月31日および9月30日(決定日)に行われ、決定日の45取引日前から30取引日の終値の90%に定められる。

年2回修正は優先株では珍しい
図2 取得価額修正条項の概要


 取得価額の修正が30日間の株価終値を使って行われる点は、MSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)に比べれば算出期間が長いが、優先株の前例を見ると、日本航空(旧9205)が08年に発行した優先株において、30日取引日のVWAP平均から交付価額(本優先株でいうところの取得価額)の修正を行うと定めている事例(リンク)などがあり、優先株ではわりと見かける条件のようである。

〜当初取得価額算出方法の改善 主張〜


 本優先株の取得修正条項に関して自分がもっとも注目しているのが、当初取得価額として、普通株取得期間開始時の時価に加え、直近株価も算定基準として採用しており、どちらか高い値を用いて当初取得価額を定めるとしている点である。このため、本優先株では、下限取得価額が最低でも37.5円以上になることは保証されている。この点が大変重要だと自分は考えているのである。
 02〜04年頃、本優先株のような普通株取得価額の修正条項が定められた優先株が問題になったことがある。特に有名なところではみずほHD(当時)や三菱自動車(7211)が発行した優先株が挙げられる。
 これらの優先株の何が問題だったかというと、当初取得価額(の下限)を発行発表時に定めず、一定期間経過後の株価を元に当初取得価額の算出を行う仕組みになっていたのである。要するに、先で説明した本優先株の当初取得価額決定条件のうち(1)のみで当初取得価額を決定していたのである。
 このため、当初取得価額算出期間に株価が低迷していたしていた場合は取得価額が低く定められてしまう危険性が存在していた。
 この問題点に目をつけたのが誰かはさておき、希薄化への警戒からか、それとも期待からか、当初取得価額算出期間に大量の空売りが入り株価が急落するという事態が発生してしまったのである。特に、みずほHDの事例では、金融不安が強まっていた時期と言うこともあり、株式市場全体に不安を広げる結果となってしまったのである。
 半面、本優先株では当初取得価額が最低でも75円になると定められており、極端に取得価額が下がることはない仕組みになっている。
 もちろん、最大で100%を超える希薄化が起きる以上、希薄化の度合いが小さいとはいえない。しかしながら、従来の優先株に比べれば、本優先株の取得価額算出方法は改善されていると言えるのではないかと主張する次第である。


 本優先株に関して自分が一つ残念に思う点を挙げるとすれば、OKIは今回の優先株発行をはじめとする財務基盤改善を通じて早期復配の実現を目指しているというのに、具体的な復配目標時期については一切述べられていなかった点である。
 優先株向けの配当が重荷になる上、経営が計画通りに行かない可能性もあるので明言を避けているのかもしれないが、可能なら時期だけでも述べれば株主のみなさんの反応も違ってくるのではないかな〜と思ったりしてみる次第である。
 まあ、臨時株主総会で語ってくれることに期待かねぇ。


posted by こみけ at 12:26| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月27日

トーア紡コーポレーション(3204)のMSワラント

 13日、東証一部上場のトーア紡コーポレーション(3204、以下トーア紡)は総額10億円相当のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は野村である。
 本MSワラントでは、行使価額修正条項に新たな仕組みが導入されているのが目を引くが、それ以上に重要な点として、予約権の総行使数に上限を設けて予約権の行使数を25%未満に押さえ込んでいる点を挙げてみる。
 本記事では、本MSワラントの行使価額修正条項の概要について述べた上で、予約権行使数に上限を設けた狙いについてつっこみを入れてみる事にする。


〜行使価額修正開始時株価から20%下落でリセット 概要〜


 本MSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。本MSワラントの当初行使価額は86.4円と定められており、上限行使価額は144円、下限行使価額は50.4円と定められている。
 また行使価額の修正は、会社側が修正開始の決議を行ってから6営業日後(修正開始日)に行われ、その後は、翌月以降の毎月第2金曜日に行われることになっており、それぞれの決定日において、行使価額は直前5取引日の終値平均値の90%になると定められている。
 図1には、仮に、あくまでも仮に、本年11月10日に行使価額修正決議を行った場合の修正開始日および決定日を記載している。

行使指示をするタイプとしては普通
図1 本MSワラントの行使価額修正条項の概要


 ただし、本MSワラントには『リセット価額』というものが定められており、行使価額はこれ以下にならないものとされている。リセット価額の概要を図2に示す。
 リセット価額は
1.修正開始日直前の5取引日の終値平均値の80%
2.下限行使価額
のいずれか高い方に定められる。まあ、注意するのは1.だねぇ。

小規模なMSワラントの連続発行と見なせるかも
図2 リセット価額の概要


 また、仮に5日連続で株価終値がリセット価額を下回った場合、行使価額は当初行使価額(86.4円)へと修正され、行使価額の修正は再度修正開始の決議が行われるまで停止される。
 ただし、複数のMSワラントが異なるリセット価額となっている場合は、一方がリセット価額に到達して行使価額の修正が停止した場合でも、リセット価額に到達していないもう一方は引き続き行使価額の修正が続くものと考えるのが妥当と思われる。

〜意外な日証協規制回避 主張〜


 さて、本MSワラントには、予約権行使で得られる株式数を最大で1,750万株、発行済株式総数の24.4%までとする契約が定められている。
 プレスリリース中では、この契約があるので希薄化が抑制されるとあるが、本当の目的は25%以上の希薄化の場合に適用される日証協規制の回避と考えることもでき、今後、日証協規制の回避目的にMSCB転換/予約権行使で得られる株式数を制限する条項が定められるようになるかもしれない。

 ただ、自分としてはこのような規制回避の手法が開発されるとは予想していなかった。そのため、本MSワラントのプレスリリースを見てびっくりしたものである。
 ・・・日証協規制においては、25%以上の希薄化を伴う第三者割当増資は(1)株主の意思確認(≒株主総会決議)または(2)独立第三者の意見聴取のどちらかを行えばよいとされている。自分としては、わざわざ(1)の株主意思確認を行う発行企業はほとんどなく、(2)の独立第三者の意見聴取で済ませてしまう企業がほとんどを占めるものと当初は思っていた。
 だが、ふたを開けてみると、意外にも株主総会決議を行った後に増資を行う企業が多い。市場のイメージ低下を避けようとしているのかもしれないが、正直意外だった。

 今回のトーア紡のMSワラントについても、わざわざ行使数を制限する条項があるのは希薄化懸念に対する配慮、もしくは遠慮らしきものを取り入れないと、主に市場からの厳しい目にさらされると考えているのかもしれない・・・希望的観測ではあるが。


 野村は自分の知っている範囲では2003年頃からMSCBやMSワラントの引き受けを行うようになり、2006年に発行された双日(2768)の計3000億円のMSCBを筆頭に、大規模なMSCBの引き受けもたびたび行ってきた。
 今回、野村が新しい仕組みを含むMSワラントの引き受けを行ったと言うことは、今後も野村はMSCBやMSワラントの引き受けというか営業をやることを示唆していると考えている。おそらく、今回のように複雑な仕組みではなく、もう少し簡略化すると思うが・・・。
 また、今回は10億円規模の引き受けだったが、やるとなれば今回よりも大規模な引き受けも行ってくる可能性は高い。野村の今後の動向、特に引き受けを行う企業の業種に注意しておきたいところである。

 
posted by こみけ at 01:18| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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