2005年11月27日

ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)の新株予約権

 25日、ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)(以下JDC)が総額40億円分相当の新株予約権発行を発表した。プレスリリースはこちら。本新株予約権は、最近発行例が増えているMSCBと新株予約権の双方の特徴を持つものであると認識しており、また、本新株予約権は引き受け手の日興シティに取って大変制約の大きい条件が定められていると考えられ、その条件下で日興シティはどのような手法で利益を出そうとしているかについて考察を試みる。

〜終値5日平均から10%ディスカウント・毎週修正型 概要〜

 本新株予約権の行使価額条項では、当初行使価額が121,800円、下限行使価額はその50%の60,900円と定められている。一方、上限行使価額は定められていないため、株価が上昇すれば行使価額はそれに対応して上昇を続けることとなる。また、行使価額は、毎週金曜日(金曜日が祝日の場合は直前の取引日)を決定日とし、決定日までの5連続取引日における終値の平均値の90%と定められている。このことから、本新株予約権の行使価額は毎週修正され、ディスカウント率は10%である。
 例を挙げると、第1回修正日である12月16日には、行使価額は、

行使価額=(12月12日終値+13日終値+14日終値+15日終値+16日終値)÷5×90%

で得られた価額に修正されることになる。これらの概要を図1に示す。

ディスカウント率は10%
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要


 なお、本新株予約権は引き受け手の日興シティが自由に行使できるわけではなく、JDC側が新株予約権の行使を指示し、それから20取引日(≒1ヶ月)以内に日興シティ側が指定された個数の新株予約権行使を行うという仕組みになっている。
 その行使指示であるが、いくつかの状況下ではJDCは行えないことと定められている。そのうちの一つとして、JDCの株価終値が73,080円を下回る場合と定められており、これを図示すると図2のようになる。

行使指示は不可能、予約権行使そのものは可能
図2 株価低迷時の予約権行使指示に関する概要

 なお、株価終値が73,080円を下回った場合に行えないのは、JDCから日興シティへの新株予約権行使指示であり、行使指示が行われた後に株価が下回っても、新株予約権の行使そのものが停止されるわけではない点には注意が必要である。

〜日興シティは如何にして稼ぐか 考察〜

 さて、本新株予約権は、上で考察したように、JDC側の行使指示を受けると20取引日以内に行使する義務を負うなど、日興シティにとってはかなり厳しい制約がつけられていると考えている。本新株予約権とよく似た新株予約権の発行例としては、インプレスホールディングス(9479)の新株予約権が挙げられる(当ブログの考察記事)が、この新株予約権においては、引き受け手のゴールドマン・サックスはインプレスより行使許可を得なければ行使できないが、行使する義務は負っていなかった。それに対して、本新株予約権においては日興シティは行使する義務を負っていると読めるところである。この点を考慮すると、日興シティとしては、一般的なMSCBや新株予約権と比べ、著しく新株予約権の行使の自由度が制限されていると思えるのである。
 しかしながら、日興シティとしても本新株予約権を用いて利益を出さなければいけないわけで、本新株予約権で利益を出すために何かしらの作戦は立てているはずである。以下、この点について考察を行う。

 まず検討したいのは、プレスリリース中に示されている「コミットメントフィー」についてである。
 本新株予約権を用いた資金調達を行うに当たり、JDCと日興シティは新株予約権の行使条件など、かなり細かい(そして日興シティにとっては面倒な)条件を定め、この条件を日興シティ側が守る代償として、JDCが日興シティに手数料を支払うという契約が定められた。この契約が「コミットメントライン」であり、手数料が「コミットメントフィー」であると自分は解釈している(あくまで個人的解釈です)。
 本新株予約権の発行価額が総額2000万円、新株予約権行使時に得られる金額が総額40億円で計40億2000万円となっており、手取概算額がその合計額に等しい40億2000万円となっていることから、この手取概算額はコミットメントフィーが差し引かれた後の額ではなく、手取金の中からコミットメントフィーが日興シティに支払われる(還流される)こととなる。要するに、JDCが実際に手にする資金は、40億2000万円からコミットメントフィーを差し引いた額となるわけである。
 MSCBにおいては、発行手数料は概ね発行額の1%以下であることが多いが、本新株予約権では、日興シティの自由度が低い代償として、これよりやや大きい額の手数料(コミットメントフィー)が支払われる可能性が考えられる所である。

 次に、実際に新株予約権を行使して稼ぐ手法について考察を行う。
 本新株予約権の行使条件として明示されているのは、以下の2点である。
@新株予約権の行使可能額は、一回の行使指示につき最大5億円相当。
A行使指示が出た後、日興シティは20営業日以内に指定された額の新株予約権を行使する義務がある。
 また、プレスリリースには明示されていないが、
B日興シティは、JDC株の空売りをいつでも行える。
C新株予約権行使で得た株式は、必ずしも行使指示期間内に売却する必要はない。
の2点が推測される。
 さらに、個人的な推測として、
D新株予約権の行使指示が出た直後は、需給悪化懸念から株価下落の可能性が高い。
E行使終了が発表された直後は、需給悪化懸念の緩和から株価は上昇に転じることがある。
の2点を挙げたい。

 以上の点について考察を順次行う。
 まず、@Aからは、日興シティがさばくことになる最大株式数がおおよそ推測できる。5億円分の新株予約権を行使した場合、得られる株式数は、当初行使価額で行使した場合は約4100株、25日終値の112,000円から10%ディスカウントした値である100,800円では約4960株となる。これを20取引日で売却するとなると、1取引日平均で200〜250株程度となる。これが多いか少ないかは、その時期のJDC株の売買高次第となりそうである。
 また、これを緩和するために、行使指示が出る前に一定数の株式を空売りすることや、新株予約権行使で得た株式のうち一部は売却を先送りすることもできる。ただし、日興シティは長期保有の意志がないことをプレスリリースにて表明しているため、いずれ売却されるのは確実である。
 空売りを事前に行っていたとしても、行使指示のプレスリリースが出た時点で、株価は需給悪化懸念から下落する可能性が高いため、含み損を抱える可能性は小さいと考える所である。一方で、行使完了のプレスリリースが出た直後は需給に関する懸念が緩和され、株価下落が抑制される可能性が高いので、ある程度株式が残っていたとしても、すぐに含み損となる可能性も小さいのである。
 これをまとめて図示すると、図3のような感じとなる。ある意味、行使指示のプレスリリースは(最大)5億円のMSCB発行のプレスリリースと考えると理解しやすいかも知れない。行使請求期間20取引日の超短期決戦のMSCBである。それが約8回繰り返されるということで・・・。

これを8回以上繰り返し
図3 日興シティが採用する可能性がある戦術のまとめ

 以上より、日興シティとしては本新株予約権からしっかり稼ぐ作戦は立てているとは思われるが、新株予約権の行使や株式売却を行う担当の人は結構大変そうだな〜と思ったりする次第である。自由度が小さいって、結構ストレスがたまりそうなのである。
 そのストレスの代償として、コミットメントフィーが(おそらくは担当の人ではなく)日興シティに入る、と言う構図ではないかと思えるのである。
posted by こみけ at 21:24| Comment(5) | TrackBack(1) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こみけさん
はじめまして、
スターリンクと申します。
今回のJDCの新株予約権に関する考察、わりやすく非常に勉強になりました。
空売り禁止項目がないのと、長期保有はしないといっていますので、株価の低下はさけられないのでしょうかね?
インプレスの株価推移もチェックしないといけません。
今後ともよろしくお願いします。

PS:私のブログでもTBさせて頂きました。
Posted by スターリンク at 2005年11月28日 13:30
>スターリンク さん
 こちらこそはじめまして。
 コメント&TB、ありがとうございました。

 日興シティの作戦ですが、空売りはほぼ確実に行うと思います。本新株予約権発行のプレスリリース中に、日興シティがJDC株を1,704株保有しているとの記載がありますが、これが貸し株ではないかと疑っております。

 株価についてですが、本日投げ売り的な動きがあまり出なかったように思えることを考えますと、行使指示のプレスリリースが出た直後に売りが出るかもしれません。また、行使終了が発表されると、逆に株価が上昇する可能性があると思います(MSCB銘柄で複数の前例有り)。
 個人的には、上下動を繰り返しつつも弱含み、と考えております。いずれにしろ、日興シティの動向が重要な意味を持ちそうであります。

 今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by こみけ at 2005年11月28日 19:28
こみけさん
こんばんは、
今日JDCの大量報告書が出ました。
これは、全転換されたとみて良いのですか?
となると上げていくでしょうかね?
ご教授願います。

以下は内容です。

5%ルール報告14日 J-DC(4815)――大量
財務省 12月14日受付
(提供者、保有株券等の数・保有割合、カッコ内は報告前の保有割合)
★発行会社:J-DC
◇日興シティグループ証券 32,968株 14.87%( -%)


●当該株券等の発行者の発行する株券等に関する最近60日間の取得又は処分状況
は以下となってます。

11/2:普通株券 50株 処分
11/4:普通株券 111株 処分
11/7:普通株券 180株 処分
11/7:普通株券 41株 取得
12/12:新株予約権 32,960株 取得
Posted by スターリンク at 2005年12月14日 18:20
>スターリンクさん
 ご質問いただきました12月12日の記載事項でありますが、これは新株予約権を入手したと言う報告であり、まだ予約権行使(株式の入手)は行われておりません。
 以前発行が発表された新株予約権を日興シティは予定通り引き受けました、という報告とお考え下されば良いかと思います。

 んで、株式数については、新株予約権を行使すると得られるはずの(潜在)株式数が32,960株(40億÷121,800・・・当初行使価額)であると言うことを示しております。
 この株式数は、新株予約権の行使価額修正により変化いたしますのでご注意ください。

 なお、新株予約権が行使され、株式を得た場合は、
△月■日 新株予約権 ○○○株 処分
△月■日 普通株式  ○○○株 取得
と言う記載が並んで現れるはずであります。この辺は、既存の新株予約権発行銘柄(アーティストハウスなど)に関する大量保有報告書をご参照いただければと思います。
Posted by こみけ at 2005年12月14日 20:58
こみけさん
こんばんは

さっそくの返信ありがとうございます。

>これは新株予約権を入手したと言う報告であり、まだ予約権行使(株式の入手)は行われておりません。

どうもおかしいと思っていたんですが・・・。あくまで予約権を入手しましたと言う報告でしたか。

ということは、まだまだこれからですね・・・。

詳しい解説ありがとうございます。
アーティストハウスにて勉強してみます。
Posted by スターリンク at 2005年12月14日 21:38
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Tracked: 2005-11-28 11:30