2008年04月30日

ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815)のMSワラント

 24日、東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(4815、以下JDC)は、合計で6万株分に相当する第6回および第7回MSワラント(行使価額条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はNDCインベストメントが運用するファンドとのことである。

 本MSワラントについては、考察を試みた結果、以下のような注目点があると認識した。
(1)行使価額修正条項については下限行使価額の算定手法以外に目新しい点はない。
(2)本ファイナンスによる調達資金額が8億円程度になると概算されているが、現状の株価ではそれだけの調達は難しいのではないか。
(3)本ファイナンスに関わる発行諸費用は発行規模に比べてかなり多いのではないか。

 本記事では、まず、本MSワラントの行使価額修正条項概要について概要を述べる。
 その後に、本ファイナンスでJDCが獲得する資金額および発行諸費用について考察を試みる。

〜ディスカウント率10%、毎日修正 概要〜

 本MSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。
 本MSワラントの当初行使価額は14,828円と定められている。また、下限行使価額は、6,740円と定められている。この6,740円の算定根拠については、『発行決議日前日の株価終値の50%としました。』とプレスリリース7〜8ページに書かれている。一般的には、「当初行使価額の50%」というように、当初行使価額を基準として定めるケースが多いから、本MSワラントの下限行使価額算出手法は、やや珍しいといえる。そして、この影響で、下限行使価額は当初行使価額の約45%と、50%を割る水準となっている。
 また、行使価額の修正は行使請求の都度行われるとされているから、事実上毎日修正が行われるのと見なせる。そして、各修正日における修正後行使価額は、修正日前日までの3取引日の終値平均値の90%になると定められている。すなわち、修正後行使価額は終値3日平均から10%ディスカウントされることになる。

msso_4815_2_1.jpg
図1 本MSワラントの行使価額修正条項概要

 なお、貸株の空売りについては、特に記載はないものの、今後貸株が行われる可能性は否定できないところである。
 また、プレスリリース9ページの(3)で述べている行使制限措置は、東証の有価証券上場規定施行規則に定められている、いわゆる「1ヶ月に発行済み株式数の10%以上のMSCB(およびMSワラント)転換を行わない」という措置を行う(≒引き受け手に約束させる)ことのようである。

〜最終的な調達金額は? 考察〜

 本MSワラントは、予約権行使によって得られる株式数(交付株式数)は固定される一方で、JDCが得られる金額が変動するMSワラントである。このようなMSワラントの長所として、株価が下落しても交付株式数が増大しないため、希薄化が抑制されるという点が挙げられる。
 半面、行使価額の上下により得られる金額が変動するため、株価が下落した場合は当初予定した資金の調達ができないという問題がある。
 今回、JDCは本ファイナンスにより概算で8億円を調達すると発表している。一方、行使価額(≒株価)の推移次第では調達額の上下が起きることも認めている。以下では、この資金調達額について考察を行っていく。

 図2は、本MSワラントの平均行使価額と本ファイナンスによる合計調達金額の関係を示したグラフである。なお、この合計調達金額は、

合計調達金額 = 新株予約権の払込金額 + 新株予約権平均行使価額 × 交付株式数
          = 846万円 + 平均行使価額 × 60,000(株)

で算出したものであり、発行諸費用を差し引く前の金額である。

msso_4815_2_2.jpg
図2 本ファイナンスにおける平均行使価額と合計調達金額の関係


 まず、図2を見ればわかるように、会社側が言う8億円を本ファイナンスにより調達するためには、発行諸費用を無視したとしても平均行使価額が13,192円以上になる必要がある。これは、株価が14,000円台後半で推移する必要があることを意味している。
 現在、JDCの株価は13,000円台での推移となっており、目標額の調達のためには株価上昇が必須である。

 さて、ここで再度図2を見直して頂きたい。平均行使価額が14,828円、すなわち当初行使価額の場合、合計調達金額は約8億9800万円であることがわかる。
 一方で、会社側が『差引手取概算額』は8億円であるとプレスリリースに記載している。この『差引手取概算額』がどのような状況の場合の概算であるか、特に記載されていないが、当初行使価額で本MSワラントが全て行使された場合の手取概算額であると見なすのが妥当であると思われる。
 このことから、発行諸費用として差し引かれる額は、単純計算で約9800万円、調達金額の約11%に上ることが推測できる。

 本ファイナンスが比較的小規模な案件なため、諸費用が割高になるのはやむを得ないことである。また、その諸費用が何に使われるかもはっきりとしないところではあるため、あまり激しくつっこみは入れられないところである。
 ただ、既存株主の側から見れば、有利発行ぎりぎりのディスカウント率(10%)で予約権を行使された上、会社に払い込まれた資金の1割強が諸費用として消えていくのはおもしろくない状況であるといえると思われる。
 また、先述したとおり、会社側が目標としている8億円(諸費用差引後)の調達も、現状ではかなり難しいと見なす必要がある。従って、十分な額の資金調達ができなかった場合について、会社側がどのような展望を持っているか注視する必要があるのではないかと考える次第である。


 以上、本MSワラントからは、サブプライム問題と新興市場の冷え込みという厳しい環境の下、資金調達に苦しむ不振新興銘柄の苦悶が垣間見える結果となった。
 今後しばらくは同様の状況が続くことを覚悟した方がよいと思われるが、そのような中でもしっかり本業で稼いでもらいたいものである。いやほら、それが本筋ってものでしょう。
 

posted by こみけ at 19:55| Comment(6) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
MSCBで検索してここのブログにたどり着きました。
先月(2159)フルスピードを購入後、下落続きでへこんでます。
掲示板等でフルスピードがMSCBを発行しているのではと騒がれていますが、
投資初心者の私にはあまりよく理解できていません。
こみけ様のご意見をお聞かせください。

http://pdf.irpocket.com/2159/hYDD/c19N.pdf
Posted by bonanza at 2008年08月20日 00:41
>bonanza さん
 はじめまして&コメントありがとうございます。

 bonanzaさんがご提示されましたファイナンスは、MSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)と呼ばれているものであり、MSCBではありません。
 が、株価への影響はほぼMSCBと同等であります。

 MSワラントがどんなものかでありますが、簡単に言えば、「現在の株価の1割引で新株を(フルスピードから)発行してもらえる権利」と考えていただければだいたい合っているのではないかと。
 これが発行されると、空売りで株価が崩されることが結構見られます。フルスピードについても、それが行われている、もしくは行われる可能性があると思われているのではないかと。
 
Posted by こみけ at 2008年08月20日 22:25
返答ありがとうございます。

その後、色々調べてみました。
今のところ権利は行使されていないそうです。
フルスピードは空売り出来ない銘柄ですので現在の下落は、個人投資家がMSCBと勘違いして投げているのでしょうか?
9月12日が決算発表なのですが、もしかしたら業績の伸びが鈍化しているのかなと思ったりもして、損きりしようか迷っています。
新興銘柄は本当に難しいですね。胃がいたいです。
Posted by bonanza at 2008年08月23日 01:54
>bonanza さん
 フルスピードは貸借銘柄ではないため、個人が信用口座経由で売ることはできませんが、(メリルリンチのような)機関投資家が大株主などから株券を借り受け、それを売却することは可能であります。
 もちろん、実際に行うかどうかは別問題ですが。

 「MSワラントはMSCBとは異なる代物だが、MSCB以上に悪質なものである」というのが自分の主張でありますので、投げが出るのも別に不自然なことではないと思います。
 ただ、これだけ長期にわたり投げが出続けるのも考えにくいことです。
 他銘柄の損失の穴埋めとか、ご指摘通り業績不安が出ているとか、その辺の問題なのかもしれません。
Posted by こみけ at 2008年08月23日 11:55
ジャスダックがMSCDやMSワラントの発行などを抑止する為の施策を講じるみたいですね。
少しは新興市場の品格が良くなりそうですね。
Posted by bonanza at 2008年08月25日 21:44
>bonanza さん
 自分としては、残念ながら新興市場の大幅な改善は見込めないという想いを抱いております。
 ジャスダックの言うようなMSCBの行使ではなく、MSCBの発行そのものの抑制に主軸を置くべきであると個人的には考えております。
 
Posted by こみけ at 2008年08月26日 22:28
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