2005年11月13日

アーティストハウスホールディングス(3716)の新株予約権(その2)

 先月20日に、アーティストハウスホールディングス(3716)(以下アーティストハウス)が総額120億円の新株予約権の発行を発表し、今月7日に発行された(本新株予約権のプレスリリースはこちら)。
 前回記事では、第7・8・9回新株予約権のうち、第7回新株予約権について考察を行った。今回は、主に第8回新株予約権について検討を行い、意外とも感じられる当初行使価額の設定がいかなる目的で行われたかについて考察する。

〜VWAP3日平均から10%ディスカウント・毎週修正型 概要〜

 第8回新株予約権の行使価額条項には、当初行使価額が1,155,600円、上限行使価額も同額の1,115,600円と定められており、下限行使価額は、発行後3ヶ月以内は308,160円、3ヶ月経過後は250,380円となる(第9回は6ヶ月)。
 また、行使価額は毎週最終取引日を修正日とし、修正日までの3連続取引日におけるVWAPの平均値の90%に修正されるとされていることから、毎週金曜日(祝日でない場合)に行使価額が修正され、ディスカウント率は10%である。
 なお、第1回修正日については、第7回新株予約権の90%が行使された日と、新株予約権発行日から1歴月(1ヶ月?)経過した後のいずれか早い日の翌週の最終営業日に定められる(第9回は、第8回新株予約権の90%行使または新株予約権発行後6週間経過後の翌週)。つまり、第1回修正日はもっとも遅い場合でも12月16日に定められると考えられる。これらの概要を図で示すと、図1の通りとなる。本図においては、第1回修正日をもっとも遅い場合の12月16日と仮定した。

下限行使価額に修正されるVWAP平均はそれぞれ342,400円、278,200円
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要

 なお、第8回・第9回新株予約権には行使停止条項が定められており、アーティストハウスが本条項を適用すると新株予約権の行使はそれから1ヶ月間不可能になる。これを図示すると図2の通りとなる。この行使停止は何度でも行えるが、7回目以降はアーティスト側が補償金?を支払うと定められている。また、行使停止期間終了直後の行使価額は、行使停止直前に有効だった行使価額がそのまま用いられることとなる。

行使停止は1ヶ月間
図2 本新株予約権の行使停止条項概要


〜希薄化懸念の一時的緩和 考察〜


 さて、第8回・第9回新株予約権の発行条件で意外に感じられるのが、当初行使価額が1,155,600円と現在の株価水準に比べて著しく高い水準に定められている点である。
 この点を考察するに当たり注目したいのが、EDINETで閲覧することができるリーマン・ブラザーズ証券提出の大量保有報告書である。リーマン・ブラザーズはアーティストハウス株式に関する大量保有報告書を11月9日付で提出しており、その保有数は、

株券:198株
新株予約権証券:13,844株
合計:14,042株

と示されている(共同保有分含む)。このうち、新株予約権については11月7日に取得したことが明記されており、第7回・第8回・第9回の新株予約権(の潜在株式)であることが確認できる。
 んで、この13,844株の内訳について計算すると、

第7回:20億円÷385,200(当初行使価額)≒5,192株
第8回:50億円÷1,155,600(当初行使価額)≒4,326株
第9回:50億円÷1,155,600(当初行使価額)≒4,326株

であると求められ、より金額が大きい第8回・第9回の潜在株式数が第7回の潜在株式数よりも少なくなっているのである。
 仮に、第8回・第9回新株予約権の潜在株式数を第7回の当初行使価額385,200円で算出すると、それぞれ12,980株となり、第7回・第8回・第9回合計の潜在株式数は、31,152株と、現在提出されている潜在株式数の2倍以上となるのである。
 自分としては、この極めて高水準の当初行使価額は、発行発表時に開示される潜在株式数を少なく見せかけ、MSCBや新株予約権発行の際に警戒される、希薄化懸念による株価下落を回避あるいは緩やかにするために設定されたのではないかと考えるところである。無論、いずれは行使価額は修正され、潜在株式数は本来の水準に増加するのであるから、希薄化懸念が緩和されると言っても一時的なものではある。しかし、希薄化に関する懸念がもっとも高まるのは発行発表直後であるから、株価対策という点では有効かも知れないところである。
 この「一時的緩和」が終了するのはいつかと言う点であるが、これは明確で、もっとも遅い場合でも、第8回新株予約権についてはご紹介したとおり12月16日、第9回新株予約権については12月30日が第1回修正日になると考えられるので、株価が大きく上向いていない限り、この時点で行使価額は大きく下方修正される。従って、リーマン・ブラザーズの潜在株式数は、約半月の時間差をおいて2度、突如膨れ上がったように見える可能性が高い。
 だが、それはリーマンブラザーズが何か行うのではなく、新株予約権の行使価額修正が行われ、株価の実勢に即した行使価額となった結果として発生する可能性が高いのである。
posted by こみけ at 21:38| Comment(2) | TrackBack(1) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私が会社の経営を始めて以降、田塩享寛氏と出会い大盛工業株の売却話を持ちかけたり、アーティストハウスの第三者割当の引受の仕事をもらいました。また、田塩氏からは、梁山泊を紹介されビーマップの買収交渉を行い、大阪府警や証券取引委員会の捜査を受けました。その後デュオシステムの第三者割当を引受けましたが、ハーモニーグリーンの和田洋氏に資金を提供して頂く一方で、モイス研究所の合併を行いました。その後、ビジネスバンクコンサルティング(BBH)から簿外債務のあるメディカルネットバンクを堀内英紀氏に騙され高値で買わされたので、BBH、大島一成氏と堀内英紀氏に対して損害賠償請求を起こしました。

近江久則

http://omihisanori.cocolog-nifty.com/
Posted by at 2007年12月22日 15:19
>近江久則 さん
 コメント、ありがとうございます。

 自分は株式市場に関する人的なつながりについては知識に乏しく、また、アーティストハウスについてもMSCB以外のことについてはこれといった情報は持っていない状況であります。つきましては、頂きましたコメントに関して具体的なお返事は控えさせていただきますので、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。

 ただ、梁山泊の一件、株式市場・・・というよりは新興市場が魑魅魍魎な皆さんの稼ぎ場になっている現状(の、ごくごく一部)があらわになった事例でありました。
 願わくば、現在明らかになっていない部分についても出来るだけ多くの事実が明らかになり、株式市場がより健全な方向に向かってほしいところであります。
Posted by こみけ at 2007年12月23日 01:47
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2007-12-19 05:24:24
Excerpt: 私が会社の経営を始めて以降、田塩享寛氏と出会い大盛工業株の売却話を持ちかけたり、
Weblog: 近江久則について
Tracked: 2007-12-22 16:11