2005年10月25日

アーティストハウスホールディングス(3716)の新株予約権(その1)

 20日、マザーズ上場のアーティストハウスホールディングス(以下アーティストハウス)が総額120億円分の新株予約権(第7回、第8回、第9回合計)の発行を発表した。プレスリリースはこちら
 何か「MSCBではない」と言うことを一生懸命主張しているのでせっかくだから考察させていただくこととする。今回は第7回新株予約権である。第8回、第9回についてはご要望があればと言うことで今回はご容赦を。

〜VWAP3日平均から10%ディスカウント・毎週修正型 概要〜

 まず、本新株予約権の行使価額条項について考察を行う。本新株予約権の当初行使価額は385,200円であり、下限行使価額はその50%に当たる192,600円、上限行使価額は300%の1,155,600円である。また、行使価額は、毎週最終取引日を修正日とし、修正日までの3連続取引日におけるVWAPの平均値の90%に修正されるとされていることから、毎週金曜日(祝日でない場合)に行使価額が修正され、ディスカウント率は10%である。
 例を挙げると、第1回修正日である11月18日には、行使価額は、

行使価額=(11月16日のVWAP+17日のVWAP+18日のVWAP)÷3×90%

で得られた価額に修正されることとなる。これらの概要を図1に示す。

上限行使価額ははるか彼方
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要


〜MSCB以上に不利な新株予約権の発行 考察〜

 さて、本新株予約権の発行のプレスリリースにおいて、アーティストハウス側は、
「当該予約権の発行は『MSCB』ではなく・・・(中略)・・・『エクイティーコミットメントライン』と呼ばれる新しい手法によるものです。」
と主張している。
 「エクイティーコミットメントライン」がどんなに新しくてすばらしい手法であるかは当ブログ的にはどうでもいいことなので関知しないが、本新株予約権がMSCBでないのは確かである。MSCBのBはbond、すなわち社債のことなのであるから、新株予約権単体はMSCBとは呼ばないはずである。

 その一方で、本新株予約権は、払込金額はあらかじめ定められており(1個500万円)、行使価額に応じて交付株式数が変動するという特徴がある。
 すなわち、交付株式数は、

交付株式数=500万円×行使する新株予約権の個数÷行使価額

で定められる。なお、本新株予約権は全部で400個であり、総額で、500万円×400個=20億円と言うことになる。
 従って、MSCB同様、株価の下落が発生すると新株予約権行使により得られる株式数は増大し、希薄化が激しくなるのである。
 つまり、本新株予約権は、「払込金後払いのMSCB」と考えるのが妥当であると言える。んで、何で一般的なMSCBのように前払いではいけないのかというと、先日の平成電電破綻に伴うドリームテクノロジーズ(4840)のMSCB繰上償還騒ぎを教訓としたリスク回避策であると見るところである。繰上償還では間に合わない場合を想定した対策なのであると見るところである。なお、インプレスホールディングス(9479)も先日これとほぼ同じ仕組みの新株予約権を発行したので興味のある方はご参照いただきたい(当ブログの該当記事)。

 んで、払込金が後払いであると言うことは、新株予約権が行使されるまでは現金が入らないわけで、その間については、アーティストハウスとしては借金(コミットメントライン)で補わざるを得ないと言う美しい図式が成立するのである。これが「エクイティーコミットメントライン」というものなのだろうか。
 見方を変えると、「M&Aに使う(使った)借入金を返済するための新株予約権」と言えるかもしれない。新株予約権が行使されなかったらどうなるのか、今から楽しみである。


 新株予約権行使までの借入金利息やコミットメントラインの手数料、さらに新株予約権の行使による現金収入の不確実性(金額・期日双方)を考慮すると、本新株予約権はMSCBではないものの、MSCBよりもはるかに不利な条件で行われる資金調達であるとの結論が成立すると考える次第である。

 なお、第8回・第9回の新株予約権で定められている行使停止条項については、本条項を発動した際に困るのはどちらかを考えれば、さして重視する必要はないと考えるところである。


11月13日訂正:
 本日、アーティストハウスのプレスリリースを再確認いたしましたところ、本ファイナンスにおいてアーティストハウスが資金借入を行うとは明示されておりませんでした。従って、新株予約権の行使まで借金を行ってしのぐと言う記述は正確なものではありませんでした。
 また、本プレスリリースにおける「コミットメントライン」は借入金を指すものと誤認しておりましたが、本ファイナンスにおいては借入金を指す用語ではないと考えられます。

 以上の点につきましてお詫びの上、訂正いたします。詳しくはこちらの記事をご覧下さい
posted by こみけ at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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