2005年10月22日

インプレスホールディングス(9479)の新株予約権

 19日、インプレスホールディングス(9479)がゴールドマン・サックス割当で100億円分の新株予約権の発行を行うことを発表した。本新株予約権は、MSCBと新株予約権の双方の特徴を持つものであり、また株価の乱高下を引き起こす要因をはらむ代物であると判断したので、考察してみることとする。

〜VWAP3日平均から10%ディスカウント・毎日修正型 概要〜

 まず、本新株予約権の行使価額条項について考察を行ってみる。本新株予約権の当初行使価額は63,735円、下限行使価額はその50%に当たる31,868円である。また、行使価額は、「行使請求の効力発生日の前日までの3連続取引日」におけるVWAPの平均値の90%であるとされていることから、本新株予約権は、毎日行使価額が修正され、ディスカウント率は10%である。
 例を挙げると、11月21日に行使請求が行われた場合、行使価額は、

行使価額=(11月16日のVWAP+17日のVWAP+18日のVWAP)÷3×90%


で与えられることとなる。これらの概要を図1に示す。

終値・VWAPの違いを除けばドリテクとほぼ一緒
図1 本新株予約権の行使価額修正条項概要

〜後払いのMSCB 考察〜

 さて、本新株予約権で注目したいなのが、通常、新株予約権では交付株式数があらかじめ定められており、行使価額が修正されると変動するのは払込金額なのであるのに、本新株予約権は逆で、払込金額はあらかじめ定められており(1個1000万円)、変動するのは交付株式数という点である。
 すなわち、交付株式数は、

交付株式数=1000万円×行使する新株予約権の個数÷行使価額


で定められる。なお、本新株予約権は全部で1000個であり、総額で、1000万円×1000個=100億円と言うことになる。
 従って、MSCB同様、株価の下落が発生すると新株予約権行使により得られる株式数は増大し、希薄化が激しくなるのである。
 つまり、本新株予約権は、「払込金後払いのMSCB」と考えるのが妥当であると言える。んで、何で一般的なMSCBのように前払いではいけないのかというと、先日の平成電電破綻に伴うドリームテクノロジーズ(4840)のMSCB繰上償還騒ぎを教訓としたリスク回避策であると見るところである。繰上償還では間に合わない場合を想定した対策なのであろう。
 なお、今回の手法はあくまで緊急避難を目的としたものであり、別にインプレスがドリームテクノロジーズのような事態に陥るとゴールドマンが予見しているというわけではないと考える。予見していたら、最初から新株予約権など引き受けないはずである。

〜行使許可で株価乱高下の可能性 主張〜

 さて、本新株予約権は100億円すべてをいつでも行使請求できるわけではなく、インプレス側がゴールドマンに行使請求可能な期間及び個数を通知し、ゴールドマンはその範囲内で行使請求を行うという形を取っている。そして、インプレスはこの行使許可の通知を行ったことについてプレスリリースで発表するとしている。
 この手法によって、インプレスは権利行使に一定の制御を行えるとしているが、自分は本手法が株価の乱高下、並びにゴールドマンのぼろ儲けを引き起こしかねないと主張するところである。
 本手法で権利行使許可のプレスリリースが出ると言うことは、ゴールドマンがその時から、発表された額の新株予約権の行使を行えるようになることを意味する。すなわち、その時点で希薄化がいつでも発生しうる事態として認知されることになる。従って、自分としては、このプレスリリースがMSCBの発行発表のように、ネガティブな材料として受け止められる可能性が極めて高いと考えるところである。
 これは何を意味するかというと、例えば行使許可を20億円ずつ5回に分けて行った場合、ひょっとしたら発表の度に、希薄化リスクを嫌気した株価の急落が起きるのではないかと思えるのである。ちょうどMSCB発行発表時のように。しかも5回である。また、偶然か必然かはさておき、図2のように、行使許可のプレスリリースが出る前にゴールドマンが空売りを行い、プレスリリースが発表され株価下落や行使価額の下方修正が起きた状態で新株予約権の行使を行い、ぼろ儲けするという可能性も考えられると主張するところである。

発行発表時のツケ?
図2 プレスリリース発表前後に起こりうる動き

 いずれにしろ、本新株予約権について検討を行う場合は、「100億円の新株予約権」と考えるのではなく、「何回かに分けて発行される総額100億円のMSCB」と考えた方がよいのではないかと主張させていただく次第である。
posted by こみけ at 22:59| Comment(15) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
グッドウィルに続く”風変わりな”ファイナンス。やっぱり、よくわからない部分が多いです。
時価総額220億の企業が総額150億の資金調達(50億のコミットメントラインの設定、100億の新株予約権発行)とは、あまりに額が大き過ぎる。

未公表の重要事実がある場合には、行使可能の通知ができない、とあります。ということはM&Aの場合、事前に社名公表をした上で行使可能の通知をすることになりますかね。仮にその段階でGSが行使しないとなれば、資金不足でM&A失敗になるのかな。

行使可能の通知は、どういう場合にどういう基準で行われるのかがサッパリわかりません。株主に対しては、会社の判断を全面的に信じろ、ということなんでしょうか。

GSは新株予約権を1個5万円で買ってますが、未行使分は4万円で買取請求できるので、結果的には1万円×1000個=1000万円の経費で100億円の融資を獲得したことになるんですかね。
通知無しで行使できる期間が設定されているので、そのタイミングで大量に空売り・転換すれば十分に元は取れるのでしょうね。

みずほ銀行&証券が関係強化を目的としてここの株を保有していたようですが、9月にはかなり売却してます。GSに持っていかれたということかな。
主幹事の大和は何をやってんだろ。
Posted by yuragi at 2005年10月23日 05:32
>yuragi さん
 コミットメントラインについては、新株予約権が行使されて金が入ってくるまでのつなぎとしてみればよいかと。ただ、そう考えたとしても、100億円でも多いですよね。

 行使許可については、GSとインプレスの間で大体の取り決めはすでにできているように思えます。これまで発行されたMSCBの転換完了までの期間を考慮すると、3〜6ヶ月程度ですべての新株予約権が行使許可され、かつ実際に行使されるものと考えております。

 通知無しに行使できる期間というのは、07年3月期の中間決算発表後に10個を上限に行使できるという記載でしょうか?
 こちらについては、時期が06年10月頃ということ、また、行使可能な総額(10個)がわずか1億円ということから、事実上無意味な条項であると見ています。

 行使許可のプレスリリースが出た直後の株価動向が今から楽しみであります。ひょっとしたら、5%ルールを注視していれば、プレスリリースが出るタイミングを察知できるかも知れません。
Posted by こみけ at 2005年10月23日 11:51
なるほど、なるほど。
勉強になります。
ありがとうございます。

通知なしに行使できる期間についてはご指摘の通りです。10個行使で行使価額が90%ですから、1000万×10個×10%=1000万円は少なくとも稼げることになる。行使しなかった分は4万で買取なので990個×4=3960万円。なので5000−(1000+3960)=40万円。結果100億円分の新株予約権が実質40万円ということになるかと。オプションがこんなに安くていいのでしたっけ、と。あまりにGSにとってリスクが小さく、大きなリターンが見込まれるおいしい条件のように思えます。

で、全く別の観点ですが、コミットメントライン契約の手数料が1000万円以下だったとすれば、インプレスはコストをかけることなく、市場から1000万円を吸い上げながら本スキームを維持できることとなる。これ、見ようによっては買収防衛策に見えなくもないかなあ、とも思います。

とはいえ、インプレスがドリームテクノロジーをM&Aしたら面白いと思うんですがねえ。電子書籍とZOOMAは親和性が高そうだし、シナジーも期待できそうに思える。ドリテク、時価総額が87億なので予算内に納まりそうだし。コミットメントラインの契約が9月30日と平成電電の民事再生よりも前の日付なので、ドリテクを狙ったわけではなさそうにも見えますが(発表が10月19日なのが妙といえば妙ではあります)。
またまた妄想が膨らみまする。
Posted by yuragi at 2005年10月23日 14:42
>yuragi さん
 買収防衛策でしたら、主幹事の大和に引き受けを要請することになるかと思います。また、インプレス的には買収防衛であることを高らかに宣伝するでしょうから、考えにくいところであります。
 ただ、四季報を見て初めて気がつきましたが、GS、インプレスの副幹事だったんですねぇ。

 ドリームテクノロジーズはどうでしょうか・・・?おそらく相当の人材流出があるでしょうから、買収するだけの価値はないかと思います。むしろ法的整理をやってから・・・
Posted by こみけ at 2005年10月23日 19:37
>yuragi さん
>時価総額220億の企業が総額150億の資金調達(50億のコミットメントラインの設定、100億の新株予約権発行)とは、あまりに額が大き過ぎる。
>yuragi さん
>コミットメントライン契約の手数料が1000万円以下だったとすれば...

1000万は、50億の2%ですよね。コミットメントラインの契約手数料としては十分の値段だと思います。一般に政府系保証協会などでは、銀行金利を入れて1.5%から2.0%程度ですので、yuragiさんが書かれているように時価総額にほぼ近い資金調達の導入資金手当てとしては当然かと。
インプレスの塚本氏、郡司氏ともアスキー時代の資本政策の失敗(自分たち経営陣が十分な比率を持たないために、西氏と今IRIの藤原氏によってアスキーをつぶされたという意識。西氏、藤原氏の半導体MPEGチップへの投資には彼らは大反対してアスキーを飛び出したと聞いています。)を繰り返さないための経費をかけず、かつ自分たちの資本比率を下げない(この前哨戦が2分割の株の分割だった。)戦略かと思います。いま、雑誌・書籍をふくめ出版業界はかなり苦しい。いまこそ大型M&Aで彼らの得意とする出版で主要な地位を占めること、あと出版としてのアスキーを再度手に入れる可能性もないとも言えないと思います。ソースネクストを始めとしてOSSによるソフト販売が市場認知され始めたことなどからみて、今回の資金調達はM&Aによる事業拡張だと思うのですが。マネーゲームではないと思います。既存株主にとっては、株価的にかなり苦しい(ただ、たしか配当は今期から高配当に変更したと思いますが。)事態になるとは思いますが。
Posted by 胡桃 at 2005年10月24日 00:22
忘れたころの新型資金調達銘柄であるインプレスがS高をつけましたね。まさに、こみけさんが予測された株価乱高下の幕明けかもしれませんね。
Posted by 胡桃 at 2005年11月24日 16:59
>胡桃 さん
 胡桃さんがブログにておっしゃっていますように、インプレスは近々何かしらのM&Aに関する行動を起こすやも知れません。
 GSにとっては、値動きが激しいのは良いことですからねぇ。
Posted by こみけ at 2005年11月24日 23:41
月末のファンコミの上場の件で買われたのだと思いますが、うまく値がつけば100億近い含み益がでるかもしれません。
いままで資金調達の件で上値を抑えられていたこともあるでしょうからひょっとすると、今後の動き次第で懸念後退、大相場がくるような気がしていますが。

Posted by GL at 2005年11月26日 09:47
>GL さん
 コメントありがとうございます。
 おっしゃるとおり、ファン・コミュニケーションズ(2461)上場への期待が今回の上昇の要因であると考えております。
 後は、インプレスがどのタイミングで新株予約権の行使を許可するかだと思います。難しい判断になりそうですねぇ。逆に、ここをうまく乗り切れば経営陣の信頼性は一気に高まるかと。
 ファンコミの株を一部売却して資金を得る代わりに、新株予約権の消却を行うという選択肢もありますが、可能性としては低いと見ております。
Posted by こみけ at 2005年11月26日 10:52
>こみけさん
>ファンコミの株を一部売却して資金を得る代わりに、新株予約権の消却を行う
これは、ゼロに限りなく近いと思います。ファンコミの持株数はほぼ楽天と同じでしょう。塚本氏のキャラクタからして、一端手にいれた有力株(本来はファンコミは連結会社にしたかったくらいでしょう。第3位だからできない。)を手放すわけはないですからね。楽天がTBS騒動の関係から手放すのをまっているかもしれないですね。
Posted by 胡桃 at 2005年11月26日 13:58
>胡桃 さん
 うーむ、やはり考えにくいですか。IRIのブロードバンドタワー株追加売却の一件が頭にありましたので、ちょいと書いてみました。
 しかし、ファンコミ、公募のみで売出無しとは、どこも将来性を期待しているのですねぇ。
Posted by こみけ at 2005年11月26日 15:09
>こみけさん、
>IRIのブロードバンドタワー株追加売却の一件
これは、平成電々がらみもあるし(特損)、IRIだからでしょうね。

>ファンコミ、公募のみで売出無しとは、どこも将来性を期待している

と思います。企業が払う広告費用がラジオ/TVからインターネットへシフトし始めた、昨今、アフィリエートビジネスはこの広告費をユーザの口コミへの還元方式としてかなりの効果がありますから。投資効果は別として、運用コストは、いままでの口コミ対策コストよりはるかに少ないはず。数多くの人を渋谷の109のように集める必要はないわけですからね。

インプレスだともっている雑誌のカテゴリが医学とかITとかの世界ですので、コモディティと異なって医者のWEBやBLOGにアフィリエートで製薬会社の広告(大衆医薬品とか、サニタリ用品)をはるだけで広告主は効果てき面ですからね。いま、TV通販のサプリメントで医者が多く出るようになっていますでしょう。医者のBLOGでのアフィリエートは、医者への現在の薬剤のキックバック方式よりはるかに世間の批判を受けない、いい方法と思いません?
Posted by 胡桃 at 2005年11月26日 15:34
>胡桃 さん
 アファリエイトが大変費用対効果が良いのは間違いないと思います。
 ただ、それが公正かどうかとなるとやや疑問視するところがありまして、仮に「あるある大事典」のスポンサーに製薬会社とか健康食品会社が付いたとなると、その信憑性について疑問符がつけられるのは間違いないと思います。アファリエイトでも同様の批判は避けられないかと。
 その点、本質的にキックバックと同じような気がするのですが、いかがでしょうか。

 ちなみに、自分はサプリメントなどを少々服用しておりますが、そのほとんどは海外からの個人輸入によるものだったりします。内外価格差がものすごい世界でして・・・
Posted by こみけ at 2005年11月26日 20:45
>こみけさん、
>ただ、それが公正かどうかとなるとやや疑問視するところがありまして、
これは、こみけさんが書かれたように、よくわかる人はまさに信憑性に疑問符がつくものだと思います。そして、これは本質的にはキックバックのうまいやり方になりますね。某出版社(有名な物理学者が監修した雑誌は立派なのですが、この雑誌の知名度を利用した経営者がひどい広告を打っているので有名)の資格e-Educationなどまさにそれですね。

私はじつは極度のサプリメント拒否派なんです。通常の市販の風邪薬すら飲まない方です。医者の処方したケミカルドラッグだけを。特に、現在朝は10錠の処方を受けた薬を飲んでますが。今から明日のドラック管理です。おっと、キャンサー系のドラッグではないですよ。循環器系のドラッグです。キャンサー系だと医者の処方でも拒否しています。:-)
Posted by 胡桃 at 2005年11月26日 22:41
>胡桃 さん
 そういえば、この前アガリクス茸が癌に効くという本を出した人々が薬事法違反で捕まっていましたねぇ。この辺と五十歩百歩のような気がします。
 自分としては、マイナスイオンなんか怪しんでいるのですがねぇ。
Posted by こみけ at 2005年11月26日 23:28
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。