2007年04月03日

バナーズ(3011)のMSCB

 3月30日、バナーズ(3011)は30億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はForward Value Capitalである。
 本MSCBは、転換価額修正条項にはこれと言った特徴は見受けられないが、転換価額調整条項に注目すべき条項が定められていると考えている。
 本記事では、本MSCBの転換価額修正条項の概要を述べた後に、転換価額調整条項に関する注目点について説明し、この点をどのようにとらえるべきか考察を試みる。


〜ディスカウント率10%・株式併合では転換価額調整なし 概要〜


 まず、本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。
 本MSCBの当初転換価額は79円と定められている。また、上限転換価額は119円、下限転換価額は40円と定められている。上限転換価額は当初転換価額の約150%、下限転換価額は当初転換価額の約50%に定められており、ごく一般的な条件である。

転換価額修正条項は平凡
図1 本MSCBの転換価額修正条項の概要

 また、転換価額の修正が行われる日(修正日)は毎月第1・3・5火曜日と定められており、各決定日における修正後転換価額は、修正日前日までの3取引日の終値平均値の90%になると定められている。第1回修正日(4月17日)を例に取ると、4月12・13・16日の終値の平均値から10%ディスカウントした値に転換価額が修正されることになる。

 なお、貸株の空売りについては、『本新株予約権付社債の転換を前提としたつなぎ売り等』を目的にした借株は行うとプレスリリースからは読めるため、行われる可能性は考えておいた方が良さそうである。


 さて、本MSCBで特に目に付いた点として、転換価額調整条項(本プレスリリースの22.(4))を挙げたい。ここでは、本MSCB発行後の増資、株式分割等の場合に転換価額の調整(変更)を行う場合について説明を行っているのだが、一般的な(MS)CBには見られない一文が添えられている箇所がある。
 プレスリリース8ページ目の2行目、条文で言うと22.(4)(ホ)(ii)である。本項は普通株式数の変更が行われる場合に転換価額の調整を行うことを定めた条項であるが、『但し、株式併合の場合は除く』との記載がある。つまり、株式併合が行われる場合については、転換価額の調整は行われないと解釈できるのである。
 一般的には、株式併合が行われ、株式数が減少した場合、株価はその分高くなり(当然)、転換価額もそれに合わせる形で調整される。例えば、10株を1株に併合するような事例の場合、併合前の株価が100円だったとすると、併合後の株価基準値は10倍の1000円となり、転換価額も併合前の10倍に調整されるのが通例である。この辺は、株式分割の逆と考えていただけばわかりやすいかと。
 では、本件の場合はどうなるかというと、株式併合が行われ、株価が10倍になったとしても、転換価額の調整は行われず従来の転換価額がそのまま適用されることになると解釈できるのである。つまり、転換価額は併合後も修正日までは修正が行われず、修正日になってはじめて併合後の株価を基準に修正が行われることになる。また、上限・下限転換価額についても、併合時に変更(調整)は行われないと解釈するのが妥当であると思われる。

 仮に、あくまでも仮に、バナーズが10株→1株の株式併合を行った場合を例に取り、バナーズの株価及び本MSCBの転換価額の推移を図2にまとめてみる。なお、併合日前日の株価終値は80円と仮定している。

上方修正されてもちっともうれしくない
図2 株式併合前後の株価及び転換価額の推移

 この図からわかるように、仮に、あくまでも仮に、併合日前日の株価が80円だった場合、株価は800円近くとなる一方で、転換価額は従来(おそらくは2桁)のまま適用されることになる・・・もちろん、転換で得られる株式数が従来通りであることはいうまでもない。また、併合後初めての修正日には転換価額の上方修正が行われるが、上限転換価額が119円であるから、転換価額は119円に定められることになる。
 従って、本MSCBの引き受け手は株式併合が行われた場合、引き受け手は株価が余程下落しない限りは大きな利ざやを得られることになるといえそうである。いやだって、(上限転換価額での転換になっても)1株119円で得た株を市場で売却すれば、1株数百円で売れるんだからねぇ。

 なお、ここまでの株式併合時に関する説明は、あくまでバナーズが10株→1株の株式併合を行った場合を想定した、仮定の話であることを改めて強調する次第である。


〜有利発行の黙認? 考察〜


 本MSCBの転換価額調整条項は、株式併合が行われればと言う条件付ではあるが、一般的なMSCB等とは比べものにならない大きな利幅を得られる可能性がある代物である。となると、これは有利発行に当たるのではないかという考え方ができるかもしれないが、この点、なかなか美しい仕組みを作っていると言えるのではないかと感じるのである。
 株式併合を行うためには、株主総会の特別決議を経る必要があるのは皆様ご存じの通りである。となると、今回の転換価額調整条項がその真価を発揮するためには、特別決議が必要と言うことができ、株式併合決議の議決権を行使する株主が、併合が行われた場合に転換価額の調整が行われないことを承知しているのだとすれば(←ここ重要)、事実上、転換価額の調整に関する件についても、黙認を与えたという考え方ができるように感じるのである。

 本MSCBの転換価額調整条項における株式併合に関する特例?条項は、本MSCBが第2回及び第3回CB(MSCBに非ず)を借り換える目的(代用払込)であることが影響していると思われ、財務面で特に大きな問題を抱えているわけではない企業が(MS)CBを発行する場合に付与される可能性は極めて小さいと思われる。
 一方で、3月29日に発行が発表されたクインランド(2732)のCB(MSCBに非ず)にも、本MSCBと同様に、転換価額調整において株式併合の場合を除外する記載がある(プレスリリース)ことを考慮すると、今後、財務面での問題を抱える企業のファイナンスではこの条項が付与されることが多くなることも考えられるため、今後は転換価額修正条項だけではなく、転換価額調整条項の記載にも用心する必要が出てきたと考える次第である。
 
posted by こみけ at 00:45| Comment(12) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
不動産やら信用取引やら自動車やら、もう事業内容が意味不明な状況、財務的にも完全に「終わっている」会社、そこにきてMSCB、ハイ出来上がり!って感じですね。

こんな企業でも「東証二部」ってことは...それよりもはるかに審査基準のユルユルな新興は...こわいですね(今後もこみけさんの研究材料には事欠かないニュースが多そう)。

でも意外に、「PBRが1倍をはるかに割り込んでる!これは買いだ!!」なんて思って買っちゃう人いるかもしれない。ライブドアでの一般投資家の相変わらずの反応&メディアの反応を見るにつけ、投資の敷居はもうちょっと高いままだったほうが良かったんじゃないの?と思うのでした。
Posted by tree at 2007年04月04日 15:27
>tree さん
 本記事では東証2部のバナーズについて考察を行いましたが、記事中でも触れていますとおり、クインランドも同様の転換価額調整条項が定められたCBの発行を発表しています。
 この辺を考えますと、入り口に差はあっても、一旦入ってしまったら、それらの中にはさほど大きな差がないのかもしれません。

 後段でご指摘の人々がいるかもしれないことは否定いたしませんが、まあ、その辺は各人の好き好きとしか言いようがないところであります。
 敷居については、以前のように高くても、(現在のように?)低くてもさほど変わらないと思います。これから参入してくるであろう団塊の世代の人々は、敷居が高くても十分合格とみなされた人々でしょうが、市場で合格点?を出せる人は多く見ても半分、おそらくはそれ以下でありましょう。
Posted by こみけ at 2007年04月04日 18:01
そうですね、団塊の世代の存在をすっかり忘れておりました...

しかし彼らの動向で今後の市場に変化があるかどうか...欲深い割に慎重そうなので(個人的イメージ)、投信残高がどんどん増えるだけ、なのかも。
Posted by tree at 2007年04月05日 00:44
>tree さん
 「欲深い」という部分については、まあ我々とさほど変わらないと思うのですが(笑)、「慎重」という部分がどんな意味合いなのかについては考え方が違うかも知れません。

 もう既にこんな話↓も出てきているようですので、今後も似たようなことが起きそうであります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070403-00000057-mai-soci
 投信を買うのは悪いことではないにしろ、全て人任せにすることは危険と言うことを頭の片隅に置いてくれればいいのですがねぇ。
Posted by こみけ at 2007年04月05日 13:05
こみけさん、
この教職員の投資組合、150名ですよね。人数からみて公立の教職員ではなく私学系でしょうかね。どっかの学校法人の退職教職員という話で。1人約1000万ですので、俗にいう資産の3分割でほぼ65歳まで教員生活された人の退職金に見合いますか。これが私学共済(と断定してはいけないのですが。)のあやうさですか。私学共済連合会だったらもっと話題になるんでしょうけど。
Posted by 胡桃 at 2007年04月05日 23:52
>胡桃 さん
 本件のもう少し詳しい記事が↓にありました。
 http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/seibu/shakai/news/20070403ddg041040002000c.html

 出資した人は九州と山口にいるということで、一つの学校法人とは考えにくいように思います。

 名簿を見て営業担当者が、と言うことですから、狙われたのでしょうねぇ。
 もっとも、今まで教職員の人々が気づかなかったことも問題と思えますが。
Posted by こみけ at 2007年04月06日 01:39
こみけさん、
詳しい記事情報ありがたいです。なるほど、投資組合(ファンド)の組合員の主たる構成員が元教職員であったということだけなんですね。yahooのヘッドラインの書き方(読売ですか。)は誤解を与える書き方ですね。名簿はマーケティングの常套手段ですからね〜。

Posted by 胡桃 at 2007年04月06日 19:39
実は公私立含めて複数の学校で勤務経験があり、先月まで某私学で働いていたんですが、教職員名簿の管理を始め、いろいろな部分が相当ユルユルです(特にIT関連モラルがかなりユルユルだったりするからタチが悪い)。去年も教職員名簿が発端となってストーカー事件が発生しました。

で、40歳以下の私学教員はほとんどが専任ではなく、常勤という名の「仕事は正社員並み、給料は非常勤並み」の待遇で働かされているので、(私学に限れば)今回の事件のようなことは今後起こりにくいのかもしれません。

しかも、言い方悪いですけれど、一般の方がイメージしている通り(!?)、学校という閉鎖的環境にいるせいで社会情勢に無知な方が多数おられるので(もちろんファンキーな先生も多いですが)、こういうことが起こるんでしょうね。

しかしどうやってここまでの元本割れ起こせるんでしょうかね(まあ信用で追証地獄とかでしょうが)。こみけさんやボクらに運用任せてもらった方がよっぽどいいですよね(笑)。ちなみに今年は今のところ月10%の利回りを維持しています(運がいいだけのような気がする)。

でも、どうも中東情勢が相当きな臭くなってきたので4月末までポジションを大幅に減らしました(ショートを仕込もうか思案中)。
Posted by tree at 2007年04月06日 20:59
>胡桃 さん
 個人的には、名簿がどのようなルートで投資組合に流れたか気になるところであります。
 名簿業者を経由する一般的?なパターンならともかく、顔見知り?の教職員が営業となって手引きしていたりするとかなり美しいと思うのですが、そんなことはなさそうですね。
Posted by こみけ at 2007年04月06日 23:18
>tree さん
 先生方がこんな風?に社会情勢に疎いとなると、今後行われるようになるのではないかといわれている投資教育を実施するのはとても無理ですし、それでもやってしまうと、むしろ害悪にもなりかねません。
 素人の講釈を鵜呑みにするとえらいことになりますからねぇ。あと、一部教員はそもそも投資というものを理解できないようですし。


 投資組合の運用についてでありますが、商品先物でいうところの向かい玉を立てて別な方?に吸い取ったのかもしれません。
 また、2ちゃんねるでは、金利分(年5%×9年)と会社運営経費(給料など)で消費されたと考えればちょうど計算が合うのではないかとも語られているようであります。
 実際に国内株で運用していたのでしたら、おそらくITバブル崩壊で壊滅していたのではないかと。


 株式のポジションについては、自分は現状維持継続ですねぇ。やることといえば、そろそろ新興決算発表銘柄の信用売りの準備を始めることくらいであります。
 
Posted by こみけ at 2007年04月06日 23:43
投信の問題については、1/fゆらぎさんのヒット教室・日経平均の見通し2007年4月5日の
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/family-mn/hit1.htm
で、手数料0円のノーロード投信の問題が触れられていますね。
ゆらぎさんの記事によれば、より一般の投信そのものでも、
”投信は運用成績が上がらなければ、日々、信託報酬という名の手数料分を基準価格の値下がりという形式で取ります。”
ということですので、じっと我慢の投信であっても基準価格が日々悪化するということですね。こみけさんの書かれた2ちゃんねるでの”金利分(年5%×9年)と会社運営経費(給料など)で消費された”は信託報酬そのものを指しており、金融商品として真っ当なものですから、よほどのことが無い限り対抗手段は?ですね。
Posted by 胡桃 at 2007年04月08日 00:31
>胡桃 さん
 今回問題になっている投信では、運用状況が9年間全く開示されていなかったと言うことですから、信託報酬を含めた運用状況(あるいは基準価格)がどうなっていたか、利用者は全くチェックしていなかったことになります。
 本来は、出資者はここをチェックしなければいけないのですがねぇ・・・まあ、人任せにしたツケが回ってきたとしか言いようがないと思います。また、対抗手段を取るのが極めて難しいというのは同感であります。

 こういうのはなんですが、平成電電や近未來通信に出資した人々から比べれば、まだ半分戻ってきているだけましと言えそうであります・・・出資者のみなさんはそんな考えはしないと思いますが。
Posted by こみけ at 2007年04月08日 12:49
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