2007年02月04日

春日電機(6650)のMSCB

 1月30日、東証二部上場の春日電機(6650)は20億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は、JASDAQ上場のビジネスバンクコンサルティング(3719)の子会社が関与する投資組合である。
 本記事では、本MSCBの転換価額修正条項の概要について説明した後、会社側が語る感動的な発行理由へのつっこみなどを交えつつ、MSCBの存在意義やあるべき姿についても想いを馳せてみることとする。

〜毎週修正・ディスカウント率10% 概要〜

 本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。
 本MSCBの当初転換価額は208円に定められている。また、上限転換価額は500円、下限転換価額は100円に定められている。プレスリリース中では、会社側は一株純資産及び希薄化の程度を参考に下限転換価額を100円に定めたとしているが、多くのMSCBが下限転換価額を当初転換価額の50%に定めていることを考慮すると、今回の下限転換価額の設定は、一般的な事例からかけ離れた金額ではないと言えそうである。まあ、そもそも当初転換価額が発行発表時の株価(221円)を下回る値に設定される、というのはあまりないから、その分は考慮しなければならないがねぇ。
 また、転換価額の修正が行われる日(決定日)は毎週金曜日と定められており、各決定日における修正後転換価額は、決定日までの5取引日の終値平均値の90%になると定められている。第1回決定日(2月16日)を例に取ると、2月9・13・14・15・16日の終値の平均値から10%ディスカウントした値に転換価額が修正されることになる。

それほど特徴がある条件ではない
図1 本MSCBの転換価額修正条項概要

 なお、貸し株については、取締役から借株を行う可能性を明記する一方で、本件(本MSCB)に関わる空売りを目的としては借株を行わないとしている。と言うことは、別件?名目で空売りが行われる可能性はあると言うことで、そこら辺への警戒は少なくとも行うべきであると考えるところである。

〜資金需要の質 主張〜

 今からおよそ2年前、ライブドアがMSCBを発行した際の資金使途は「ニッポン放送の買収資金」というこの上なく明確なものであった。その後も(それ以前からだが)会社再建のための資金、事業拡大の資金、運転資金、M&A資金、優先株消却の資金など様々な用途でMSCBやMSSO(行使価額修正条項付新株予約権)の発行が行われてきた。
 だが、本MSCBの調達資金使途の一つは「信用取引の損失で毀損された自己資本の早期回復(管理人意訳:信用取引で出した損の穴埋め)」というこれまでにない感動的使途であり、「個人ではできないことも、上場企業ならいとも簡単にできるのだな〜」という想いを抱かずにはいられない事例となった。
 まあ、ほぼ時を同じくしてCB(MSCBに非ず)及び新株予約権の発行を発表したバナーズ(3011)は、「信用で痛手を被ったので今後は現物中心でがんばります」的宣言を発行発表のプレスリリース中で行い、ある意味春日電機の上を行っていたりするわけだが、正直どっちもどっちのような気がしないでもないところである。

 今回の春日電機のような事例であると、(既存株主にとっては腹立たしいこと極まりないだろうが)資本調達の手段は、多少(有利発行にならない10%以内)のディスカウントがあったとしても、公募や第三者割当増資では困難と思われ、有利発行の第三者割当増資、もしくはMSCB等の株価下落リスクが少ない手法でなければ困難であるというのが自分の考えである。株価下落リスクが高すぎるからねぇ。
 この辺、そもそもこういう理由で資金調達をすること自体が是か非か、と言う論点を抜きにすれば、MSCBでの資金調達は完全に否定されるべきものではなく、希薄化の問題はあるにしろ、信用力が劣る企業が緊急に資金調達を行いたい場合に用いる手法として、一定の存在意義がある事を認めざるを得ないと主張する次第である。
 一方で、そのような手法で資金調達を行う場合でも、既存株主に犠牲を強いる手法なのであるから、株主総会で株主の賛同を得た上で調達を行うように(ルール整備を含めて)するべきであると主張するところである。
 また、そのような犠牲を当然視する(≒何度も問題ある資金調達を行う)企業に対しては、投資家側による選別を行うことがもっとも効果的ではないかと考える次第である。
 
posted by こみけ at 20:06| Comment(4) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ワハハ、すごい笑えました。
春日電機はバナーズに唆されたのでしょうか?信用取引で株式を持ち合う関係って何なのだろう。
リスク回避のために現物取引で頑張る投資会社…、そんな所に投資したくないなぁ。

森尾電機は大丈夫なのか。
Posted by Daffy at 2007年02月05日 23:44
>Daffy さん
 私は人的な面の情報収集力は弱いので詳しいことはわかりませんが、何か両社の間につながりがあったのかもしれませんねぇ。

 今回の一件、上場企業ではなく、個人投資家に例えて考えるとより一層考えさせられるお話であります。
 本日の日経朝刊で、消費者金融に借金を申し込んだ人の半分は断られるといった感じの記事が載っていましたが、貸し手側も商売ですからねぇ。
Posted by こみけ at 2007年02月06日 23:16
 いつの間にやら6650がXoX21入りになってましたねぇ。第1回の修正後転換価額もまぁ悲惨なもので。まさかの最安値40円更新があるのでしょうか。
Posted by Daffy at 2007年02月17日 23:51
>Daffy さん
 XoX21の入れ替え理由が株価推移によるものなのはちょっと違和感を感じるところでありますが、まあ、春日電機が採用されてもおかしくないので、結果オーライと言ったところでしょうか。
 こういうことを1回やらかした企業はその後もなんだかんだでじり貧に陥ることも多いので、立て直しを確認するまでは安易に近寄らない方が良さそうですね。
Posted by こみけ at 2007年02月18日 00:47
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