2012年12月31日

2012年おもしろIR・ファイナンスを選んでみた

 本日は12月31日、今年はカレンダーの並びがよく、28日までに仕事も終わり、28日の大納会も年初来高値更新で締めと、例年になくゆとりある年末になっている。
 ということで、今年も本年出されたIRをはじめとするプレスリリースの中から、管理人の独断と偏見で選んだものをご紹介させていただきたい。取りこぼしが多数あると思われるが、その辺はご容赦を。

○おもしろIR
 本年は、東日本大震災で大混乱が起きた昨年とは異なり、国内の企業や市場はおおむね平穏を保った。欧州危機は昨年と変わらず発生したがいつの間にか織り込まれていき、また円高についても製造業を中心に業績悪化の主要因となったが、円高を理由として上場企業が倒産に至るケースは多くはなかった。
 その結果、本年は2011年の反動というわけではないのだろうが、おもしろIRについては不作の年だったと考えている。そんな中でも、以下の4本はそれぞれに見どころがあると推奨する代物である。あと、おまけも。

第1位 ECI(旧4567) 当社第13 期定時株主総会延会のお知らせ
 ある意味2005年3月の上場当日からお騒がせな銘柄だったECIも、今年ついに上場廃止となった。本件は、そんなECIがどうにか開催した株主総会が紛糾し、議事進行ができず延会(総会やり直し)となったことを告知するプレスリリースである。
 近年でもこの手の銘柄の総会が大荒れとなることは時折あったようで、かつてイチヤ(旧9968)の総会が荒れたという話を聞いたことがあるが、それでも総会自体は終了したようである。また、ライブドアも強制捜査を受けた後の株主総会が荒れたが、どうにか議事を乗り切って総会を成立させていた。さらに、どうにもならなそうなことが明らかな場合は総会を延期することもある。
 だが、今回は総会を開いたうえで議決が行えなかったという非常に珍しい事例であり、役員間の内紛があったのが延会に至った要因らしいと言うのが実に美しい。まあ、騒ぐ株主が何人かいるくらいでは強引に進行させてしまうだろうから、その手の波乱要因が無ければ起こり得ない事態だったに違いない。
 なお、延会後の株主総会においては、議案の一部は撤回されたものの、無事決議は行われた模様である(プレスリリース)。

第2位 山水電気(旧6793) 第75回定時株主総会の延期のお知らせ
 管理人が株を始めた2001年頃には、すでにおもしろ銘柄化していたような気がする山水電気が今年ついに倒産、そして上場廃止となった。
 ここ数年はいつ倒産してもおかしくないと見られていただけに、倒産自体にはこれといった衝撃はなかったが、その一月ほど前に出された本プレスリリースで社内の窮乏ぶりがうかがえる。第一に目が行くのが、倒産の一月前にあたる2月末時点で従業員給与を含めて支払い遅延を起こしている点である。そして、本プレスリリースの目的である株主総会延期の理由については、『定時株主総会の招集及び開催に要する費用が工面できない状況であり』という救いようのない理由が付された。たぶん真実なのだろう。
 まあ、総会を開くとなればそれなりのお金も必要になるのは確かだが、その費用を工面できないようではもはや先が見えている状態であると言わざるを得ない。また、今後の見通しに関する、『何卒諸事情ご賢察のうえ、ご容赦いただきますようお願い申し上げます。』と言う一文の『ご賢察』のところにその後の結末が示唆されているようで味わいを感じた。

第3位 クラウドゲート(旧2140) 札幌証券取引所による当社株式の上場廃止の決定及び整理銘柄の指定に関するお知らせ
 本銘柄は札幌アンビシャス市場に上場していたIT関連株で、上場前からの粉飾決算が発覚し、上場廃止と相成った。本プレスリリースはその上場廃止を周知するためのものである。粉飾内容及びその重大性は置いておくとして、『当社は本件発覚まで上場後一度も正しい財務諸表を開示しておらず』と言う噴飯ものの事実まで淡々と記載するあたりで脱力した。
 一昨年のエフオーアイ(旧6253)の例を参考にしたのかもしれないが、実質的な意味はないのは承知なうえで「遺憾なことに」と頭に付け加えてみるとか、もう少し書きようがあると思うのだがねぇ。

第4位 アコーディア・ゴルフ(2131) 株式会社オリンピアを含む当社一部株主からの株主提案権行使に関する書面の受領及び受領に至る経緯について
 アコーディアはゴルフ場を経営する企業であるが、目下PGMホールディングス(2466)にTOBを仕掛けられてもめている状況である。本プレスリリースはその前段となる?アコーディア内の騒動について会社側が説明した資料である。
 ・・・社長の竹生氏の問題については『コンプライアンスに関する問題』などとだけ述べているのに対し、敵対側取締役(秋本氏)のスキャンダルについては結構詳しく紛れ込ませているあたり、さすがである。

(番外) 野村ホールディングス(8604) 第108回定時株主総会招集ご通知
 野村ホールディングスの株主総会に株主提案が100件あり、そのうち18件が実際に議案となってしまい話題となった一品である。なお、却下された82件の中には「野菜ホールディングス」への商号変更が含まれていた模様。さらに、英文招集通知にも(当然英語で)18件分の議案が記載されてしまっており、その英訳の秀逸さは一見の価値があると自信を持ってお薦めできるものとなっている。
 さて、肝心の議案の内容であるが、公募増資に株主総会での承認を必要とする定款変更を要求する第9号議案をはじめ、これまでの野村の行いからすれば検討すべきと思える議案もある。
 だが、本記事の立ち位置としては、注目すべきは第10号、12号、13号議案あたりであろう。第10号議案で株主総会シナリオの開示を気軽に要求しているのも美しいが、やはりオフィス内の便器をすべて和式にして社員の足腰鍛錬をするよう提案している第12号議案が最高だと思う。そう、ふんばりどきにふんばれないようでは今後厳しいのは指摘通りである。一方で、大きい声を出す精神論も全面否定する必要はないと自分は考えており、大声でふんばらせる鍛錬を行えば一石二鳥だと思う次第。最後に口直しが第13号議案のトマト栽培のやり取りとなる。あと、第15号議案で個人名が削除されている『最強の格闘家』と言うのは誰のことだろうねぇ。世界人口推移をみると、1998年頃の格闘家のようなのだが。
 一方で、取締役会の意見としては、第10号、12号、13号議案とも『本議案に反対いたします。』とだけ書かれたそっけないものであり、ここから会社側のいら立ちが感じられる。
 なお、実際の議決がどうなったかはこちらの資料に掲載されており、議案ごとに少しずつ賛成比率が異なっている。第2〜19号議案の中で最も高かったのは第9号議案の8.9%となっており、取締役の責任軽減を認めないことを要求した第6号議案が次点(8.0%)につけていることも併せて考えると、議案をしっかり検討した株主が相応にいたことを示していると言えそうである。
 ところで、個人的にはこの株主総会議案を野村ホールディングスの入社試験に使ったら面白いのではないかと思う。仮に第10〜12号議案あたりの和文英訳ができる人がいるのならばすごく優秀だと思っていいのではないかと思う次第である。と言うか、議案の英訳は誰がやったのだろう・・・。

○注目優先株
東京電力(9501)
 東京電力は原発関連の賠償費用等を賄うため、総額1兆円に上る優先株の発行を行った。普通株転換時の下限取得価額が30円になっているということで将来大規模な希薄化が起きるリスクがあるが、そもそも現状で東電にまとまった資金を出したいか、という観点も考慮すると、この条件でも厳し過ぎるわけではないと考える。
 ただ、引き受けた原子力損害賠償支援機構、というか国がどういうシナリオで優先株を扱おうとしているのかまだ見えないのが困りどころである。まあ、3年やそこらで終わる話でもないだろうから、気長に行くのかもしれないが。

○凶悪銘柄特別賞
・エルピーダメモリ(旧6665)
 本年2月に会社更生法を申請、倒産したエルピーダメモリ。その時点から、「ほぼ間違いなくこれが今年の凶悪銘柄になるだろうな〜」と思い続け、無事(?)その通りになった。
 元々エルピーダの経営状態については、価格変動の激しいDRAMの専業メーカーであることから、他の半導体メーカーと比べても悪いことは知られており、しかも円高で厳しい経営状況が続いていた。
 そんな中で倒産したこと自体は仕方ない部分もあるとは思うが、倒産直前に借入金のない他行に保有現金を移し、倒産後の記者会見で坂本社長が『シェア30%を頭に描いている』と拡大路線での再建を目論んでいると取れる発言を行うなど、散り際があまりにも醜かったのが今回の選定理由である。
 今後のエルピーダの動向も気にはなるが、より警戒すべきは坂本氏が今後他の半導体メーカーに関わったりしないかという点であると考える。坂本氏が今回の倒産原因をどう考えているかはさておき、投資家の立場では同じことがもう一度起こるリスクも想定しなくてはいけないところである。

○注目MSCB・MSワラント
レオパレス21(8848)のMSワラント
 本年2月にドイツ銀行引き受けで発行した一品。下限行使価額が高く設定されるなど、条件が悪いわけではないのだが堅調な地合いが続くと発行案件を増やしやすい(営業しやすい)と想定しており、不動産銘柄での先行例として注目したい。

○注目MSCBプレイヤー
・ドイツ銀行
 上で挙げたレオパレス21をはじめ、複数銘柄でMSワラントを引き受けている。最近の株式市場の活況を好機ととらえる可能性も高く、今後発行事例を増やすか注目。
 ちなみに、過去のプレスリリースを見ると、MSCB、MSワラントをはじめとする第三者割当増資は引き受け手・発行企業の最初の顔合わせから3カ月くらいで発表に至るケースが多いようである。そして、ここから類推すると、昨今の上昇局面に呼応して企図されるファイナンスがあるとすれば、来年の3月頭くらいから発表が出てくることを用心してみようかと。

○2012年最凶MSCB
-該当なし
 2011年に引き続き、本年もMSCBやMSワラントの発行は低調だった。また、条件面についても、凶悪と言えるような代物はないと考える。
 本年発行された案件のうち、東京電力の優先株は将来大変な希薄化を既存株主にもたらす可能性があるが、東京電力の現状、先行きを考えると、やむを得ない条件であると考える。
 また、発行後に株価が下落した案件としては、野村引き受けでMSCBを発行したエヌ・ピー・シー(6255)が特に目を引いている。具体的には、537円をつけていた1月30日(発行発表日)から下落し、半年後にはほぼ半値となり、10月には3分の1以下(安値:10/4 156円)まで下がっている。ただ、こちらも業績不振や製造業全体の下落トレンドの影響を受けている部分もあるから、発行数や転換価額修正条項がそれほど厳しくないことを考えると、明確にMSCBの影響とまでは言えないところである。
 まあ、凶悪ファイナンスが無いことは、当ブログ的にはネタがなくて困るが、市場全体としてはいいことなのは間違いないと思いたい。


 以上、本年は日本経済に盛り上がりがなく、かつ国内での金融的混乱もなかったことからおもしろIR・ファイナンスとも不作の年となった。
 一方、年末からは相場が盛り上がっていることは皆様よ〜くご承知のとおりであり、これが来年のおもしろIRにつながってほしいと願う次第である。

 それでは、皆様もよいお年を!
 
posted by こみけ at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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