2012年05月28日

東京電力(9501)、総額1兆円の優先株発行を発表する

 21日、東京電力(9501)は総額1兆円になる優先株の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手は原子力損害賠償支援機構(以下、機構)である。
 本優先株は、発行額が大きいことから希薄化の度合いが非常に大きくなっていることが最大の特徴といえる。
 本記事では、本優先株の普通株取得価額修正条項の概要について説明した後で、東京電力が今回の優先株発行に合わせて行おうとしている定款変更に関する主張を行ってみる。

〜下限取得価額は30円 概要〜

 今回発行される優先株はA種とB種があるが、普通株の取得に関しては同じ仕組みになっている。
優先株の払込が払込期間最終日の7月25日に行われたと仮定した場合の、本優先株の普通株取得価額取得条項の概要を図1に示す。
 本優先株の当初取得価額は200円と定められており、上限取得価額は300円、下限取得価額は30円と定められている。通常、MSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の下限転換価額は当初転換価額の50%程度に定められることが多いことを考えると、本優先株の下限取得価額は当初取得価額の20%以下と大変厳しいものとなっている。
 また、取得価額の修正は毎日行われ、直前5取引日の終値平均から10%ディスカウントした値に定められる。

yusen_9501_1.jpg
図1 本優先株の取得価額修正条項概要

 本優先株に関して特筆すべきなのが、一般のMSCBやMSワラントで行われている転換規制(毎月の転換上限を発行済株式数の10%以内にする規制)が適用されない点である。具体的な記載はプレスリリースの5.(1)Bの最後の方(14ページ目4行目から)にあり、貸株の空売りのような?ヘッジ目的の取引を行わないので制限措置はとらないという。
 個人的には、適用除外規定(具体的な内容は有価証券上場規程施行規則第436条6項になる?)のうち、保有期間の明記が少なくとも本プレスリリースではなされていないので適用できないのでは?とも思うのだが、まあその辺は後から発表するか、東証判断で乗り切るつもりなのだと考える。そもそも、転換規制(約1.6億株/月が上限になる)を適用したらいつまでたっても転換しきれない展開になりかねないという見方もある。
 いずれにしろ、機構の意向次第では一月の間に数億〜数十億株もの普通株が取得され、市場に売りに出てくる可能性もなくはないことになる。まあ、株式市場の動揺を考えればそんなことはしないと思うが。

〜発行可能株式数の急増に警戒 主張〜

 さて、東京電力は本優先株発行のプレスリリースと同時に定款変更のプレスリリースも出している。
 その中で言及されているとおり、発行可能株式数は株主総会時に2段階の変更を決議する予定であり、この定款変更が通ると、発行可能株式数は普通株、A/B種優先株の合計で141億株と定められることになる。
 従って、たとえ東京電力の株価が低迷した状態で普通株の取得が行われたとしても、発行済株式総数がいきなり300億株とかになったりすることはない・・・が、現行の発行可能株式総数が18億株であることを考慮すると、優先株の存在を考慮しても普通株の発行可能株式数は定款変更を行うと一気に5倍以上に膨れ上がることになる。

 このようなことを行った直近の事例を探してみると、昨年JASDAC上場のアーク(7873)が企業再生支援機構等に優先株を割り当てた事例が挙げられる。この際は、発行可能株式数は定款変更前が普通株のみ1億株であったのに対して、定款変更を2段階で行った後では発行可能株式数はちょうど10億株、うち普通株は9億株という状況であった。
 この際は、株主総会を無事通過し、大証から文句を言われることもなく無事に定款変更並びに優先株の発行を行ったようである。


 ・・・今回の東京電力の事例においては、大規模増資が不可避であることを大多数の株主はだいぶ前から認識していたに違いない。また、株式の大幅な希薄化が起きるにしろ、東京電力の存続に必要な増資であることは否定し難い。
 自分が気になるのは、今回と同様の増資が悪用(特に業績悪化した小型株で)される可能性である。特に、発行可能株式数の2段階変更なんかは、大規模希薄化を行う際の抜け道にもなりかねないように思え、乱用されると日本市場への信用をさらに損ないかねないと考えている。株主総会で承認されたのだから、という論法でなし崩しに発行可能株式数が一度の総会で急増するのは(今回東京電力が堂々とやろうとしているのだから)違法ではないのだろうが、少なくとも自分はその手の銘柄で売買はやりたくないねぇ。
 自分としては、今回のような大規模な希薄化を伴う増資や発行可能株式数の2段階変更などを行う銘柄には近づかないよう自己防衛を図るが、願わくば日証協などが早めに規制して芽を摘んで欲しいところである。
 

posted by こみけ at 02:34| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。