2012年02月12日

レオパレス21(8848)のMSワラント

 10日、東証一部上場のレオパレス21(8848、以下レオパレス)は合計4200万株分のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を発表した。プレスリリースはこちら。引き受け手はドイツ銀行である。
 本件においては、行使価額の修正条項自体は過去にも例があるものだったが、下限修正価額がかなり高めに設定されている点が目についた。
 本記事では、本MSワラントの行使価額修正条項について簡単に説明した後、下限修正価額がずいぶん高いところに設定されている点について思うところを述べてみる。


〜会社側決議で修正開始、ディスカウント率8% 概要〜

 今回発行されるMSワラントは、第1〜3回として各1400万株分ずつが発行されるが、当初行使価額と発行価額以外は同じであると言える。以下では、第1回分を例に説明する。
 本MSワラントの行使価額修正条項の概要を図1に示す。本MSワラントの当初行使価額は250円と定められており、上限行使価額は定められていないが、下限行使価額は150円と定められている。発行発表日である10日の終値が171円であるから、下限行使価額までは15%弱しかないという珍しいケースである。
 また、行使価額の修正は、レオパレス側の決議によって開始され、各行使請求の効力発生日ごとに定められるから、決議後は事実上毎日修正であると言える。修正後の行使価額は前取引日の終値の92%に修正されるとあるから、ディスカウント率は8%である。
 図1中では、行使価額修正の取締役会決議が仮に、あくまでも仮に、3月12日に行われた場合を例にとり示している。

当初行使価額は直近株価のはるか上
図1 本MSワラントの行使価額修正条項概要

〜行使価額修正条項は保険? 主張〜

 本MSワラントの引き受け手であるドイツ銀行は、昨年リソー教育(4714)発行のMSワラントを引き受けた実績がある。このMSワラントの場合、下限行使価額が5,070円と、発行発表当時の株価を上回っているのが最大の特徴であった。また、第6回〜第8回の3回分を一度に発行しており、当初行使価額がそれぞれ異なっているという特徴もある。いずれの特徴についても、今回レオパレスが発行するMSワラントとよく似た特徴であると言える。
 リソー教育、レオパレスの案件とも、株価が下がっても利ざやを出しにくい仕組みであるのは間違いない。今回のレオパレスの場合は、株価が下がった場合でも利益を出そうとすれば、おそらくは下限行使価額は150円よりもう少し下にしないとかなり苦労すると思われる。
 となると、引き受け手としては、株価下落で稼ぐのではなく、上昇するのを待って予約権を行使することを狙っている可能性もある。本件においては、合わせて4200万株分の予約権を900万円で入手できるのだから、仮にレオパレス株が当初行使価額以上に上昇すれば、引き受け手の利益は膨大なものとなる。
 んでは、なぜ行使価額修正条項が付いているかを想像してみると・・・プレスリリースに記載のとおり会社側が緊急に資金調達したい場合に発動することは考えられる。もうひとつは、引き受け手が株価上昇を待てずに手を引きたいと思った場合に、会社側に行使価額の修正開始を要請するようなケースも考えられなくもない。もちろん、実際に修正開始を決議するか否かは会社側次第ではある。
 いずれにしろ、本MSワラントで引き受け手が稼ごうとした場合、株価下落を前提とした戦術ではなかなか対応できない条件になっていると感じる。

 本件においては、下限行使価額が他事例と比較し中途半端な水準であることから、引き受け手がどのような稼ぎ方を想定しているか、自分にはなかなか予想できない。
 もちろん、株価上昇を当て込んでの予約権引き受けというのなら筋は通るのではあるが、リソー教育のMSワラントにおいても、発行後、株価は当初行使価額を下回った水準で推移している。
 最終的に、引き受け手のドイツ銀行がどんな手で利益を出してくるかはしっかりと見届けていきたいところである。
 
 
posted by こみけ at 22:37| Comment(9) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
株価上昇を狙うのであれば、行使価額修正条項がついていると株価が上がると転換価格も上がってしまい逆効果となるため、行使価額修正条項なしの転換価格固定の新株予約権にするはずです。

ブログ主さんが書かれているように、引き受け手の狙いが今ひとつ不明な発行ですが、とりあえず株価が下限転換価格を上回っていれば通常のMSワラントと同じようにサヤ抜きを行い、下限価格を下回ったらまた新たな契約を結ぶつもりではないかと思っています。
(経営に困っているわけでは全くないリソー教育と異なり、レオパレスの場合は資金調達ができなかった場合非常に苦しくなると思います)
Posted by at 2012年02月13日 18:13
 コメント、ありがとうございます。
 株価が下限行使価額を下回った場合に再度発行のやり直しを行うというのはあり得ると思いますが、それなら今回の下限行使価額を低く抑えた方が手っ取り早いのではないかと思います。
 直近株価の3〜5割引きが下限行使価額の定番ですので、150円というのは相当高いとみております。これが100-120円なら驚きませんが。

 また、株価上昇時に行使価額修正条項が発動されうる点ですが、仮に株価が当初行使価額を上回ったとして、レオパレスが引き受け手に対して不利になるような決議ができるか疑問視しております。
 レオパレスの立場は、ご指摘の資金問題もあり、引き受け手よりもずっと弱いと見るのが妥当だと思います。何らかの約束があるかどうかはさておき、レオパレス側は引き受け手に不利なことは簡単にはできないと考えております。
Posted by こみけ at 2012年02月13日 23:49
↑にちょいと追記します。
 コメントを投稿した後に気がついたのですが、レオパレスが資金を必要としている以上、いずれ予約権の行使を促す(≒行使価額修正条項発動)可能性は高いですね。
 下限行使価額が高めなのは、もしかするとMSワラントの発行を会社側に決断させやすくするドイツ銀行の作戦なのかもしれないですね。
 諸経費抜きで考えれば、ドイツ銀行が必要とするのはMSワラントの900万円分だけですから、行使が進まなくても大して痛くない話だと思います。
 
Posted by こみけ at 2012年02月14日 00:26
レスありがとうございます。

株価上昇時に転換価格を修正しないのであれば、「株価が下がった時だけ転換価格が下がるが、株価が上がっても転換価格は上げない」というこれまでに例がない引き受け手に一方的に有利な条件となってしまうので、さすがにそれはないのでは?

下限価格が相当に高いという点は仰る通りですが、なぜこんな高い価格にしたのか理解に苦しむところですね。
レオパは資金を必要としているからMSワラントを発行したので、下限価格に関わらず早期に行使を促してくると思われますが、逆に下限行使価格を割り込んだら契約を結び直さないと資金調達ができなくなるため、下限価格を低くするメリットはドイツ銀行にもレオパレスにも全くなく、意味不明です。
Posted by at 2012年02月14日 17:36
 ご返信ありがとうございます。

 行使価額の修正に関しては、プレスリリース記載の通り取締役会の決議が行われてから開始される仕組みになっていますが、自分としては、仮に、株価が当初行使価額を上回ったとして、すぐさまレオパレスが取締役会決議を行うかどうかを怪しんでおります。
 真相はさておき、『株価がここから下がる可能性があるので』とか相応の理由をつけて、決議を先延ばしすることもあり得ると個人的には想像しております(誤りとも言い切れない)。行使価額修正開始まで間が空けば、その分引き受け手が稼ぐ機会は増えると思います。
 一度行使価額の修正が開始されれば、あとは株価の上下に伴い行使価額も上下するのは確かだと思います。

 下限行使価額が高く設定されている点については、自分も理解しがたいところであります。
 特に、レオパレス側はご指摘通り早期の資金調達を行いたいはずですので、もう少し低い下限行使価額を設定しても良いかと思うのですがねぇ。
 自分が思いついた下限行使価額が高く設定されている理由は、
・会社側が株価の先行きに自信がある
・あまり下限行使価額を低くすると必要額の調達ができない(株数は日証協規制で限界がある)
・レオパレスが融資を受けている銀行団との間に(行使価額を低くできない)何らかの縛りがある
といったところになります。
 どちらかといえば、会社側の都合で決まった値のように感じる次第であります。
Posted by こみけ at 2012年02月14日 23:15
もし株価が行使価格を上回った場合のレオパの対応は不明ですね。
修正しないというのは前例がなく、あまりに引き受け手に一方的に有利な話なので、ないと私は思いますが、結果を見てというところですね。
ただ株価がそんなところまで上がるかどうかわからないので、残念ながら結果が見られるかどうかわかりませんが…

下限価格が高く設定されている理由で一つ思ったのは、実質的に意味がない目標株価を設定していることからも、「会社が株価の先行きに自信がある」と思わせて株価を高値誘導し、調達額を目論んだということかもしれないですね。
株価が下がると調達額が減少して困ったことになるので、ダメ元で株価操縦ができればと思ったのでは。
市場がそれに引っ掛かったのかどうかは知りませんが、MSワラントの発行を発表したにも関わらず、株価は暴落するどころか急騰しているので、今のところ目論み通りといったところでしょうか。

一つ質問ですが、発行株数の日証金規制とはどんな規制でしょうか?
日証金のHPを探したのですが、よくわかりませんでした。
発行株数の規制があるのであれば、今回の転換が終わったら即座にまた新しい契約を結ぶことはできないのでしょうか?
今回だけの調達で終わるとはとても思えないので、十分可能性があると思っていたのですが…
Posted by at 2012年02月15日 21:29
 すみません、自分が先に書いた「日証協(日本証券業協会)規制」は、MSCBの転換規模等に関する規制で、増資規模に関しては東証規則の問題でした。
 その、東証規制に関してはこちらの資料↓に簡単にまとめられています。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/web-handbook/105_kabushiki/files/wariate_wg.pdf
 問題になるのは5枚目(p2)の部分でして、大規模割当増資に関して、
(1)発行済株式総数の25%以上の増資を行う場合は独立機関からの意見聴取や株主意思確認が必要
(2)発行済株式総数の300%以上の増資を行った場合は原則上場廃止
という規則が制定されております。

 今回のレオパレスの場合は、発行済株式総数約1億7540万株に対して4200万株の予約権発行を行いますので、(1)にギリギリ引っかからない発行済株式総数の24%程となります。
 レオパレスに限らず、株主総会をやってまで大規模増資を行うのはためらいがあるようです。
 ただ、上記規則については、一度の増資の話ですので、例えば今回の増資後、再度増資を行って合計で25%を超えたとしても規則上は問題ないことになっているようです。

 自分が先に挙げた日証協規制も含め、このページの一番下のところに第三者割当増資関係の資料がありますので、興味がありましたらご一読されることをお勧めいたします↓。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/web-handbook/105_kabushiki/index.html
 

 さて、レオパレスの方に戻りますと・・・会社側が株価の高値維持を狙っているというのはありそうですね。まあ、底抜けを避けるという表現の方が近いかもしれませんが。
 ただ、発行済株式総数との関係をみると、調達額が少なくなるのを嫌ったというのが一番近いように自分としては感じます。
 後は、ご指摘のようにこの相場でどこまで株価が上げるか次第になってきそうですね。
Posted by こみけ at 2012年02月15日 23:32
今回のIRを見て、「これだけの金額で足りるの?」と思ったんですが、やっぱり規制があって上限まで発行していたんですね。

でも何回でも連続してできるのであれば、大きすぎる抜け穴が空いていますね(笑)

そう考えると、今後もまだ何回も発行をすることが予想されるため、株価が底抜けすると今回及び今後の調達に支障をきたすため、ダメもとで下限価格を高く設定し、目標株価なるものまで設定して株価操縦を図ったのはうなづけますね。
まあいつまで化けの皮がはがれずにすむかわかりませんが…

色々勉強になりました。ありがとうございます。
勉強させていただいたことは、あたかも知っていたかのように自分のブログで使わせていただきますのでよろしくお願いします(笑)
Posted by at 2012年02月16日 18:24
 東証の第三者割当増資規制は、(一度の増資で)支配株主が突如変わることを規制しようとしており、個人投資家にとって重要な希薄化抑止については二の次となっております。
 まあ、個人投資家にとってはいつもの東証のやり口ですので、軽く流せば良いのではないかと思います。

 レオパレスの経営状況を考えると、今後も増資を行う可能性というのはあり得る話かと思います。
 ただ、今回の増資、現在の地合いに乗って当初行使価額での予約権行使に成功する可能性もあります。そうなると、資金繰りも一息つくかもしれないです。

 私もやり取りを通じて色々考えることができました、ありがとうございます。
 また、何かありましたらよろしくお願いいたします。
Posted by こみけ at 2012年02月17日 02:34
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/251923109

この記事へのトラックバック