2011年12月31日

2011年おもしろIR・ファイナンスを選んでみた

 本日は12月31日、無事大納会も終わり、また自分の仕事も29日で終了ということでようやく一息ついている。色々とあった本年もどうにか生きて乗り切れたと言える。
 ということで、今年も本年出されたIRをはじめとするプレスリリースの中から、管理人が面白いと感じたり、ぜひ紹介させていただきたいと思ったりしたものを記事でご紹介させていただくことにした。
 なお、これからご紹介させていただくIRは、あくまで管理人の感性で選んだものであるので、皆様の心の中で輝き続けているおもしろIRとは異なるかもしれない。また多数の取りこぼしがあるのはご容赦を。

○おもしろIR
 本年は、東日本大震災や欧州危機など、企業や市場の混乱を引き起こす事態が多発した年であった。自分は、おもしろIRは企業の統治力が落ちている場合に発生する可能性が高まると考えており、この点では本年はおもしろIRが誕生しやすい年であったと言える。
 結果、本年は2008年をも上回る空前のおもしろIRの当たり年だったといって間違いないと考えている。そして、今年誕生したおもしろIRでも群を抜く逸品を第1位としてご紹介したい。

第1位 メディア工房(3815) 伝説の超能力者ユリ・ゲラー氏とのコンテンツ事業における業務提携のお知らせ
 題名からして『伝説』『超能力者』というプレスリリースではまずお目にかかれない単語が二つも並んでいるという圧倒的存在感を誇る逸品。本文も2位以下を圧倒する仕上がりとなっている。
 業務提携の内容はユリ・ゲラー氏の監修するコンテンツをメディア工房が配信するというものである。大槻教授と韮澤編集長の戦いを見て育った自分の場合、あまりユリ・ゲラー氏にはなじみはなかったのだが、なるほどプレスリリース中の写真を見ると何らかのパワーを感じるように思えてくる。
 そして、ユリ・ゲラー氏のマインドパワー提供で日本全体のポジティブパワー発揮に貢献したいというメディア工房の想いがまた素晴らしい・・・少なくとも、自分は笑いというポジティブなパワーをもらった。いや本気で。当時、東電に怒ったり嘲笑したりするよりはよほど健全だと感じた記憶がある。
 本件については、メディア工房のサイトに特設ページがあるので、興味のある方は是非訪問されてみることをお勧めいたします。

第2位 ジアース(8922)  Googleの不動産検索サービスに関するお知らせ
 ジアースは2008年のリーマンショックの際に不動産流動化事業で痛手を負い、その後低迷を続けていた。そんなジアースに一大転機をもたらしたのがグーグルの不動産検索サービスとの連携であった。だが、その連携がサービス開始後わずか5カ月で終了することになってしまったのを発表したのが本プレスリリースである。
 ・・・グーグルとジアースの規模・技術・業績等で大きな格差があるのは間違いないが、本プレスリリースではやたらとグーグルを持ちあげている点が目につく。中でも、『当社の社員に夢や希望そして存在する意味を与えていただいた』という一文には衝撃を受けた。検索サービス終了で、社員の夢や希望はまだしも存在する意味までなくなるのか・・・と恐怖したものである。
 連携中止を知らされた上でのグーグルに対するあまりの低姿勢に、「法人もヤンデレ化するのか・・・」とか当時は思ったものだが、今落ち着いて考えてみるとこのジアースの姿勢はヤンデレの定義には当てはまらなそうではある(いわゆる「依存」か)。
 なお、この検索サービス終了については、後に『Googleショック』という独特の名称でジアースの業績修正に関するプレスリリースに出てくることとなる。必死こいて検索してこんなのを見つけてしまったのも今ではいい思い出。
 このプレスリリースが出たころは、ジアースは果たして理念(もしくは士気)という点で企業としてやっていけるのか心配だったのだが、また新たな道を見つけつつあるようでなにより。

第3位 東海旅客鉄道(9022)  中央新幹線の中間駅の建設費負担について
 本年ようやく東京‐名古屋間の経路が大筋決定したリニア新幹線。ところが並行して駅の建設費負担をだれが行うかでもめていたらしい。本件は、東海旅客鉄道(JR東海)側が東京と名古屋の間に設置する中間駅の費用負担をすることを発表したものである。
 ・・・JR東海が自己負担を発表したのは一つの決断なので、自分としては特につっこむ気はない。が、なんか文面のあちこちから怒気を感じる。特に、2ページ目の『1県1駅ということで「せめて中間駅の建設費は地元で負担いただきたい」という方針で進めて参りました。』の『せめて』というところに怒りが凝縮されているような気がする。
 また、中間駅建設費用の自己負担と引き換えに、駅施設の経費節減も行うことを表明している。地上・地下駅それぞれのイメージ図も末尾に添付しているのだが、どうも現在の新幹線駅よりもずいぶん簡素なように思える。
 個人的には、地下駅は上野駅の新幹線地下ホームと、その一つ上のフロア(長いエレベーターで降りた先のフロア)のようになるのかな?と思っている。行ったことがある人は分かると思うが、一つ上のフロアは少々の売店と数台の自販機、トイレしかない非常に殺風景な空間になっている。リニア新幹線完成の暁には利用するかもしれない身としては、そんな質素な駅ではなく、もう少し情緒あふれる駅であることを期待するのだが、まあ地元も歓迎しているというのだから致し方ない。

第4位 ディー・エヌ・エー(2432)  訴訟が提起されたという問い合わせについて
 本年最も盛り上がったテーマ株は携帯電話向けゲーム銘柄であったと言えるだろう。その雄たるディー・エヌ・エー(DeNA)が、同業大手のグリー(3632)およびKDDI(9433)から訴えられるという衝撃的ニュースが流れた直後にDeNAが発表した一品である。
 本文の内容は特につっこみを入れるべき点はないが、『訴訟が提起されたという問い合わせについて』というまるで他人事のような題名が実に美しい。まあ、きっと問い合わせが多数寄せられたためこのような発表となったのだろうが、「当社への訴訟について」とか当たり障りのない表現にすることは検討しなかったのだろうかねぇ。
 だが、本訴訟の真の見どころは、DeNAとグリーが出したプレスリリースではなく、グリーと並ぶ訴訟提起者であるはずのKDDIからはいまだに本件に関するプレスリリースは一切出ていないという点である。本件に関するグリーとKDDIの温度差、並びに重要度の差が出ていて実に味わい深いと感じる次第である。

第5位 ウェッジホールディングス(2388)  タイ洪水被害の当社グループへの影響について(第1報〜第10報)
 本年秋以降の企業活動に影響をもたらしたタイの洪水。多くの企業が被災状況や自社への影響を開示する中、異彩を放ったのがウェッジHDのプレスリリースである。これまでに第12報まで開示されているが、当ブログ的に注目するのは第1報から第10報までである。
 まず、第1報では被害状況と今後の見通しについて述べられている。また、被災者への哀悼の意を述べている点については好感が持てる。
 次に、第2報では状況報告に加え、此下会長の現地報告や此下会長が撮影した写真の掲載も併せて行われており、詳細な報告がなされている。
 などなど、随時充実した情報が掲載されていたのだが、第4報あたりから話が市民生活の方に重点が置かれ始める。もちろん、バンコク周辺の浸水状況や市民生活への影響は業績にも影響するだろうが、それは本当にウェッジHDのプレスリリースとして必要なのだろうか?というものも出てくる点が悩ましい。
 全体としては絶対に必要ではないが、意義は相応にあるというのが管理人の認識なのだが・・・例えば、第5報にある、浸水した道路で網を投じて魚を捕る人の写真とかはいらないと思うのだがねぇ・・・とは思う。が、バイクの退避状況や浸水下での利用についての記述もあり、意義があると思える部分も少なくない。
 そんな、意義がありそうなものと、それほどなさそうに思えるものが混在しつつ報告回数が重ねられていくのを味わい深く楽しめる一品である。

第6位 バンク・オブ・アメリカ・コーポレーション(8648)  ニューBACについての声明を発表
 東証外国部の銘柄で初の入選。バンク・オブ・アメリカは近年の金融危機で痛手を負ったことから組織再編・経費削減を行うことで再建を進めようとしており、本件はその一部の実行について発表したものらしい。
 だが、少なくともこのプレスリリースからは、『ニューBAC』というのは一体何なのかが全く分からず、『当社の目的は、一定数の人員削減ではなく、むしろニューBAC の決定の実行です。』という、うさんくささあふれる一文が生み出されることとなる。
 当初は英文和訳時の問題かと思ったが、添付されている英文も同様の記述となっており、バンク・オブ・アメリカがこの時期文章の言い回しや資料の充実等に気を回す余裕を失っていた可能性を暗示する一品である。

第7位 イオン(8267)  (再送)株式会社パルコに対する資本・業務提携に関する書面提示についてのお知らせ
 本件は、イオンがパルコ(8251)に業務・資本提携を求めたことへのパルコからの回答書に対し、反論した資料を提示したことを開示したものである。イオンが強い調子でパルコに対して自社提案を受け入れるよう求めており、生々しい交渉の雰囲気がうかがわれる。
 が、おもしろIRとしての見どころはそこではなく、プレスリリース最終ページの『弊社担当者』の後が黒塗りされている点である。まず第一にそんな黒塗りするような資料出すなよと思う次第。だが、当初開示時の資料では、この黒塗りの下に書かれた文字がなんとコピーアンドペースとすれば読める状態になっていたのが入選理由である。
 たぶん、本プレスリリースの元ファイルであろうワードファイルの当該箇所の背景色を黒色にして、そのままPDF化してしまったのが原因だと思われる。本プレスリリースが(再送)となっているのは、この黒塗り部分を読めないようにする修正(たぶん黒塗り部分の文字を消し、スペースを入れた)をイオンが行ったためである。
 せっかく教訓をいただいたのであるから、自らがこのようなやらかしをしないよう気をつけていきたいところである。

第8位 タカタ(7312)  米国連邦捜査局による捜査について
 一般に、プレスリリースは迅速に、かつ事実を記載することが求められる。だが、本件では迅速に事実を周知した結果、かえって恐怖感を市場に振りまいた一品である。米国連邦捜査局(FBI)の現実の役回りはさておき、主にゴルゴ13でFBIについて学んだ管理人としては、てっきりタカタはテロ関係の類で捜査を受けたのではないかと思いこんでしまった(本気)。
 実際には、反トラスト法違反(日本でいうところの談合)容疑での捜査という重大だが劇的とは言えない事態だったようだが、タカタは事後にこの点(反トラスト法違反容疑での捜索)を発表してはいない模様である。これを第二報として知らせず市場に不安を与えたままだったのはタカタの落ち度ではないかと考える次第である。

第9位 ブロッコリー(2706)  リテール部門の事業譲渡に関するお知らせ
 ブロッコリーが抱える小売部門、ゲーマーズは最近苦戦が続いていた。そんな中、ゲーマーズを切り離すことにより、利益が出ているという商品制作に集中することを発表したプレスリリースである。
 この判断そのものは悪いとは思わないし、譲渡先についても言うべきことはないのだが、最後の『8.参考資料としての、フレームワークによるリテール事業分析』がつっこみどころとなった。
 ここには事業分析や社内戦略の決定に関する参考資料が掲載されているのだが、自分としてはあまりにシンプル過ぎて不安を抱いてしまった。一般公表するものだから分かりやすいものを、という意図があったのかもしれないが、もうちょっと練りこんだ分析の上で決断を行ったのだと思いたい人(管理人含む)にとっては、若干不安を抱いてしまう代物のように思えた次第である。いっそ8.の部分はなかった方が良かったかもしれない。

第10位 オリンパス(7733)  記者会見の発表内容について
 社長解任騒動が公となった後も、なかなか飛ばしの事実を認めなかったオリンパス経営陣。本プレスリリースは、飛ばしに使われた3社の買収時売上目標及び現状の見通しを、まだ飛ばしを認める前の段階において開示した資料である。
 ・・・事業が目論見通りに行かないのは世の常とはいえ、3社すべての売上高で10倍以上の乖離が出ており、なにかがうさんくさいのは明らかである。数字だけを述べ、余計な言い訳をしなかったのは最善手であると思われるが、数字自体が圧倒的なため焼け石に水としか言えそうもない。このプレスリリースや元となった記者会見を知った時、オリンパスの中の人がどう感じたかと想うと同情を禁じ得ないところである。


 以上、おもしろIRの発表は10位までで締めさせていただく。どれも素晴らしい個性を持った事例ばかりであり、自信を持ってお薦めできる面々となったと自負している。
 本年は上記以外にもきらりと光る一面を持つおもしろIRが15本以上もあった。全てを紹介できないのが実に残念である。

○注目優先株
 一般に注目度が低いが、今年やらかした銘柄が来年以降手を出す可能性が否定できない優先株。本年は、今後優先株を発行しそうな銘柄を考察する際に参考になりそうな事例が発生した。

・アーク(7873) A種/B種/C種優先株式
 試作品メーカーのアークは、2008年頃までの拡大路線が裏目に出て業績が急降下し、再建のため大規模な増資が不可欠となっていた。
 そして、増資のために優先株を発行することにしたのだが、この優先株の一部が債務の株式化(DES)で行われることになった。そのため、普通株への転換規模が大きくなり、全ての優先株が普通株に転換されると、発行発表時点での発行済株式総数の10倍以上にまで膨れることになった。
 東証およびジャスダック(≒大証)においては、希薄化率が300%を超える(=発行済株式総数の3倍以上の新株を発行する)第三者割当増資においては、『株式および投資者の利益を侵害するおそれが少ないと(取引所が)認める時を除き』上場廃止にするという規則がそれぞれ定められている。そして、希薄化率だけを見れば、今回のアークの優先株発行は明らかにこの規則に抵触する。
 この点について、アークは「国が関わる企業再生支援機構が出資する分は希薄化率から除外し、銀行に割り当てる分の希薄化率のみ考えれば300%を超えない」という論法(管理人の解釈です)を展開した。その後、東証、大証共に特に口出しをしていないようであるから、アークの言い分を追認したと見なせる。
 自分としては、この点、東証、大証がアークの上場維持を認めるという結論は問題ないとしても、ちゃんと審査を行ったうえで「(企業再生支援機構が出資するので)投資者の利益を侵害する恐れが少ないと認める」と発表すべきだったのではないかと考えている。何も言わないと、この規則が本当に適用されることがあるのか疑わしくなってくるからねぇ。
 そして、本件が興味深いのは、今後国有化の道をたどる可能性がいよいよ現実味を帯びてきた東京電力(9501)において、大規模な資本注入を行いつつも同様の論法で上場維持がなされるのではないかと思えてくるのである。政府主導で行う形なら、兆単位の資金注入を行っても(少なくとも増資規制の観点からは)上場維持が行えるということになるわけである。


○凶悪銘柄特別賞
・オリンパス(7733)
 皆様ご承知のとおり、飛ばしを行っていただけでなく、調査を行おうとした社長を突如解任するという非常に悪質性の高いことをやらかしたオリンパス。本賞に相応しいと自信を持って推薦できる銘柄である。
 自分は、オリンパス自体が今後どうなっていくかはあまり関心がなく、東証や銀行、買収を狙っているとも噂される他企業がどんな動きを取るかのほうがよほど興味深い。特に、東証の上場維持か廃止かの判断は、外国人投資家(と、もしかすると国内投資家)の日本株投資に影響を与える可能性もあるだけに、要注意と考えている。

○注目MSCB・MSワラント
ジーエヌアイグループ(2160)のMSワラント
 マッコーリー・バンク・リミテッドが最近引き受けたMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)である。時価総額・引受額・引受前の株価推移がマッコーリーがMSワラントを引き受けた別銘柄に似ているように感じており、動向を注視中。

○注目MSCBプレイヤー
・マッコーリー・バンク・リミテッド
 本年に入ってからMSワラントの引き受けを活発に行っている引き受け手である。上でも述べたとおり、どうも引き受けを行う銘柄の規模や株価動向に類似性があるように感じており、注目中。この引き受けペースなら、来年前半あたりまでには何かつかみたい。

○2011年最凶MSCB
−該当なし
 当ブログにとってはやや残念なことに、悪質といえるMSCBやMSワラントは今年も発見できず、該当なしとさせていただいた。調達環境良好な銘柄はあまりMSCBやMSワラントを利用しなくなり、資金調達に苦しんでいる銘柄がMSワラントを発行する場合でも、それほど厳しい条件ではないことが多くなっている。
 最近は引き受け手の戦術が変わってきているようにも思えてきているが、それでもMSワラントの発行条件が良くなることは悪い話ではないはず。


 以上、本年は東日本大震災・欧州金融危機をはじめとして、政治・市場・企業が大きく混乱する年となった。そのため、おもしろIRに関しては過去に類を見ない当たり年となる一方、金融への風当たりがきついからか、MSCB等の発行は引き続き活発とはいえない状況であった。
 来年は、自然災害がないことを祈る一方で、政治・金融については波乱が懸念される1年である。願わくば、波乱があったとしてもおもしろIRが少々増える程度の小波乱であってほしいものである。

 それでは、皆様もよいお年を!

 
 
posted by こみけ at 02:56| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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