2011年01月31日

【書評】東方粉飾劇

 「投資家の信頼を取り戻すことが大切」と証券取引所は声を上げるも、相変わらず上場企業の問題行動はちっともなくならない。
 特に、一発で倒産や上場廃止となりかねない粉飾決算は大きな問題で、昨年も売上の9割以上が粉飾だったエフオーアイを筆頭に粉飾決算の発覚が相次いだ。

 本書「東方粉飾劇 五月さん 著 東証projectさん発行」は特に注目度が高かった粉飾決算について、特徴や粉飾を見抜くポイントを述べ、またそれらの事例の解説を通じて個人投資家が取るべき対策を提言している一冊である。
 本書の冒頭部分が東証projectさんのサークルブログで公開されているので、興味ある方はご覧になってみて下され。

 なお、本書は同人誌であるため一般書店の入手は不可能である。興味のある方は委託先のとらのあなの店頭で購入するか、通販で購入することになるが、現時点では通販は売り切れの模様(2月中旬入荷とのこと)。
 ちなみに管理人は本書を29日(土)の午後にとらのあな秋葉原店で購入したが、そのときには店頭在庫が少なくとも数冊はあった模様。本書は4F(一般誌)フロアの中央あたりに陳列されていたが、東方コーナーに置かれているということで周りも東方本であり、ちと見つけにくいかも(注:管理人は東方には詳しくないです)。


 さて、本書では、
第1章:シニアコミュニケーション
第2章:アイ・エックス・アイ(IXI)
第3章:プロデュース
第4章:エフオーアイ
の4銘柄を取り上げ、各銘柄における粉飾の手法、およびどこに見抜くポイントがあったのかを当時の市況の雰囲気も交えつつ(←ここ重要)それぞれ解説している。

 上記4事例のうち、自分が特に興味深かったのは第2章のIXIの事例である。
 他の3事例については、営業キャッシュフローの連続マイナスから、(粉飾の確証はないが安全面から)投資を手控えるという判定ができたのに対し、IXIについては、粉飾発覚直前の営業キャッシュフローがプラスで、しかも売掛金の増え方も売上相応であった。
 そのため、粉飾危険性の判定に貸借対照表と営業キャッシュフローを用いる自分としては、粉飾発覚後においても、「事前にこの粉飾を見抜くのは不可能」と考えていた。
 しかしながら、本書では、IXIの事例においても異常に気づくポイントが何点かあったと指摘している。このうち、自分としては、従業員一人あたりの指標変化に着目した部分がすばらしいと感じた。確かに、成長企業といえども、従業員一人あたりで見ればあまり急激には成長しないからねぇ。

 また、本書の特徴の一つとして、監査法人や取引所に厳しいつっこみを入れている一方で、個人投資家側も自ら防御することが必要であると述べている。特に、会社側が発表する事業計画を鵜呑みにしないよう強調しているのが印象に残った。この点は全くその通りで、投資家側が問題銘柄を自ら避けるようになれば、自然とその手の銘柄は淘汰されるように少しはなるはずである。
 ・・・当HPでつっこみを入れているMSCBだって、2003年頃までは下限転換価額の設定なしとかひどい条件が多かったのだけれど、ずいぶん時間をかけて徐々によくはなっているからねぇ。粉飾についてもそうなると思いたい。


 本書は、個人投資家が粉飾銘柄を事前に見抜き、損失を回避するための手法について過去事例を用いて冷静に解説している大変実用的な一冊である。
 また、著者が個人投資家であることから、我々個人投資家の心理的な面についてもよく認識した上で記事を書いているように感じた。この点は一般書店で売られている書籍にはあまりない長所であると考える。
 ・・・当面は沈静化しても、どうせまた粉飾銘柄が出てくるのは明らかなのであるから、本書が役立つ局面が必ず来るはずである。
 そして、ぜひ続編を夏コミで出して欲しいところである。
 
posted by こみけ at 02:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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