2010年12月31日

2010年おもしろIR・ファイナンスを選んでみた

 本日は12月31日、株式市場も大納会が終わり、また自分の仕事の方も28日で終了と言うことで現在はのんびりしている(これからベイスターズの地から楽天イーグルスのおひざ元へ帰省予定)。
 ということで、本年出されたIRをはじめとするプレスリリースのうち、管理人が面白いと感じたり感動を覚えたりしたものを紹介してみることにした。
 なお、以下にご紹介させて頂くIRはあくまで管理人の独断と偏見、ツボで選んだものである。多数の取りこぼしがある上、株式投資をお休みしていた本年前半のIRは目を通していないため紹介できていないものが多そうだが、その辺はご容赦を。


○おもしろIR
 リーマン・ショックの直後から始まった昨年とは異なり、本年は国内に限って言えば金融面での波乱はそれほどではなかった。年後半の円高は企業業績に重大な影響を与えてはいるが、円高がおもしろIRを生み出すことはあまりない。
 だが、視点を変えれば、比較的おもしろIRが生まれない環境である本年に出現したおもしろIRこそ真のおもしろIRといえるのではないだろうか。いや、まあ、IRを発表した企業が面白いだけなんだろうけどねぇ。


第1位 エル・シー・エーホールディングス(4798)  「第三者割当による新株式及び新株予約権の発行に関するお知らせ」の一部訂正について
 本プレスリリースは、09年に実施された第三者割当増資時に現物出資された不動産の内容について誤りがあったことを訂正する文章である。
 最初は評価額算出方法の訂正や抵当権の設定に関する誤りの報告がある。ここはあんまりよくないけどまだいいとして、その後、2ページ目の半ばから6ページ目後半まで延々と地番と下線が引かれた地目(宅地)、面積の表が並び、リストを一番下までスクロールしていくと、最後の最後に『<訂正後>上記下線を付した「宅地」と記載の地目は、全て「山林」へ訂正されます。』との一文があり真実が判明するという趣向になっている。
 ・・・地目を間違えると言うこと自体も素人の自分からすればとんでもない間違いのように思えるが、何より秀逸なのは、4ページ半にも渡って土地リストを並べて読者(投資家)を引っ張ったあげく、最後を『全て「山林」へ訂正されます』のわずか一文で締めくくっている点である。実に簡潔にして内容を明確に告げている・・・すんごい内容だが。また、その下にある末尾ページのしるしである『- 6 -』に趣という一語では表せない確かな存在感を感じた。
 こう、じらされてじらされて一気にすっと落とされたような読後感があり、一介のプレスリリースとして世に埋もれさせるにはもったいない逸品である。

第2位 インスパイヤー(2724) 第三者割当による第38 回新株予約権の割当予定先からの当該新株予約権の引受けに関する見解の書面の受領に関するお知らせ
 新株予約権の引き受け手から『うちが引き受けるために必要な手続を行っていないよ』との文章を宅急便で受け取ったが、本当に引き受け手が出した正式の文書がどうかわからない・・・と言う問題を確認前にもかかわらずわざわざプレスリリースとして出してしまった一品。社内の混乱がプレスリリースの文面からもうかがえる。
 ・・・今回はだいたいどんな展開になるか予想がついたからよかったけれども、もっと微妙な場面で出したら株式市場の混乱の元になりかねないと感じた次第。ただ、会社側は正直ではあると思う・・・その点は認める。「確認が取れてから発表する」という名目で発表しないという選択肢も相応の正当性があったわけだからねぇ。

第3位 コネクトテクノロジーズ(3736) 第三者割当により発行される転換社債型新株予約権付社債の募集に関するお知らせ(MSCBの発行)
 MSCBの発行を発表するのはいいとして、発行理由の中に『このまま、資金調達を実施しなければ、平成22年9月25日(管理人注:プレスリリース発表日の約半月後・MSCB発行日の翌日)には手元資金が尽き、給与も支給できないこととなり』という、株主よりもむしろ社員のみなさんがびっくりしそうな一文が入っていた一品。
 MSCBの条件は厳しいものだったが、まあ仕方ないかな〜と自分は納得した。でも、社員のみなさんにはどう説明したのだろう、いや、説明しなかったのかな・・・。


(番外)吉野家 昨今の一部報道機関の報道について
 今年の春くらいから牛丼業界での吉野家の苦戦が報じられる中、吉野家広報部が反論のため出した一品。吉野家の優位性を熱く語るあまり『2010 年2 月期の赤字決算は、主に株式会社吉野家以外の関連子会社の業績によるところが大きかったにも拘らず』とか微妙に問題発言をしてしまったりもしている点も美しい。
 ・・・んでも、こういう熱い社員がいるというのはいいことだねぇ。いわゆる「テラ豚丼」事件の時はお客様相談室のみなさんががんばっていたようだし。


○凶悪銘柄特別賞
・エフオーアイ(旧6253)
 昨年末の段階では、実は今年この賞に輝くのは日本航空(旧9205)になるものと想像していた。慢性的な赤字体質から抜け出せない上に、そのことに全く危機感を抱いていない人々がたくさんいたように見えたので、かなり醜い争いを経て倒産の可能性が高いかな〜と考えていたのである。結局、日本航空は倒産して、むしろ倒産後に醜態をさらす格好になっている。

 だが、日本航空がかわいく見えるような凶悪な銘柄が今年新興市場で断末魔の輝きを放った。マザーズ上場の半導体製造装置メーカー、エフオーアイ(旧6253、以下FOI)である。
 FOIは売上高100億円強のうち9割以上を粉飾していたことが明るみに出てしまっている。監査法人でも見抜けなかったそうで。
 粉飾の原因は、結局の所、半導体製造装置の試作機は納入できても量産機としての採用を勝ち取ることができなかったのだろうねぇ。原因がFOIの技術の限界なのか、(東京エレクトロンなどと比較しての)ブランドの差なのか、会社規模の限界なのかはわからないが、量産採用が目論見通り進まない状況で「量産機の納入はできていません」と言えないままずるずる行ってしまいついに発覚してしまったと言うことなのだろう。
 しかし、売上の95%以上が粉飾だったというのは実にひどい。この開き直り全開というかまるで人ごとのような文面のプレスリリースも驚きである。誰が文面を練ったのか知らないが、もうちょっと書きようがあるだろうに。『東京証券取引所への新規上場申請書類においても、虚偽の決算情報を記載し、上場申請時に提出し、上場承認を得ました。』とか事実でも普通は書いちゃあいかんでしょう。いや、投資家視点では悪いことではないのだけれども、そこは何らかの手で粘るのが様式美というものではないのだろうか。
 ・・・結局、みんな感づいていたのやもしれないねぇ。真相が公開されてあきらめモードに入ったのかも。
 ・・・こういう会社はいずれまた出てくるだろうから、回避運動ができるようにしておかないとねぇ。


○注目MSCB・MSワラント
トーア紡コーポレーション(3204)のMSワラント
日本金属工業(5479)のMSワラント
 いずれも本年後半に野村が引き受けたMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)である。野村は本年後半よりMSワラントの仕組み?を一新し、日証協のMSCB規制を回避する条項が盛り込まれている。個人的には上記2銘柄が本MSワラントがらみで波乱が起きる可能性は小さいと考えているが、事例が積み重なるにつれて危険になっていくと警戒している。

○注目MSCBプレイヤー(引き受け手)
・野村證券
 外資勢の元気がない中、MSCB等の引き受け手としても老舗の貫禄を見せる野村。本年後半には上述の新型のMSワラントを複数企業から引き受けるなど、精力的な活動をしている。
個人的な読みでは、野村の新型MSワラントが本格的に存在感を発揮し出すのは来年の年央〜年末くらいからになると考えている。
 くれぐれもこんな目に遭わないよう気をつけましょうと言うことで。

○2010年最凶MSCB
−該当なし
 本年はMSCB等の発行自体が少なく、また国内の金融市場は波乱もなく、盛り上がりもない状況だったため、強烈なMSCBは年を通してほとんどなかった。
 本年発行されたMSCB等の中からもっとも条件が悪い代物を選ぶのなら、先に紹介したコネクトテクノロジーズのMSCBが該当するとは思うのだが、直近の資金繰りさえ危うい中での増資という事情があるだけに、凶悪事例とは言いがたいのである。
 よって、本年の最凶MSCBは「該当事例なし」とすることに決定した。当ブログ的には残念ではあるが、まあ市場的にはよいことだと言うことで。


 以上、本年は比較的安定した国内金融市場の下、MSCB等の発行は不活発であり、当ブログ的にはいまいちな1年となった。東京電力をはじめとする大型株の公募増資は活発ではあったが、当ブログ的にはいまいち食指が動かなかった。
 一方、今年後半は新興市場や小型株が盛り上がっており、来年もこの勢いが続けば新興企業の資金調達が活発になる可能性は高い。自分としては、そこで新たなドラマが生まれることを期待したいところである。

 それでは、以下に各部門のまとめを述べ、本記事を締めさせて頂く。

○おもしろIR
第1位 エル・シー・エーホールディングス(4798)  「第三者割当による新株式及び新株予約権の発行に関するお知らせ」の一部訂正について
第2位 インスパイヤー(2724) 第三者割当による第38 回新株予約権の割当予定先からの当該新株予約権の引受けに関する見解の書面の受領に関するお知らせ
第3位 コネクトテクノロジーズ(3736) 第三者割当により発行される転換社債型新株予約権付社債の募集に関するお知らせ(MSCBの発行)
(番外)吉野家 昨今の一部報道機関の報道について
○凶悪銘柄特別賞 エフオーアイ(旧6253)
○注目MSCB・MSワラント
・トーア紡コーポレーション(3204)のMSワラント
・日本金属工業(5479)のMSワラント
○注目MSCBプレイヤー(引き受け手) 野村證券
○2010年最凶MSCB 該当なし


 それでは、皆様もよいお年を!
 
(12/31 注目プレイヤーの項で動画リンクが抜けていたので追加しました)
posted by こみけ at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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