本優先株については、実際に取得が行われるかどうかはさておき、普通株の取得(優先株→普通株への転換)条項が定められている上、取得価額の修正条項も定められていることから、MSCBの要素を持つ一品である。一方、当初取得価額の算定方法に工夫を加えるなど、過度の希薄化を抑制する仕組みも備えているものと考えている。
本記事では、本優先株の普通株取得条項に着目し、取得価額の決め方について概要を述べたあと、本優先株で定められている当初取得価額の算出方法の意義について主張を行う。
〜普通株の取得は2014年から 概要〜
本優先株では、普通株を取得する際の当初取得価額は、
(1)2014年4月1日の45取引日前から30取引日の終値平均の90%
(2)75円(10月7日終値)
のいずれか高い方に定められることになっている。
これらを図に示すと図1の通りとなる。終値平均が83.33円を超える場合は(1)が、それ以下の場合は(2)が適用されることになる。

図1 本優先株の当初取得価額決定の概要
ここで、当初取得価額が(2)の75円になったと仮定すると、取得価額修正条項は図2の通りとなる。
上限取得価額は当初取得価額と同じ75円と定められ、下限取得価額は当初取得価額の50%、37.5円と定められる。また、取得価額の修正は年2回、3月31日および9月30日(決定日)に行われ、決定日の45取引日前から30取引日の終値の90%に定められる。

図2 取得価額修正条項の概要
取得価額の修正が30日間の株価終値を使って行われる点は、MSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)に比べれば算出期間が長いが、優先株の前例を見ると、日本航空(旧9205)が08年に発行した優先株において、30日取引日のVWAP平均から交付価額(本優先株でいうところの取得価額)の修正を行うと定めている事例(リンク)などがあり、優先株ではわりと見かける条件のようである。
〜当初取得価額算出方法の改善 主張〜
本優先株の取得修正条項に関して自分がもっとも注目しているのが、当初取得価額として、普通株取得期間開始時の時価に加え、直近株価も算定基準として採用しており、どちらか高い値を用いて当初取得価額を定めるとしている点である。このため、本優先株では、下限取得価額が最低でも37.5円以上になることは保証されている。この点が大変重要だと自分は考えているのである。
02〜04年頃、本優先株のような普通株取得価額の修正条項が定められた優先株が問題になったことがある。特に有名なところではみずほHD(当時)や三菱自動車(7211)が発行した優先株が挙げられる。
これらの優先株の何が問題だったかというと、当初取得価額(の下限)を発行発表時に定めず、一定期間経過後の株価を元に当初取得価額の算出を行う仕組みになっていたのである。要するに、先で説明した本優先株の当初取得価額決定条件のうち(1)のみで当初取得価額を決定していたのである。
このため、当初取得価額算出期間に株価が低迷していたしていた場合は取得価額が低く定められてしまう危険性が存在していた。
この問題点に目をつけたのが誰かはさておき、希薄化への警戒からか、それとも期待からか、当初取得価額算出期間に大量の空売りが入り株価が急落するという事態が発生してしまったのである。特に、みずほHDの事例では、金融不安が強まっていた時期と言うこともあり、株式市場全体に不安を広げる結果となってしまったのである。
半面、本優先株では当初取得価額が最低でも75円になると定められており、極端に取得価額が下がることはない仕組みになっている。
もちろん、最大で100%を超える希薄化が起きる以上、希薄化の度合いが小さいとはいえない。しかしながら、従来の優先株に比べれば、本優先株の取得価額算出方法は改善されていると言えるのではないかと主張する次第である。
本優先株に関して自分が一つ残念に思う点を挙げるとすれば、OKIは今回の優先株発行をはじめとする財務基盤改善を通じて早期復配の実現を目指しているというのに、具体的な復配目標時期については一切述べられていなかった点である。
優先株向けの配当が重荷になる上、経営が計画通りに行かない可能性もあるので明言を避けているのかもしれないが、可能なら時期だけでも述べれば株主のみなさんの反応も違ってくるのではないかな〜と思ったりしてみる次第である。
まあ、臨時株主総会で語ってくれることに期待かねぇ。