2010年08月30日

イデアインターナショナル(3140)のMSCB

 25日、ヘラクレス上場のイデアインターナショナル(3140、以下イデア)は約1億円の第三者割当増資および4億円のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら
 会社側はプレスリリース内で『本新株予約権付社債はMSCBには該当しません』との記載を行っている(2ページ)が、当HPでは「転換価額修正条項が定められている新株予約権付社債は(例え上方修正のみであっても)全てMSCB」と定義しているので、本記事中では当HPの定義に沿ってMSCBとして取り扱う。
 引き受け手はジャスダック上場のエレコム(6750)である。目的はイデアとエレコムの資本・業務提携であるという(プレスリリース)。
 金融関係でない企業がMSCBやMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の引き受けを行うのは極めて珍しい。過去の例では、2005年のニッポン放送騒動の際、ニッポン放送が発行するMSワラントを子会社?のフジテレビが引き受けようとした(発行差止仮処分決定により発行中止)ことがあったが、それ以外の事例を自分は知らない。

 本記事では、今回のMSCBの概要を説明し、プレスリリース中で『本新株予約権付社債はMSCBには該当しません』と記述している点について軽くつっこみを入れたあと、本ファイナンスに関するイデアとエレコムの思惑について考察を試みる。


〜転換価額の修正は7ヶ月ごと 概要〜


 本MSCBの転換価額修正条項の概要を図1に示す。本MSCBの当初転換価額は683円と定められており、上限転換価額は888円、下限転換価額は479円と定められている。
 転換価額の修正は2011年の5月1日、12月1日・・・2013年9月1日と7ヶ月おきに5回行われることになっている。
 それぞれの修正日において、転換価額は修正日の直前20取引日の終値平均値の90%になると定められている。

修正間隔以外は割と普通
図1 本MSCBの転換価額修正条項の概要


 このうち、特に興味深いのは、転換価額の修正が7ヶ月おきに行われると定められている点である。プレスリリースには転換価額修正間隔に関する説明は記載されていない上、資金使途からも特に理由らしきものをうかがうことはできない。
 だが、先に紹介した『本新株予約権付社債はMSCBには該当しません』というプレスリリース中の記載がヒントになる。日本証券業協会(日証協)ではMSCBの定義の一つに、転換価額の修正が6ヶ月もしくはそれ以下の間隔で行われるものと定めており、本MSCBは転換価額の修正が(6ヶ月を超える)7ヶ月間隔で行われるという一点で日証協の定義するMSCBではない事になる。
 ひょっとすると、転換価額の修正を7ヶ月間隔にしたのは、(日証協の定義する)MSCBとなることを回避するのが目的なのかもしれない。ただでさえ大規模増資という悪材料を発表せざるを得ない中、悪評高いMSCBの発行という名目で発表を行う事だけは避けたかったのやもしれない。


〜低流動性が傍証 考察〜


 さて、今回のプレスリリースを見て行くと、今回のMSCBがエレコム側にとってかなり不利なものとなっていることがわかる。
 具体的には、
(1)本MSCBの発行前にエレコムはMSCB引受額の75%に相当する現金(3億円)をイデアに貸し付ける(≒いわゆるつなぎ資金の提供)
(2)2013年8月31日以前の転換は、イデアが新規の資本増強を行うか、取締役会が行使許可を行った場合以外は認められない(転換制限)
の2点を挙げる。この他、下限転換価額も比較的高いと言える。
 (1)(2)の条項それぞれは珍しいものではないのだが、(1)(2)双方が定められているMSCBは極めて珍しい。
 そもそも、(1)のつなぎ資金の提供は、発行企業(イデア)の資金繰りが厳しい状況に追い込まれていることを示しており、このような条件をつける発行企業は、引き受け手にとって不利な条件となる(2)MSCB転換制限を言い出せる立場ではあんまりないと言わざるを得ないのである。

 それにも関わらず、エレコムは本MSCBを引き受けた。すっかり悪党思考が身についている自分は、「何でエレコムはこんな条件で引き受けたのだろうか」と悩んだのだが、「どうやらエレコムは(プレスリリースの通り)本当にイデアと資本提携をするつもりのようだ」との結論を得るに至った。
 その根拠となるのが、イデアの直近の株式売買高である。気になる方はチャートでご確認頂きたいのだが、イデアは目下流動性が大変低く、7月の売買高はわずか9,300株だった。
 エレコムが第三者割当増資とMSCB転換で得る株式数が73万株(当初転換価額の場合)に上ることを考えると、これを市場でさばくことは大変な苦労になるはずである。もし、無理矢理行おうとすれば株価が一気に下落するのは想像に難くない。
 エレコムもその辺の事情はわかっているだろうから、短期転換・売却を目的としてMSCBを引き受けた可能性は小さいと考えるところである。よって、今回のファイナンス引き受けは本当に資本提携が目的なのだろうな〜と認識した次第である。
 転換価額修正条項を入れたのは、株価下落に伴う評価損・・・というか転換時に市場価格に比べて割高な株を得るリスクを回避しようとしたのではないかと考えてみる。
 また、MSCBが上限転換価額で全株転換された場合でも希釈化率がぎりぎり100%を越えているのも、ちゃんと資本提携を考えている一つの証拠になりそうである。希釈化率100%越えと言うことは、現在発行されている株式数以上の新株を発行すると言う意味なのだから、第三者割当増資とMSCB転換で得た株式を保有し続けていれば、確実にイデア株の過半数を押さえることになるからねぇ。

 ・・・と言うことで、本MSCBはイデア、エレコムが業務提携を行うに当たっての色々な思惑が入り乱れた結果生み出された代物ではないかな〜と感じる次第である。
 個人的に興味深いのが、エレコムがイデアを一気に子会社化はしないものの、MSCBの転換を行えば一気に子会社化可能、と言う今回の手法を言い出したのはどちらかという点である。
 自分としては、イデアはいきなり子会社化されたくないという想いがある一方、エレコムも経営再建前のイデアをいきなり子会社として抱え込むというか連結決算化するのは避けたいという思惑があったのではないかと妄想してみる次第である。

 
posted by こみけ at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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