2009年04月06日

ラウンドワン(4680)のMSCB

 3月26日、ラウンドワン(4680)は総額72億円分のMSCB発行を発表した。プレスリリースはこちら
 引き受け手は日興シティである。

 本MSCBについて考察を試みた結果、自分としては以下のような注目点があるものと認識した。
(1)転換価額の修正が行われるのは株価が4月2日終値の半値以下の状態が続いた場合のみであること
(2)(1)の転換価額の修正が行われない場合、強制取得(事実上のMSCB強制転換)が行われる可能性が高まること

 本記事では、第1回から第4回までのMSCBのうち、第1回を例に取り概要を述べてみる。
 その後、本MSCBの転換価額修正条項がやたらと複雑になっている点について軽く妄想してみることにする。

〜転換価額修正は基本的に1回のみ、ディスカウント率8% 概要〜

 本MSCBの当初転換価額は4月2日(木)の株価終値(683円)の120%である820円と定められた(プレスリリース)。
 また、下限転換価額は、4月2日終値の50%、342円と定められた。

 次に、転換価額の修正条項について概要を述べる。
 本MSCBの転換価額修正は、あとで説明する強制取得時を除き一度のみ行われることになっている。また、転換価額の修正期間は第1回から第4回MSCBまででそれぞれ異なる。
 第1回の場合、修正が行われるのは、4月14日から6月15日までの間(転換価額修正観察期間)に株価が下限転換価額を10日間連続で下回った場合である。また、修正後の転換価額は、4月14日から、株価が10日間連続で下限転換価額を下回ることになった日の初日の前日までの間のVWAP平均値の92%である。
 仮に、5月11日から5月22日までの10営業日の間連続して株価が下限転換価額を下回った場合を想定すると、転換価額の修正は4月14日から5月8日までの間のVWAPをもとに行われることになる。

 以上で説明した転換価額修正条項の概要を図1に示す。
今まで見たことがない複雑さ
図1 転換価額修正条項の概要

 また、7月10日(強制取得日)までに本MSCBの転換が進まない場合は、『残存本新株予約権付社債の全部を交付財産と引き替えに取得する』とある。この『交付財産』は株式のことだから、事実上残存するすべての第1回MSCBを強制的に転換するといって差し支えないと思われる。
 んで、この際の転換価額(強制転換価額)は、4月14日から6月26日までのVWAP平均値の92%と定められる。この点、プレスリリース上では転換価額の修正とは書いていないが、これも事実上の転換価額修正と考えてよいのではないかと。
 なお、強制転換価額の算出は、MSCBが全転換された場合を除き、図1で説明した転換価額修正の有無にかかわらず行われると考えて良さそうである。

 以上で説明した強制転換価額算出の概要を図2に示す。
上方修正の可能性もある
図2 強制転換価額算出の概要


〜複雑な修正条項の裏には何が? 考察〜

 ここまで見てきた転換価額修正条項等を考えると、本MSCBの転換は、
・株価が4月中旬以降、下限転換価額を下回る展開が続く場合は早期に転換価額の下方修正が行われ、早い時期にMSCBの転換を行う。
・株価が300円台後半〜700円台の範囲で推移する場合は、強制取得日に転換価額が修正されるまで待ち、株式を得る。
・株価が当初転換価額を大きく上回って推移する場合は、強制取得日前に(当初転換価額での)転換を行う。

とするのが引き受け手の利幅がもっとも大きくなる。

 すなわち、引き受け手は株価推移に応じて上記それぞれの戦術を採る可能性が高いのではないかと考えることはできる。
 だが、自分が気になったのが、日興シティ(とラウンドワン)は本MSCBについてここまで複雑な転換価額修正条項を定めたのはなぜなのか、と言う点である。日興シティがそれなりの利益を得たいと思うだけならば、一般的な転換価額修正条項(毎月修正とか)を備えたMSCBを発行すれば十分ではないかと考えるのである。
 まあ、最近のMSCBへの批判から、よく知られた形式のMSCBの発行をためらったという可能性はなくもないが。

 が、小悪党たる自分としては、こう、裏で何かしらの金融商品が組成されているとか、あまりよろしくない方面の妄想を抱いてしまうのである。その方がおもしろいし。
 もっとも、仮に何らかの動きがあったとしても、かつてのアーバンコーポレーションのCBの裏に存在したスワップ契約のように、ラウンドワン自身がその動きに関わっているとまでは考えていないが。
 ・・・この点は、正直、本当に何かが裏にあるのか、それとも何もないのかも含めて何とも言えないねぇ。まあ、いつものように生暖かい目で見守りましょうということで。


 本MSCBは、転換価額修正条項の厳しさという点ではそれほど恐ろしいものではないし、時価総額から見た発行規模(希薄化の度合い)の観点でもさほど厄介な代物ではない。
 しかしながら、転換価額修正条項の複雑さという一点で裏に何かあるのではないかという不気味さを感じてしまう代物であると個人的には感じてしまった次第である。

 さてさて、真相はいかに。
 
posted by こみけ at 22:46| Comment(14) | TrackBack(0) | MSCB関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
株式の掲示板にも同じことを書かせてもらっています。MSCBに興味を持ち始めたのですが、まづ ライブドアのMSCBについて
質問させてください。

ライブドアがMSCBを発行した主な理由は発行済株式数を多くし、株式交換によるM&Aが目的だったのですか。

最近の企業の資本政策に関して勉強したいのですが、お勧めの本はありますか。
Posted by アニキ at 2009年04月24日 13:33
>アニキ さん
 コメント、ありがとうございます。

 ライブドアがMSCBで資金調達を行った目的は、その資金でニッポン放送の株を買い占め子会社化することでした。また、いずれはフジテレビを狙うことも目論んでいたと信じています。
 MSCBでの調達になった理由は、資金調達の規模・目的、およびライブドア自身の信用力では(引き受け手にリスクの少ない)MSCBでの調達しか受け手がいなかったからであると考えています。
 当時のライブドアの身の程からすれば、極めて危険な賭でしたからねぇ。

 
 一方、企業の資本政策に関する本については、私からはお奨めできる本はありません。
 そもそも、自分は今まで(糞株系以外の)企業の資本政策の本は一冊も読んでいないような気がします・・・というわけで、本の紹介についてはご容赦ください。
Posted by こみけ at 2009年04月24日 23:11
こみけさん 回答ありがとうございます。
こみけさんは証券会社の社員ではないんですね。最初資本市場部に在籍していると思いました。

さて再質問させてください。

>MSCBでの調達になった理由は、資金調達の規模・目的、およびライブドア自身の信用力では(引き受け手にリスクの少ない)MSCBでの調達しか受け手がいなかったからであると考えています。

引き受け手にリスクが少ないことはどういうことでしょうか。引き受け手は公募で
あるから一般投資家ですよね。とはいってもリーマンブラザーズが大量にMSCBを購入していたから、第三者割り当ての意味合いも強いのでしょうか。MSCBを発行することによって売り圧力になり、株が低迷してしまうので投資家は手をださないはずだと思いますが。・・・

Posted by アニキ at 2009年04月27日 12:02
>アニキ さん
 いやあ、私はプロフィールにも書いていますとおり某工場のライン工であります。最近は不況の風が身にしみまする。
 あと、証券会社に勤めていたら自分の株の売買が自由にできなくなってしまいます(笑)。

 さて、ライブドアのMSCBでありますが、本件は800億円分全額をリーマン・ブラザーズに割り当てる第三者割当方式でした。
 また、リーマン・ブラザーズは、MSCB引受と同時にライブドアの堀江社長(当時)から保有株を貸してもらう契約を行い、借りた株の空売り→株価下落→MSCB転換という(MSCBのもうけ方としてはごく一般的な)手を使って大もうけしました。

 当時のライブドア株は、MSCBへの恐怖はありましたが、それに対抗する魅力として、ニッポン放送、ひいてはフジテレビを傘下におさめられる可能性という、ものすごくおいしそうなネタがありました。
 ・・・あの頃のライブドア株は、毎日株価が思惑で動いていましたからねぇ。今思うと楽しい日々でした。
Posted by こみけ at 2009年04月27日 23:52
コミケさん レスありがとうございます。

いや 驚いた。これぐらいのブログが書けば
十分証券マンとしてやっていけますよ。

朝が早いのとノルマ、証券マンの性格がひがみ根性まるだしですけど。

これだけ株が好きであったら大手でも雇って
くれるでしょうね。

さてライブドアの株の話に戻りますけど、
MSCBというのは公募増資でなくて証券会社
が全額引受けるのですか。これじゃ、相場
が左右されないですか。

当時リーマンは株の空売りで儲けて、株が
やすくなったところでMSCBから株に転換した。その時には、一般投資家がニッパン放送
のねたにつられて株を買った時期ですよね。
Posted by アニキ at 2009年04月28日 11:37
>アニキ さん
 いやあ、証券マンの人もいろいろ苦労しているという話はあちこちで目にします。
 ノルマがきついというのも確かでしょうねぇ。このご時世でも投信なんかを売らないといけないのでしょうし。

 さて、ライブドアのMSCBの話でありますが、相場はご想像の通り、すんごい勢いで左右されました。
 EDINETで大量保有報告書を調べていただければわかるのですが、リーマンは2005年3月に連日1000万株規模でライブドア株の市場売却を行っていました。
 発行済株式総数の1%以上の売り圧力が連日のしかかるわけですので、株価の下げ圧力となったものであります。

 結果、MSCB発行発表時点(2月)で400円台だった株価は、4月には300円を割り込むまでになってしまったのであります。
 ただ、これでも、当時の自分の予想よりは株価は高値を維持していました。自分は200円台前半まで下がると見ていましたので。
 堀江社長(当時)のメディア戦略というか、当時の新興市場ブームのようなものに乗せられた個人投資家のみなさんが大挙ライブドア株を買ったものであります・・・自分も1株買いました。
 別の見方をすれば、リーマンは非常に儲けやすい環境を享受していたという言い方もできますがねぇ。
Posted by こみけ at 2009年04月29日 02:03
コミケさん MSCBに関して少しわかってきました。一種の第三者割当ですね。

理論上、事業会社でも引受可能ですけど、証券事務などのやっかいなことがあるから
証券会社が引き受ける。

MSCB発行後はどうなっています。もちなおした会社ありますか。あまりぱっとしないんじゃないでしょうか。流通性の面で
未公開会社は無理ですよね。

ところでライブドアのMSCBの条項にある早期償還条項というのはどういうことですか。これはライブドアもリーマンにもあったらしいですね。

あとMSCBが株にどれぐらい変換になっているかは証券会社にききばわかるのですか。

だけど我々投資家にとって会社がMSCB
を発行したらいい迷惑になりますね。
Posted by アニキ at 2009年04月29日 17:08
>アニキ さん
 ご質問の事項が多いので箇条書きでお答えします。

・過去発行されたMSCBは、自分の知る限り、一件を除き全て第三者割当です。
・事業会社が引き受けた例もありますが、MSCBを転換して得た株式のさばきやすさからか、証券会社やファンドが引き受けた例が大半です。
・MSCBで稼ぐ場合、転換で得た株式を買ってくれる人がいないと儲からないので非上場会社での発行は基本的に行われていません。
・早期償還条項は、一般には繰上償還条項と呼ばれます。発行会社(何らかの事情で償却したい)、引き受け手(さっさと手を引きたい)のどちらかの都合で早期にMSCBの償還を行える条項です。
・MSCBの転換状況は、EDINETの大量保有報告書でわかる場合もありますが、それ以外では発行企業の報告(新株予約権行使状況など)で入手することが現時点ではもっとも確実というか、多いパターンだと思います。

 まあ、よくわからないMSCBが出てきたら、私の場合は逃げまする。
Posted by こみけ at 2009年04月29日 20:05
こみけさん どうもありがとうございます。

感想をいうと、よく財務省がMSCBを認可したものだと思います。一種の企業救済ですね。

さて、下記の件でおしえてください。

>早期償還条項は、一般には繰上償還条項と呼ばれます。発行会社(何らかの事情で償却したい)、引き受け手(さっさと手を引きたい)のどちらかの都合で早期にMSCBの償還を行える条項です。

これは普通社債で発行体にある条項ですが、繰上償還できるのに正当な理由があると思います。それはどんな理由でしょうか。まさかどちらかが会社の業績が悪くなったので償還しますよということはないだろうと思います。発行体の償還はわかるのですが、引受手の償還はMSCBを発行体に
返して現金を引き取ることでしょうか。
Posted by アニキ at 2009年04月30日 12:50
>アニキ さん
 「繰上償還」という行為自体についてはアニキさんのおっしゃる通りです。(引き受け手が要求する場合も)MSCBを発行企業に戻し、引き受け手は元本相当の現金を受け取ることになります。
 ただ、MSCBの場合、普通社債では発行企業でやるかやらないか決定する繰上償還を、引き受け手側も要求することができる条項が入っていることが多いのであります。

 引き受け手からの繰り上げ償還請求については、大抵は以下の2条件のうちどちらかを満たさないとできないことが多くなっています。
(1)株価が一定期間下限転換価額を下回る
(2)発行後一定期間(1年程度)が経過する

 このうち、(1)についてはMSCBの転換で引き受け手が稼げないことが(表向きはどうあれ)理由だとみてよいでしょう。
 一方、(2)は、引き受け手にとっての資金回収の期限というかシナリオとして入れておきたいからでありましょう。こう、回収までにだらだら時間をかけたくないのではないかと。
 まれに、(1)(2)いずれの条件を満たす必要もなく、発行日翌日から繰り上げ償還請求可能、という事例もありますが、これは発行企業がよほど追い詰められている場合に限ります。引き受け手の視線からみれば、倒産リスクを少しでも減らすためでありましょう。
Posted by こみけ at 2009年05月01日 00:51
こみけさん

どうもありがとうございます。だいぶ役にたちました。今度わからないところがあれば
こみけさんの掲示板に書かせていただきます。
Posted by アニキ at 2009年05月01日 14:22
>アニキ さん
 自分はブログのコメント欄、掲示板ともなるべく毎日一度は見るようにしています。
 今後も質問・つっこみ等ありましたら、お好きな方に書き込みください。
Posted by こみけ at 2009年05月02日 00:00
非第三者割当型のMSCB、事業会社が引き受けたMSCBについて教えてください。まだ資料入手できますでしょうか。
Posted by motsu at 2009年05月23日 01:48
>motsu さん
 コメント、ありがとうございます。

 第三者割当でないMSCBは、名古屋鉄道(9048)が2004年に発行した事例を挙げます↓。
http://www.meitetsu.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2006/07/19/release041122_a.pdf
 自分が知る事例は、この一例のみであります。
 ただ、本件と似た転換価額修正条項を有するMSCBが90年代後半に発行されていたという話を読んだことがあります。その記事には、募集方法についての記載はありませんでしたが、ひょっとすると公募だったのかもしれません。

 事業会社が引き受けたMSCBについては、アドテックス(旧6739)が発行したMSCBをバーテックスリンク(9816)の100%子会社が設立した投資組合が引き受けた事例を挙げてみようと思います。
 自分の中ではこれはバーテックスが引き受けたと同義ですので。こちらの事例については、アドテックスが既に破産しておりますので資料を得るのは難しいと思います。
Posted by こみけ at 2009年05月24日 13:14
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