2009年02月01日

【書評】大暴落1929

 現在の不況は世界恐慌以来の100年に一度の危機といわれている。だが、そう言われても100年の3分の1程度しかまだ生きていない自分にはピンと来ない。そもそも、日本のバブル崩壊でさえ実感がほとんどなかったからねぇ。
 個人的には、今回の不況が「100年に一度」というのは大げさではないかと根拠なく思っているのであるが、1929年の株価大暴落はどのようにして起きたのか、そして続いてやってきた世界恐慌時に何が起きたのか知っておくのは悪いことではないかと思う。
 ということで、案の定大拡張されていた書店の金融危機コーナーに出向き、最近出版されたヒステリックな煽り文句が並ぶ本どもを無視しつつ、1954年初版という「大暴落1929 ジョン・K・ガルブレイス 著  村井章子 訳 (日経BP)」を購入してみた。


 本書の前半では、1925年頃にピークを迎えたというフロリダ不動産バブルについて軽く触れた後に、1927年頃から勢いを増したという(暴落前の)上昇局面について述べている。
 上昇局面に関する記載の中で自分が特に注目したのは、現在におけるヘッジファンドのように、レバレッジを活用する投資主体が当時も存在したという点である。その名前を「投資信託」という。
 ・・・この名称には自分も戸惑ったのだが、当時の投資信託は、出資者から資金を集めるだけでなく、自分で優先株や社債を発行することでも資金を調達し、レバレッジをかけていたものが多かったらしい。現在のREITに似た存在だと思えばいいのだろうか。
 んで、そのレバレッジをかけた状態で株を買い、保有株が上昇すれば(我々の信用取引と同様)株価の上昇幅以上に資産が増えて万々歳、という仕組みだったようである。しかも、投資信託をポートフォリオに加える投資信託(ファンズ・オブ・ファンズのようなもの?)もあり、二重三重のレバレッジがかかった状態となっていた。市況上昇期には、この仕組みは驚くべき評価額の上昇をもたらした。半面、株価が下げたときの反動もすんごいものだと明らかになるのは、1929年9月以降のことである。
 ・・・そう言えば、2007年くらいから米証券取引所にヘッジファンドが上場していたが、株価は最近どうなっているのだろうねぇ。近頃話題にならないけど。まあ本書には直接関係しないからいいか。

 その後は、1929年9〜10月大暴落の説明である。世界恐慌から完全に抜け出したあと(1954年)に書かれた本だけに、この時期も客観的に述べている点に好感が持てる。
 大暴落に関する記述の中で自分が興味を持ったのは、『大暴落直後に米国で自殺が急増したのは事実無根』という記述である。
 自分の今までの想像では、株価大暴落で追い証を払えなくなった相場師の皆さんは、毎日のようにウォール街のビルから飛び降りたりピストルでこめかみを撃ち抜いたりして新聞紙上を賑わしていたのだと想像していた。
 しかし、米国全土、およびニューヨーク市の自殺者数統計によると同時期の自殺者数はそれまでと大差なかったという・・・むしろ、1930〜32年の方が上昇していた。どうやら、株価大暴落の衝撃が大きかったせいで、(大暴落直後に)それ以外の理由で自殺した人も株価暴落のせいだと思われたのではないか、と著者は推定している。
 いやあ、聞きかじりの知識なんて当てにならないねぇ・・・ここだけの話、「金融関係者の自殺がそれほど報じられていない」ということを今回の不況が100年に1度ではない根拠の一つとしていたのだが、とんだ見込み違いだった。
 ・・・となると、「日本のバブル崩壊時に兜町の証券会社の株価ボードの前で立ちすくんだまま脱糞している投資家がいた」という(自分が信じている)伝説についても再検証が必要になりそう。本当のところはどうだったんだろうねぇ。

 大暴落後の展開については現在の不況と似た状況だったようで、根拠のない楽観とあきらめとが混在しつつ事態が悪化していったことが淡々と述べられている。『最悪の事態がじつは最悪でなく、さらに悪化し続けたことである。』という今日にも通じる記述が印象的であった。
 なお、米国のGNPや失業者数が大暴落後に最悪値をつけたのは1933年、大暴落の4年後であり、生産高が1929年の水準を回復したのは1938年とのことである。


 今回の不況、実体経済への深刻な影響が出てきてからまだ1年も経っていない。これが100年に一度かどうかは別にして、ここ数年続いていた米不動産バブルのつけを払う局面なのだとすれば、まだまだ厳しい状況が続いても全くおかしくない。
 本書は、大恐慌時に書かれた本でもなく、また今回の不況時が起きてからかかれたことでもないことから、1929年前後の事態を客観的な目で書いていると自分は評価する。
 この点から、本書は、80年ほど前、先人たちが株式市場でどんな恐怖に遭遇したのかを知っておくのにふさわしい一冊であると考える次第である。
 
posted by こみけ at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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