11日、エルピーダメモリ(6665)は11月に発行したばかりの500億円のMSCBを繰上償還することを発表した。プレスリリースはこちら。
繰上償還の理由は「20営業日連続で株価が下限転換価額(509円)を下回った」ことによるものである。エルピーダ的には極めて不本意な形であるのは間違いない。
これまで、MSCBの繰上償還でもっとも規模が大きかったのは、いすゞ自動車(7202)のMSCB(発行額1,000億円/繰上償還額400億円)が繰上償還された事例であると思われる(プレスリリース)。従って、今回のエルピーダの事例は、過去最大規模のMSCB繰上償還になりそうである。
さて、エルピーダがなんでここまで不本意な形でMSCBの繰上償還をやることになってしまったかであるが・・・自分としては、
(1)市場環境が最悪の時にMSCB発行を発表した
(2)当初・下限行使価額の決め方が中途半端だった
(3)MSCB発行の目的として、資金調達だけでなく資本水準維持を狙っているという観測が広がった
の3点が要因であると考えている。
(1)については説明不要であろう。本MSCBの発行発表日は10月14日であった。当時、日経平均は10月初旬からの急落局面を迎えており、市場にはすんごい不安感が台頭していた。14日当日の日経平均は急反発したとはいえ、そんな市場環境下で発行を発表するのはいささか軽率だったように思える。
(2)は、当初転換価額の決め方に関するつっこみである。本MSCBの当初転換価額は、10月15・16・17日の株価終値の平均値から1,017円と算出された。ところが、エルピーダの株価はこの3日間を含め、15日から21日まで5営業日連続のS安となり、発行日(11月4日)時点で既に500円台、下限転換価額をうかがう水準まで株価下落が進行していた。
一般的には、MSCBの当初転換価額価額は発行発表日、または前日の終値を元に決める場合が多い。しかしながら、エルピーダの場合は発行発表後の株価下落を予測していたため、発行発表後3日間の株価を元に当初転換価額を算出することにしたのではないだろうか。んで、結果は皆様ご承知の通りと。
実は、当初転換価額の算出方法には、本MSCBのやり方以上に株価下落を織り込ませやすいやり方がある。それは「発行日当日(今回の場合は11月4日)」の終値を基準に当初転換価額を定める方法である。代表例としては、フォーサイド(2330)が05年に発行したMSCBを挙げてみる(リンク)。
・・・後講釈になってしまうが、MSCBの発行により株価が下がると思っていたのなら、発行日に当初転換価額を定める条件にしてしまった方が良かったのではないだろうかねぇ。まあ、この辺はエルピーダや引き受け手の野村の人々が市況見通しをどう考えていたかでも評価は変わってくるが。
(3)は、本MSCBの転換により資本増強(資金調達に非ず)が行えなければ、銀行からの協調融資を返済しなければならなくなる可能性が高まる、と言う観測が広がってしまった点である。
これでは、下限転換価額を下回る推移が続くエルピーダ株を割安と判断した人がいたとしても、買いに入るのを躊躇する面があったに違いない。
・・・今回のMSCBによる資金調達が失敗したことで、エルピーダは新たな資金・資本調達手法を模索することになった。が、少なくとも、今回と同規模(500億円規模)でのMSCBによる資金調達は現在の株価水準では不可能であろう。
となると、考え得る資本調達手段としては、MSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)の発行を行うのが一つ、金額を減らしてのMSCB再発行を行う可能性がもう一つというところか。第三者割当増資もありえるが、今のご時世では厳しいように思えてくる・・・さてどうなることやら。
2008年12月14日
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本件とは関係ないですが、同業のキモンダが破産してしまいました。エルピーダもキモンダも仕事で関係しているところで、今回の不況が身近に迫って来ました。わたしのところは1年前から赤で、給料も減ってますが、それでも財務から考えてつぶれることはないし、会社にしがみついてれば何とかなる、と思っていたのですが、身近なところが破産となると、背筋の寒くなるものがあります。
エルピーダも生き残るのに、なりふり構っていられない状況なのかもしれませんね。
持ち株主力の不動産関係は、破綻の話が出ても”またか”って冷静にいられるのに、資産への影響から言ったらこちらのが深刻なのに、キモンダの破産の方が精神的に堪えました。
怖い怖い
返信が大変遅れ申し訳ありませんでした。
当ブログの「最近のコメント」欄が更新されなかったため、エイブさんのコメントに気づくのが遅れてしまいました。
キモンダ破産は私も驚きました。
仕事上、直接の関係はありませんが、業種がわりと近いところですので。
あと、自作PCが趣味の生物としてもですが。
自分の会社に対する考え方はエイブさんに似ていまして、赤字で給料(残業代)も減っているが、まあつぶれることはないだろう、という認識であります。
ただ、そうは言っても、派遣切りの話を聞くと、「次は自分かも」という想いを抱かずにはいられません。自分が給料分の仕事をやっているとはまだまだ思えませんので。
エルピーダについては、DRAM価格が現在の水準のままである限り、追加の資金調達が必須になるかと思います。DRAM1GBが1,000円というのはさすがに・・・。
ですので、生き残りのためになりふり構っていられないのはおっしゃるとおりだと思います。
坂本社長が(MSCBで醜態をさらした件も含め)どう立て直してくるかですね。昨年10月よりもエルピーダを取り巻く状況は悪いでしょうから。
いやいや、製造業全般が恐ろしい状態になってきたものであります。
レスありがとうございます。エルピーダの公的資金申請、びっくりです。ここがOKなら、他にも手を上げそうなところがいっぱい出そうで、ほんとにいいのか?ってのが私の感想です。
理由が雇用や他への悪影響への配慮(要は景気対策)というのなら、ある程度納得せざるをえないのですが、ここの保有する高い技術とかそういうものに対するものであるなら疑問符がつけざるを得ません。
私の感覚で言わせてもらえば、DRAMはある程度の資本(設備導入費用と開発費用)と技術があれば、それほど他と差別化というか技術差をつられるものではなく、それだからこそ他のアジア勢がシェアーを確保しているのであり、また今までのように需要の拡大が望めるとも思えず、ここで助け舟を出しても、同じような過剰生産による価格の下落が続くのではないかと思っています。
まあ、資金を得たとして、それをきちんと返済してゆけるかどうか、生暖かい目で見守っていくしかないですね。
こんばんはです。
エルピーダの公的資金申請の件、私もびっくりしました。
日経朝刊の見出しの大きい題字には『エルピーダ、申請検討』とだけ書かれていたので、一瞬いったい何を申請するのだと思ってしまいました。こう、最近新興不動産銘柄で流行りのアレとか。
さて、産業再生法改正案の公的資金注入?対象は、日経の記事によれば、『一時的な業績不振に陥った企業』だそうであります。
自分としては、赤字続きのエルピーダは、この対象からはかけ離れた企業でであると考えております。
従って、本記事に関する自分の認識は、エイブさんと同様、「エルピーダが申請するのは自由だけど、認められるの?」というものであります。
景気対策ならわかるのですがねぇ・・・ただ、たとえ景気対策が目的であったとしても、エルピーダが公的資金投入の最初の事例としてふさわしい存在かというと、そうではないと思います。数百億投入したとしても、1年分の赤字で消えてしまうでしょうからねぇ。
DRAMについて自分はそれほど詳しくないのですが、サムスンの半導体事業が日本製製造装置や原材料で支えられているとよく聞きます。
おそらくエルピーダもそれほど状況は変わらないのだと思います。「1T1C」なる基本構造が同じである以上、決定的な差別化は難しそうですね。なんかすごい独自材料とかあれば違うのかもしれませんが。
あと、供給面については、チップシュリンクの速度に需要拡大が追いつかなくなりつつあるのが一番の問題ではないかと。
ネットブックの隆盛は言うまでもなく、デスクトップPCにおいても搭載メモリ容量はそれほど増えていませんからねぇ。
当面、4GB、末端価格で5,000円相当(!)も積めば、たいていの用途では十分でありましょう。
となると、まだまだ我慢比べが続きそうな状況であります。
まあ、おっしゃるとおり資金返済を生暖かく見守るしかないですねぇ。
ただ、社長が公的資金申請の時に何と発言するかは見物ですよ。
台湾当局に支援を求めるっぽい動きをしているかと思ったら、1ヶ月もたたずにこの展開ですからねぇ。それだけ切羽詰まってるのでしょうが。