2008年08月25日

アーバンコーポレイション(8868)とBNPパリバ間のファイナンス (3)URBANがスワップ契約を結んだ動機に関する考察および今後の対策に関する主張

 前回は、アーバンコーポレイション(8868、以下URBAN)がBNPパリバと結んでいたスワップ契約により、URBAN側に損失が発生した仕組みについて述べた。
 今回は、URBAN側がなぜこのようなスワップ契約を結んだのか、その背景について考察を試みた。
 その結果、
・URBANの資金繰りが6月頃には既に極めて厳しくなっており、7月11日のCB発行以前に資金が必要だったのではないか?
・CB発行+スワップ契約という手法を採用したのはいわゆる「MSCB規制」を逃れるためではないか?
という2点の推測を得た。

 以下では、スワップ契約を通じてURBANがどのタイミングで現金を得たか推定することを通じ、URBANが今回スワップ契約を結んだ理由について考察を行う。
 その後、今回のようなファイナンスを抑制する対策に関する主張を行い、一連の記事の結びとする。

〜「MSCB規制」の抜け道 考察〜


 URBANがなぜスワップ契約を結んだか考えるためには、URBANが同程度の資金調達を行う場合に取り得た手法であるMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)との比較を行うのが有効であると考える。
 今回のスワップ契約の一株あたり支払額の決め方は、VWAP×90%という、MSワラントに非常に良く似た仕組みを持っていた。
 また、MSワラントの場合、現金の支払いが(MSCBとは異なり)予約権行使時、すなわち後払いでよい。この点は、今回のスワップ契約とよく似ており、少なくともBNPパリバ側にとっては問題がなかったはずである。
 となると、今回の資金調達、スワップ契約などと言う回りくどい仕組みを使わずに、MSワラントを使えば事足りるのではないかと思えてくる。
 が、両者を比較してみたところ、URBAN側の現金受取の速さ(時期)という、URBAN的にはある意味現金受取額よりも重要といえるかもしれない点で大きな差がでてくる可能性が極めて高いことが判明した。
 以下では、この点について説明を行う。
 
 まず、図1に今回のスワップ契約でURBAN側が受け取った現金、出してしまった赤字、そして、スワップ契約が履行されずに残存している部分のそれぞれについて、ここまでわかっている情報から管理人が推定した値をまとめ、図示する。
 なお、URBANが獲得したという90億円の中には、年2回、想定元本の2.5%相当の資金を支払う契約(『変動支払(2)』)の分が含まれている可能性があるが、この点については本ファイナンスの結末および当HP的には重要ではないので無視した。

『スワップ1・2合わせて6日分の支払』
図1 スワップ契約におけるURBAN側受け取り資金・赤字・未履行分の管理人推定値


 図1より、まず、CB発行前に既に20億円弱の現金を受け取っていることが確認できる。しかも、その現金の全てを6月下旬頃にURBANが手にできたことがURBAN株の売買状況から推測できる。この資金は、6月の時点ですでに大変なことになっていたであろうURBANの資金繰りを、ほんのわずかではあるが和らげたのではないだろうか。
 対して、MSワラントの発行を行った場合、当然のことながら、発行当日(7月11日)までは資金は一切受け取れない。
 この差は投資家からすれば大したことないように感じるが、URBAN的には大きい意味を持っていたのかもしれない。

 次に、スワップ(2)によりURBANに資金が支払われたのがわずか3日間(前回記事参照)だったのにも関わらず、スワップ契約全体の40%強が行使されている点に注目したい。
 仮に、株価が下限株価を上回って推移するか、URBAN側がスワップ契約の進展と現金獲得を優先し、下限株価条項を設けなかった場合、スワップ契約は7月下旬には最大株数まで履行され、事実上終了していた可能性が極めて高い。この点においては、URBANがプレスリリースで発表した『BNPパリバからの支払は1ヶ月程度ですべて行われると想定』という部分は間違っていないのである。もっとも、皆様ご承知の通り、URBANの株価が下落し、下限株価を下回ったせいでその目論見は外れたわけだが。
 対して、MSCBやMSワラントの場合は、売買高が増えたからといって一気に予約権行使は出来ない規制が存在している。昨年7月?発行分より適用されるようになった、いわゆる「MSCB規制」である(参考リンク)。
 本規制においては、MSCB等の予約権行使は、一部の場合を除き、一歴月(7月、8月など)あたり発行済株式総数の10%までと定められている。CB発行発表時点のURBANの発行済株式総数は2億2,700万株であったから、一歴月当たりの予約権行使可能数は最大2,270万株だったことになる。つまり、今回のCB発行規模と同じ8,720株分のMSワラントの発行で資金調達を行おうとした場合、全額(300億円とは限らない)の払込までには最低でも約4ヶ月、10月頃までかかることになる。
 この点を図に示してみると図2のようになる。なお、本図では、各月の平均行使価額を200円と仮定しURBANが受け取る各月の金額を計算した。

MSワラントの行使価額が安くなっても赤字は出ない
図2 MSワラントを発行した場合のURBAN側受け取り金額


 図1と図2を比較するとわかるように、スワップ契約により資金調達を行った場合は、スワップ契約がうまくいかなかった現実の結末ですら、MSワラントによる資金調達を行った場合よりも早く現金を得ていることがわかる。
 また、先程も述べたように、仮に株価が下限株価を下回らなかった、もしくは下限株価を設定しなかった場合は、7月中にスワップ契約の最大株式数に達し、URBANはスワップ契約から得られる現金全てを得ていたはずである。
 従って、資金繰りが非常に厳しい状況となっていたアーバンとしては、MSワラントを発行し、10月まで待つような悠長なことはできず、かわりに(赤字が出ることは半ば承知の上・・・だよねぇ?)CBの発行とスワップ契約の組み合わせ、という手法を選んだのではないかと考える次第である。
 つまり、本ファイナンスは、一面では「MSCB規制」をすり抜けて資金(資本)調達を行うために考案・実行されたという見方ができてしまうのである。

 URBANの資金繰りがどのくらい厳しかったのかは現時点で知ることはできないが、「明日の千円よりも、今日の百円」といった心境だったのではないかと思われる。

〜開示ルールの整備を 主張〜


 本ファイナンスで問題視されていることの一つに、CBの払込資金として一度BNPパリバからURBANに払い込まれた300億円が、スワップ契約に従いそのままBNPパリバに戻されていたことが挙げられる。

 この点、実は、一度払い込まれた資金がそのまま引き受け手に戻された前例が2年前に存在しているのである。
 06年2月、東証マザーズ上場のアイディーユー(8922)はUBS割り当てで250億円のMSCBを発行したが、払い込まれた250億円をそのままUBSへ定期預金として預け入れてしまった事例である(当ブログの考察記事)。
 本MSCBの発行発表がライブドア・ショックの直後だったというタイミングの問題もあり、当時はそれなりに話題となったが、MSCB発行発表のプレスリリースに定期預金として預け入れる話についても掲載していたため、それ以上の騒ぎとなることはなかった。

 今回の事例において、仮に、スワップ契約の存在をCB発行発表と同時に行っていた場合どのような展開があったかは不明であるが、(表面だけ見れば好材料の)CB発行発表後も株価が下落基調をたどり続けたことを考えると、実はそれほど株価動向に差はなかったかもしれない。もちろん、BNPパリバ的には困ったかもしれないが。
 BNPパリバとURBANの間で結ばれたスワップ契約は、大まかに言えば、資金の受け取り時期および金額がCBからMSワラントのそれに変更される契約であるといえ、一般的な金利スワップなどとは明らかに異なるものであると言える。
 今回、アーバンがスワップ契約を開示しなかったことは問題であると思うが、今更とやかく言っても仕方ない。が、自分としては、今後、同種のスワップ契約は開示されるように、東証、もしくは日証協などでルールを作るべきであると主張する。
 具体的な方法は何とも言えないが、個人的には、MSCB等のファイナンス時に、引き受け手への貸株の有無をプレスリリースに記載しているのに倣えばよいのではないかと主張する。すなわち、当該ファイナンス発表のプレスリリースに、発行企業とファイナンスの引き受け手や引き受け手と関係する会社・ファンド・個人などとの間に結ばれた、もしくは結ぶ予定のスワップ契約等を掲載するのが妥当ではないかと考える次第である。
 もちろん、これでも効果的な対策とは言えないが・・・幾分はましになるのではないかと期待したい。いやほんとに。


 以上、本記事では3回にわたりURBANとBNPパリバの間で行われた一連のファイナンスに関する考察並びに主張を行った。
 URBANにとっては急ぎ資金調達を行いたいという事情があったとはいえ、これだけの巨額損失のリスクを冒してまで行う必要、もしくは覚悟があったのかは正直信じがたいところであり、なんか裏がありそうに思えてしまうところである。
 仮に、今回の一連のおはなしに裏があるとすれば、是非その点は明らかにしてもらいたいところである。実態を明らかにすることが、今後も起きる可能性が否定できない同種事例に対するなによりの抑止力になるはずである。
 
posted by こみけ at 01:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 銘柄ネタ(MSCB除く) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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