2008年08月18日

アーバンコーポレイション(8868)とBNPパリバ間のファイナンス (2)URBAN側損失発生の仕組みに関する考察

 前回は、アーバンコーポレイション(8868、以下URBAN)が民事再生法申請と同時に発表したスワップ契約の概要について述べ、URBAN側が受け取れる金額が株価動向により増減することを示した。

 今回は、URBANはスワップ契約を結んだことにより、58億円もの損失をなぜ出してしまったのか考察を試みた。
 その結果、
・民事再生法申請と同時にURBANが発表した『58億円の営業外損失』は7月18日までにはスワップ契約の含み損の形で発生していたのではないか?
・仮に会社側の言うとおりBNPパリバからの支払いが順調に進んでいたとしても、スワップ契約を結んだ時期の株価水準が続いた場合、CB発行額の300億円を受け取れる可能性は小さかったのではないか?
・仮にBNPパリバからの支払いが順調に進んでいた場合、スワップ契約でURBANが被る赤字はさらに増えていた可能性が極めて高いのではないか?
という3点の推測を得た。

 以下では、スワップ契約の遂行に伴い、URBANの損失がどのようにして発生したか考察を進めてみることにする。

〜想定元本減少は344円×株数 考察〜


 本ファイナンスにおいて、CB発行日の7月11日にBNPパリバから300億円がURBAN側に振り込まれた。それに対して、同日、URBANは同日、スワップ契約に従い同額をBNPパリバに払い込んだ。

 自分は、URBANはこの時点で既にスワップ契約で損失を抱えていたと考える。
 スワップ1は、BNPパリバがVWAP×90%×対象株式数(累計650万株以内)で算出される金額を(株価が300円以上をつけた日限定で)日々支払う一方で、URBANは最終日(7月11日・・・CB払込日)に344円×対象株式数で算出される金額を(300億円の一部という形で)一括支払いをすることになっていた。
 前回この点を説明した際に用いた図を図1として再掲する。

URBANは先払いしてもらえる
図1 スワップ1の概要(再掲)


 すなわち、URBAN側から見れば、VWAP×90%で求められる金額(一株あたり支払額)が344円以上にならなければスワップ契約で損失が発生することになる。
 そして、スワップ契約発効後は株価が低迷したため、一株あたり支払額は275〜290円程度であったと推測している。つまり、一株あたり55〜70円程度の損失が発生したことになる。
 ここら辺を図に示してみると図2のような感じになる。

損失率十数%
図2 スワップ1で発生したURBAN側損失の概要

 んで、スワップ1の上限株数は650万株とされているから、仮に上限株数までスワップ契約が履行されていた場合、
55〜70円 × 650万株 ≒ 3.5〜4.5億円
くらいの損失が出た計算になる。
 しかし、これでは発表された損失額58億円にはとても足りない。ということで、スワップ2の方も見てみることにする。

 スワップ2では、最初にURBAN側が300億円からスワップ1で支払った分(20億円強?)を差し引いた額、約280億円弱を支払い、『想定元本』としていた。これはURBANがBNPパリバに預けた資産と見なして良いと思う。こう、URBANがBNPパリバに280億円を預けたという認識で。
 んで、契約期間中は、BNPパリバがVWAP×90%×対象株式数で算出される金額を(株価が下限株価以上をつけた日限定で)日々支払う一方で、想定元本は344円×対象株式数だけ減少することになっていた。つまり、BNPパリバからURBANに支払われる現金の金額と、URBANがBNPパリバにお金を預けた口座の残高減少額が違っていたわけである。
 この差額は、そのままURBANの資産の増減につながるわけだから、利益・損失として計上されるべきものであろうし、実際に営業外損失として計上され発表されてしまったわけである。
 スワップ2が適用されていた期間中はVWAPが200円台前半で推移したことから、BNPパリバが支払った一株あたりの平均金額は185〜215円程度のどこかであったと推測している。
 従って、一株あたり344円とされているCB転換価額(=一株あたりの想定元本減少額)との差額である百数十円×対象株式数(3,000万株以上ではないかと推測)がURBAN側の損失となったわけである。
 ここら辺を図2と同様に図示してみると、図3のような感じになると考える。

この損失がそのままパリバの利益になっているわけでもなさそう
図3 スワップ2で発生したURBAN側損失の概要


 対象株式数がどの程度になったかはっきりしないため、損失額がどの程度かは推定に頼る部分が大きいが、少なくとも30億円以上なのはほぼ確実だろうし、おそらくは58億円のうちの8割以上を占めていると考えている。
 一株あたり損失額、対象株式数の双方がスワップ1よりもはるかに大きかったため、損失額が大きくなったと言える。

 ちなみに、本スワップ契約でURBANが利益を出すためには、スワップ1・2いずれにおいてもVWAPが平均382.3円以上をつけている必要があったようである。
 スワップ1の締結時期はともかく、スワップ2の締結時の株価水準ではVWAPがこの水準を達成するのは極めて困難と想像できたと思うのだがねぇ・・・。


 ・・・以上より、スワップ1で数億円、スワップ2で数十億円の損失が発生し、その合計が約58億円だったというのが実態ではないかと自分は考えてみた次第である。
 そして、その損失のほぼ全てが、含み損という形で7月18日までに発生していたのは確実と思われる。何せ、7月19日以降は株価低迷でスワップ契約は株価低迷で一切履行されていなかったはずだからねぇ・・・開示資料が正しい&事実の全てならばだけど(←ちょっと怪しんでいる人)。
 結局のところ、URBANが民事再生法申請と同時に『58億円の営業外損失が発生』と発表したのは、民事再生法申請によりURBAN・BNPパリバ間に結ばれたスワップ契約が終了したため、それまで含み損だった損失がついに確定損失になってしまったため発表した、というのが実態であるとするのが現時点においては妥当ではないかと考えるところである。


 ところで、16日付日経朝刊12面に掲載された本ファイナンスに関する記事には、『(スワップ契約で)URBANが受け取ったのは90億円にとどまっていた』という記述がある。
 これが事実ならば、今回URBANが発表した損失額が58億円であることと併せて考えると、単純計算で、300-(90+58)=152億円分の想定元本がまだ残っていることになる。つまり、まだスワップ契約は半分程度しか消化されていなかったことになる。
 仮に、13日にURBANが倒産することなく株価が大幅反発し、本スワップ契約の履行が再開されたとすると、当然ながら取引の多くは下限株価(250円?)周辺での取引となり、再開後の一株あたりのURBAN側受取額は平均300円を切る水準となっていたに違いない。
 となると、仮にスワップ契約の履行が再開されていた場合、スワップ契約に絡む赤字額はさらに増加していた可能性が極めて高い。
 いかにURBAN株が急騰したとしても、380円台まで上昇するためには相当の出来高をこなさなければいけなかっただろうからねぇ・・・まあ、そんなこと考えても今更仕方ないが。


 以上、今回はスワップ契約に関してURBAN側に損失が発生した仕組みについて考察を行った。
 次回は、このようなファイナンスをなぜURBAN側は受けたのか、その思惑について考察を行った後に、本ファイナンスが日証協などが定めるMSCB規制を無力化する代物であることに関して主張を行う予定である。
 
posted by こみけ at 00:19| Comment(6) | TrackBack(1) | 銘柄ネタ(MSCB除く) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも楽しく拝見させていただいております。私なりの見解をトラックバックさせていただきました。色々とご指摘いただければ幸いです。
Posted by 投資一族の長 at 2008年08月18日 14:25
>投資一族の長 さん
 先ほど、投資一族の長さんのブログにコメントさせていただきました。
 私の考察にも、いろいろ問題点などあると思います。
 ご意見等いただければ幸いであります。
Posted by こみけ at 2008年08月18日 23:53
コメントの投稿に失敗したみたいですね。こみけ先生のコメントは気になるので、もう一度お願いできますでしょうか。
Posted by 投資一族の長 at 2008年08月20日 15:01
>投資一族の長 さん
 ただいま、投資一族の長さんのブログにコメントとTBを行いました。ご確認ください&うまくいっていないようでしたら、お手数ですがご連絡いただければ幸いです。

 もし、今回も投稿が失敗した場合、恐縮ではありますが、投資一族の長さんのブログではなく、当ブログの本記事のコメント欄にその内容を書き込むことで代えさせていただきたいと思います。
Posted by こみけ at 2008年08月20日 23:25
こみけ様

小生のブログへのコメントありがとうございました。

こみけ先生は「MSCB規制の無力化」に関する考察を行うそうですが、期待しております。プレッシャーかけてすみません。

BNPパリバの行動について調べ物をしたのですが、過去、こういう株価操作をしていたという前科者であることがわかりました:「実勢を反映しない作為的相場を形成させるべき一連の有価証券の売買取引」(証券取引等監視委員会、http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2002/2002/20021129.htm)

アーバンもエラいところと取引したものです。
Posted by fukunan at 2008年08月21日 15:53
>fukunan さん
 自分は、欧州系の金融機関については、UBSをもっとも警戒しています。MSCBがらみでいろいろ奇手を出してくることが多かったもので。
 一方、BNPパリバについてはそれほど注意していませんでした。

 ただ、株価操作については、BNPパリバに限らず、あちこちで行われていると考えた方が、妥当であると思います。株取引を行うのならばなおさらかと。
 摘発事例が少ないのは、しっぽがつかめない&つかむだけの能力がないからでありましょう。
Posted by こみけ at 2008年08月23日 11:39
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