2008年08月17日

アーバンコーポレイション(8868)とBNPパリバ間のファイナンス(1) スワップ取引の概要

 13日、アーバンコーポレイション(以下URBAN、8868)は民事再生法の適用を申請、事実上倒産した。
 今回の倒産劇において特に問題視されているのが、6月26日にURBANがBNPパリバ引き受けで発行した300億円のCB(MSCBに非ず)に関するスワップ取引が行われており、しかもそのことをURBANが開示していなかった点である(プレスリリース)。
 特に、CB発行でURBANに払い込まれたはずの現金300億円が、ほぼ全額BNPパリバ側に預け込まれていたことが倒産まで明らかにならなかったのは重大な点である。結局、CB発行が資金繰りに想像ほど寄与していなかったことが倒産後に明らかになったわけであるからねぇ。

 本記事では、複数回にわたり、URBANとBNPパリバの間で行われた一連のファイナンスに対する考察を無謀にも試みてみることとする。
 なお、管理人は金融については素人ですので記事中に間違いがあるかも知れないので、その点はご容赦ください&実際に間違いがあった場合はご指摘いただければ幸いです。


 まず、第1回ではURBANとBNPパリバ間に結ばれたスワップ取引に関する考察を試みた。
 その結果、
・本スワップ取引の資金支払方法に株数固定型のMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権、MSSO)との類似点を見出すことができる
という認識を得た。

 以下では、本スワップ取引におけるBNPパリバからURBANへの支払額決定方法について整理し、説明した後に、MSワラントと本スワップ取引の似通った点につっこみを入れてみることとする。

〜株価一定以上なら現金支払い 概要〜


 本スワップ取引は、基本的にはURBANが300億円を『想定元本』として一括してBNPパリバに払い込み、その代わりに、BNPパリバはURBANに毎日のVWAP(≒株価)と出来高を基準にして毎日資金をURBAN側に支払う、という契約だった。そして、その支払いと同時に想定元本(URBANが預けている300億円)が減っていくものであったようである。

 んで、URBAN側が毎日受け取る資金額は、以下のような要素から求められる。
 まず、『下限株価』は、株価が一定以下の水準を下回った場合は本スワップ取引で色々計算したりする対象からは除外するという基準である。あまり低い株価で資金の受け取りを行った場合、URBANが受け取れる金額がURBAN的に我慢できないくらい低くなってしまうことを警戒したものだとも考えられるし、市場への売り圧力を避けたいという意図もあったのではないかとも考えられる。
 次に、『VWAP』は、下限株価以上で行われた取引のみから算出されたものとされている。従って、その日の本当の(全取引から算出された)VWAPよりも高くなることもある。
 『取引株数』は、その日の出来高のうち下限株価以上で行われたのみの売買株式数のことと定められている。つまり、ある日の株価が下限株価を下回った場合、取引株数はその日の売買株式数よりも少なくなることになる。
 そして、『ヘッジ比率』はこの対象株数(≒出来高)に掛けられる比率で、今回は全期間を通じて6〜18%の範囲で適用されていたと思われる。この比率が何を根拠に決定されたかは発表されていないが、個人的には、「株価が相応に下がることを承知の上で空売りできるぎりぎりの比率(株数)かな〜」という印象を受けた・・・それ以上だとストップ安を引き起こしかねないかと。
 最後に、『対象株数』が取引株数にヘッジ比率を掛けて算出される。
 んで、これらを元にして、『支払金額』が、対象株数×VWAP×90%であると定められている。この金額が、日々URBAN側へと支払われることになっていた。

 ここからは、各スワップの概要について述べてみる。
 まず、スワップ1の概要について図1に示す。

swap_8868_1_1.jpg
図1 スワップ1の概要


 スワップ1の契約期間は6月27日から7月11日までと定められている。
また、下限株価は300円と定められている。
 本契約期間において、株価が一瞬でも300円以上をつけた日は、6月27・30日、7月1日の3日間のみである。従って、それ以外の日はURBAN側への金銭支払いはなかったと言える。しかしながら、URBAN株の出来高は27日だけで6,000万株近くに達している上、30・1日も3,000万株以上の大商いであった。従って、この3日間だけでスワップ1の最大株式数である650万株分の支払いが全て行われた可能性もある。
 なお、この3日間のVWAPや歩み値が手元にないので大ざっぱな計算になるが、この間のURBANへの一株あたり平均支払額は275〜290円前後だったのではないかと推定している。
 そして、終了日である7月11日には、URBANからBNPパリバへの資金支払いが行われた。その金額は、CB転換価額(344円)×(3日間の対象株式数の合計である)累積株式数であったはずである。

 次に、スワップ2の概要について図2に示す。

swap_8868_2_1.jpg
図2 スワップ2の概要


 本スワップ取引の契約期間は7月11日から2010年7月12日と当初定められていたが、民事再生法申請を行った8月13日の時点で終了してしまったらしい。
 また、下限株価は、何回か変更が行われた結果、7月11・14・18〜25日は175円、それ以外は250円と定められた。
 本契約期間において、株価が一瞬でもこれら下限株価を上回ったのは7月11・14・18日の3営業日、いずれも下限株価が175円だった日である。
 常に下限株価を上回った状態で取引が行われた11・14日の出来高が合計で約2億4,300万株、下限価格をはさんだ状態の取引となった18日の出来高が約6,500万株であったから。従って、ヘッジ比率を考慮すると、少なくとも2,500万株分、おそらくは3,000万株分以上の資金支払いがBNPパリバからURBANへと行われたと見なして良さそうである。なお、一株あたりのURBANへの平均支払額は185〜220円のどこかでないかと推測している。
 なお、URBANからBNPパリバへの資金支払いは、契約期間初日(開始日)である7月11日に行われ、300億円からスワップ1で支払われた金額金額を引いた額の支払いが行われたはずである。要するに、7月11日にスワップ1及び2合計で300億円がURBANからBNPパリバへ支払われたということになる。
 そして、URBANへの資金支払いが行われるたびに、想定元本額は減少していった。その減少額は、CB転換価額(344円)×対象株式数であったはずである。この想定元本額の減少については、次回考察してみる予定である。


 さて、自分が本スワップ取引について特に気になったのが、URBANへの資金支払い条件である。
 一株あたりの支払額がVWAP×90%というのは、MSワラントの行使価額修正条項では良くある条件だな〜と印象に残ってしまった。
 また、取引株数×十数%という対象株数も、空売りして売り崩すにはちょうどいい規模ではないかな〜とか思ってしまったのである。
 従って、ある意味、今回のファイナンスでURBANが得られる現金収入のパターンはMSワラント発行時の場合とよく似ているように感じるのである。
 こう、現渡し用の株券をMSワラント行使で確保し、会社側は代わりに現金の払い込みを受けるような状況そっくりなのではないかと。これでは、資金繰りの改善はそれほど期待できないのは間違いないところである。
 一方、BNPパリバの視点からすればMSワラント(もしくはMSCB)とは異なり、空売りした株券をどうにかして調達しなければならない点が異なる・・・今回BNPパリバが引き受けたのはあくまでCBだし・・・。
 もっとも、その辺の絡みでURBANが損失を出すことになったと言えそうなのであるが。


 今回は、本スワップ取引の概要について述べ、資金支払方法のMSワラントとの類似性について述べた。
 次回は、本ファイナンスを通じ、URBANがどのようにして『58億円の営業外損失』を被ったのか、考察を試みる予定である。
 
posted by こみけ at 01:59| Comment(4) | TrackBack(1) | 銘柄ネタ(MSCB除く) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>次回は、本ファイナンスを通じ、URBANがどのようにして
>『58億円の営業外損失』を被ったのか、考察を試みる予定である。

わくわくしてお待ちしております。なぜ営業外損失58億円(素敵な金融機関に支払った各種手数料はせいぜい数億円でしょ)になったのか、私の理解を超えていますので。

今回は新種の鷺出現であります。むちゃくちゃ不平等条約を秘匿したまま、初心者個人投機家を巻き添えにしました。きっと“おかみ”は今後の推移を注意深く見守り、だんまりを決め込むことでしょう。

債権者だって怒っていいはず。58億円分余計に返ってこなくなったのだから。それとも、負債総額2500億円が2558億円になっても大差ないから文句言わない?
Posted by 田中有馬菜々 at 2008年08月17日 18:24
>田中有馬菜々 さん
 ただいま新しい記事を上げました。
 URBAN側損失発生についても、自分の考えた損失発生の仕組みを述べてみました。
 わかりにくい点などあると思いますので、その際はコメントをいただければと思います。
 何しろ、スワップ取引は私は初めて扱うネタですので、えらくやりづらいもので・・・。

 自分は、本件に関してはスワップ契約を隠蔽していたことについては極めて重大な問題と見なしております。
 一方で、赤字発生そのものについては、ちと主張したいことがあり、次回記事で語ってみる予定であります。
 今回は、目に見える形で赤字が出たから騒ぎになっていますが、じゃあ他の糞ファイナンスは・・・と思っていまして。

Posted by こみけ at 2008年08月18日 00:32
こみけ様

一連の記事、拝見しております。こんなに詳しく考察している記事は初めて見ました。勉強になります。

BNPパリバがアーバンコーポと一般投資家を嵌め、アーバンコーポが地銀とゼネコンに被害を及ぼした、という二重構造の経済事件というように見えます。
Posted by fukunan at 2008年08月19日 15:43
>fukunan さん
 コメント、ありがとうございます。

 自分としては、BNPパリバが嵌めたのはアーバンだけで、一般投資家と地銀とゼネコン?を嵌めたのはアーバン側ではないかと考えております。
 第3回の記事に書く予定でありますが、今回のファイナンス、スワップ契約を絡める動機をより強く持っていたのはどちらか、と考えますと、アーバンの方が圧倒的に強かったと考えております。
 パリバ的にはMSワラントでもそれほど問題なかったように思う次第であります。一方、URBAN的にはそれでは間に合わなかったのだと思います。
Posted by こみけ at 2008年08月19日 22:40
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BNPパリバに嵌められたアーバンコーポ
Excerpt: この記事によると、アーバンコーポレイションはBNPパリバに嵌められたようですな:
Weblog: 椅子は硬いほうがいい
Tracked: 2008-08-19 15:39

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