5月29日、イチヤ(9968)は、自社が6月30日付で上場廃止になることを発表した。
プレスリリースは
こちら。また、ジャスダックの発表文は
こちら。
・・・イチヤは自分にとっては思い入れが深い銘柄である。自分が(ミニ株ではなく)初めて単位株主として保有した銘柄はイチヤだった。
また、当ブログの看板記事となっているMSCB関連記事の知識を得るようになったのも、イチヤが株価低迷をしている理由を探しているうちにMSCBに行き着いたのがそもそものきっかけである。買付時は、なんでこんな株が安値で放置されているんだ、とか本気で思っていたからねぇ。PER3倍とかだったような気がするし。
まあ、その後値動きの鈍さに嫌気がさして手放し、さらにその後しばらくしてだいたいの実情を悟ってしまったわけだが。でも、若干の授業料と引き替えに色々と学べたいい銘柄だった・・・。
さて、話を戻して今回イチヤが抵触してしまった時価総額基準の話である。
ジャスダックには時価総額基準は2種類定められている。一つは、時価総額が5億円(現在は3億円)未満の場合、そしてもう一つは時価総額が株式数の2倍未満の場合である。
このうち、今回イチヤが抵触したのは後者である。詳細については文頭に挙げたプレスリリースをご覧頂くとして、概要だけ言えば、「本年2月に時価総額が株式数の2倍未満となり、3ヶ月連続でその状態が続いたので上場廃止」と言うことになる。
イチヤもこの危機的状況に手をこまねいていただけではなかった。上場廃止を回避すべく、10株→1株の株式併合を行うことを3月30日に取締役会で決議した。併合日は5月28日、3ヶ月の猶予期間にギリギリ間に合うタイミングである。
そして、無事株主総会の特別決議を通すことにも成功し、株式併合は予定通り行われた。5月末(29日)のイチヤの終値は24円、(言うまでもないことだが)時価総額は株式数の24倍となった。
これでイチヤは上場廃止を免れたかのように思えたのだが、その夜、イチヤの上場廃止がジャスダック・イチヤの双方から発表された。無事クリアしたと思われていた上場時価総額基準への抵触が理由である。
自分は今回の事態が発生するまで知らなかったのだが、『時価総額が株式数の2倍未満』という基準の判定方法は、実は2種類あり、上場廃止回避のためには両方をクリアしなければならない(
参考リンク)。
一つは、1ヶ月間の平均時価総額である『月間平均上場時価総額』から算出する方法、そしてもう一つは『月末上場時価総額』を用いる方法である。
『月間平均上場時価総額』は、時価総額の1ヶ月間平均である。
一方、『月末上場時価総額』は、その名の通り月末(今回は5月29日)時点での時価総額である。
今回、イチヤが引っかかったのは『月間平均上場時価総額』の方である。
『月間平均上場時価総額』の算出方法については、ジャスダックの
諸規則内規に定められている。この規則では、時価総額の算出方法に加えて月間平均上場株式数の算出方法も定めている(上記リンクの1.(3))。
今回のイチヤの事例を考えるのにあたり、諸規則で留意しておく必要があるのは、「併合4営業日前までは併合前の株式数、併合3営業日前以降は併合後の株式数を用いて月間平均上場平均株式数を算出する」という点である(管理人解釈)。
この点を考慮の上で、本年5月におけるイチヤの月間平均上場株式数と月間平均上場時価総額を算出してみると表1のようになった。
なお、本表は管理人の推測によるものであり、算出手順・結果が正確でないかもしれない点についてはご了承願います。
表1 イチヤの株式数・時価総額の推移

なお、5月25〜27日の株価については、ジャスダック諸規則において、時価総額の算出には最終価格を用いると記されているので(理論価格の10円ではなく)1円とした。
本表より、イチヤ株の月間平均時価総額は月間平均上場株式数の約1.52倍であり、上場廃止基準に引っかかってしまうことがわかる。ちなみに、25〜27日の株価を10円と見なしても、約1.72倍と算出され、やはり上場廃止基準に抵触する。
結局の所、併合前の時期に終値が1円をつけることが多かったのが致命傷(?)と言えるであろう。また、月間平均上場株式数が9億株近くと算出されており、併合後の株価上昇ではそれまでの低迷(時価総額不足)を補えきれなかったと言う面もある。
後知恵を持って言えば、今回の上場廃止、確実に回避するためには5月上旬までに株式併合を行うべきだったと思われる。5月の月間平均上場株式数をなるべく低く抑え、かつ、株価を早期に1カイ2ヤリ状態から離陸させる必要があったのではないかと。
まあ、株主総会の基準日とかで時間的にできなかったのかもしれないがねぇ。
以上、本記事では、株式併合という対策を取ったにもかかわらず時価総額基準により上場廃止の憂き目にあってしまったイチヤについて考察を行ってみた。
・・・月末上場時価総額だけでは(今回のように)一時的に株価が上昇した場合に上場廃止とすることができないケースがあり、JASDAQが月間平均時価総額との二本立てで上場廃止の判定を行うのは理解できる。
しかしながら、この仕組みについてのJASDAQの説明は不十分であると主張したい。せめて、説明文がホームページのQ&Aおよび諸規則のPDFファイルにしか記載されていない現状は改めて欲しいところである。たとえば上場廃止基準のページの脚注として記すとか、認知度を高める方法はあると思うのだが。
もっとも、そのような細々とした点まで気を回さなければいけない銘柄になど投資しなければいい、というのが投資家的には正論のような気もする次第である。