11日、ジャスダック上場のジャルコ(6812)は、2日に発行を発表した第1回MSCBについて、行使(転換)制限条項を追加すること、下限転換価額を4円と定めることなどの発行条件修正を発表した。プレスリリースは
こちら。
また、MSCB発行に関するプレスリリースは
こちら。
今回の発行条件修正については、5日に申し立てが行われたという
本MSCBの行使差し止めに関する仮処分申立が影響しているものと思われる。
・・・発行ではなく行使の差し止めを請求しているところは興味深いが、実質的にはさほど変わらないと思われる。行使差し止めが行われれば、払い込みは行われないだろうからねぇ。
ジャルコは、本MSCBの内容に問題があるとの
勧告をジャスダックから受けたにもかかわらず、勧告を無視して発行を発表している。
ジャルコの立場からすれば、勧告を受けた当初条件のままでは仮処分申立が認められる可能性が大きいと判断し、MSCB発行(資金調達)の実現を最優先にMSCBの発行条件修正を行ったのではないかと推測してみる次第である。
当初、自分は本MSCBに関して、以下の問題点があると認識していた。
(1)下限転換価額が定められていないこと
(2)MSCBの行使(転換)数量制限が定められていないこと
(3)転換価額が極端に下がった場合、転換株式数が発行可能株式数を大きく上回ってしまうこと
(4)引き受け手からの繰上償還請求が、株価推移などにかかわらず発行翌日からできること(発行要項 14.(4))
(5)株式併合等が行われる場合、行使価額の調整を引き受け手が拒否できると読める条項があること(発行要項16.(8)但し書き)
(6)発行手数料として2,250万円、発行額の15%を支出するのは多すぎるように思えること
・・・なお、ジャスダックが問題点として挙げた『行使価額が下方にのみ修正される設定となっていること』は、良くあることなので自分としては特に問題にしていなかった。
このうち、(1)(2)(3)については、今回の修正により解消された。
また、(6)については、当初の『発行手数料』と言う名目から、『カタリスト株式会社に対する仲介手数料』に変更(修正?)された。仲介手数料という名目でそれだけの金額を支出することが妥当かどうかはさておき、投資家にはより詳細な情報が提供されたことになる。
(4)については、ジャルコの経営が極めて厳しい状況にあることから定められたものと考えられ、引き受け手も本ファイナンスが高リスクな代物であると認識しているものと予想できる。
(5)については、似た事例を07年に数例確認している(
参考:バナーズ(3011)のMSCB) 。本但し書きは、簡単に言うと、株式併合で基準株価が上がったとしても、転換価額は従来のまま据え置きにする(か基準株価に合わせて上げるかを引き受け手が選ぶ)ことができるという条項である。実際に発動されれば恐るべき威力をふるうことになるが、本条項は株主総会の特別決議(株式併合承認)が必要なこともあり、実際に発動することを現時点から考えているとは考えにくい。というか考えていたら鬼。
さて、ここまでの流れを見ると、今回の修正発表は既存株主の視点から見ればいいことばかりである。だが、会社の資金繰り上のことを考えてみると、ちょいとゆかいなことになっているのに気づけるのである。
本MSCBの当初転換価額は15円であり、上方修正は行われない。すなわち、転換価額は15円以下である。また、行使制限条項が追加されたため、各歴月の転換可能株式数は90万2,000株(現在の発行済み株式数の10%)に制限されている。さらに、償還期限は6ヶ月後の本年9月である。
以上より、転換されるMSCBの総額は、転換価額が最高値である15円を維持したと仮定した場合でも、単純計算で、
15(転換価額)×902,000(各月の最大転換株式数)×6(月数) = 81,180,000(円)
となる。なお、個人的には月数を6ヶ月ではなく7ヶ月(3月、4月、・・・9月)と見なして計算すべきでないかと考えているが、『一月の行使量が最大902,000株で行使期間が6ヶ月であるため、最大で5,412,000株となり・・・』としている修正後プレスリリースの記載に従った。
以上より、1億5000万円発行される本MSCBは、最大でも8千万円強までしか転換できないことになるのである。
つまり、本MSCBは全額の転換は不可能となってしまったのである。言い換えると、今回の1億5000万円の社債は、MSCBと金利5%のSBが混在している状況であるとも言える。
しかも、本MSCBは発行翌日(3月20日)から引き受け手からの繰上償還請求が認められている。たとえ発行翌日であっても、繰上償還請求を受けた場合は、発行額の20%もの諸費用を支払いようやく調達した資金の一部を5営業日後に耳を揃えて返さなければいけないのである。
引き受け手は、転換不能なSB的部分については、早期の繰上償還請求も検討すると思われる。その場合、ジャルコにとっては償還資金の確保が重い課題になるそうである。
調達資金の支出を3月中に行ってしまうわけだから、新たに償還資金の確保が必要なはずである。
本MSCBの今後については、まず、現在審理中であると思われる仮処分申立が通るかどうかを見届けたい。
申立が通れば会社側は別の資金調達手段を検討する必要が出てくるはずだし、申請が却下されればそのまま発行を行うはずである。
むしろ、(無事に発行が行われたと仮定して)引き受け手がどんな手を使ってくるかの方が興味深い。
引き受け手としては、まずは、転換不可能な分のMSCBを繰上償還請求するか、それとも保有継続するか(金利目当て?)の決断を行う必要があるはずである。いや、それ以前に転換が不可能な分の払込は最初から行わないという可能性もあるか・・・。
この辺、どういう動きがあるか結構楽しみである。